2022/08/24 のログ
■サロメ >
前師団長は魔族を恐ろしいと言っていた
だからこそ殺す。人間の驚異となる連中を根絶やしにするのだと
その苛烈な姿勢と思想は賛同する者もいたが、王国の内部にまで巣食っている魔族や多くの魔王を敵に回した
王国内部からの反感も多く、身動きの取れなくなったこともあった
しかし師団としての動きは荒々しくも激しく流動的で、支持する者もいた
今、第七師団が翼竜を駆るようになったのも、タナール砦を起点として魔族の領土に侵攻するためだった
一方、彼の戦死の後に後任となった自分は壊滅した主力の立て直しに尽力し
王国内部からはなるべく反感を買わぬよう、理詰めで立ち回り、第七師団を新たなものとした
結果として師団自体の練度は上がり、以前程動きを阻害されることもなくなった
魔族から王国の領土を守る、ということについては十分な仕事が出来るようになった筈だ
タナールでの戦果が一進一退なのは、そこから侵攻をしない以上は仕方がないものと割り切るしかない
もし後継を誰かに任せるとして、どちらの思想に寄るかはわからないが…
「………」
酒瓶に映る自身の顔を眺める
片目を隠す長い髪をするりと手串で掻き上げれば、そこには魔術治療の甲斐なく薄く遺った疵が覗く
「──いや、いいんだこれで」
「魔族はタナールの砦から此方に侵攻してこない」
過去100年
振り返っても魔族が砦から先に侵攻してきたことはない
背凭れを軋ませ、天井を仰ぐ
『ああ、これまではな』
いつだか聞いた、前師団長の声の幻聴が聞こえる
「───それでも私には些か荷が重い。
お前と違って屈強な体躯を持っているわけでも、獣のような気性というわけでもないからな」
酒瓶を蓋を抜き、直接酒瓶に口をつけ大きく呷る
師団長が駐屯地で深酒など笑い話にもならないが
まぁ、いいだろう
第七師団が師団長含めて荒くれ扱いなのは、今にはじまったことじゃない──
ご案内:「王国軍第七師団駐屯地」からサロメさんが去りました。