2017/06/03 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区 練武場」にフォークさんが現れました。
フォーク > フォーク・ルースは町の練武場に顔を出していた。
練武場とはその名の通り、武技を鍛錬する場所である。
道場主はかつて傭兵仲間で、現在は傭兵を引退して王都で練武場を開いたのだ。

練武場にいる者たちは、それぞれ自分に合った鍛錬を行っていた。
優雅な踊りを思わせる演武を行う者、禅を組み瞑想したまま三時間も動かぬ者、巨大な岩を延々と持ち続ける者。
皆、表向きは自分以外の者は気にせぬ様子で鍛錬をしている。

「さぁて、俺もやるか!」

上半身を露わにしたフォークの前にあるは、等身大の木人形である。
木人形には人間の急所にあたる部分に印がしてあり、印を的確に叩かなければ、木人形の反撃を受けることになる。
人形は木製だが、人形の拳と脚は鉄でできているので反撃をくらうとそれなりに痛い。
痛くなければ覚えないという、道場主のポリシーが伺えた。

「ちぇす!」

フォークの豪拳が印を突いた。

「まだまだっ!」

二撃目。印から少し外れた。
人形の目が光り、動きだす。

「なんとっ!」

フォークが人形の足払いを跳んで回避した……。
が、人形の腕が一回転してフォークを地面に叩き伏せるのであった。

「つ、強い!」

地べたに突っ伏したまま、フォークは呻いた。

フォーク > 木人形との組手で、七度殴られた。
次の組手では六度。次はやはり六度だった。
殴られることが少しずつ減っていった。

「お前、本当に強いな!」

木人形の文字通りの鉄拳をかいくぐりながら、男は敢えて急所を外して叩いた。
急所を突けば、木人形が止まるからだ。
このような強敵、そうそうお目にかかるものではない。

木人形の鉄拳を、額で受けた。
頭蓋骨は人体の骨でもっとも強固だ。だから額で受け止めたのだ。
一瞬の隙が欲しかった。
男の掌が、木人形の胴に触れた。

「つかまえた……」

練武場全体が震えた。

次の瞬間、木人形がゆっくりと後ろに倒れる。

(成れり!)

額から流れる血で視界は良くないが、気功が徹ったのを感じた。

フォーク・ルース、気功をさらに練り上げる。
さらに一段階、腕をあげた。

ご案内:「王都マグメール 平民地区 練武場」からフォークさんが去りました。
ご案内:「夢の海」にクロウさんが現れました。
クロウ > そこは誰かの夢の中。
夜の深い眠りの内に見たものか、夕暮れの微睡の中で迷い込んだか。
或いは、白昼の眩暈の最中に瞼の裏に浮かび上がったのかも知れない。
何にしたところで、そこは夢の中。
現とは異なる、幻の世界。
故に見上げれば、夜天に浮かび上がるのは狂ったように大きな月。
まあるいまあるい、おおきな満月。
まるで滴るように、淡い光を惜しげもなく天上から降り注がせる。
対して下を見れば、月光が滴り落ちるは只管に続く水平線。
くらあいくらあい、おおきな大洋。
まるで月の雫が落ちて溜まって、そのまま出来上がったかのように、海がある。
淡い月の光を受けた海面は、薄らぼんやりと、波一つ立てずに世界に浮かび上がっている。
そして、鏡のような海面に、天上の狂月の写し身がはっきりと浮かぶ。

幻の月を幻の海が写し、そして更なる幻の月が浮かぶ。
そんな幻の月の狭間、幻の水面の上に、帆船が浮かんでいた。
その船上に人影はなく、月影だけがある。

否、人影はある。
ここは夢である故に。
この夢を見る誰かが、そこにいるから。
幻の船の上に、ただ一人、夢見る誰かが立っている。