2021/02/03 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区 鍛冶場工房」にスピサさんが現れました。
スピサ > 昼間の王都
街隅に構える鍛冶場工房では鉄を打つ音は今日は漏れない
いつもなら、内部構造から抑えていても、鉄を打つ際の鋭い部分が漏れ聞こえはする。
それがなかった。

工房の中では、明かりを灯し、いくつもの使い込まれた砥石が置かれる
水と果実油の傍で、眼帯を外した、裸眼姿のスピサが研ぎの音を続けていた
貴族が求めるような雅のある光沢と艶ではなく、維持と切れ味を保つ霞のような仕上げ
大型のナイフ 背には鑢や鋸の役割を果たす為か凹凸が細かく取り付けられている。
爪にそっと刃を乗せ寝かせようものなら、食い込んで滑ることもないだろうか。

武器を取り扱う店や、村の雑貨屋まで、研ぎは行われる
鉈や斧だって維持が必要だ
武器を制作する場にも、研ぐ為の設備はある

   シャリンッ  シャリンッ   シャリンッ

独特な研ぎの音と共に、意識は刃と無言で向き合い続けている
スピサは鉄を打つ時間とはまた違った感覚のこれも好きだ
果実油を塗り、羊毛布でふき取ると、空気中の湿度を避けて維持されるだろうナイフがそこにはあった。

「……これでいいかな。」

ナイフ使いはナイフをいくつも持ち込んでくる
投擲や携帯性のものから、大ぶりに構えることのできる切断用まで。

それらを綺麗にまとめておくとこの季節でも、集中力からか湧いてくる汗を拭った
木杯の柑橘水を飲み干すと、一息ついて。

ご案内:「王都マグメール 平民地区 鍛冶場工房」にゾーイさんが現れました。
ゾーイ > そんな工房の扉を開き、足を踏み入れる人影があった。
歳の頃は10代の中頃といったところか。
比較的露出の多い格好をした、黒い猫耳と尻尾を持つミレー族の少女。

「お邪魔しまーす」

猫の耳がくるくると回るように動く。
鍛冶場特有の熱気は、今は感じられないが、人の気配はする。
この仔猫の本業は泥棒……シーフであるが、本日は堂々と正面から立ち入り、気配を隠すこともしない。
つまり、正当な取り引きを行うために、この場に足を運んだのだ。

スピサ > 研ぎに集中し、鉄を打つことを控えていた今日
ほかの研ぎも済ませてしまおうか
小休憩をしながらスピサは研ぎへの意識はまだ途切れていなかった

そうすると、工房故にノックの必要性は薄いものの、声と共に入室音が鳴る
スピサの店は、人がたくさん訪れるかと言われれば、限定的と言えた
研ぎの依頼を済ませてしまおうというばかりで、珍しいなと思いながらも

サイクロプスの単眼
それを隠すように、紫色をした革眼帯が目元を覆う
後頭部にて、パチンッと固定されたそれの姿
単眼を隠すようにしながらも、身に着ける本人からは見えるままの視界
素肌の上から、革のオーバーオール姿という出で立ちで出迎えようか。

「い、いらっしゃい。」

舌の廻りがあまりよくないものの、声をかけると顔見知りではなく、初対面
誰かの紹介だろうかと、その身軽そうな姿と獣耳を見ながら、スピサはジッと見つめ。

「ご依頼です、か?」

ゾーイ > 「アッハハ、そんなに畏まらなくていいよ!」

舌足らずに敬語を使う様子を見ると、仔猫は笑顔を見せる。
けれども大きな眼帯で顔を覆った姿には、少し訝しんでいる様子でもある。

「ボクはゾーイ。ダガーを買いに来たんだ。良く切れる、鋭いヤツをね。キミ、目隠しして仕事してるの?」

青白い肌も異種族のそれを思わせると、じっと観察している。
つまり仔猫は店主のことを良く知らずに此処へ足を運んだ、ということになるだろう。

「キッチリ仕事をしてくれるなら別にいいけどね。良かったら店の商品、見せて貰えるかな?」

あっけらかんとした様子で、仔猫は店内を見回した。

スピサ > 幼そうに見えながら、随分ぐいぐい来る獣人
場数を踏んでいるのだろうか 幼げに見えて熟練な者は、冒険者ギルドに行けば幾人も見れるだろう
そういった類を見る目でいると、単眼を隠すための目を覆う眼帯
ほぼ目隠しと変わらない要領のそれをみると訝し気にされる

「これ……こっちからは見える眼帯なので……平気、です」

青白い肌は人外種と一度で理解できるだろうけれど、サイクロプスとわざわざ言う必要もないか、と頬を掻く
スピサをスピサと知らないままにきているのだ
どこぞの武器屋で職人の話でも聞いてきたのだろうか

ゾーイと名乗った獣人に、スピサもうなずいて名を渡す

「この工房、やってます スピサ、です。」

会話はあまりしない類なのだろうとわかるような、つたないしゃべり方
ダガーを求めてきたというのならと、ズカズカと中に入れば、作成場となるところは別の部分へ。
スピサが気の向くままに造り、保管している場所だ。

ダガーと言われると、身長150ほどの相手
好く動きそうである なら、と身から外れることのないように工夫されている リング・ダガーを進めてみた

「もう打ち終わっている、のでいいなら……
 リング・ダガー……バセラードもありますけど……。」

紛失せずに済むほか、万能的なダガーなどでもある
スピサ個人が使うためも含めてなのか、使い勝手のいいそれらを進めてみた。

ゾーイ > お互いに観察してはされる雰囲気、仔猫には慣れたものであった。
今回は緊張感があまりあるわけでもなく、尚更のことだ。
目隠し、に見えるそれは本当に目を外界から隠すことに特化した物品であるようで。

「ふぅん。(邪眼や魔眼の持ち主かな? ま、別にそこまで詮索しなくてもいっか)」

とは言え、初対面の相手なのだから距離感は大事である。
仔猫はそこで詮索するのを辞めて、商談の方に移ることにした。

「うん、キミの名前は聞いてるよ。『金銭以外の対価で仕事をしてくれる鍛冶屋』ってね」

どうやら、彼女が得た人物像は一側面だけのものらしい。
少しオドオドしているとも取れるような、口下手な様子に仔猫は少し苦笑を見せた。

「リングダガー……へぇ、いいね。あちこちに仕込むには最適。刃は……焼きが甘いこともなくて、良く研がれてて」

仔猫は真剣な様子で検分を始める。
何しろ、武器は戦場においては命のストックと言っても過言ではないものだ。
修羅場を潜ってきた冒険者としての威迫は、ここでも感じることができるだろうか。

「バゼラードは少し大きすぎるかな。リング付きのダガーは気に入ったよ、触ってみてもいい?」

スピサ > 詮索もしないでいてくれている様子だった
飽く迄もなく、互いに依頼と請負の距離
スピサという名前は知っているようで、金無しや復讐心が残る、この王都では多いだろう人種
それらが利用率が高い店としての場 それで来る客は少し久しぶりだった

スピサは最初、ゾーイを見ながら 金銭に困っているようには見えない その印象があった
しかし、切れればなんでもいい 一番安い武器をくれ そんな相手とは違う
武器を進め、それらを確かめながら造りも眺めている

報酬条件を面白がって来た、のかは知らないものの
スピサは相手が乗り気な様子なら何も言う必要はない
グリップの先に円を描く、リング・ダガーを見つめる様子

両刃であり、身に着ける際のほか、鋼糸を繋げば投擲を繋ぐ
フックロープの様に使うこともできるだろう

握ってみたいと言われれば、剣身をつまんでグリップを出しだす
傍には丸太の切り身も置いてあり、いくつもの刺し傷が残っていた。

「これ、どうぞ。」

投擲試しにするなら使ってくれ の意味だ

ゾーイ > 詮索されるのは、仔猫にとっても気持ちの良いものではない。
一定の距離感が生み出してくれる安心感、というものもある。
親しき仲にも礼儀あり、という言葉もあるのだ、初対面なら尚更である。

そしてスピサの印象は当たっていた。
仔猫は貧窮しているわけではなく、明白に質の良い武器を選んでいる。
報酬条件を面白がっているというより、何かを常に確かめるような雰囲気を纏っていた。

「うん、ありがとう。柄は革巻き、握った感触良し。あくまで近接用の武器だから、投擲には慣れが必要だけど……」

仔猫はそう呟きながら、クルクルと片手で器用にダガーを回し、そして丸太へと投げ付けた。
ダガーは一直線に丸太へ飛び、深々とそれに突き刺さる。

「うん、慣れで何とかなる範囲。寧ろ軽さと重心バランスの関係でかなり投げやすい部類だね。気に入った!」

丸太へ歩いて近づき、投げつけたダガーを回収しながら、いい商品を見つけられたとばかりに満面の笑みを見せて。

「このリングダガー、10本ほどくれない? で、お代なんだけど……」

ちろり、と仔猫は僅かに舌舐めずりをした。

スピサ > リングダガーは気に入った様子だった
投擲の類よりも、近接 斬りつけることでの使用目的
両刃の研ぎをどの程度のものにするかは頭の中で決まったのなら、深々と突き刺さった様子

投擲術と力もあるようだった
回転ではなく直線 ダガーのバランスを把握して一度でできる辺り、器用なものだなと青白い手のひら
無意識に小さく ぱちぱち と合わせ。

「私も、ちゃんと見てくれてるなら、本望です。」

剣身の先端をスピサも確かめるのなら、10本
それは予想していた答えだった
特別なダガーを欲しがらない素振りなら、ダガーは消耗品だ

何度も買い替える必要も無いようにだろうか
リングダガーを10本と言われると、自身で使用する分も含めるといまはそれ程ない。

「不足分は打てます、けど……。」

武器屋ではない
10本もダガーを常備しているわけではないせいか、リング付きダガーは作成分も合わせて、10本用意できるとした
鋳造ではなくきちんと打ち終えた物を、だ。
研ぎも合わせると、手製品なわけだがさて……。

「……ゾーイさんは、このリングダガー10本で、何回抱けるんですか?」

半金というわけでもなく
全額体払いな様子に、少し首をかしげて聞く。
キチンとした品を造っているつもりだ
満足もしてもらえている このスピサ工房のリングダガー10本 どう提示するのか

ゾーイ > 「えへへ、照れるなー」

拍手をされると後頭部に手を当てて、はにかんだような笑みを見せる。
実際に、回転させて『打つ』投げ方よりも数段難易度の高い技だ。

「うん、どんな仕事をする人か興味があったんだよねー。代価が代価なだけに」

仔猫が聞いた噂話はこうだ。
女性に対してのみ、身体を許すことを代価に武器を拵える職人がいると。
金銭欲よりもさらに原始的な欲求のための仕事、その内容に仔猫は興味があった。
鈍(なまくら)か、業物(わざもの)か。
結果的に言えば、とても堅実な仕事をする職人だ。
華美な装飾やステータスとしての武器とは無縁で、只管に実用性を追い求めた作り。

「そうだね……一本につき一回で、十回はどう? 足りないかな?」

もちろん、足りなければ追加も考える。
そう言いたげに、仔猫の返答には余裕があった。