2017/06/06 のログ
■エルツ > 「あんまり奥にいくと、ボクほんとに荷物持ちでしかないしねー」
(剣の腕だけで言うなら新兵よりはマシ。盾の技術と索敵、スタミナもろもろ含めて、ようやく初心者を脱しようという段階だ。
やたらと食事系スキルが高いせいで重宝されてはいるけれど、自分の実力を見誤ってはいない)
「喜んでくれて良かった。今度好物教えてよ、次の参考にするから」
(どうせ出すなら喜んで欲しい。それは料理人ならずとも、作り手の本能とも言える欲求だ。プロ級ではないが、そこそこ美味しいと評価される腕も、そもそもそうやって磨かれたもの。
そしてどうやら気のせいではないらしい様子。痕跡を確認しようと地面を覗き込み)
「この足跡…えっと、蹄があるから熊や狼じゃない…鹿?イノシシのほうかな…たしか、イノシシだったら近くの木に削れた痕があるんだっけ」
(痕跡をより分かりやすくしての問いかけ。本当に講師とその生徒のようなやり取りだ。かといって考えずに正解を求めたりせず、一つ一つ痕跡を確認しながら消去法で焦点を絞っていく。
そして、近くの大木の幹。真新しい削り痕を見つけた。これは牙でつける痕だから、どこについているかで大まかな体高も分かるのだけど)
「…ねえおにーさん。この牙の跡…ボクの腰くらいの位置なんだけど」
(あんまり見たくない現実に虚ろな笑みが浮かぶ。けれど、そういう認めたくない現実に限って、すぐ傍まで差し迫っているものだ。シルエットを見た瞬間、丸盾を両手で構えて)
「出来るだけ囮になるけど、長く持たないからね!」
(自分は肉壁に徹して、火力は彼の魔法に頼ろうと判断した。正直、盾を持っていても跳ね飛ばされそうなイノシシなんだけど…衝撃を殺すように意識すれば、数回は持つだろう…多分)
■マティアス > 「ははは、ついでに云うなら、2、3日程度の旅で済ませようと思うものじゃないね!
僕の好物かい? 良いとも。帰り道にでも教えてあげよう。」
本来なら凶悪な魔物が出るという話はないが、深くなればなるほど試練の如く、自然の脅威が深くなる。
一週間程度の日程を想定していても、その通りにできるかどうか。
初心者でなくとも、お勧めはし難い。つくづく甘くは見ていけないものだ。
休むべき時があれば、遠慮なく貰い物を賞味しよう。
少なくとも、このような旅で遠慮なく供するに足るものに相違ない。良いとも、と頷いて。
「猪と鹿の足跡は似ているというね。……嗚呼、うん。君の見立て通りだ。これは大きいな」
一つ一つ教えつつ、知識を検めてゆく。狩人でなくとも、単独の旅が多ければ生存手段として、この手の知識も大事だ。
視線を巡らせて行けば、別の大木の幹に己も削り跡を認めることが出来る。
その位置でより、問題の動物のサイズを見極めてゆく。大きい。かなり、大きい。
だから、己の浮かべる笑みも困ったような色合いが深まる。そして、見えた。予想通りの巨躯の持ち主。
「心得た、と。――その前に、軽く強化しておくよ。
形なき根源の力よ――我が威を示せ。……害を祓う護りを成せ!」
即席の前衛を務める姿に手を翳し、紡ぎあげる魔術による加護を施す。
盾を含む身体の前面に魔力の力場による防護を重ねる。受ける衝撃を緩和し、ダメージを軽減する類のものだ。
次の術を紡ぐために、ずらりと腰の剣を引き抜いて立ち上がろう。
その時と合わせて、巨大な猪が来る。猛っている。ただの猪ではない。魔性の毒された獣である。
巨躯も爛々とした眼に籠るどう猛さも、その所産だ。強欲さ故に自然を貪る脅威である。
……来る。大地を踏み鳴らし、まっすぐに盾を構える姿へ。
■エルツ > 「それじゃますます無理だね。森で食べ物調達していくにしたって、二人じゃ夜とか安眠できないもん。
ん、帰りにね」
(現地調達で食事を作る事には慣れているから、食事情のみを考慮すればいけなくもない。ただ、野営となると二人では厳しいと思った。獣除けの魔法もあるというけど、やっぱり見張りは必要だろうし、交代で起きるにしても二人ではどちらも満足な睡眠がとれないだろうと。
好物は帰るときに聞くのを楽しみにしつつ、間食もまずはこの危機を乗り切ってからだ)
「どっちも蹄があるし大きいもんね…あ、イノシシは足が短いぶん下草が倒れてるんだっけ」
(注意しなければ分からない。だけど、ポイントさえ解れば痕跡を探すのは難しくはない。周囲は深い森だからこそ、不自然な痕跡は目立つものなのだから)
「ありがと!しっかり守るからね!」
(魔術での加護は盾を構えるこちらにもはっきり伝わる。これなら、と目の前の猪を見据えた。こちらに怯えることなく。それどころか、獲物を見つけたと言わんばかりの雄たけびを上げて真っすぐに突っ込んでくる。構えた盾を全面に向け、こちらは衝撃を受け止め、盾の半円形の形状を利用して力を逃した。フルプレートの騎士が歩く城塞だとしたら、皮鎧に丸盾の自分は軽いが砕けない柳の葉のような防御方法。加護の力もあって、一撃で腕が痺れるなんてこともなく受け流し。
すれ違いざま、猪の瞳孔が完全に開いていること。口から泡を吹いていて…そこから、強い刺激臭を鋭い嗅覚が嗅ぎ分けた)
「おにーさん!こいつ普通じゃない、多分死ぬまでボクらを狙ってくる!」
(ただ単に大きい動物なら、逃げることもあるだろうけど。この猪はそうじゃない。仕留めるまでは終わらない。この場において最重要であり、死闘の合図でもある言葉を告げて踏みとどまる。
この大きさじゃ自分には仕留めきれないのだから、ますます盾として徹しなければ、二人とも森の肥やしになってしまう)
■マティアス > 幸い、豊かな森だからこそ採取は出来る。だが、餓死はしなくとも、ちゃんと行き帰りができてこその旅である。
己でも深く潜って、帰るとなると入念な準備をしておきたい。
少なくとも、帰ったら数日は休養を要することは疑いない程で。
そして、彼女の示す知識には「その通り」と頷いて応えよう。
ちゃんと勉強している者はよく生き延びる。文献を紐解くより、確かな実践、実習があればより身に付く。
あとは生きて帰ることだ。得た教訓はどんな魔法のアイテムよりも、確かに己を強くする。
「では、僕もできる限り為すことを務めよう。……うん、こういう布陣は久しぶりだね」
地に剣を突き立てる。剣を経由して周囲の地脈の具合を感じ、確かめる。
如何に魔力を流せば効率よく、事を為せるか。利用できるものがあるかを探る。
その傍らで、件の巨大な猪はますます猛る。構えられた盾で牙を受け流され、そのまま走り抜けは――しない。
地団駄を踏むように地を鳴らし、小刻みにその牙を突き上げてゆく。がっがっ、と、盾ごと獲物の胴をぶち抜くように。
「――そのようだね。多分、こいつだよ。魔性に侵された獣か。
時間稼ぎをする! 退きつつ呼吸を整えて、態勢を整えてくれたまえ、と……!」
だか、そうはさせない。口の中でいくつかの咒を紡ぎ、剣を介して大地へと流す。
刹那、起動する術が獣を襲う。猪の足元から岩盤が屹立して、殴りあげるように痛打を与えてゆく。
併せて生じる距離に、少女と獣の間を隔てるように腰の高さの土塁が生じてゆく。
猪がぶつかってゆけば破れうる類のものだが、その分だけ衝撃と勢いを減じさせる。
■エルツ > (知識と経験のすり合わせ。本来なら経験を重ねながら己で学ぶものだけど、助言者というのは本当に有難い。生き延びて、いつか熟練と呼ばれるくらいになったら、自分も若い子の面倒をちゃんと見よう。そう心に刻み)
「っ!こ、の!」
(加護のおかげでまだ立っていられるし、腕も十分に使える。細かく突き上げる牙は重く、皮鎧が削られていくけれど、幸い襤褸クズになる前に後ろから声がかかった。小突くタイミングに合わせて大きく後ろに跳んで距離を開いて、前衛をスイッチ。呼吸を体制を整えながら痛打を浴びる猪の様子を見つめ)
「ねえおにーさん。ボク、土掘る程度の魔法なら使えるんだけど。落とし穴っている?」
(それこそ狂ったように獲物を追う獣だからこその提案。前衛として囮を続行しながらその足元に罠を仕掛ける。初級魔法を修め、盾も使える自分ならではの戦法だ。
上手く嵌れば、猪が穴に落ちた瞬間、魔法での追撃が可能。安全に打撃が加えられるはずだ)
■マティアス > 駆け出しの頃に受けた恩は、腕利きと呼ばれた頃に返すものだ。そうやって世界は回ってゆく。
少しでも物を知っていれば死なずに済むということもある。下らない事物の餌食にならずに済む。
『――~~!』
どてっ腹に痛打を食らった猪が悶えるように数瞬、攻勢を止める。
精度を高めて、柱状の岩盤ではなく槍状のそれでブチ抜く手もあったが、今のこのタイミングではまずい。
次なる手を脳内で選択し、選びながら態勢を整える姿を見遣ろう。
「――いいね。そういうのはとても大好きだよ。お願いできるかな?」
では、と。構える剣の刃に左手を添え、魔力を込める。魔力を高めて次なる一撃の威力と精度を高めてゆく。
そして、悶えた猪がようやく首を左右に振って、鼻息荒く熱帯びた吐息を吐き出す。
目に宿る光はいよいよ、燃え盛るような獣性を灯して猛る一方。
蹄で土を爆ぜるような勢いで蹴立てて、再びまっすぐに進んで行く。
小賢しい冒険者二人を纏めて、轢き潰そうと。仕掛けられる罠や魔力の気配が感じられても、構わない。
■エルツ > (とりあえず今は、ちゃんと薬草を持ち帰り酷い目にあったと愚痴を言いながら夕食を食べるのが目標だ。どっちも無事にこの場を切り抜けて、酒の肴にしてやるのだ)
「やっぱりおにーさんに任せて良かった。ボクの剣じゃああは行かないし…ん、じゃあいくよ!」
(腰のロングソードは手入れをしてるけど、猪の大きさ的に守りに集中しないと受けきれないし、隠し武器のナイフだって、目を狙う以外にダメージは与えられそうもない。皮も厚ければ筋肉だってものすごいのが見てるだけで分かるくらいだし。
簡単な打ち合わせ、軽く頷いて盾を構え前に出た。幸いさっき作ってもらった土塁がこっちの詠唱の時間稼ぎもしてくれる)
<<土よ 道を造れ>>
(ごく短い詠唱が終わった瞬間、構えた盾越しに跳ねられそうなくらいの衝撃が走った。暴れ馬に正面から蹴られたら、こんな感じなんだろうと思うくらいの衝撃は、同時に策が成った合図でもある。
目の前の少女へ全力で突進した猪。いくら狂っているとはいえ、穴が空いていれば飛び越えるくらいの知恵は働くが、その地面は直前までは普段と変わらぬ様子だった。しかし、猪の自重と障害物に当たった衝撃で、その地面が崩れその下の大穴が口を開ける)
「おにーさんっ今!」
(その代償に、今度は完全に体制を崩し、腕も痺れさせながらも最高のタイミングで声をかけて)
■マティアス > 「いやいや、そうでもないよ。あの類は真正面からぶつかるには面倒だからねぇ」
だから、分担できるのは有難い。速攻性を重んじることもできるにしても、それでは経験にもならない。
自分の持つ剣でも、あの巨体は切り込むには心もとない。急所狙いにしても聊か難がある。
リスクを抑えながら仕留めるには、頭を使うに越したことはない。あとは――神にでも祈ろうか。
「……お見事!」
術を紡ぐ。獲物の形態が明確であれば、誰にでも当たれば等しいダメージを見込める魔力弾でなくてもいい。
剣を振り翳す。切先より生じる光が己の頭上で結集し、身の丈程もある鋼鉄の槍を形成する。
吶喊する猪が、突如生じる大穴に飛び込むようにしてはまり込む。もがいている隙に……。
「我――四方を封じ、天地を定め、威を以て束ね統べる。
翳し構えるは鋼雷の槍。疾く、疾く、鋭く、我が敵を討ち果たせ――ッ!」
剣を振り下ろせば、槍が擲たれる。音は、ない。否、爆音と槍が大気を破って生まれる風は遅れて来る。
脳天から入る槍が地面に縫い付けるように深々と獣に突き立って、その生命を止める。
仕留められた獲物は動かない。もはや、動きようもない。その有様を確かめてはふぅ、と息を吐いて。
■エルツ > 「猪はほんとにね。やり過ごすだけなら木に登ればいいんだけど」
(今回の場合、登った木を折りかねない勢いだったから使えなかったけど。かなりの衝撃を食ったけど自分の仕事は済ませた。あとは、信じるのみ)
「わっぷ?!」
(幸いにも猪が昇ってくる前にその魔法は放たれた。ぱっと見ても中級…いや、上級に類するそれは穴の中へ放たれたというのに爆風で視界が遮られるほどの威力。猪の断末魔がそれに混じって聞こえて)
「――――は…は、はは……終わった…つっかれたぁぁぁ」
(もはや動かない。それをしっかり確かめたら不意に足の力がぬけた。ガクガクと今更のように全身が震えだす。
考えてみれば…この猪、初心者向きというにはあまりにも強すぎる。特に、毒に犯され狂った獣とは、今日初めて対戦したわけで)
「おにーさん…ちょ、休憩ー」
(そんな情けない声を響かせることに)
■マティアス > 「……――お疲れ様。いや、まだ猪の類で済んで良かったよ」
これがサルの類だった場合、より対処は混迷を極めたことだろう。
奴らは木の上を自在に行き交う上に、数で攻めて来る。頭を狙うにしても面倒が過ぎる。
剣を一振りし、腰の鞘に納めて鼻先にずり落ちた眼鏡を押し上げる。
魔術で倒した猪は、解体すれば良い肉が採れるかもしれない。
だが、魔性に侵されているとなると、火を通すにしても危ない気がしてならない。
「そうだね。ここで一休みしよう。ちょっと血生臭いけど、こればっかりは仕方がないねぇ……」
丁度、先ほどの槍の一撃で転がってきた手ごろな大きさの岩がある。
それを椅子代わりにして腰掛け、先刻もらった行動食で小休止しよう。
後始末をして、探索を再開して薬草や私的に用のあったものを採取し、ちゃんと無事に街に戻る。
途中、何を好物として語ったかは別の話にて――。
ご案内:「霊樹の森」からエルツさんが去りました。
ご案内:「霊樹の森」からマティアスさんが去りました。