2020/03/14 のログ
ご案内:「魔獣牧場」に獣魔目録さんが現れました。
獣魔目録 > 「報酬は高めだけどよー……夜勤ってのは辛いねぇ。」

中級クラスの冒険者である髭面の男の少しだけ酒臭い愚痴が今日も虚しく室内に木霊する。

――…此処は王都の郊外にある魔獣牧場。
大きな木製の門をくぐると、其処には広大な草原が広がっており、幾つか並ぶ小屋には1頭1頭魔獣が飼育され、或いは魔獣が預けられている。

空を飛ぶ魔獣には小屋と共に特別強固な結界が張られ、大地を駆ける魔獣には厳重に首輪と鎖が、水辺に住む魔獣には小さな泉か水槽が小屋の中に用意されている。

24時間出入り自由で、その為に木製の門の傍にも小屋があり、其処には冒険者ギルドから依頼を受けた信頼された冒険者が案内係とじて常駐している……万が一に備えてでもある。

牧場の敷地は魔法で結界が張られており、外からの侵入や中からの脱出を防ぐため出入り口の門以外はたとえ上空でも地面でも水中でも脱出することは不可能で、今夜はそんな魔獣牧場に異様な空気が広がっているのであった。

その原因は1冊の魔導書。
魔獣の皮で装丁された本に獣魔目録と赤い染料で書かれた魔導書なのであるが、是がまた魔獣と相性が有る意味よろしくなく、偶然この魔獣牧場に姿を見せたその魔導書から溢れる魔力で牧場の魔獣たちは妙に興奮をしているのだ。

もし、魔獣を預けているなら牧場の敷地に並ぶ小屋の一つに入り魔獣の様子を見てもいいし引き取ってもいい。

新しく魔獣を飼いたいなどあれば見学も自由、小屋を覗きお気に入りになった魔獣の小屋へと入り込んで愛でてみるのもいいだろう。
もし迷ったら入り口の小屋に常駐する冒険者に尋ねれば好みにあった魔獣が飼育されている小屋を教えてくれる。

勿論見学も歓迎で魔獣を見て回るのも良いかもしれない。
普段冒険でしか見られない魔獣たちの姿をゆっくりと見る事が出来るだろう。

牧場に張られた結界が獣魔目録の魔力に反応して壊れていなければ……だが。

ラウンドウルフ、グリフォンにマジックオクトパス、コボルトなどの獣人その他諸々。

何れも人と比べ物にならぬ力を持った魔獣たち
彼らが獣魔目録に影響された魔獣たちが小屋の中で来訪者を待っている。

――…その眼は爛々と輝いているが、だ。

獣魔目録 > 「うんうん、おじさんサボリたくなってきた。酒でも飲んでもう仮眠しちまおうかなー?」

暇である。
空虚である。
何もする事がないというのも結構かなりとても辛いもので、する事がなくなったら見回りでもすればいいのだが、項が妙にヒリつくのでそれも勘弁願いたい。

――…こんな日、こんな感覚は嫌な予感以外の何物でもない、なら客が来た時にでも注意するか?と眉間に皺を寄せて苦虫を噛み締めたような表情を浮べながら、手元に業務日誌を手繰り寄せ、頬杖をつきながら業務日誌に指を滑らせて中身の確認を。

もし、何か異変があるとすれば自分以外も誰かがこの感覚を感じ取っている筈だと信じて。

1ページ、1ページと狭い室内に紙を捲る音が静かに響く。
そうやって日誌を確認しながら冒険者の男は懐からスキットルを取り出し、やってられない、と言わんばかりに口で蓋を開けた後に中身の酒を呷り始めるのであった。

ふわりと濃厚で豊潤な酒の香りもまた室内に頁をめくる音以と共に広がってゆくだろう、まだ仕事の最中ではあるが。