2020/07/07 のログ
ご案内:「九頭竜山脈 山中の温泉宿」にエレイさんが現れました。
■エレイ > ──夜。
九頭竜山脈のとある山の麓付近にある、やや寂れた感のある小規模な温泉宿を、男は訪れていた。
ロケーション的に立ち寄りやすい場所ではあるものの、あまり目立たない隠れ家的な
建物ゆえか客は殆どおらず、人気もあまり感じられない。
夕食を済ませ、ひとっ風呂浴びようと露天風呂まで足を向け、脱衣所で服を脱ぎ
タオル一枚を携え、浴場へと足を踏み入れて。
「いつもの旅籠の温泉もいいのだが、たまには違う風呂も楽しんでみるのが大人の醍醐味」
などと得意げに独り言ちながら、目前に現れた露天の岩風呂を眺め回す。
見慣れた旅籠のそれとは違う趣に、表情を緩めて。
「あっちよりは出会いの期待値は低いが……まああそこら辺はしょうがないという顔に──おや?」
独り言を呟きながら湯船に近づけば、視界に先に湯船に入っている人影を捉えて男は意外そうに目を丸めた。
てっきり自分以外は居ないものだと思っていたので驚きだ。
そう思いつつ、タオルを腰に巻くと湯船にゆるりと歩み寄って行き。
「……やあやあコンバンハッ。湯加減いかがですかな?」
と、緩い笑みを浮かべながら、片手を上げつつ気安く声をかけてみた。
■エレイ > その後、先客との間に何があったのかは、当人たちのみの知る所で──。
ご案内:「九頭竜山脈 山中の温泉宿」からエレイさんが去りました。
ご案内:「平民地区 訓練所」にスバルさんが現れました。
■スバル > 平民地区の一角にある訓練所、冒険者や、冒険者に成る事を求める彼らが訓練をして、己の身を鍛えるための場所。
その隅っこに一人、少年がいる、髪の毛を伸ばして自分の目を隠す様にした、小柄な少年で、その体は、女の子のような華奢で、肌も白く弱々しい。
おどおどと、周囲を確認するような動きは、何かを恐れているようでもあり、何かを確認しているようでもある。
暫しの間、周囲を確認していたが、少年の事を気にするような誰かは居なさそうだ、そもそも、夜の訓練所に人は疎らで、少年のほかにはあまり人は居ないのだ。
安心した様子で少年は、目の前にある打ち込み台に向きなおる。
背中に背負ったバックパックを下ろして、其処から小手と、刀を――脇差を持ち上げる。
小手を嵌めて、脇差を腰に差して、左手で抜いて、戻す。
それから、何時ものように、少年は、訓練を始める。オドオドと怯えながらも、自分を、鍛えるために。
■スバル > まずは、少年は己の体を動かし始める。体を、動かすための準備運動から。
ぐ、ぐ、ぐ、と屈伸運動に、アキレス腱を伸ばしたり、両手両足の可動域を広げるための、柔軟も含めた体操、時間をかけて体解していくのだ。
少しずつ、少しずつ、躰は柔らかくなり、可動域が増えていく、ゆっくり体を動かし続ければ、躰も温まってくる。
ふ、ふ、ふ、吐息が少しずつ熱くなり、少年の訓練は次の段階へと進む。
次の段階は、少年の基礎体力の訓練、つまり、走りこんだり、筋肉トレーニングなど行うことにするのだ。腕立て伏せ、腹筋、背筋などだ。
なので、少年は先ずは腕立て伏せを始める、細いからだ、細い腕、それに見合った非力な少年。それでも、頑張って、少年は歯を食いしばり腕立て伏せをするのだ。
一回、一回と、数えながら、腕を曲げて、伸ばす。
少年は、両親のように強くない、でも、長男なのだ。家には、誰もいないから。
家を守るために、毎日、毎日、鍛える事にしている。
何時、家に誰が返ってきてもいいように、だ。
汗をかき、息を吐き出しながら、頑張って、腕を曲げて、伸ばして。
「ふ、ふ……!」
息を繰り返し吐き出し、新たな酸素を吸入し、少年は、訓練を続ける。
怖いから、弱いから、強く、なりたいから。