2016/06/12 のログ
ご案内:「設定自由部屋3」にテイアさんが現れました。
ご案内:「設定自由部屋3」からテイアさんが去りました。
ご案内:「ルミナスの森 城」にテイアさんが現れました。
テイア > ルミナスの森、女神の加護を受けた刻から切り離された箱庭。
大きなルナ河とルーアの湖が、豊かな恵みを森に齎している。
九頭龍山脈から延びる霊脈は、精霊の力を強め年間を通して自然災害は殆どないといえる。
そんな森に建つ、まるでガラス細工か氷細工のような城があった。
普段から領民に解放されているその城は、主に子供たちの絶好の遊び場でもあった。
そんな和やかな子供の遊び声とは程遠い、野太い声と甲高い声の板挟みになり、その不協和音に耳を押さえる女が一人。
執務室で、対峙するのはずんぐりむっくりで、顔の半分以上を髭に覆われたドワーフと、対照的に小柄で毛というものが殆ど生えていないゴブリン。
彼らといえば、鉱脈を見つけるのが得意なゴブリンと、それを掘り出し加工するのが得意なドワーフという所謂共存関係にあった。
その二つの種族の間にどうやら今回問題が出てしまったようで…。

「――だから、両者まず冷静になって話をしなければ、進まないだろう。」

騎士としては現在産休真っ只中の女ではあるが、領主という役側は休んではいられない。
――というよりも、寧ろ普段不在にしていることが多い分問題が持ち込まれる量が増えている状態だったか。
まだ産後の疲れも残っている状態ではあるが、現在それらの問題に対応中というわけだった。

テイア > 「…言って分からないのであれば………。いや、なんでもない。分かっている、だからそんな睨まないでくれシルキー…。」

お互い冷静に、と言っても両者白熱しており今にも手が出る寸前といったところか。
暴力で争う気ならばまず私が相手になろう、とガタリと椅子を動かして立ち上がりかけたところでその動きが止まる。
じっと見つめる妖精の視線があった。
――うん、言いたいことはよく分かった。
産後間もない体で荒事はダメだと。
ただでさえ、妖精が止めるのを制して領民の相談に乗っているのだから、荒事をしようものならベッドにでも括りつけられるだろう。
すとんと、上げかけた腰を下ろす。
この妖精がここまで過保護なことが今までにあっただろうか?
いや、ない。
自分としても、彼女の監視がなければ無理をしてしまう性分な自覚があるからありがたいといえば有難いのだが…。

『約束を守らなかったのはそっちだゴブー!』
『カスみたいな鉱脈を掴ませたのはそっちだろが!てめぇらが良質の鉱脈を隠してんのは知ってんだぜ!』

やんのか?ゴルァ?
とその少しの間にも一触即発の空気は更に膨れ上がっていた。

はぁ、とため息が出る。
そもそも彼らの言い分を証明するようなものが一切ない。
約定自体は、きちんとした文書で残されているものの活動記録がなければ審議もなにもない。

「とりあえず、揉め事を起こしたことに対して両種族の活動の謹慎一ヶ月。その後一ヶ月間、お互いの仕事を代わりにやってみること。あと、次からは鉱脈発見の記録と、鉱物産出の記録をまともに記録しておくこと。」

お互いの仕事がどんなものなのか、お互いに再度、確認理解しあってくれ、と伝える。
納得のいかなさそうな両者には、今度こそこれ以上揉めるなら今度こそ実力で黙らせると鋭い視線をむけて。

テイア > 渋々ながら両者が部屋から退室していく。

はー…と疲れた吐息が零れる。
あれが最善な判断でないことはわかっているが、証拠がなければこちらも判断のしようがない。
人間的な思考であることは重々承知ではあるが、公正に判断を下すにはやはりそういったものは必要だ。

「…とはいえ、三日経てば元の通りになっているんだろうな…。」

どうせ、城の外に出てから殴り合いでもするんだろう。
そして、拳で分かり合い酒を酌み交わし元の関係へと戻っていく。
彼らはいつもそうだ。
長年の付き合いすぎて、お互いのことがわからなくなった頃に似たような問題を持ち込んでくれる。
そしてまたお互いを理解しあって、親密な関係となっていく。…のは大いに結構なのだが、巻き込まれるこっちの身にもなって欲しいと思わなくもない。

「やはり、領主なんて柄ではないな…。」

思わず漏れる愚痴は、彼女には聴き慣れているものだった。
労うように出されたハーブティーに礼を言って香りを楽しみながら口をつける。

「そういえば、先日人間が訪ねてきたって?」

ふと、そういえばそんな報告を受けていたと思い出してシルキーに尋ねると、彼女がひとつ頷いた。
ミレー族や人間など複数人がこの城を訪れ子供たちと遊んでくれた。らしい。
他所から来た人間たちに子供たちはさぞ興味津々だったのだろう。
たくさん遊んでもらったー!と城を遊び場にしている子供たちが言っていた。

ご案内:「ルミナスの森 城」にアーヴァインさんが現れました。
アーヴァイン > 改めての訪問は、少ない時間の合間を縫っての事だった。
護衛を二人だけ連れて城にほど近い広場へとやってきたのだが、前回と違い、馬でやってきたわけではない。
人を乗せられる程に大きな隼が三羽、空から翼をはためかせながら降り立つと、風除けのゴーグルを外しつつ、一際大きい隼から男が飛び降りた。

「時間を取らせて済まない、暫くここで待っていてくれ」

残りの二羽の背から降りたのは、確りとした戦装束に身を包んだミレー族の少女二人だ。
背中には組合の最新式小銃を背負い、顔には自信が満ち足りている。
また子供達に囲まれるかなと思いながらも、再度ホールへと向かい…妖精達に案内されるがまま、執務室へと向かった。

「失礼、領主殿はいるか?」

コツコツとドアをノックして呼びかける声、その低く落ち着いた声をシルキー達が覚えていてくれれば気付くかもしれない。

テイア > 「まだ公にしていないが、双子も大きくなったらあの子達に混じって元気に遊んでくれるといい…。」

お腹に子がいたときに癖で、無意識に腹部を撫でようとして既にそこに子はいないのだと思えば苦笑を零して。
もう少ししたら、赤子が生まれたことを正式に伝えよう。
様々な種族、妖精達がきっと双子に祝福を送ってくれるだろうと思う。
今は私室、寝室の方で穏やかな眠りの中にあるだろう赤子たちを思い浮かべて目を閉じる。
もう少ししたら、授乳にいかなければと思えば、残っていた書簡に目を通し始めるか。

「書類作成関連は苦手なんだがな…。」

剣の鍛錬をしていたほうが、気が楽だとまたため息がこぼれる。
領主の仕事など、その殆どがデスクワークが中心になってくるからついつい後回しにしていたツケともいえるか。
執務机の上に大量に重なった紙等をみると頭痛にこめかみを押さえた。

テイア > バサリ、と一瞬羽音が聞こえた。
何かきたな、と書類に走らせていたペンを止めて、窓際へと歩み寄り。
見れば、人を乗せられるほどの大きな隼が三羽降り立つのが遠目に確認できた。
女神の結界を超えて、森に入ってこれたということは森に対して悪意のない者達である事は確かだったか。
男が城へと入れば、シルキーより先日この城を訪れた人間である、と知らせられ納得する。

「ああ、どうぞ。」

ドア越しに声をかけられるのに、返事をすればシルキーが丁寧に扉を開けてくれる。
人間の彼に、妖精の彼女の姿が見えるかどうかは彼の素養次第といった所か。
もし見えなければ、シルクの衣擦れの音とともに自動的に扉が開いたように感じるかも知れない。

「先日訪ねてくれたそうだな。対応できなくて申し訳ない。私が、この森の領主、テイアだ。」

扉の向こうには、銀髪のエルフの女が男から確認できるだろう。
女からも、男の姿を認めて先日の事について詫びと共に自己紹介を行っていく。

アーヴァイン > 許可の声と共に開かれる扉。
妖精の彼女の姿は確りと見えており、妖精というものかなと思いつつ、執務室へと入っていく。

「いや、こちらこそ唐突の来訪で申し訳ない。俺はアーヴァインだ、九頭竜山脈の麓にあるドラゴンフィートという集落の運営をしている」

短い黒髪をしたありふれた人間の姿だが、物静かな表情と薄っすらとした微笑みは王都の男にしては少ない部類だろう。
丁寧な出迎えの挨拶に、薄っすらと微笑みながら頭を振れば、机の上にある書類を軽く一瞥してから苦笑いを浮かべた。

「忙しい中時間を取ってもらってありがとう。近くに集落を構えた挨拶と…相談したいことがあって伺ったんだが…いいかな?」

あまり忙しいなら日を改めたほうが良いかとも思いつつ、進めるか否かは彼女に委ねた。

テイア > 「この間は、森の子供たちと遊んでくれたようで礼を言う。ああ、確か、第9師団副将の私有地だったか。かなり賑わっているようだな。商業地区と観光地区には行った事がある。」

男と入れ替わりにシルキーは扉の外へと出て行く。恐らくはもてなす為に茶でも用意しにいったのだろう。
ドラゴンフィートという集落の名を出されて、ああ、といった様子で。
行ったことがあるといっても、そうのんびりと滞在できたわけでもなかったが。

「いや、気にしなくていい。わざわざご丁寧にどうも。…相談、というのは?」

物静かな表情、うっすらとたたえられた微笑み。けれどどこか、自信を感じる表情。少しだけ観察するような目を男へとむけて。
けれど、苦笑いには苦笑で肩を竦めて返す。その様子からデスクワークがあまり好きではないのだと感じ取れるだろうか。
どうぞ、と応接セットの方へと彼を促して。対面になるようにソファへと腰掛けていくか。
しばらくすると、暖かな紅茶をシルキーが淹れてくれる。

アーヴァイン > 「どういたしまして。こちらも、ここが話に聞いた通りの平和な場所と確かめられて良かった」

自然豊かな自然に囲まれ、多種族が住まう平和の世界。
自然と作られたと聞いていたが、ここまでとは思いもせず、ただ感心するばかりだ。
続く言葉には、嬉しそうに微笑みを浮かべる。

「あぁ……おかげで良い交流の場を作れた。そうだったかのか、それは歓迎が出来ず申し訳なかった」

まさか既に彼女が訪問してくれていたとは想像もせず、少しばかり目を見開いて驚いていた。
促されるがままソファーへと腰を下ろすと、紅茶のいい香りに目を細めつつ、ここへ来た本題へと入ることにした。
テーブルの上へ広げたのは、見慣れているだろう王都周辺の地図。
特に九頭竜山脈の周辺を大きく描いたもの。

「最近山賊街道のところでの略奪行為が激しくなっている。金目の物を奪って逃げるぐらいなら可愛いが、馬車の一団を皆殺し、或いは女だけを拉致したりと凶悪化している。こちらも治安維持に務めているのだが…あまり荒れると、ダイラスからの流通がストップしかねない」

港湾都市から王都やその周辺へと繋がる街道は、山賊蔓延るという場所だ。
日銭を稼ぐ程度なら多少目を瞑れるが、手口の遠慮なさは大きな被害となる。
更にとゾス村とタナール砦の間の道をなぞり、T字路の部分に丸を示す。

「砦から村へ抜ける途中の分岐路、その周辺がこちらの集落だ。元々山越えのルートも危険と言われていたが、こちらの馬車運行で山脈の温泉街も潤っている。つまり…最近までは色んな物の巡りが良かったんだ」

ここまでの前置きを終えると、この森に関わる部分へと話をすすめる。
まず一つ、湾港からの輸入品の流通。
森では入りづらい品の流通が悪くなっているかもしれない、それもそのはず。
彼が差し出した調査書によれば、品物を流そうとするのがマイナスになって渋った事で、輸入品が滞留しているのだから。

「一つ目だが、ここの治安維持に協力をいただけないだろうか? こちらも偵察班の増強を行って当たっているが、他の業務もあり、少々疲弊が見えてきている」

こちらが倒れれば、そちらへ流れる品はもっと少なくなるだろう。
共存のための提案を持ちかける。

テイア > 「元々、この森が特別な場所であったわけではないのだがな…。そういってもらえると、森の民たちも喜ぶだろう。」

ぽつりと、最初の方はどこか寂しそうな呟きがこぼれた。
他所の人間から見て、平和に見えたならそれは森の民たちの努力によるものだと、彼らが聞けば喜ぶだろうと表情を緩め。

「ミレー族も生き生きしていて、まるで昔のこの国のような雰囲気があった。…とはいえ、職務の最中に補給させてもらいに寄っただけ、だがな。」

200年以上前は、ミレー族も人も変わりなく協力しあって生きていたこの国。今では彼らの種族を虐げるのが当たり前となっており、一部の人間を除いてはそれを疑問に思うことすらないだろう。
けれど、ドラゴンフィートに住まう人々。ミレー族だけでなく、人間も、ほかの種族も皆生き生きとしていたと見た感想を語り。
自分が既に訪れたことがあると告げれば、驚いた表情に苦笑を浮かべる。そこまでしっかりと見たわけではないと。
テーブルへと広げられる地図。九頭龍山脈周辺を描かれたものに今回の相談事の中身がうっすらと見えてくる。

「ああ…随分と派手にやっているらしいな。」

地図を覗き込みながら、男の話を聞く。
確かに、この森へと向かう街道は山賊街道と呼ばれるほどに追い剥ぎなどが頻発する道だ。
しかし、荷馬車の一団を皆殺しにするほどの大規模なものは滅多に起こっていなかった。
けれど、ここ最近のそういった事件については既に女の耳にも入っていた。

「ふむ…。確かに、塩を始め、ほかの輸入品についても価格が上がってきているとは聞いていてが…このような影響がでるとはな。」

差し出された調査書に目を通すうちに、眉間に皺が刻まれていく。
まだ大きな声での民からの訴えはなかった。
最近高くなってきてるわねぇと主婦たちが愚痴をこぼす程度だったが、それも少しの間だけだろう。
流通が滞ってしまえば、品物そのものが届かなくなる。
行商人などの、隊商が訪れる頻度が減ったことから盗賊への懸念はあったもののまさかここまでとは。
調査書を折りたたんで、男へと返すと続く言葉を静かに聞く。

「すぐには返事はできない。…が、恐らくは協力できると思う。各集落、種族の村長、部族長たちにこの話を下ろせば皆動いてくれると思う。」

領主ではあるが、あくまで決めるのは森の民だ。
しかし、自分たちの危機につながるのだとわかれば、彼らは戦士として動くだろうと頷き。

アーヴァイン > 何処と無く寂しそうな声色に少しだけ首を傾げたものの、続いた言葉に意図が読み解けた。
微笑みながら頷き、今度はゆっくりと訪れて欲しいと歓迎の言葉を紡ぐ。

「…だが、それが普通だったのかもしれないな。俺が生まれる頃には、隔たりは作られていた」

ミレー族を奴隷にし、欲望が全てを支配する腐った世界。
幸い、学者だった母に連れられ、色んな物を見聞きすることで欲に染まることもなければ、種族で卑下する曲がった価値観も植え付けられなかった。
その分、苦しくもあり、少しだけ笑みに陰りが掛かる。

「派手だな。調子に乗った山賊が三合目だったかの温泉街を占領したこともある」

今はこちらの戦力を放り込んで解放済みだが、こんな温泉街が増えれば客足が遠のく。
調査書の情報は彼女にとっても予想外だったらしい。
仕事で軍事、母から学問を叩きこまれたことで状況の俯瞰視が出来た事が幸いだった
調味料は特に土地柄採れない物もあり、価格に大きく響くだろう。

「輸送費どころか、仕入れ費が全部飛び、従業員の慰謝料と酷いことになるからな…。ありがとう、それと協力してもらえるなら、こちらも専用の馬車での航路を提供する」

書類を受け取ると、次に取り出したのは水晶だ。
魔力を込めて収められた映像を投射すると、普通の馬車とはかけ離れたものが映しだされる。
堅牢な作りをした車体は金属のフレームで強化され、馬は4頭立て。
車輪も頑丈な作りをしており、言うであれば走る砦といったものだ。
水晶の映像を消すと、テーブルに水晶を置いて差し出していく。

「必要数を教えてもらえれば、この車体を準備する。すまないが馬はそちらで頼む。これも見せてもらえれば良い返事が貰えると思う」

戦力提供のお礼と言ったところか、品物の輸送がより確実になるなら他の村にもメリットは有るだろう。
そしてもう一つ、山脈とタナール砦までの道を指で示すようになぞった。

「魔族の行動も活発になってきている。おそらく単独犯だと思うが、こちらの組合施設に魔族軍の一人が入り込んで騒動を起こした。仮にだが…タナールが完全に向こうに落ちると、狙われるのはうちだ。ここが落ちれば、この森へも包囲網が掛けられる」

奇しくもドラゴンフィートは第二の砦に近い位置になっていた。
タナールを維持することは難しいが、もしもが起きればその大群を受け止めなければならない可能性が生じる。
勿論、ここが落ちて航路が封じられれば、森は王都へのラインと補給線を立たれると同意だろう。

「これは…そちらが信頼してくれればになるが、森を出て戦仕事をしたい者がいたら、こちらを紹介してもらえないだろうか? 魔法や精霊達との繋がりといった事に長けている方が、こちらの装備と相性が良い」

集落を失わないためのリクルート。
奴隷の解放や、隠れたミレー族の里から希望者を募るにも間口に限界を感じつつあった。
あくまで可能ならばと、改めて彼女に選択肢を委ねてふたつ目のお願いを紡ぐと、様子を確かめるように視線を重ねた。

テイア > ゆっくりと、との言葉には是非そうさせていもらうと頷いて。

「最初はおかしいと思う者が多くても、人は低きへと流れていってしまう。それは『おかしい』のだ、と『知っている』者達が死に世代が移り行けば、そのおかしな世界が『当たり前』になってしまうからな…。よいお母上だったのだな。」

200年前、黒の王が即位した時からすべてのことがらが狂いだした。そして、その黒の王を否定しようとした時代ですらミレーという種族の地位が回復することはなかった。
それを見てきた自分には、その罪の一端があることは重々自覚はしているが結局は、何もできない。
おそらくは、この時代の中変わり者ともいえる教育を受けた男。
本来のこの国であればその考えが正しいのだろうが、やはり少数派だった。だから見るのが辛い部分もあるのだろう、とその陰りのかかった笑みを見つめて。

「昔…似たような手口の盗賊がいたが…まさかな…。一つの集団につられほかの山賊も増長している状況か。…なんとも悪循環だな。ダイラスから街道を担当する騎士団は何をやっているんだ…。」

正直、王都での捕物騒動などで忙しくしていた、というのは完全にいいわけだ。
領地を護る義務をもつ領主でありながら、情報が後手後手すぎえる、と微かに唇を噛み。
それにしても、騎士団が動いてもいい案件だというのに何をやっているんだと、所属する自分と騎士団に怒りを覚えた。

「ほう、中々に頑丈そうだな。これだけ頑強な馬車があれば商人も渋らないだろう。これの車輪の部分は馬の全力疾走以上の速さでも耐えられる耐久があるか?」

水晶から映し出された映像。そこに見えるのは頑強そうな馬車だった。これに自身の部隊でも使用している騎獣である鳥を使えないかとも考えるが、ここまで補強がなされていてば重量的に無理だろうかとも考え。
騎獣の鳥の利点の早さが殺されるならば、それを使うメリットはないと言える。重さはどれくらいだ?などと色々問いかけて。

そして、指は再び地図の上を滑りタナール砦の方へと動いていく。

「確かに。最近は砦の攻防の入れ替わりが激化しているようだな。あそこが崩れれば、東回りにくれば森までなんの障害もなくなってしまう。西回りならばそなたらの集落にぶつかる事になるな。魔王軍、か…。そういえば、私も魔王軍の傘下だという人間に会ったことがある。真偽のほどは確かではないが、人間といえど注意していかねばなるまいな。」

ここばかりは、第七師団をはじめとした部隊に踏み止まってもらうしかない。
もし仮に、ドラゴンフィートが魔族の軍勢に襲われた際の援護、受け入れを約束して。

「ふむ、中々に閉鎖的な種族が多い森だからそう人数はいないとは思うが…。外の世界、それも戦で実力を試したいというものがいればそなたの元へ行くように勧めよう。」

もしかしたら、先日や今日訪れたミレー族や人の姿を見てそこへ憧れを抱く若者もいるかもしれない。
女自身がそうであったように、外に出るものを引きとめようとは考えておらず。
ならば、森から出たその先を導いてくれる者がいたほうがその者も歩みやすいだろうと視線を合わせて頷いて。
その時はよろしく頼む、と手を相手向けて差し出していくか。

アーヴァイン > 「一種の情報統制といったものか、母が恐れた通りになるとはな。 この時代にしては珍しく、ミレー族の文化を研究する学者でね、沢山の事を教えてもらった」

しみじみと語るも、こうして同じ価値観を持つ者と話せることで、自分が選んだ道が間違ってなかったのだと思えた。
一つ惜しむなら…今ある道が、自分だけの道ではなくなってしまった事で、一人で進むかもしれないという寂しさ。
それでも、笑みに掛かった影は消えていた。

「今が好機とやりたい放題といったところだ、おかげで新設した狙撃隊が休まらない。騎士団か…報告は聞いてなかったが」

街道を担当する騎士団がいたとは知らなかったらしく、少しばかり驚いていたが、それはそれだけ彼女の騎士団が仕事をしていないという事にもなる。
周辺の危機への対応が遅かったのも、伝達が悪かったのもあるのだろうと、そこから察しがついた。

「あぁ、まるで要塞だと評判もいい。耐火も備えているから燻り出しも効かない。馬の全力疾走以上か…このままでは出来ないが、金属の補強と車輪の追加を施せば出来ると聞いている」

木製の車輪だが、金属での強化と車輪追加を施せば速度の負荷耐久が上がると実験の情報は聞いていた。
重さは普通の車体より2割ほど重たいぐらいか、と説明していく。
補強を施している部分があるとはいえ、対比重量としては良い方だろう。

「あぁ…東回りで森に来ても侵入はできない、となればこちらに来るだろう、王都へも近くなる。魔王軍の傘下……まさかと思うがセインと名乗った男か?」

報告に上がっている情報だと、その男が二度、集落へ侵入している。
それからは警備を強化しているので情報は入っていないが、派手に動くほど、向こうが何かしようとしているではないかと懸念すれば少しばかり表情が険しくなるも、援護の約束には、助かると安堵した表情でお礼を告げた。

「ありがとう、とても助かる」

改めてお礼を告げると、差し出された掌にこちらも掌を重ねて、緩やかに握ろうとする。
射手独特の弦を引く指タコが感じられるかもしれない。
それからと、先ほどの書類の方をちらりと一瞥して。

「書類仕事が苦手なら…お近づきの印にコツを教えたく思うが」

どうだろうかと、薄っすらと微笑みながら問いかける。

テイア > 「ミレー族がもつ何かが、都合が悪かったのだろう。ほう、中々に難しい道を歩まれたのだな。そう簡単にできることではない。」

彼らが何故虐げられる事になったのか、あその理由は定かではない。この時代、ミレー族を知ろうと思うにあたり困難も多かっただろう彼の母親。その意志はしっかりと息子へと受け継がれている。
他人ながら、そのことを女は嬉しくおもったか。

「一応、騎士団も国の各地に部隊が派遣されていて治安維持活動も職務に含まれている。…怠慢か、何か動けない事態でも起こっているのか…。このことは団長の方へも報告しておく。」

山賊街道となると、ダイラスに駐屯する部隊の管轄になるはずだが…と眉根を寄せ。

「私の部隊で使用している騎獣なのだが、羽を退化させて速さに特化した鳥がいてね。この森にいる種でもあるんだが。馬よりもかなりのスピードが出るので使えないかと思ったのだが。一台だけ、補強したものを寄越してもらえるか?それで早さが落ちるようなら馬の方を使用することになるが…。しかし、2割重くするだけでこのように補強できる技術は素晴らしいな。」

2割の重さ、騎獣を使うには微妙なところだな。と実際に走ってみないと分からない。馬車にはもちろんのこと荷物が載るわけだからその重量も考えるとやはり馬か、などと呟いて。

「…ああ、セイン=ディバンと名乗った。王族捕縛の際に、ギルドの依頼で暗殺にきたのとブッキングしてしまってな。勝負を申し込まれた。何か転送魔法でも使うのか、真偽と問いただす前にその場から掻き消えてしまってね。」

自分の思い浮かべた男、その男の名が彼の口から出れば確信する。あの言葉は誠であったのだと。
転送魔法を使った事を話、再度中心部に侵入する可能性を告げると気をつけるようにと。

「こちらこそ、森を出たあと、行くあてもなく変に盗賊崩れになられるよりも安心だ。…そなたは弓を使うのだな。」

握り返された手に感じるタコ。それに感じたままにつぶやくように言って。

「デスクワークというものはどうにも苦手でね。コツがあるというなら是非お願いしたい。」

ちらりと、執務机に積み重なった書類。
それに対しての申し出には、苦笑しながらお願いしたか。

ご案内:「ルミナスの森 城」からアーヴァインさんが去りました。
ご案内:「ルミナスの森 城」からテイアさんが去りました。