2020/01/05 のログ
ピング > 閑散とした店内。
暫しの間、中年が遊具と戯れるという絵面が続くのだった。

ご案内:「平民地区 雑貨店」からピングさんが去りました。
ご案内:「街外れの図書館」に獣魔目録さんが現れました。
獣魔目録 > 1件の図書館がある。
街外れにひっそりと佇む小さな図書館だ。
其処は管理者が管理を放棄しているのか、理由は誰も知らないが何時も出入り口の扉が開放されており、利用したい人間が利用したい時だけ利用している、貸し出しもである。

一応ルールでは貸し出しは1週間だが1ヶ月くらい還ってこないことは何時もの事で、それを咎める人間がいないのだから常習となり、書架の本は何時も穴だらけ。

だが不思議な事に誰も本を返さない事がない、どれだけ時間がかかっても必ず返却される、だから皆読みたい本は貸し出しカウンターにメモを置いて利用者同士でやり取りをしている。
もう一つ、不思議な事に図書館の中は荒れていない。
誰かが暇つぶしに掃除しているのか、若しかしたら管理者が掃除しているのか七不思議になりそうなレベルで誰も掃除をしているところを見たことがない、不思議である。

そんな風に誰からも愛されている小さな図書館であるが、今夜は少し様子が違う。

何時もなら誰かしらが利用しているのに今夜は利用者がいないのか、図書館の明かりはついていない。
もし誰かの代わりに点けるのであればそれは入り口の扉の直ぐ脇にスイッチがあり、押すと魔力が動力の明かりが一斉に図書館を照らすだろう。

そして本の穴抜けは何時もの事であるが、今夜は何故か1冊の黒い本が貸し出しカウンターの上に放置されている。

黒革で装丁された1冊の本。
表紙には赤い染料が何かで獣魔目録を書かれている。

それは知る人ぞ知る現存する魔獣を網羅しら魔導書。
その頁に書かれている魔獣は誰でも召喚でき、誰でも契約の機会を得ることが出来るという。

あくまでも「機会を得る」事。
流石に必ず契約できるわけではない。
それに本の真髄はその情報にある。

もし本の所有者が書物に書かれた魔獣と遭遇した際には書物が所有者にその魔獣の情報を囁き、その弱点すら教えるという。

その獣魔目録が何故図書館に置いてあるのか。
理由は誰も知らない

ご案内:「街外れの図書館」にトワさんが現れました。
トワ > その図書館のことを知ったのは、本当に偶然だった。
あまり人と関わり合いになりたがらない少女が、偶々耳にした噂。
それを確かめに向かった先に、ぽつんとそれはあった。

明かりのついていない館内は、閉まっているのかと思ったけれど、どうやらそうではないらしい。
鍵のかかっていない扉を開けて、入り口近くのスイッチを押せば、整備はされているらしく明かりが灯る。

「………はずれ、だったみたい。」

図書館という場所だけで、期待は膨らむばかりだったけれど、灯りに照らされた穴だらけの書架を見た途端に、それも一気に萎んでしまった。
やはり管理人のいない図書館では、どうしてもそうなってしまうのだろう。

その割に館内は荒れてはいない。
きっとここの利用者はマナーが良いのだろう。
そんなことを考えながらカウンターの方へと近寄ってみると、誰かが返却したのか1冊だけが放置されているのに気づいた。

「……? 普通の本じゃない……?」

黒革のそれは、見た目からしてただの本ではなさそうだった。
漂う気配も言わずもがな。タイトル自体は聞いたことのなかったものだけれど、何となくどういうものなのかは理解できた。

「こんなところに放っておいたら、危ないのに……」

一体だれが、と。管理の杜撰さに少し憤るけれど、管理人不在のこの図書館では仕方がないのかもしれない。
小さく溜息をついて、その本に触れる。何も知らない人が間違えて開いてしまわないように、注意書きでも添えて仕舞っておこうと。

獣魔目録 > ――…誰かの気配で眼を覚まし、誰かの声で覚醒をする。

それは人の手にあってこそ活きる存在する魔獣を網羅した魔導書、その存在意義のため己を読める存在が近づいただけでそれは発動をする――本来は触れなければ発動しない筈だが、魔導書に込められた封が劣化し魔力が減少している為、僅かな魔力でも反応して開いてしまう。

最初は誰の手に触れる事無く、表紙がパタンと開く。
次にぺらりと最初のインデックスが開くと、そこからは一定のリズムがあるが水が高い場所から流れ落ちるように頁はめくれて行く。

黒い毛皮をもつ影に潜む魔獣、それの亜種で姿が見えないと言われている魔獣、さらには東方に棲むといわれている雄しか存在しない猿から目玉に触手を生やした空中に浮く目玉の魔物や諸々と、よくよく見ればドラゴンからユニコーンなどまで他種多岐にわたり様々な魔獣が本の題名どおり描かれ書かれている。

もし、もしもそのページがめくれている最中に手を挟めば、その頁に記載されている魔物を召喚するための魔法陣が少女が足をのせる床に描かれ始めるだろう。

もし、頁が閉じた後に自らこの怪しげな書を手にとり頁を開き興味を持って止め、その頁に描かれている魔獣の名を読めば、その魔獣は呼ばれ矢張り少女が足を置く床に魔法陣が描かれ始める。

許された道は二つ。
既に少女の目には一度この黒革の魔獣の皮で装丁された本が映ってしまった。
もう本に触れる事無く図書館を出ようとするのは難しいだろう。
それでも逃げようとすれば獣魔目録は残された魔力を持って、少女を図書館の内側へと引きとめ、それ以上に書物の中に魔力の手を用いて引きずり込もうとするだろう。

魔力の動力で動く明かりに照らされた狭いが明るくなった図書館とそれに似合わぬおぞけ立つような魔力を滲ませ始めた書物が1冊。

少女はどのような答えを選ぶか。