2017/04/18 のログ
ジア > 「いや、まぁ、そんな感じです…ミレー族ではないんですけど、ありがとうございます」

相手が考え付いたことは、的中というわけではないが、あまり知られたくないことという点は通じたようでほっとする。
そして曖昧な笑みを浮かべている相手に少年は笑顔で礼を言って。

「宿に泊まるお金とかも家に置いてきちゃったんですか?
でも野宿はちゃんと場所を選ばないと、おねーさんみたいな人は特に危ないと思いますっ。
ボクは平気ですよ、港で知り合いの船の荷運びをするときは早く寝ますけど」

宿に泊まる選択肢すら出ていないのは、のんびりしている割に結構追い詰められた状況なのではと少年は思う。
それに危機感を持っていないことに、野宿の多い生活が続いていた少年は危うげな印象を覚え、座っているベンチから相手側へと詰め寄って言い募った。
そして、ふと子どもは寝る時間、というように気づいて慌てる相手には、きっぱりと子どもじゃないと主張して胸を張ってみせる。

ノエル・ベネトー > 「当たりです。
 まああと数時間もすれば日が昇りますし、可能かなあと思ったのですが。
 場所…場所…ここより富裕地区のほうが安全そうではありますねえ。
 でもあそこって近衛兵さんに追い出されそうですけど…。
 貧民地区では何回か…道端でお休みになってる方見掛けましたっけ。
 ん――――…。」

悩ましい。
無難に自宅近辺で休んでみるか、高貴な方々に追い出されないようどこかに
忍び込んでみるか、いっそ野宿のプロフェッショナルに混ぜてもらうか。
本格的に悩みつつ、子供じゃないと主張する子供を見て数秒無言。
今同じベンチに座っているわけだが、当然その視線はこちらから交わすと見下ろすこととなる。
何も身長だけが全てではないものの、

――――やっぱり子供だ。と結論づけたらしい。

「遅くまで起きてると背が伸びないって、よく言われましたよ。」

心の声が漏れ出たようにぽつり、呟く。

ジア > 「おねーさんって、怖いもの知らずですね…。
富裕地区は野宿できる場所ってあまりないんですよね、貧民地区は入れる廃屋が空いてたらなんとか…って、やっぱり野宿する気なんですかっ!」
……ボクはこう見えて鍛冶もできるんです、ホントは親方にやるなって言われてるんですけど、依頼してもらったらカギを空けて付け直すこともできますっ」

真剣に悩んでいる相手に、うっかり少年も自分の経験則でアドバイスめいたことを言いそうになる。
それから、ハッとなってその相手の考えと言葉を打ち切ろうとして、相手に提案しようと。
少年は、自分のポーチを取り出して、そこに入っている色々な道具を見せながら、相手に説明する。
冶金技術の延長でカギ開け自体は、ある程度技術があればできる。
ただ、それは当然職人の技かつ摘発スレスレの技術で、職人ギルドはあまりやりたがらない。
しかし見習いが見習いたる所以として、少年にそういう職人の意識はあまりない。
そのプロ意識よりも、このまま野宿をし始めてしまいそうな相手のためにそれを試みようとしていた。

「うっ…そ、そうですけど…」

相手が呟く言葉に、少年はビクっと身体を跳ねさせる。
実際、身長は相手に負けていてこれから伸びる保証もなく、こちらを見下ろしている視点にある相手の呟きには、少年はグサリとダメージを受けて俯いた。

ノエル・ベネトー > 少年のノリツッコミに感服するが、どうやら野宿のプロフェッショナルは目の前にもいたらしい。

「ジアくん……そんなに野宿に詳しいならもっと先に教えてくれても…。
 ――――ええっ?ジアくんそんなすごいことできるんですか?
 泥棒し放題ですね!!…えーっと…家に入れればお金もあるし、
 それでお願いできます?」

一瞬、彼と一緒なら野宿も軽々なのでは?と思ったけれど、
少年の必死の優しさに、遂に野宿は諦めた。あと余計な一言あった。
今や鍵が開くかどうかより、そのすごい技術を身につけていること、
そしてそれを披露してもらえるかもしれないことにエルフの興味は移っている。
彼はきっと恩人になる。

―――というのに、落ち込ませてしまった。

「そんなに気にしてたんですか。
 大丈夫ですよ~世の中にはいろんな魔法があるみたいですし、
 いつかジアくんの身長を伸ばす魔法も見つかるかも!
 それにそのくらいの身長なら女の子の服も着れて、選択肢増えますし!」

これから大事な作業をしてもらうのだ。
テンションを上げてもらわねばなるまい。
項垂れた彼の両肩をぽむぽむと叩き、励まそうと試みる。

ジア > 「い、いや、野宿って家がないから仕方なくすることで、進んで教えることじゃ…。
ど、泥棒って…そんなことしたら、親方から工房を叩きだされちゃいますよ」

これまで話していて、相手はどこか普遍的な考えと差異を持っているようで、それはある意味少年が絵本などで見知って期待していたエルフらしさのようだった。
とにかく、野宿はさせられないと少年はなんとか食い下がろうとする。
そのために相手に諦めてもらおうと提案した鍵開けの道具を纏めていき、すぐにでも開けられる準備を整えようとする。
そしてその横から飛んでくる、恐らく悪意はないのだろう鋭い誤射に少年は苦笑しながらツッコミを入れることになって。

「う、うぅ…の、伸びないんです、身長…。
それに、できれば、元に戻る魔法の方が欲しいです。
お、女の子…そ、そんなに男らしくないですか…?」

落とした肩を優しく叩かれながら少年は眉をハの字にして切々とした呻きに似た声を漏らす。
元より、人間でなかったものが人間っぽい特徴を事故的な要因で獲得してしまった少年。
悲しかな、その身長は、人間の子どもがする成長という形では伸びることはない。
そして励まそうとする相手の再びの誤射の飛来。
少年はその矜恃にトドメが刺されかけて、潤んだ目で相手を見上げて問いかける。

ノエル・ベネトー > 「うふふ~。冗談ですよ~。
 ジアくんいい子ですもん。泥棒なんてしませんよね。
 でも…ってことは、以前お家がなかったのですか?」

現在は工房にお勤めで、先ほど荷運びもしてると言っていたし、
仕事があるのなら家は何とかなっているのではないかと。
何となしに尋ねてみるけれど素性が明かせない様子の彼のこと。
ごまかされればそれ以上探ることはしない、と決めてはいるのだが。

「元に戻るって、何に戻るんですか?」

そこはさすがに気になった。
まさか元は長身の男性なのだろうか。
今は瞳を潤ませた美少年の姿の彼を見てみるけれど――想像はできない。

「…こ、…これからですよ。男らしくなるのは。…たぶん。
 今だけと思えば、可愛いお洋服着るのもいいかもしれませんよ。
 わたしはあんまり持ってませんけど…お家開けてくださったら
 ジアくんが着れそうなお洋服見繕ってみますよぉ。」

そんなこと望まれていないが、彼に少しでも希望を持ってもらおうと妙な提案する。
たぶん少し大きいし、胸元がぱかぱかになってしまう服ばかりなのだが。
―――さらに傷つけてしまったことに居心地悪く、彼の銀髪を撫で撫でする。
やっぱり子供扱い。

ジア > 「せっかく教えてもらった技術は悪用したくないです…ので、親方にも黙っててもらえると…。
工房は開いている時に出入りしてるだけで、今も家はないんえす。色々あって、なんとかなってるんですけど」

冗談だったのか本気だったのかわからない相手に少年はキリッと立派な風に返す。
しかし、そうは言っても今からやろうとすることはその立派さとは対極にあって、相手の尖った耳に囁くように付け足した。
家がない、という相手には首から下げる指輪に無意識に手が伸びながら、今もない、と答えて。

「力を失ったというか、なんというか…それで身長が伸びるとも限らないんですけど、伸びたらいいなって…あはは…」

自分でも気づかないうちに口走っていたことに、少年は少しだけうかつだったと思いながら、しどろもどろに答える。
そして、仮に自分が元の姿に戻れたとして、それは成長や男らしさに繋がるのか、自分でも疑問が生まれてしまって自嘲気味に笑う。

「…も、もういいです、もっと男を磨きます…お洋服も、たぶんサイズ合わなそうですし…。
カギは言い出した以上ちゃんと開けますから、宿なしのボクを泊めてくださいっ」

相手のフォローのような提案に、一瞬そういった服を身に纏う自分を想像しかけて、自己嫌悪に陥った少年はふるふると首を横に振って決意を新たにする。
ついでに、その着せ替え計画も丁重に断ろうとした。
頭を撫でられる子ども扱いには、それならそれで子どもとして振る舞うことに決めた少年は、ベンチをすすっと移動して相手へとじゃれつくようにもたれかかっていこうと。
そうやって、相手の服を押し上げる豊かな胸に顔を埋めようと画策していて。

ノエル・ベネトー > 家がなく、力を失ったという少年にエルフは目をぱちくりさせる。
幼いながらも仕事をこなし、それなりに立派にやっている子なのだと思っただけに。

「ええっ?ジアくぅん…あんまり聞けない感じしますけど、わけありなのですね。
 うーん…とりあえず、今日鍵を開けてもらうのもお仕事ということで、お金ちゃんと渡しますから。」

今後の宿代になるかはわからないのだが、やや混乱しながらもお願いしておく。
こっちが寝る場所がないと話し始めた気がするのに、いつの間にか泊める側になっていた。
彼が胸元に埋まるなら、枕より張った感触の乳房がぽふんとその顔を受け止める。
たびたびこうする異性はいるもので、相手が子供なら尚更忌避感はないのだが、ちょっと困った。
こういうお願いは初体験である。

「ん~~~~~~…わかりました。
 ジアくん子供ですもんね。このまま帰すわけにはいきません。
 …けど、ちゃんとお風呂入ること!
 お布団はわたしと半分こ!ちゃーんと早く寝ること!ですよ。」

のんびり屋に見えて、意外と子供には厳しく躾けるタイプ…かもしれない。
胸元に埋まる銀髪を軽くぽんぽんして、ひとつひとつ注意事項。

こうして無事、野宿を免れた2人は今夜同じ布団で眠ることになったわけだが――
この家、実はエルフも居候している身であり、本来彼を
泊める許可を出せる立場になかったのだが、まあ弟のように彼と
添い寝するエルフは深いことを考えず、ただお布団の温かさと
相手の暖かさに包まれて暢気に一夜を過ごすこととなる――――。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からノエル・ベネトーさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からジアさんが去りました。