2022/03/30 のログ
■ラバス > 考えをそのまま口にしながら歩く相手。
その口遊み続ける言葉を聞きながら、興味深そうに、思案する姿を眺めて。
「おお、だいたい合ってる」
此方の説明で、一定の理解と正解を導き出した彼の言葉に、手袋越しの両手でぱちぱちと拍手を送る。
人のそれとは違う瞳をらんらんと輝かせ、耳を立てて、全身で解ったと主張する姿に、ラバスの目元が緩んだ。
そうして、今しがた理解した言葉が示す場所に、座り込んで。
先ほど説明した特徴のものを探しているのだろう。
次々に草を引き抜いては、足元に草を放る姿。
さほど、問題にはならないだろうけれど、あまりに手あたり次第、となると、
誰か、同じような野草を探す者に見咎められるかもしれない。故に。
周囲を見回し、彼が探していた薬草を見つければ、其れを丁寧に引き抜いて。
彼の背中側から、草を探す動きを止めようと、肩に触れて。
「ジーゴきゅ……君。ちょっとストップだ。ほら、これ。これが目的のと、同じもの。
根元のほうと同じような色が、葉っぱの筋にわずかに色付いているのが解るかい?
絵では分かりにくかったが、この赤が薬になる成分だから、葉の筋まで通っている。
で、同じようなものもあるけれど、葉の丸いもの……ああ、丁度そこにある。
これは、目的のものと色だけ似て薬にならない。探している薬草はこれより背が高くなるから、
風で葉が痛みにくいよう、隙間を作るように、こういうつんつんした形になるんだ」
彼の背中側から、まるで抱き着くような姿勢で。
少年の身体の前に、腕を伸ばして、目的の薬草を見せる。
そうしながら、丁寧に薬草のことを説明していく。
似たような背丈で、後ろから彼に見える様、腕を伸ばしているから。
時折、身体が触れていくのは、不可抗力か。
……いや、違った。女の方から、ちょっと接触を楽しもうとしている。
不要なくらい、身体を寄せてみたり、眼前に来ている獣耳が動くのを、至極傍で眺めていたりしていて。
■ジーゴ > 「これじゃない、これでもない」
草を引っこ抜いて見比べてを繰り返しているけれど。
そもそも植物の違いが見分けられていないから、きっともう正解の薬草も何本か足下に捨てられてしまっているだろう。
肩に触れられると、ピクリと小さく震えてその動きが止まる。何かいけないことをしてしまっただろうかと固まっている少年に降ってきたのは、とても詳しい説明だった。
「葉っぱのすじが赤くて、葉がまるくないやつ…これだ!」
説明されて見本を見せてもらってからちゃんとその点に注意してみれば、今まで気がつくこともできなかった違いが見えてくるし、根本を確認するのではなく葉っぱの筋を見ればいいのは一段とわかりやすくなった。ようやく野原の中から正解の一本を引っこ抜く。
「なあに?」
なんだか近い相手に振り返って笑うのは一瞬。
今までの屈託のない笑いとは違う含みを持ったにっこりだ。
「くすぐったいってば」
耳に息がかかるとくすぐったくて獣耳を反射的にぴこぴこさせる。くすぐったくてくすくすと笑い出す。
それはさっきの笑みとは打って変わって年齢相応か少し幼く見えるもの。
「やくそうさがさなきゃだから、いたずらしたらダメだよ?」
ちょっと体が近い相手に釘を刺すように、それでもまだくすくす笑いながら言った。
もし何かいたずらされても嫌がりはしないだろうけれど。まだ耳はピコピコと動いて。
■ラバス > やはり、これまで知る機会が少なかっただけで、理解力や判断力は悪くない。
そうラバスが感心するくらいには、正解の一本を探し出すまでの時間は、長くなかった。
確りと教育する者がいれば、案外初心者冒険者を脱するのは早いかもしれないと、再評価しつつ。
こっそりと彼の獣耳なりを近くで愉しんでいれば、振り向いて。
先程までの純朴なものとも違う笑みを見せる、少年。
けれど、すぐに元の笑みに近しいそれに戻す様子。
……ミレー族や、準ずる猫を思わせる獣人種族などが、王国でどのように扱われているかは当然知っているから。
年相応だけの冒険者見習い、以外の顔もあるのだろうと。
まぁ、それはそれとして、ぴこぴこ揺れるケモミミ可愛いなおい。と。眼鏡を輝かせてガン見しながら。
辛うじて、引率のプライドも保っていたのか。
暫く反応を楽しんでから、身体を離す。
……あとは、必要な本数、薬草を彼が採取したのなら、連れだって王都にと戻るのだろう。
そうして件のギルド長に、文句を言うのだ。
なんでもっと早く紹介しなかった、と。
……そうなるのはもう少し、後の話。
今は少年が一生懸命に採取をする姿を、緩んだ顔で眺めている。
警戒のために呼ばれた狼型のゴーレムは、自意識が無いはずなのに。
主人の行動に呆れたよう、声を出さないまま遠吠えするかの如く、遠方を見遣っていたとか……。
■ジーゴ > 「これと、これとこれと…これは丸いからちがう」
一度違いを見分けられるようになれば、みるみるうちに植物の違いがわかってくる。
そうすればスムーズに今回の目的である薬草だけを集めることができていって。
あっという間に獣のそんなに大きくはない両手いっぱいに薬草を収集して。
「かえろ!」
カバンから取り出した紙に丁寧に包んで、帰る支度を済ませるとそうすることが当たり前とでもいうように、手を差し出して。
手を繋いでもらって街道を帰っていくだろうか。
きっと昼過ぎにはギルドに薬草を提出して、一緒に昼ご飯でも食べて、楽しい初めての薬草とりの1日はすぎていくのだろう。
別れ際にはラバスにもルプスにも手を振ってバイバイ。
ご案内:「王都近郊/平原」からラバスさんが去りました。
ご案内:「王都近郊/平原」からジーゴさんが去りました。