2022/07/10 のログ
■スピサ > 夏の鍜治場工房が広がる地区
平民地区の中で、鉄と語り合う場所と呼ばれることもあれば
ただ単に、日中 夜中 がうるさい場所 と 近寄るもの好きはいない。
ただ、求める者は話は別。子供は、話は別。
武器や防具がなければ始まらない者らは、人の伝手や並んでいた品に惚れてその鍛冶師に頼み込み
子供は鉄を打つその姿 火花 音 すべてに物語の中に入り込んだように魅入られる。
サイクロプスのスピサは、単眼族ということもあり、そのコミュティは狭く深い。
一人でいることの方が多く、集団の中にいるのは上記の、求める者らや、同じく鉄を打つ者の中にいるときだけである。
それ以外は、工房でもあり自宅でもある場所にいることが多いか、納得のいく鉄や火を求めて家を空ける。
――― ギィンッ ギィンッ ギィンッ ―――
鉄を打つ音が聞こえる。
柔らかい鉄と、硬い鉄では音はまるで違う。
真っ赤に燃えていても、簡単には曲がってくれない鉄ほど、手間を掛けていい剣が出来上がる。
刀などはいい例だろう。 しかし中には、芯と皮に分かれたロングソードなどもあるため、切れ味はともかく
耐久性や威力という面では、優劣はなかったのではないか。
そんな風に言う者もいるらしい。
――― ギィンッ! ギィンッ! ギィンッ! ―――
鋳造とは違う、火の中で一々真っ赤になるまで火を与え、真上から振り下ろす槌で徐々に曲がっていく緋色の鋼玉
相槌もいない一人だけの鍜治場 サイクロプスという種族性だからこそ、その薄青い肌に包まれた異質な見た目
逞しい女の筋肉の腕は肌の上に直接革のグローブと、オーバーオール姿
単眼で見据える 火の色 鉄の音 鉄の匂い を伺いながらブッ叩いていくというのにふさわしい、振り様と音。
ヤットコに摘ままれた剣の形を作るための皮を、金床の丸みを用いて形成していく。
■スピサ > 炉 金床 槌
腰に身に着ける作業用のツールベルトと傍に置かれたツール台
道具を用い、鉄を叩き、不純物を取り除いたその塊を伸ばし、形を変えていく過程。
火花が何度も飛び散り、冷めて乾いた表皮がどんどんぼろぼろと零れ落ちていく。
槌の衝撃に耐えきれないところが落ちていき、最後に残ったものが本物の鉄。
その真っ赤な鉄を打つ途中 何度も金床や槌に水を掛け、浸す。
これは、打ち付ける鉄に対し、その硬さと熱に耐えきれなくなって歪まないようにする処置。
鉄は鉄 この世で最も固い金属を用いているわけではない。
土台も槌も、すべて同じものなら、途中で熱を癒して再びぶつけあえるように施していく。
打つ音とともに、水が燻される音がジュウジュウと何度も交差していく中で
形になった楕円型の形。 摘ままれる先が、“⊃”の形に仕上がれば、小道具で同じ山形になっているもの
それの上に被せて形を尚整えていく。 叩いて 伸ばして 整えて。
そして出来上がった皮を自然に冷ましながら置いておき、フゥと汗をぬぐう。
そばの手ぬぐいで、何度もこぼれてくる汗をぬぐっては、炉の熱で体は額も肩も腕も、じんわりとにじんでくる。
「ふぅぅぅ……。」
次は芯となる部分を叩いて、重ねて伸ばして融合させて そうして思い描いている剣身を完成させる予定。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 鍛冶場工房地帯」からスピサさんが去りました。