2021/10/22 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区 鍛冶場工房地区」にスピサさんが現れました。
スピサ > その日は晴れ間の昼
朝早くはもう衣を厚くしなければ肌寒くなる季節
逆に昼は、まだ衣は脱げる程度のものだろうか

しかし鍛冶師はいつだって薄い
炉という鍛冶師が形作る為の場所
橙々と燃えるその場所で、鞴の音と炭の燃える音

その辺の屑鉄を鍛え直すだけなら、燃える木々の中に埋もるだけでいい
しかし鋼鉄 金属の剣を一本手打ちで仕上げるならば炭の本数は10や20では効かない
何度も燃やして 何度も熱して 何度も打ち込み 何度も変える

自身の工房で 薄暗い中 炉の燃える緋色に包まれながら
青い肌 火熊革に包まれた単眼族のサイクロプスは槌を奮う

練り上げた鋼鉄を 槌が何度も叩き込む
金属の中に残っている 燃えて弾ける程度の不純なブツ バチンバチンと泡を吹くならば
それが終わる頃にはまだ何も知らない鉄だけが残る

それを何度も叩き 何度も折りこむ 強度の他に 隙間という隙間を無くし 満ちた鉄塊だけとさせる
芯と皮 二つの鉄を用いて包ませたその鉄の棒が、両刃の剣へと姿を変える
なんていうことは無い スピサが思いついて スピサが作ってみたいから打っている

「~~♪ ~~♪」

コォーンッ コォーンッ

カァーンッ カァーンッ

珍しくスピサは炉の前で鼻歌を歌っている
王都マグメールで毎年行われる花の祭りか 春の祭りか
それで歌われる詩歌の一つ 時間の測りを歌に例えるのは、鍛冶や錬金の御馴染みの古法
菓子ではパイが一曲終えれば焼き上がり、などともいう。
作り上げているのは、青龍刀やククリのように、先端が太く根本が狭い
先に威力が乗ったかのような両刃の直剣
断面が菱形になるだろう 12の角が付くようにイメージしている
単純なΛの先ではすぐに潰れて鈍らになってしまう 練り上げた鉄も 研ぎで生まれる角の数も
総てが何が其処までさせるのかと言わせるような、これは鍛冶師の自己満足を出す者

造りたいから造る だからそこまでだってやれるだろう
鍛冶なんていうものは、やりたい奴がやるから、鍛えて治めるなんていう真似ができる。

ご案内:「王都マグメール 平民地区 鍛冶場工房地区」からスピサさんが去りました。
ご案内:「滅びた村」にロイスさんが現れました。
ご案内:「滅びた村」からロイスさんが去りました。
ご案内:「滅びた村」にロイスさんが現れました。
ロイス > 冷えた風が、村の中を吹き通る。
無人の村の静寂は、それ自体が重さを持ったようで。
人が住んでいる筈の建物は、どこかしら痛々しい爪痕が残っている。

そして――村の中には、無残に食い散らかされた、死体があちらこちらに。
男も女も、老いたものも、若きものも平等に。
骨まで残っているものもあれば、中途半端に人型を残したものもある。

「……生存者は確認できず。物資及び食料は全損。
回収した有価値物品については目録を……」

その中で、渋い顔で男が一人、村の石垣を腰に落として書類を書いている。
やりきれないと。その顔はそう語っていたが。
それでも、感情に激する事なく。

ロイス > 稀に――否、よくある事だ。
モンスターの生息域の変動などによって、村が急激な魔物の襲撃を受けるのは。
村人たちも、決して無警戒ではないので、魔物の気配を感じれば街に冒険者を雇いに行くが……。
それでも、"間に合わない"事はある。
特にそれが、街から遠く離れた村であるならば。

「……金品は依頼主の若い子に渡る。それが、不幸中の幸いか」

それだけが、幸い。
その程度のことだけが。
だが、遅れてきた彼にこれ以上できることなど――精々一つしかなくて。
だから、男はその一つのみ、最後に行う。
幸い、村の中から、畑仕事用のスコップは入手できた。

男はスコップを取ると、村の中央に穴を堀り始めた。
深く掘りすぎると、自分が出られなくなるが、それでもできるだけ深く。
できれば、屍肉を漁る野生動物に掘り返されない程度には。

「(大仕事だけど、せめてこれぐらいはしてあげないとな――)」

ご案内:「滅びた村」からロイスさんが去りました。