2016/10/12 のログ
ご案内:「王都マグメール 入り組んだ路地裏」にフォルテさんが現れました。
■フォルテ > 夜遅くの路地裏、一人の青年が挙動不審に路地裏を小走りで何度も移動し続ける。
(やってしまった、やってしまった、やってしまった)
とうとう彼はしてはいけない事を犯してしまう。どうしても金が必要だったあの日、良心の呵責に苛まれた末、持ち逃げした店の金。今頃レジスター内の札や銭の数が合わなくて大騒動になっているに違いないなじみ深い酒場。
今さら自首なんて、出来る訳がない。
今日は幸いにして出勤日ではなかったが、必ずいずれ聞かれるのは自明だ。
「仕方がなかったんだ…。…こうしなきゃ、こうしなきゃ
…。…僕のお金を盗った人が悪いんだ…!」
必死にそう言い聞かせて、何から逃げるのか、どこへ逃げるのか、路地裏の中を忙しなく移動し続けてあてもなく安堵を求めてうろうろと繰り返す青年。立派な不審者として悪目立ちすることこの上ない。
■フォルテ > 犯行に手を染めた人間ならではの心理状態。いつ、どこに誰の視線があるか分からない。ありもしない何かに、聞こえもしない声に、いちいち過剰に恐れながら身を潜めなければならない。
「何とかしなきゃ…。…何とかしなきゃ…」
彼は追いつめられる一心だった。誰にも見られてはならない。広大な王都の外に衛兵や夜間に徘徊する者の目を搔い潜りながら逃げ出すなんて一般人の彼にとっては試したこともないような大それた行為。
衛兵、用心棒などに出会えば速攻でお縄にかかる事は必至だろう。
「……こんな入り組んだところまでなら、巡回には来ないハズ…。…ええと、次は此処からどこへ向かえば町の外側に出られるかな…」
今の彼は、街から脱走する事しか頭にない。彼の頭の中では、王都から離れた街でまた新しく仕事を見つけてやり過ごそうという算段だったのだろうか。
闇が広がる路地裏の中で、恐怖すら薄らぎ、焦燥に駆られたまま次の道を探る。
「どうして…。僕は何にも今まで悪い事してこなかったじゃないか…!!僕がこんな事をするのも、全て…!!!」
理不尽にぎゅっと目を瞑らせながら、壁づたいに歩き、何かをうっかり蹴ったりしないよう極力気を付ける。
■フォルテ > そーっと、壁に張り付くようにしてそっと左右の手足を交互にスライド、物音を立てたり勢いよくぶつけないよう用心して暗がりの中をしばらく進み続ける。
あんまり暗闇に慣れていないから依然として自分が目当ての方向へ進んでいる自信が全く持てない。
「どうしよう…。…どうしよう…」
弱気な声をあげながら、少しして角までたどり着いた事に気づき、そのまま垂直方向へと向きを変えて進むが、少ししてまた壁へと手足が触れる。
「……!…ここ…行き止まり……!!!」
配管やゴミの残骸などが足に触れたが、そんなものは意に介さず、やや勘頼みで来た道を少しずつ戻っていく。
「うう……。…朝が怖い……。明るくなるまでに何としても逃げ出さなきゃ…だ、誰か…」
そんな縋りたい思いすら隠せず、青年は弱音を口にしたまま暗闇の中を手探りで進んでいく。何か潜んでいるのではないか と不安になる一方で、きっと目の前に現れたのが衛兵などでなければ誰であっても思わず縋り付きそうな心細さである。
■フォルテ > 街の外にさえ出られれば、ひとまずは可能性が広がる。その先で、今度は野盗や魔物などの心配が新たに浮上するが、彼にとっては逃げ出した後の事を憂う程の冷静さと余裕はなく、このままではきっと逃げ出した先でトラブルが起きた際に「やっぱりやめておけばよかった」と現在の自分を否定するのかもしれない。
それでも今更、戻れはしないのだから当初の目論見の通り街の外を目指すべく、青年は冷や汗を浮かべながら過剰な警戒心を保ったまま先ほどとは異なる方向へ続く、やや開けた暗い道を早足で進んでいく。
途中、路上へ落っこちたゴミを踏んだのか蹴ったのか、決して小さくはない音を立てたので心臓が爆発しそうな勢いで驚いたが、意地でも聞こえなかったことにして先を進む。
「…こっちで、合ってますように…!!」
……しばらく続く広い道を進んだ先は、結局似たような入り組んだ暗い道がまたどことも分からぬ方角へ伸び続けているだけだったが。
ご案内:「王都マグメール 入り組んだ路地裏」からフォルテさんが去りました。