2020/08/07 のログ
ご案内:「平民地区/裏通り」に獣魔目録さんが現れました。
■獣魔目録 > 平民地区のとある裏通り。
通りから通り、通りから酒場や宿や冒険者ギルドのある区画へ、富裕地区から平民地区へとを結ぶ細い通り道である。
その裏通りは確かに各方面に移動するには近道となる通りなのだが、その呼び名の通り【裏】酒場や宿屋諸々の店の裏手を通るからなのか、薄暗く、人通りは殆ど無い治安的にもあまり宜しくない通りなのだが、今宵もまたポツンと人影がひとつ。
――…その人影は人通りなんて殆ど無い裏通りなのに何かモノを売っているようで、敷物も敷かず地面に直接正座をして座り、代わりに自分の前に小さな敷物を敷いて其処に商品を並べて、裏通りをぬけようとする者が通りかかるのを売り物に興味を持つものを待っている。
灯りを照らすなら、その人影は酷く小柄で少年少女あるいはドワーフなどの背の低い亜人のように見えるが、全身を襤褸切れのように穴の開いたローブを身にまといフードを被り口元以外をすっぽりと隠し覆っていた。
特徴的なのはその口元、そのフードから零れ出ている口元には鋭い牙がある。
「……導書ニ……絵………スイ………カガ………。」
鋭い牙がチラりと見えるように口を開き、か細く路地に吹き込む風に簡単に掻き消されてしまうような小さな声で商品をアピールしている。
聞けば声色もまた若いが男女の性別の判別が難しい声であり、人の声よりもその手の知識が有ればゴーレムや魔導人形が人の声帯を真似して発するような声に近しい。
扱い商品は数冊の本。
可愛らしい絵柄の童話の本
如何にもな本格的な小説
タイトルの何もない怪しげな本
それと魔獣の皮で装丁された魔導書
他にも数冊の本が並べられている。
もし、通りかかった人間が本を手に取り中身が読みたいと言えば、人影は喜んで本を頷くだろう。
もし、ほしいと言えば喜んで人影はその本を売るだろう。
どの本を選んでもそれはもう嬉しそうに人影は応える。
■獣魔目録 > 時間も時間であるし、場所も場所である。
人が通りかかる気配すらないが人影は気にした様子はない。
例えば野良猫、例えばねずみ、それらが目の前を通り過ぎても本にさえ触れなければ手出しはしない。
だが通りを覗く視線には鋭敏である。
少しでも視線を感じるとフードの奥に隠れた瞳をギョロリと通りのほうへと向けて、視線が隠れるとギギギと首を傾げてまた並べた本を売りに戻る。
それの繰り返しである。
ただただ本を売るためにか細い声で言葉を紡ぎ、またじぃと虚空を眺め、誰も居ない空間を眺める。
で、また視線をかんじれば……。
ご案内:「平民地区/裏通り」にエキドナさんが現れました。
■エキドナ > 「何売ってんの?」
視線を感じるどころか、その存在の出現はあまりにも唐突だったし、人物像もこのような場所に赴くような感じではない。
ただ目の前に現れた痴女っぽい雰囲気を隠しもしない女は、興味深々なご様子で謎の露天商に声を掛ける。
「本~?…フーン…」
商人の言葉を待つ間もなく、女はその「売り物」の前に大胆にしゃがみ込んでは覗き込むようにして眺める。
もちろんこの女はその売り物がなんなのかも、目の前の商人がなんなのかも、微塵もわかっていない。
わかっていたらつまらない、わからないから興味を持っただけだ。
面白いことが起こるかもしれないと期待して。
■獣魔目録 > 反応は大分鈍かった。
と言うのも今宵の来訪者は裏通りを歩くような者に思えなかったから、人影にとっては想定範囲の外であり、耳に響く甘い声色に反応してギョロとフードの奥に隠した瞳を声の方に向けた後、本、と言う言葉を発した来訪者に対して、緩慢な動作で頭を僅かにさげる。
「……しゃ……本……獣……童話……色……る……かが?」
両手の指先……にしては指の形をなぞるように粘液がぬめり滴るヌメっとしたその指?で被っているフードをちらと捲り、真っ赤なまるでと言うより完全に球体の眼を覗かせて、しゃがみこむ来訪者の方に視線を送る。
感情は皆無。
だが視線に敏感であれば値踏みするような気配をかすかに感じるかもしれない。
それと同時にゴクリと生唾を飲み込むような音を一つたて、それに併せて不自然に喉の辺りを膨らませて、直ぐにへこませて、と露骨に危い動作を見せる、見せておいてアッと言わんばかりに慌ててローブの襟辺りで隠れた喉を平坦な状態に戻すのであった。
■エキドナ > まぁ、女自身もこんなところをうろつくような恰好ではあるまいとは思う。
事実目の前の商人も、人でいうところの素っ頓狂な反応をしていた。
「あたし、割と本とか好きだよ。
こんなナリだからバカっぽく見られるけどね~」
笑いかけつつ、視線は本から商人の方へ。
反応の鈍い、人形のような様子だと思ったが、正体を隠すのが難しくなってきている様子。
それはそれで面白いのでそのままにしておく。
女が興味を示したのは、やはり一冊の本。
「品揃えはイマイチなのはしょうがないけどさぁ。
この中にコテコテの魔導書があるのはやっぱ異質じゃん。
コレ買えって感じだねぇ…いくら?」
魔族だからというのもあるけれど、多少見識のある人が見ても数ある本の中でそれだけは異様な雰囲気を纏っているのかもしれない。
ぜったいヤバイ代物感があるのだが、やっぱり興味の方が勝るので値段を聞いておく。
■獣魔目録 > 値段と問われるとニチッと粘り気ある奇妙な音をたて人影は首を傾げる、それは値段への問いかけに対しての反応ではなく、値段を幾らに設定したか忘れたが故に首をかしげたのだ。
それが数秒。
首をかしげて、傾げて、傾げ終えると設定した値段を思い出してか、首を元に戻す戻した刹那にボロボロのフードが勢いで剥がれて人影の素顔は露になる。
――…その素顔はもし来訪者が懇意にしている人間が居ればその顔で、もし親類縁者の方が思いが強ければその者の顔に、もし誰にも興味が無ければ来訪者本人の顔を少し年頃の少年っぽくしたような不可思議な顔に見えるだろう。
だがそれは本人が望んだ顔でも何でもなく、値段を思い出したのでまたヌルリとした動作と動くたびに指先から粘液を汗の如く滴らせたまま読まれた本達の1冊を幾千幾万の魔獣が記述された魔導書を両手で持ち上げると、ぬっと来訪者に向けてさしだす。
「……10……ド……10ゴル…………。」
口元をモゴモゴと動かして、またか細い声で途切れ途切れの声色で、価格を告げると買うか否かを問うためにジィと来訪者の瞳を覗きこむ、覗きこむ瞳の中にまた相手のことを値踏みするような色を見せるのだった。
そしてまただ。
ゴクリ、と生唾を飲むような音をたて、フードが剥がれて露になった素顔から顎先をくだり少しだけ隙間から見える喉を起伏させる。
それはどちらかと言うと生唾を飲んだよりも其処に何か生物がいてうねったような、そんな動きであった。