2023/07/17 のログ
シルニア > 「ダメなのです。」

きっぱりと言いきった。私、偉い。

「そ、その、初めては痛いだけのもの、と本で読ん──聞いたことがあるので、ヴィクトールさんは悪くないのです。
寧ろ、良くしてくれたというか──」

再び声を潜めて先日の行為のことを話した。行為のことを公然で話すのは抵抗があるゆえの小声だ。
背中を撫でられれば、はっとして彼から顔を離す。
その気がないのに、べったりくっついているのは思わせぶりに思われるかもしれないし。

「ふふっ。そうですね。それならヨシ、なのです。
ご飯もお酒も、大好きですから。」

"手をつなぐ"ではなく"ご飯とお酒"の部分だけ聞こえていたかのような返事をする。
──だって、手をつなぐなんて、恋人同士がすることじゃないですか!

だけれど、きっと彼にとっては何でも無いことなんだろうな。なんて思った私は、彼に向かって手を差し出した。

「エスコート、お願いするのです。」

そう言って首を傾げて、笑顔を見せる。



そんな私達が、本当に食事だけで済ませたのかどうかは、また別の話──

ヴィクトール > 「はっはっは、固ぇな~」

これは鉄壁の守り、難しそうであると思いつつ肩を竦める。
しどろもどろの言葉は、彼女なりに肯定してくれてるのだろうと思えば、笑みも浮かぶ。
ありがとうよと囁きながら背中を撫でていたが、顔が離れていくならそっと体も離していった。
あまり警戒させて疲れさせたら、子猫のような彼女の体力もあっという間にそげて可愛そうだと。

「小さい割に酒もイケる口か? それは楽しみだな」

脳内の予想では、蜂蜜酒一杯でベロベロになっているところだったが、想定外の言葉。
くつくつと笑いながらも差し出された掌に、優しく掌を重ねて握り込み、立ち上がっていく。

「OK、任せてくれや。お嬢様」

冗談めかして答えながら、二カッと笑えば手を引いて歩き出す。
彼女が望むまでの境界線、それ以上を踏み越えることはせずひと時を過ごすのだろう。
久しぶりの邂逅に元気そうだと、食事の一瞬を見つめながら楽しむ酒も悪くはない、と。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からシルニアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からヴィクトールさんが去りました。