2020/01/29 のログ
ご案内:「平民地区/宿の一室」に獣魔目録さんが現れました。
■獣魔目録 > ――とある宿の一室である。
小さな通りに面していて立地としては悪く、大通りから一つ路地をぬけないと宿を見つけることすら出来ない、穴場と言えば穴場の宿である。
利用者は冒険者や魔法学校の学生や騎士見習いと、あまり懐具合が宜しくない者が利用している安宿なのだが、どの部屋も普通の宿よりは心持広い良い宿でもあった。
さて、今宵はそんな宿の角部屋に備え付けの家具に異変がある。
よく利用する者ならわかるが、基本的に宿の忘れ物は見つけた者のモノとなる暗黙のルールがあるが為に、忘れ物は滅多にないのだが、何故か木製の机の上に1冊の魔導書が……。
触れば高級な革製品と同等の触り心地のする魔獣の革に装丁され、その表紙には【獣魔目録】と赤い染料で書かれている大変希少な魔導書である。
古今東西、大陸に住まう魔獣で一度でも人の眼に触れた事がある魔獣であれば全て網羅され、その生態から繁殖方法から弱点まで書かれた魔導書であり、頁に記述された魔獣であれば召喚術の適正がなくても、その名を認識するだけで召喚できテイマーでなくても一度だけ交渉することが可能という、ある意味で希少であり貴重であり容易く力を手に入れることが出来る可能性を秘めたものである。
もうひとつ付け加えるなら書は、求められることを好む。
もし目的を持って書に触れるのであれば書は触れた者の目的を読み取りそれにふさわしい魔獣の頁を開いてくれるだろう。
ともあれ魔導書が一目に触れやすい場所に姿を見せるのは非常に珍しい、若しかしたら本当に誰かの忘れ物かもしれない、が……。
■獣魔目録 > 誰も魔導書に気がつく人間がいないとわかれば、魔導書はただの1冊の本でしかなく、獣魔目録は誰かの手が触れるその時を待つように静かにパタンと表紙を閉じて、その時まで静かに本であり続けるのであった。
ご案内:「平民地区/宿の一室」から獣魔目録さんが去りました。
ご案内:「平民地区/古本屋」に獣魔目録さんが現れました。
■獣魔目録 > 平民地区の一角にある古本屋。
評判も品揃えも悪くない、平民地区の本好きならお店の名前くらいは聞いたことがあるくらいの知名度の古本屋である。
かなり古くからそこで古本屋を営んでいるようで、今は3代目である少年が無くなった両親からお店を引き継いで1人で切り盛りしている。
眼鏡をかけた可愛らしい少年が店番をしている古本屋はどこですか?と訪ねると十人のうち八人くらいが名前をだすそんな古本屋であるが、普段であれば夜間もお店を空けているのだが、今夜に限っては不思議な事にお店がシンと静まり返っていた。
出入り口のドアは開いている。
だけども店主である少年の気配は無い、なのに今の今まで誰かが居た気配はある、あるのだが……実際にその姿は見えない。
さて、その古本屋の店主である少年が仕入れることに成功した魔導書がある。
オークションにかけられる程の希少価値のある本ながら、どうも古美術商から購入したらしき希少な魔導書。
その名を「獣魔目録」と言う。
古今東西、大陸に巣食う魔獣で一度でも人の眼に触れた事がある魔獣であれば全て網羅され、その生態から繁殖方法から弱点まで書かれた魔導書であり、その書の頁に記述された魔獣であれば召喚術の適正がなくても、その名を認識するだけで召喚する事が出来る上に、テイマーでなくても一度だけ交渉することが可能という、ある意味で希少であり貴重であり誰でも容易く力を手に入れることが出来る可能性を秘めたものである。
古書が並ぶ書架が四つほど、人の膝丈くらいの高さの台が幾つか並び、奥には代金をやり取りする為のカウンターと更に奥に居住区に繋がるドアが有る、それに今夜に限っては居住区に繋がるドアまでもが半開きで、盗賊に入り込まれた?にしては荒らされた形跡も無く、不思議な事になっている。
ただひとつ、あえて言うのなら魔術に適正のある人間が一歩古本屋に踏み込めば、その身に凄まじい嫌悪と怖気が走るだろう、まるで竜の巣にでも踏み込んでしまったかのような、そんな感覚、だが其処に竜はいない。
代わりにカウンターには1冊の本が開いた状態で置かれている。
其処に目を向けるなら、丁度そのタイミングでぺらりと誰も触れても風すらないのに1枚だけ頁がめくれる不思議な光景を眼にするだろう。
その頁に書かれているのは【ミミック】なのか【ドッペルゲンガー】か【フロートボール】か【ヘルハウンド】か、それとも他の魔獣なのかは近づいて書を覗きこまないとわからないだろう。
――…耳を澄ませば聞えるヌチッと粘り気のある液体が捏ねられ空気を混ざる音、それは獣魔目録から既に召喚された魔獣の足音か、それとも居住区の奥で何か起きているのか、それもまた見に行かなければ判らない。
書を手に取るのか、それとも居住区の奥を探すのか、好奇心か善意か、それにより今宵古本屋を訪ねた人間が何を見て何を感じるかが変わるだろう。