2020/01/16 のログ
ご案内:「無名遺跡/塔の最上階」に獣魔目録さんが現れました。
■獣魔目録 > 無名遺跡に幾つか存在する廃墟の中で形を保っている数少ない建造物の一つ、夜空を突くように天に向けて高く作られた塔。
残念なことにその塔を作る予算がなくなったか、創り手が死んだか理由は様々考えられるが、その塔は港町にあるような灯台程度の高さまでしか作られる事はなかった。
その高さは60m、最上部はまだこれから空を目指して作られる予定だったのか、何も無い広場となっており、その外周を柵の代わりに魔物を模した趣味の悪い石像がぐるりと囲むように並んでいる。
――…問題はその中央である。
其処には確かに昨日まで何も無かったはずなのが、今夜に限っては大理石で作られた高さにして人の胸辺り、幅にして大人が手を繋いでぐるりと囲むように5人くらいは必要な台座があって、その中央には悪魔を模した石像……ガーゴイルが合った。
その台座と同じ素材で出来たように見えるガーゴイル。
人間に似たつくりの二本の腕に二本の脚の体躯に背中には大きな翼が広がり、太い両腕と共に空から降り注ぐ輝きからその腕に抱く黒革の装丁で作られた本を守るように座っている。
立ち上がれば人の身体の半分ほどの身長だろう、尻から伸びる尾の先端は残念ながら台座食い込んで傍からは見ることは難しい――そんな芸術品としてはひどく不恰好なガーゴイル像、問題はそんな像よりもガーゴイルが大事に抱えている魔導書である。
獣魔目録。
ガーゴイルに触れずとも表紙くらいは読むことができよう。
黒い魔獣の皮を使って作られた表紙に赤い文字で描かれたその本のタイトル、知る人ぞ知る魔導書である。
もし、その価値を知って
もし、その価値を知らないで
本に触れてしまったらガーゴイルは動き始めだろう、それは石像として生み出された一種の魔獣なのだから。
無理に奪い取ればそれは自由の身となり、本を手にした人間に一つの問い掛けを向けた後に牙を向く。
もし礼を尽くして受け取ればガーゴイルは石造に戻り、その場で所を開く事が出来よう。
■獣魔目録 > 寒空、と表現してもいくらいに冷たい夜風が吹く。
並び立つのは石像ばかり、ガーゴイルもまた材質は大理石で作られている為に、寒さなど感じないのだろう。
風が吹く程度では動かず。
誰かが触れにくるまではジッと大理石の像として息を潜める。
いや呼吸をしているかも怪しく、ただ塔の屋上には石像があり、ただその像は本を抱えて、その時が来るまで沈黙を続けるのであった。
ご案内:「無名遺跡/塔の最上階」から獣魔目録さんが去りました。