2017/03/28 のログ
ご案内:「王城 小さな宴会場」にアーヴァインさんが現れました。
アーヴァイン > 王城に幾つもある部屋の一つ。
静かな宴会場の中には、二人の男と給仕の女たちのみがいる。
片方は傷だらけの体をした王族、祟り神と恐れられるルーアッハ。
もう一人は、その養子となった彼である。
西洋のテーブルと椅子の調度品ではなく、東洋のような敷物に豪華な座布団と背の低いテーブルといった調度品で整えられたここは、義父の趣味で溢れていた。
度の強い酒を、ぐいっと水のように飲み干す義父の様子に、相変わらずだと思いながら苦笑いを浮かべ、上質のワインを楽しむ。
彼ほど強くはないのでゆっくりと、味わいながらアルコールの酔いを染み渡らせていた。
不意に義父がこんなことを呟く、あの女はどうするんだ? と。

「……フェルザの令嬢についてか?」

普段と変わらぬ口調、義父も彼の気取る気のない言葉を気にする様子もない。
親子というのもあるが、何より、力を認めているから勝手を許すのだろう。
そうだと呟きながら、グラスを給仕へと突き出し、酒をつがせる間、苦笑いで問いに答える。

「別に…彼女が何かするつもりがなければもう良いだろう? わざわざ 事を構える必要は…」

と言いかけたところで、阿呆がと無遠慮なケリが脇腹に叩き込まれた。
戦場と殺しを退いたとは言え、鍛えられた男のケリは痛い。
痛みに顔を顰めながら脇腹を抑えると、何故だと言いたげに義父を見上げると、ため息を零しながら酒を一気に飲み干す。
見せしめは必要だ、殺すなり、罰を与えるなりだと言われれば、成る程と痛みに耐えながら頷く。

「なら…私財の一部を没収するというのは?」

真面目な返答に、深いため息を吐く義父。
何故だと困惑した表情を浮かべるも、義父の考えが読めずに居た。
仕事についてはある程度、言葉無くして疎通できる間ではあるが、こと欲についての考えはまるで繋がらない。
義父はそれが良いと思うらしいが、それなのに何故ため息なのかと、少々不機嫌そうに眉をひそめつつ、ワインを流し込む。

アーヴァイン > お前は真面目過ぎる、どうせ殺す時もまだ吹っ切れずに殺しただろう。
別に構わないが、演じ方ぐらいは覚えろと耳に痛い言葉を重ねる義父に、精進するとしか応えよう無く、申し訳なさそうに頭を垂れる他無い。
そういうところだと思う義父は、再びワインを煽り始めた彼に、珍しく企み笑みで呟いた。
見せしめ兼ねて、馬鹿共の前で犯して躾けてこいと。

「っ……!? がはっ、ごほっ!? っは……何を言い出すんだ、唐突に」

不意打ちの命令にワインを吹き出し、咳き込み、目を白黒させながら問い返す。
給仕達は我関せずと汚れた床を掃除していくのだが、義父も構わずに言葉を続け、グラスを指し示すように彼へ傾ける。
金巻き上げた程度で折れる鼻っぱしじゃない、徹底的に上下関係分からせてこいと理由を添えられるも、納得行かぬと言った様子で、眉間にシワを寄せた。

「それなら何かある度、金をせしめればやめるだろう?」

彼女とて愚かではないだろうと答えるものの、いいやと義父は頭を振る。
ああいう手合はプライドをへし折らないと理解しないと。
それこそ、金さえ払えば自由にしていいと舐められる方が面倒だと言われれば、乱暴だと反論したい気持ちを押さえ込みつつ、徐々に視線を落としていく。
結局、分かったと答えるのが限界だが、そんな彼の方を義父が乱暴に掴み、引き寄せる。
お前が演じ切らないと、夢が潰れると。

「……そういう事をしたことがないわけじゃない、必要とあらばする。貴方のようにだ」

祟り神として、狂気を振りまくこともいとわない。
利害関係を一致させる時に必要だった暴力的な支配も、やりきると改めて宣言し、酔いのない真っ直ぐな視線が義父を納得させる。
そうかと肩を突き放すように離せば、給仕に酒をつがせるのを見やりつつ、グラスに残ったワインを飲み干した。