2022/01/04 のログ
■エレイ > ともかく、男は客を迎え入れ。カーテンは再び閉ざされて──
ご案内:「九頭竜の水浴び場 マッサージ室」からエレイさんが去りました。
ご案内:「平民地区 訓練所」に竜胆さんが現れました。
■竜胆 > 珍しい所に、珍しいと言える人物が、立っていた。
トゥルネソル商会、三姉妹の次女、竜胆。竜胆、というのも魔導士としての名前であり偽名、本当の名前は別にある娘。
彼女は、滅多なことでは家から出ず、基本的に家の中に引きこもり、己の興味の向くことだけに邁進している娘。
そして、三姉妹の中で唯一、人竜だ、と言う事を一切隠さぬ乙女だった。
その背中には、竜の翼が一対、ドレス胃のお尻の下から垂れるのは、竜の尾。東部には竜の角が一対。
冬も良い時期だというのに、薄着なのは、周囲を快適な温度にしているから。
何事も自分の思い通りになると信じ、そして、成らないならば、力で思い通りにするそれが、竜胆の性質であった。
そんな、竜胆が本当に珍しい事に、だ。グリムという家で飼っている狼犬の散歩など無く、唯、一人で平民地区の訓練所に来ていた。
家の近くと言うならば、富裕地区や、王城にも、訓練所があるので、其方の方が都合がいいはずだ。トゥルネソル商会の家は、富裕地区にあるのだから。
こちらに足を運んだのには、理由があった。
「―――。」
金色の竜眼は、誰かを探す様に、視線を右に左に。
目的の人物が見つからないのだろう、動きは止まる事は無く。
しかし、直ぐにあきらめたのか、はぁ、と溜息を一つ大きく。
直ぐに見つかるような相手でもないし、それはそれで良い、というあきらめ。
もう一つの目的の方に切り替える積りにした。
手を開けば魔法で空間を繋げて、取り出すのは、上級の魔導書。
魔法使いであれば、だれもが求める魔導の知識にして、魔法力の増幅アイテム。
その魔導書の属性は炎、火炎系の魔法が、初級から上級まで乗っている、もし、火炎の魔法を覚えていない魔導士でも。
これを使えば上級までの魔法が使えるようになるし、魔力をブーストして使えるので高威力で、魔力も効率よく放てるようになる。
そんな書物を手にして、興味薄そうに、ぱらり、と捲る。
竜胆は、この書物にある魔法に関しては、全て使えるから。それでも、魔力の増幅器、魔力の効率化の意味で無意味ではない筈の道具だ。
■竜胆 > 「さて、と。一応警告だけは、しておきますわ。
―――近くにいると、どうなっても、知りませんことよ?」
周囲にいる冒険者たちは、魔導書を持つ女―――特に云えば、人竜の少女に興味を持っている模様。
その興味に理解は出来なくないが、鬱陶しい事この上ない、ウロチョロされると吹き飛ばしたくもなる。
それをしていると、待っている未来は判るので散れ、と周囲のモブに言う。
魔導書を持って、魔力をエーテルに変換し始めれば、その魔力の量に魔法使いや魔導士は直ぐに規模を悟り逃げて。
戦士たちは其れに引きずられるように去っていく。
女の周囲がぽっかりと、穴が開いたようになって。
竜胆は意識を集中し始めた。
『無限光―000―照らせし
十のsephirot
魔書ーgrand grimoireー繰りて
四詞神諱ーYHVHーを
駆動せしめよ!』
魔導書に魔力を流し―――そこで、明確な違和感を感じる。
魔導書が偽物というわけではない、魔力を受け取り、起動している、魔導の回路も問題がない。
しかし、ぴしり、ぴしり、と空気が鳴っていくのが判る。
金色の瞳は、魔導書を、凝っとみやる。
「駄目、ですわね、これでは。」
人竜の魔力が、竜胆の魔力が、魔導書の許容限度を超えてしまっている。
矢張り、人間が人間の為に書きあげ、作り上げたそのアイテムは。
竜胆の持つ莫大な魔力に耐えられない、これで、最高峰と言える上級の魔導書なのだ。
はぁ、と失望を大きくため息と吐き出し、魔力を止めて、如何したものか、と魔導書を眺める。
■竜胆 > 使えないとして、これをポイ捨てして帰るというのはいささか問題がある。
上級の魔導書となれば、本物であるこれには、決して安くはない値段が付くのだ、というか。
部下のドラゴンの巣穴からもらってきているモノだと考えれば、冒険者が飛びついてくるレベルのお宝でもある。
そう言う書物が溢れんばかりにある竜胆の部屋に戻すしかない、使えないので死蔵化―――。
「あぁ。」
ポン、と手を叩いた。丁度いいのが居たじゃないか、と。
彼女は、弟子は、今どれだけの成長をしているのかしら、それによっては、新たに渡しても良いわね、と。
最近は見ていないのは、自宅で宜しくしているらしい。
あれをしろこれをしろは言う気がない、面倒くさいし。
ただ、成長するために必要な物を渡した、それで成長できていないならそれまでだ。
学ぶというのは、教えを待つものではなく、教えを乞う物であり、自分から動かないものに、学びはないのだ。
その辺りは、彼女の母辺りが教えている筈だし、自分の領域ではない。
それなら、と、空間を明けて、自分の部屋の中に、本棚にしまい込んだ。
「さてさて、と。」
そして、もう一度と、訓練所を歩き始める。
有象無象の中に、探す人は居るだろうか、と。
最初の目的は探し人なのだし。