2016/11/03 のログ
ノア > 山小屋が近付くにつれ上がる生存確率、と.. 死亡確率。灯りが漏れているという事は、誰かが居るという事。寒さで感覚が無くなってきた脚は小屋を目指すしかないのだけど、今の自分を生かすも殺すも中に居る相手次第で... そんな事を考え始めると、ついさっきまでの希望に満ちた瞳が不安に揺れ。どんな言葉と共にあのドアを叩いたらいいのか、難しい顔して悩んでいると ──

「 .....っ !! あのっ.. あた、し... え.. ぁ、 」

突然の登場に、ビクン !! と肩を竦めフリーズ。更には易々と招き入れられ、予想外の待遇に言葉も途切れ途切れ、ろくに名乗る事も出来ないまま.. ただ今は、少しでもこの寒さをしのぎたい一心で小屋の中へ。

「 .........っ、ん.. 」

先に小屋へと戻る男に続いて入り、何より先にまずはドアを閉め。目深に被っていたフードを取って、芯まで冷えた薄紫色の髪を解放すると.. 其の暖かさに、ぐっと口をへの字に下唇を噛み。

「 ぅ"........... あった、 か い.. 」

未だ名乗る事も礼も言わないうちに、初めて漏れた言葉は泣きそうな震え声。安堵から、歩き疲れた脚は膝から崩れ落ち へなりと床へ。

オーベ > 暖炉の火が先程よりも大きくなり次第に部屋の中へも熱が広がり始めている。フード姿の人影が小屋へと向かってくる気配を察しながら、小屋に入れば暖炉の側で寝ていた老犬が何事か、と此方を見上げている。なんだろうね?とでも言いたげな様子で老犬に肩を竦めて見せれば、一旦寝室へ戻り、治療に使う道具や何かを準備し、暖炉のある部屋へと戻った。へたり込んだ女性の様子を立ったまま眺めながら、食事の時に使う椅子をテーブルの前から暖炉の前へ引っ張り

「冷えたろう?まだ立ち上がる力があるのならへたり込んでないで火の側へ。
これだけは安心してくれていいが、怪我人をほっぽりだしたりはしないよ。
小屋のそばで死なれると、この辺の樵や狩人たちにも面倒を掛けるからね」

そうしてまた外へ。井戸から水を汲み、戻れば鍋で火を沸かす。テキパキと手当ての支度を整えながら、時折彼女に視線を送っては、頭の中で考える。王国正規兵や傭兵の類にしては軽装すぎる…斥候や伝令の線は捨てきれないが追われてきたにしては王都まで迫りすぎている…となれば、冒険者か野盗、盗賊の類ではなかろうか、と。

「それじゃ、傷…見せてもらっても?」

色々と支度を終えれば彼女に問いかけ首を傾げた

ノア > 「 あ.. うん、大丈 夫。自分で行ける... 」

生きてるって素晴らしい。暖炉があったかい。人の優しさがあったかい。全部あったかい。それから.. 暖炉の前のもふもふも、あったかそう.....

と、涙ぐんで感動しつつ.. 歩くというよりは這うように暖炉へと移動、用意してくれた椅子に座り。フードは取っても未だマントは脱げず、全身をすっぽり包んだまま。殆ど感覚が無くなってきた脚を温めたくて、ブーツの革紐をかじかむ指先でほどいていると.. ここでようやく、己の無礼っぷりに気付き

「 !! あ.. あたし、ノアっていいます..... その、本当に... 本当にありがとうっ.. !! 」

テキパキと動く貴方へ身体ごと向けば、少し姿勢を正して名乗り、続けて礼を述べ。此方の素性が殆ど見破られているとも知らず こくんと小さく頷いて、ブーツを脱いだ白い右足をマントから するりと出して見せる。其の足首は挫いて僅かに腫れ、所々に擦れた傷があり。

オーベ > 伏せたまま暖炉の前の老犬はジ、と彼女の様子を眺める。這うようにして動く姿からも視線は逸らすことなく、身じろぎ一つせず、その姿を視線が追う。狼の血の交じる老犬は喋ることはないが、彼なりに彼女がどのような人間なのか判断し、考えているようにも見える

「さっきも言ったけれど、礼を言われる事じゃあない。この辺で野垂れ死にされると迷惑、と言うだけの話だよ。静かに暮らしていきたい連中が多いから…」

彼女の側にまで寄っていき、彼女の座る椅子の前にしゃがみ込む。出血している様子はなく、擦り傷ばかりであったから血を見ることはなさそうである、とホッと安堵の息を着く。一番、手当てが必要そうに見える足首に視線を向ければ、ちら、と彼女を見上げ

「少し触る…痛くても我慢してくれ。自信がないなら、そら…これでも飲むと良い」

琥珀色の液体に満たされた小さな酒瓶を彼女に差し出し、受け取ってもらえば返事を待たずに足首の患部へと触れた。どうやら折れている様子はない…、彼女の反応に関わらず、すく、と立ち上がればまた外へ出て軒先に吊るし乾燥させた薬草の束を手にとって戻り、すり鉢の中へ手にした薬草と香油、獣脂などを入れ、擂粉木で潰し始めれば、伏せていた老犬が何かを察し別の部屋へと出て行く…しばらくすれば、独特な匂いが立ち込め始め

「…ノア、と言ったか、普段は何をしている?冒険者か、傭兵か…?遺跡荒らしって所かな?…俺はオーベ、しがない世捨て人だ」

すり鉢の中で作られる膏薬に視線を向けながらそんな質問をして

ノア > 名乗って礼を言い終えた辺りから、少しずつ唇にも赤みが戻り始めて。涙で滲んでいた視界もクリアになれば、もふもふが大きな犬だったってことや、貴方の顔立ちや、頬から覗く刺青に.. ちらりちらりと、興味深げに視線は移り。

「 貴方の理由がどうあれ、あたしは貴方のお陰でのたれ死なずに済んでる訳だし.. やっばり、ありがと。」

自分より随分貫禄のある賢そうな "もふもふ" には相変わらず、あったかそう.. と熱い視線を送ってみて。治療に伴う痛みくらいは耐えられる癖に、酒瓶はちゃっかり受け取る。有り難く頂戴した酒瓶の栓を抜き一気に飲み干す.. これで少しでも早く、身体が温まればとの狙い。

立ち込める不思議な匂いに すんと鼻を鳴らし、貴方の作業を眺めていると.. ほぼほぼ言い当てられた素性。危うく酒瓶落としそうになってみたりと、犬より落ち着きのない遭難者。

「 .....っ、と.. まぁ、色々と... 」

「 恩人の名前はオーベ、ね。世捨て人、って.. こんな山小屋で寂しくないの ? 王都みたいにお店もないし、大変そう... 」

あからさまに話を変え恩人の名を復唱し、室内をゆるりと見渡せば純粋な疑問が漏れ。共存しているらしい もふもふに、再び視線を落として「 ね、 」と首傾げ。

オーベ > 重ねて礼を告げられれば、そう、とだけ短く返事を返す。彼女が納得するのであれば、それで良いと言わんばかり。向けられる視線が少々擽ったいのだが、異国を渡り歩いてきた身としてはこの手の視線にはそこそこ慣れている。酒瓶もちゃっかり受取、一気に飲み干す様には自分があまり飲めないこともあって少々驚き、笑ってしまったけれど、此方の質問に微かに動揺する様子を見落としはしなかった

「…あまり、深くは聞かないけれど、程々にしておくんだね…。
こんなご時世だ、人に誇れる事を成せ、とは言えないが、命あってこそだから」

練り上がった軟膏を清潔な布に塗り、少し冷たいぞ?と彼女に伝えてから、傷の患部に当てる。それを固定するように包帯を彼女の足首に巻いていく

「寂しくはないさ、望んでしていることだ…なんて言うと、「嘘をおっしゃい」なんて言われてしまいそうだが…
…ま、不便は不便だけれど、それを含めて愉しんでいるかな?住めば都、という言葉が俺の産まれた国にはあったしね」

捻挫の手当てを終えれば、ぺち、と包帯と軟膏を塗った患部を緩く叩き、おしまい、と告げる。その他の傷は薬を使わずとも大丈夫そう、という見立てであった。立ち上がり、治療に使った道具を片付ければ、彼女に視線を向け

「腹は減っている?減っているなら大したものはないが、俺の朝食と一緒に適当に作るが?」

一人分作るも、二人分作るも一緒、というわけである。返事をまたず、卵やら燻製肉やらを取り出せば、朝食の支度に取り掛かる

ノア > 小さめの、とはいえ度数の高いアルコールを一気に飲み干すと、暖炉にあたっていたのもあって身体がじわりと温まり.. 固まった指先や脚の爪先もだいぶ解れ。素性についての詮索もされないとわかれば、緊張も解れ表情が弛むわかりやすさで。

「 ん... 遭難しない程度にします、はい.. 」

更正する気はなくても、流石に今回は相当効いたようで、唇尖らせ応え。手際よく施される処置を終わるまで眺め、おしまい、との声に「 ありがと。」と小さく返し。立ち上がる貴方を目で追うと、血色取り戻した顔は調子の良い笑みを浮かべ。

「 そんな.. 助けて貰って、手当してもらって、その上食べるものまでなんて..... 」

「 あったかい食べ物、出来ればスープがいいなんて、図々しくて言えない。そこに居るワンちゃんにくっ付いてみたいとか、毛布を1枚、それから暖かい服も貸してほしいなんて、 図々しくてとても.. 」

慎ましく生きている貴方に、出るわ出るわ願望の数々。全てを言い終えると ちらり、貴方の顔色伺って。

オーベ > 彼女には彼女の境遇と言うものがあるのだろうから、それがいい、とそれ以上追求はしない。手当てに対するお礼にも、どういたしまして、とそっけなく返事を返した。そうして、朝食をどうしようか、と野菜やら何やらを保管した床下の収納を開き、首を傾げていれば聞こえてくる願いに視線をそちらへ向けて、じ、と彼女の顔を見やる

「…それだけ、あれもこれも、と言えるなら平気そうだな。相棒は薬の匂い、嫌がるから許してやってくれ
毛布はそっちの寝室…服も俺のものがあるから、それを好きにしていい。料理の腕はあまり期待するな」

呆れたように笑いながら逞しい娘、と内心思いつつ。卵と燻製肉、焼き締めた保存用のパンで済ませようと思っていた朝食の予定を変更してキャベツやら、芋、燻製肉といった物を適当に切ったものを湯の張られた鍋に放り込んでいく。味を見ながら塩や香草類を足し、最後に卵を溶き入れる

彼女が着替えたり毛布にくるまったり、愛犬を眺めたりしている間に手早く料理を済ませれば、出来た、とスープを皿へよそって、パンを添えてテーブルに出す。自分は温かい薬草茶を彼女の分も入れれば、食事を始める

ノア > 「 そっ、か..... 人間よりうんと鼻が効くんだもんね、我慢するー 」

相棒へのスキンシップだけは禁止されたものの.. 意外にも其の他の願望が通り、満足げに唇は弧を描いて。貴方が朝食を作っている間、遠慮なく服を拝借。暖炉の前でドレスを脱ぎ捨てると、素早く暖かそうな服に着替え、少し長い袖や裾をくるくると数回捲り。

いいにおいが立ち込める頃には借りた毛布にすっぽりくるまって、もふもふへ遠巻きながら熱い視線を送ってみたり.. もっと近くで見たくて其の距離を、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ詰めてみたり。そんな緩やかで穏やかな待ち時間を過ごし...

「 わ.. 美味しそ..... っ、 いただきます♡ 」

すっかり生気を取り戻した遭難者は、家主の服に身を包み温かな料理に子供みたいな笑みを浮かべる。其の料理は決して豪勢ではないけれど、盗品を捌いたお金で食べるどんな高級料理より美味しくて、品のある優雅な食べ方は出来なかった。

綺麗に完食し唇の端に付いたスープをぺろ、と舌先で舐め取る頃には.. 部屋と料理の温かさにとろんと猫目を細め、案の定小さな欠伸をひとつ.........

少しだけ、もう少しだけ居させてと申し出る図々しさ。貴方に放り出されない限り、床でも何処でも寝てしまいたく ── 山小屋で身体を休める事が叶えば、帰り道を教えて貰ってから名残惜しさMAXで小屋を去るのだろう..

もしも女が此処への道を覚えて居られたなら、今度は遭難者としてでなく.. 客として来られたらなんて、企みながら。

オーベ > そういうこと、と彼女が納得すればこっくりと頷く。自分は食事作りに専心していたがごそごそ、と暖炉側で衣服を脱ぎ始めれば、奥の自分の寝室を指してそっちで着替えるように、と文句の1つも伝えたかもしれない

彼女が己の服に身を包み、大人しく老犬を眺めている様を横目に食事の支度をすすめる。老犬も初めの方は彼女の視線を気にする風であったがすん、と鼻を鳴らすと顔を背けて再びうとうととし始めた…その頃には、丁度、食事の支度もおわり、先立って彼女の分がテーブルに配膳される

「味の保証はしないけれど…おかわりもあるから、良ければ」

そう言い残してお茶を入れようとテーブルを離れるも、流石に自分の作ったもの、味の善し悪しは気になる所で何となく彼女へ意識を向けつづける。彼女の食べっぷりの良さに、驚き彼女に悟られぬよう、鍋から直接、スープの味見をしてみるが、普段通りで特別、という気もしなかったから、余程、腹が減っていたのだろうな、と思いつつ彼女の対面に自分も腰を下ろした

「…どれだけ食べてなかったんだ…って、食うだけ食ったらもう、寝るのか…子供じゃあるまいし…」

眠たげな様子に呆れ果てて笑ってしまった。そこで眠っても休まらないだろう、と眠たげな彼女を自分が先程まで使っていた寝室へと促せば、ベッドを使わせる。

「好きなだけ休んでくれ。出ていく時も黙って行ってくれて構わない…一応、街道まで出られるように地図をテーブルに残しておくから…それじゃ、おやすみ」

寝室の扉を閉じ、自分も手早く食事を済ませれば普段着に着替え、老犬を連れ立って外へ出る。その姿を見つけたように鷹が男の肩へと止まれば、二言、三言と何やら語りかけて再び大空へ放つ

「それじゃあ、畑の様子でも見に行くか…」

年老いた愛犬を促せば小屋のそばにある小さな菜園へと向かう。朝から妙な客があったものだな、と息を吐けば冷たさを孕む九頭龍山脈からの山風に身を震わせるのだった―――。

ご案内:「山小屋」からオーベさんが去りました。
ご案内:「山小屋」からノアさんが去りました。