2019/01/19 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にヴィクトールさんが現れました。
ヴィクトール > 犯されたのか、それとも可愛がられたのか。
どちらにしても、自分のものだと思っている存在を汚されて胸に滴る酸の心地に耐え忍ぶほど慎ましい男ではない。
だからか、意地悪なフェザータッチは繰り返されて、彼女の肉欲をじっくりとじっくりと起こしていく。

「……意地悪したくなるんだよ、可愛くてな」

子供っぽい拗ねた口調と、羞恥に浮かぶ頬の赤色が可愛らしい。
トーンの乱れた声が、徐々に甘く掠れていけば、ぞくぞくと嗜虐心がくすぐられていき、太腿の快楽神経を炙り出していく。
多く密集しそうな場所……太腿の付け根、ビキニラインの手前であったり、内股の特に肌が擦れない箇所。
臀部と太腿の境界線と、快楽とこそばゆさの合間を行き来するような愛撫が、身体を揺らしにかかる。
ほんの少し、僅かでも強く反応してしまえば、そこが弱点と晒すのと変わりないほど、指の侵略する範囲は狭く、念入りに撫で回す。
その合間に見せるのは、金の瞳を意地悪な笑みでギラつかせる、嗜虐心溢れる表情だった。

「赦さねぇ、その分……マリナをがっつかせてもらうぜ?」

嫉妬の気配が気に障ったと勘違いさせたのだと謝罪の言葉から察すれば、更に傷口を広げるような言葉を重ねてしまう。
だが、罰として求めるのは疼きつつある身体を捧げる、甘い奉仕。
ニヤッと普段の悪人面が満面に笑むと、大丈夫だと諭すように額にも唇を重ねていく。
がっつくために羞恥を誘っていけば、周囲を気にしてか、躊躇いがちな可愛らしい囀り。
少しの間、心を決める無音の後にスカートの裾が徐々にめくられていく。
白いタイツに包まれた太腿が妙に厭らしくて息を呑み、食い入るように視線が股座へと集中し続ける。
そして、顕になった張り付くような密着度の純白が顕になれば、小さな肉ビラの影が浮かんでいた。
エロいな…… と、思わず思ってしまった厭らしさを吐き出して、小さく喉を鳴らす。
その言葉の後に視線を重ねれば、耳まで真っ赤にして恥じらう彼女の狼狽え具合がまた愛らしい。
説明を耳にしつつも、するりと膝立ちになれば、悪戯にショーツのすぐ前へ顔を近づけて、すんと鼻を鳴らす音を響かせた。
先程までの愛撫に蜜を溢れさせていれば、濃厚なその香りがあるはずだが、どちらかと言えばもっと恥ずかしめて、被虐と快楽を煽りたくてたまらない。

「……どうやらマリナも、大分厭らしい気分になってきてるみてぇだな?」

そして、顔を傍に近づければすぐに見える鈴蘭の囲いが目に入れば、ショーツに指をかけて手前へ僅かにずらした。
以前自分が刻んだ紋がよく見えるように恥丘を晒させると、自身の瞳に映る世界を、肌に触れる部分から魔術を通して脳裏に流し込む。
鮮明な妄想のように、興奮の印というように浮かぶ子宮を象る紋という証拠を見せつけていくと、クツクツと意地悪く微笑う声も耳元に囁くように近い。
無論、その香りを求める鼻の音も全てだ。

マリナ > 意地悪で嗜虐的な彼にだいぶ慣れたころではあるけれど
慣れた分と同じだけ、少女にもそれに対応する様な被虐性が芽吹いている。
恥ずかしい。そう思えば思うほど、下腹部が疼いて、邪欲がそそられるようになってしまった。
赦さないと言われた時には目に見えてしょんぼりしたけれど
くちびるが甘くフォローしてくれたので、すぐに湧き上がってくる――愛しさ。
触れてほしい、触れたい。そんな気持ちは確かに存在するものの。

「…………いま、ここで、……ですか……?」

下着を露出させるので精一杯な場所。
思わぬ視線が周囲にないか確認する様に、少女の視線が彷徨う。
愛する人に対しての行為とはいえ、自らスカートをずり上げるなどはしたない行為、見られたらどうしよう。
そんな自分の狼狽も、きっと彼は全て見透かしているんだろう。
下着越しとはいえ、露わになった股間に顔を寄せる様子に全身が熱くなるのを感じつつ、肩を竦ませ。

「ぅ……、……その、あの、……ヴィクトール様に触ってもらうと、……すぐ……」

つくづく彼には逆らえず、正直に肯く自身の発情。
蜜の滲ませる淫靡な牝の匂いは、敏感な相手にはすぐに悟られてしまうのだろう。
それは湿気となり、寒い屋外でも熱く籠もってショーツの内側を火照らせている。

「――――……あぁ、もぉ……すぐ出ちゃ……ぅ」

脳裏に直接映し出される光景。
彼の指に引っ張られ、白い下腹部が見やすくなったそこに映る欲望の証。
ただの欲望ではなく、他でもない彼に抱いてほしいと思った時にだけ晒してしまう本音が。
隠したくとも隠せない身体にされ、頬を染めたまま眉を下げ、困り顔。
羞恥を感じれば感じた分だけ、紋章で露わとなる小さな子宮がうずつく。
まるで期待する様に膣内がきゅうとざわめき、蜜を外に押し出そうとしているのを自覚した。
それもこれも彼が植え付けた被虐の性癖。

「ヴィクトール様……あんまり匂い嗅いだら……だめ、です……。濡れ、てる、ので……」

見られることも当然恥ずかしいけれど、なにより嗅がれることが堪らなかった。
言った後、視線を合わせるのも耐え難くなり瞼をきゅっと閉じた。
裾を摘まむ指も震えるほどの羞恥。
その裏で、彼にこのまま抱き締めてほしい。キスしてほしい。冷えた肌を重ねたい。
などと、思ってしまう自分の浅ましさには呆れてしまうほど。

ヴィクトール > 意地悪ばかりすると枯れてしまう、温室育ちの花の様な純粋さ。
そこに僅かに甘い蜜を一つ垂らすと、途端に少女の被虐が甘い願望となっていく。
それが僅かに薄紅色の様なモヤとなって自身の瞳に映り込む。
意志も思考に影響され、そして感情はその発露の一つと身体が覚えて身についた力だが、見た目の儚さとは裏腹に厭らしいところが堪らず、草地の上で今にも押し倒したくなるほど指先がじっとりと汗ばんだ。

「ここで、とはいってねぇけど……マリナは外がご希望か?」

周囲を見渡しても人はおらず、街道沿いからも少し離れているので、通りかかる人間が見えることもない。
二人だけの森の空間、戸惑いを見つめながらに言葉尻を拾って意地悪に変えてしまう。
ニマニマと少し憎たらしさある悪い顔で微笑み、自ら晒したがっているように変えていく。
すんすんと鼻息を立てれば、鼻腔に張り付く淫蕩な蜜の香りにゆっくりと口角が上がる。
スカートの中で体温に煽られて湿気った空気にも混じり、宛ら股座に顔を突っ込んだようにいっぱいに届く。
何かを躊躇いながら呟く様子を一瞥すると、視線は改めて恥丘を映し出していく。

「……なんつぅか、マリナのイメージって雪とか氷が浮かんだんだよな。真っ白くて綺麗で、んでもってよく見ると可愛い柄してるだろ?」

まるで粗相の様な甘声と共に白地に広がる、己が根付かせてしまった被虐の爪痕。
いけないこと と言いたげな音とは裏腹に、声は甘く蕩けるようにすら聞こえ、その瞬間肌を熱いと生きが撫でる。
下腹部の真っ白なキャンパスに描かれたのは、自身の闇を示すような黒色。
それが冬の夜明けに窓へ広がる霜のように枝葉を広げ、所々に氷結晶の花が散る。
それが子宮を示すハートを描き、純粋さを示す鈴蘭が卵巣の様に浮かび上がる。
そして、楔のように刻まれた自分だけのものと指し示す一文へ指を当て、つぅっと横に滑らせてなぞっていった。

「そんなマリナを……厭らしくするって思うと、堪んねぇんだよ。前に見せたろ? 乱暴なぐらい、閉じ込めたくなるってな」

その顔は、美術品を愛でるような満足げな顔ながらも、雄々しい肉欲のギラつきを溜め込んだ、この男らしい劣情の笑み。
檻に閉じ込めて、柔らかな房の天辺を金冠で貫き、鎖をつなげて愛奴として永遠と快楽に沈めていく想像。
乙女心のままに淫欲に沈めて、ずっと甘い悲鳴ですり寄る…まさしく愛奴に変えてしまいたいと。
あの話をぶり返しながらも、濡れているときいても聞かず……紋の中央へ唇を押し付けていった。
少女の熱、香り、柔らかさ。
全てを堪能するように顔を埋めていき、するりと腰を抱き寄せる。
心の奥で幾度抱きてぇと呟いたことか、30秒ほどそのままにしていると、名残惜しそうに舌先で印を擽ってから離れていき、震える指先を解いていった。

「ヤりてぇけど、風邪引いちまうからな。河岸を変えるか」

小さな体を抱きしめ直し、耳元に囁くと、ぽんぽんとあやすように頭をなでていく。
そして小さな手を掬い取ると、指を絡めてつなごうとするが、何故か途中でそれをやめていき、普通に重ね直す。
武骨な手と、華奢な小さな手ではサイズの差が大きく、子供の様な手の指又を限界まで開かせて壊してしまいそうに思ったからだった。
代わりというように、離れないようにしっかりと握りしめれば、ザラッとした戦の掌が白絹を包む。
草地から街道へ抜け、坂道を登るように進んでいくと、重ねた手を通して魔力を流し込む。
先程の紋と同じ様に、今度は彼女の思考と自身の思考の領域をつなげていく。
願うこと、欲すること、思うこと、その全てが互いに伝わってしまう。
まずは彼女が何を求めているか、それを術で探りつつ身体を伝わせた魔力は小さな体を支えもした。
少々歩いた先にある温泉宿を目指しているが、温室育ちの少女ではその道程はつらかろうと、歩く動作を魔力で補助していく。
歩いても歩いても、その身体に掛かる負荷は最小限となり、長い散歩も苦にならない筈だ。

マリナ > 「ち……っ、違います! ……マリナ、変なこと言いました……」

外でシたいと思った訳ではないけれど、そう言った様な展開に慌てる。
当然ここでは人の目が絶対に注がれない保証はないし、それは自身の神経を散漫とさせそうだ。
――できれば2人っきりがいいだなんて、今度はそう思ってしまった自分に気付く。
それならなにも気にせず、彼だけを見て感じられるなんて、つくづく淫蕩になってしまった。
そんな自分に相応しい、下腹部に宿る鈴蘭の紋。
彼の指が名をなぞると、小さく喘ぐような声が搾り出た。

「――――ん……。 これ、マリナのイメージで印して下さったのですか?
 嬉しいです……。模様もですけど……ヴィクトール様の、お名前がいちばん」

一瞬だけ羞恥を忘れた様に、幸せそうに温かな声音が囁く。
自身の淫らな慾を吐露する紋は、時に少女を困らせるけれど、それでもやっぱり嬉しい。
彼がこの身体に残したもの。それが自分をイメージした柄であったと知れば尚更。
紋に顔を埋める彼に抱き寄せられ、とくんとくんと鼓動が速くなっていくのを感じる。
それは羞恥や狼狽からくるものではなく、まさに恋する音。
身体の敏感なところに装飾品を付けられ、下腹部に彼の名を浮かばせる姿は恋と呼ぶには淫靡に過ぎるかもしれないけれど
それでも心の内側には淡くもどかしく、指先を絡めるだけで呼吸がしにくくなる様な感情も確かに存在している。
相反するのか、それとも連なっているのか、思慕と肉欲に翻弄される少女は
舌先の感触にふるっと背筋を震わせつつ、離れていく彼の顔を見下ろす。
名残惜しいのは少女も同じく。このままずっと強く抱き締めていてほしいなどと思ってしまう。

「……はい」

それだけ呟いて、少女からも腕を伸ばしていった。
すっぽりと自分を覆える大きな背丈、鍛えられた体格、そして彼の匂いが心地良い。
空気に色が混じり始めると羞恥に口ごもってしまうけれど、一旦下腹部も隠れ
まるでデートの様に歩けるとなると少女は途端にのびやかになる。
気遣いに気付くこともなく、握った手の大きさに柔らかく力を込め、溢れる愛慕を伝える様に。
見上げると彼がいる。時折こちらを見てくれれば視線が合う。その幸福といったら。

「ヴィクトール様。どうか明日も明後日もその先も、大きな怪我をしないで帰ってきて下さいね」

願うのはそれだけ。
肉親から離れた少女にとっては、今や世界で彼だけが依存の対象となっている。
行先は彼の魔力のおかげですぐにわかった。
温泉宿――というのなら、彼に伝わる少女の思考に時折混じる、雑念。
このままデートがしたい。振り返って額にキスしてほしい。優しく名前を呼んでほしい。
などという甘ったるい欲求に差し込む様に、温かなお湯の中で
のぼせるくらい交わっていたいだとか、一晩同じ布団で暖め合っていたいという俗情も。
―――ちらりと。明日彼がお仕事に行きそびれるくらい一緒にいたいだなんて、悪い考えも筒抜けやも。
そんな風に呑気に歩く少女の息が切れることがないのは、彼のおかげ。
通常であれば挟まなければならない休憩の回数は2度や3度では収まらない。

ヴィクトール > 慌てふためく様子を眺めながら、クツクツと楽しげに微笑う。
ここで裸にさせて、厭らしく腰を振らせながら交わったら、恐らく此方に顔を向ける余裕すらないかもしれないと思いながら。

「まぁな、冬の朝に外に出るとよ、窓に霜が張っててな? よく見ると霜の先に花みてぇのが幾つもあるんだよ。真っ白くて綺麗なんだけど…熱が伝わると解けちまう……ぁー…儚さか、そんな感じだ」

心の透明度もガラス細工の様で、少し力を入れたら壊れてしまいそうな脆さ。
だからこそ言えぬこともあり、綺麗が故に罪悪感を募らせるところもある。
そんな後ろめたい部分は、顔にも口にも出さないが。
名前が一番うれしいと甘い告白をするなら、そういうところだと微笑みながら顔を埋めていった。
下腹部からも感じる鼓動は情欲よりも穏やかで心地よく、目を細めていきながら軽く頬ずりすれば、僅かに硬いひげが擦れていく。
もう少し欲しいのを我慢して、そして抱きしめて感じる少女の香りと熱に布地越しに彼の分身が、先端をもたげたのが下腹部に食い込むだろう。
ゆるく、大きく息を整えて肉欲を一度止めていけば、小さな姫君の手を握って緩い坂道を登っていく。

「勿論だ、大怪我しちゃあ、マリナを抱けねぇし、泣き顔で腹を猫みてぇに叩かれそうだ」

貞淑な女が、愛する男の無事を願うのと何ら変わりない。
ただそれが……嬉しいのに、ぶすりと胸の奥底を抉るように突き刺していく。
兄が言うとおりだ、言わぬほどにその痛みは増して、言いづらくなる。
分かっているが言えないのは、この愛らしい顔から感情が消えるのが嫌だったのだろう。
ある意味、恐怖というものを初めて噛み締めていた。
その気持を押し殺して、頭の中から消し去っていくと思考の空間をつなげていく。
徐々に流れ込む甘ったるい願望に、顔がニヤけないようにするのが精一杯になりつつ、今日も寒いな等と当たり障りない言葉を吐きながら空を見上げる。
無論、表情を隠すためだ。

「……行きそびれるぐらいか、マリナも悪いこと考えるようになったなぁ?」

心を見透かした…というよりは、言葉通りに確かめながらの返事を音とする。
隣の彼女を見つめ返せば、ニヤッとしたあの悪い笑顔を見せながら、今度は自身の想像を見せつけていく。
デートをするなら、少女が見たい世界を見せて回りたい。
九頭竜山脈を超えた先の、異国の街並みや、海の先の倭の国もいいだろう。
そんな想像から一気に欲を広げる。
東洋の街並みの中で、覆いかぶさるような身長差で唇を奪い、抱きしめながら金糸を撫ぜる。
床敷の寝床の上で言葉もなく、ただ欲するがままに正常位で、後背位で、座位で汗だくになるまで交わり。
湯船でも、その小さな仔袋が子種でギチギチになるまで濁り湯をちらしながら、立ちバックで貫く。
のぼせたような赤らむ彼女を抱き上げて、永遠と交わっては抜け出そうと思えば抜け出せる、緩い隙間しか無い竹柵の座敷牢に閉じ込めてしまおうか。
そして、毎夜毎夜自分だけの狭い場所に閉じ込めて、腹から揺り籠が零れ落ちないようにしてしまおうか、と。
そんな直球過ぎる肉欲の想像を、躊躇いなしに流し込みながら歩けば、気づけば想像した様な和風の宿屋の前だ。

「……入ったら閉じ込めるまではしねぇけど、…分かるよな?」

想像が現実になる、否、それを上回るかもしれないと。
暗に伏せた言葉を投げかけながら、金色の瞳が小さな牝を前に瞳に欲熱を宿す。
ゆっくりと手を解いて、術を解除しながら頬をなで上げていくと、今度は現実の音で少女の答えを待つ。

マリナ > ――――嬉しい。
恋というものは初めてなので、他の男性がどうなのかは知らないけれど
少なくとも彼の意地悪な部分は甘い心悸を呼び起こし、大袈裟ではない根から支えてくれる優しさは愛おしさを生む。
そんな彼が自分を想って描いてくれた紋もまた、愛しい存在。
身も心も彼のものなのだという実感が、また。
なんの心配もなく胸を焦がすだけで日々が過ぎていくという幸福に、酔い痴れる。
いつだって、言葉で、行動で安心させてくれる彼にも。

「えっ? ……そ、そんなことまでわかります……?
 だって、本当はずっと1日中お傍にいたいんです……あっ、もちろん!そういう訳にはいかないこと、わかってます」

手を繋ぎ、会話を交わし、幸せを噛み締めて歩いていると突然頭の中で想像した”悪いこと”を指摘されて目を丸くした。
悪戯が見つかった子供の様に恐縮しつつ、わがままものせてしまう。
危険な仕事をしている彼はきっと、仕事中に自分を思い出すことなんてないのだろうけれど、少女は違う。
ふとした瞬間、常に彼のことを思い出すので、離れている時間が途轍もなく長く感じてしまうから。
完全になにからなにまで中毒になっている少女の脳裏を、恋という甘い呼び方ではない肉欲の情景が過っていった。
最初は見たことのない景色への憧憬に表情華やがせたけれど、次第に赤くなっていった。
現実ではない、はずなのに、彼に抱かれて喘ぐ自分の気持ちがよくわかる。
きっと愛する人のことだけを考え、その子を宿し、それでもまだ求められたい欲張りな女になるのだろう。
なんて魅惑的な光景を注ぐのだと思いながら。

「……………ヴィクトールさまぁ……」

観念した様に堪らず、その名を呼んだ。
握る手が熱い。なにもされていないのに照れる少女は、第3者が見れば不思議なのだろう。
思考に翻弄されつつ宿屋に辿り着いたころには、まだ頬をぽっぽと火照らせた状態で、彼の顔を見上げ。

「……はい。 マリナは、ヴィクトール様が、大好きです」

大きな掌が頬を撫でるうち、少女の目は細められ、心底嬉しげな微笑みを向けた。
恥ずかしさはまだ残っているけれど、それ以上に彼と共にいられる時間が嬉しい。
―――歩いたことで一時的に鎮まりかけていた願望が、再び灯る。
下腹部の違和感は、儚くも可憐に彩ってくれた紋が強く浮かび上がった証拠。
ふ、と吐いた息にはすでに幾分かの熱が孕んでいた。

ヴィクトール > 「さぁ、何で分かっちまったのかな? それなら、マリナも自分の身ぐらいは、自分で守れるぐらいならねぇと、戦場には連れてけねぇな」

彼女の可愛らしい悪巧みを指摘すると、物音に跳ねる仔猫の様に驚いていた。
クツクツと意地悪な微笑みで、バレた理由を誤魔化しながらも彼女の願望には否定はしない。
自分が行く戦場は、最前線の兵士より苛烈で生き死にの瀬戸際に近い場所。
それ故に高ぶりが肉欲へと変わり、可憐な彼女の様な女を組み伏せて、溜まりきった淀みを注ぎたくなる。
一歩手前の場所でも、敵は来るかもしれない。
倒せずとも、殺せずとも、身を守って隠れるぐらい出来るなら連れて行ってもいい。
そこまでは言わないが、そうは思っており、少しだけ努力を促すような餌をチラつかせていく。
――とはいえ、モノになるかといえば、魔力なしではここまでこれなかった現実が物語っている。

「……」

乱暴なほどの獣欲を晒していくと、徐々にその口径に恥じらいの赤が深まっていく。
生々しい程に彼女の身体にはイメージが浸透し、張り付くように肌を、胎内へ彼の熱を錯覚させるかもしれない。
今しがたまで、それが現実だったかもしれないと錯覚させかねないほど、鮮明なイメージ。
彼女の意志へそれだけ介在できるのは、身体に紋を染み込ませるほど彼女が自分へ気持ちを向ければこそ。
甘い慕情が心のプロテクトを解いて、無防備に意志に触れていける証拠。
あれだけの欲を見ても照れる様子に、此方も押し殺すあくどい笑い方が出てしまう。

「……俺もだ、マリナ」

嬉しいのに痛む、その理由は我儘なのだからと飲み込んで微笑み、撫でていく。
吐き出す吐息の艶っぽさに惹かれ、顎に指を掛ければ、上向きにさせながら奪ってしまう。
唇を交差させて、瞳を閉ざして過ごす、ほんの数秒の静寂。
寒風に少し乾いた唇は、大事にされてきた少女とは違う感触を与えていく。
そしてゆっくりと互いの影が離れていけば、行くぞという言葉の代わりに手を握って門をくぐった。
引き戸が独特の滑車音を響かせると、そこには脳裏に見せつけた世界と似た光景が広がっていく。
木目を活かす板張りと、大きな靴脱石が敷かれた東洋の玄関。
薄っすらと漂う藺草の香りも、集落や城でもあまり感じぬものだろう。
やってきた店主も見慣れぬ麻の服に袖を通し、この一角だけが王国とは異なっていく。
部屋の話を通し、靴を松竹錠の靴箱に収め、渡された鍵の部屋へと彼女を誘う。
その合間も、障子張りの宴会場の前を抜け、中庭が覗ける細い木製フレームの引き戸の廊下を歩み、板鳴りの音が淡く響いた。

「そいや、風呂でのぼせるぐらい交わりたいんだったよな?」

何処と無く企み笑みな悪い顔で振り返りつつ、複雑な切り込みが施された、木製の鍵を引き戸に差し込む。
カコッと軽い音を響かせて解錠されると、戸を引いて中へと誘う。
畳張りの室内に床の間、床脇に出書院といった確りとした東洋の客間。
そこと通ずる別の引き戸の方へとそのまま歩むと、そこを開いていった。
桐の湯船に竹柵の張られた客人だけの露天風呂、それこそ最初に誘った外の交わりと、妄想と全て絡めたような状況を前にしていく。

ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にマリナさんが現れました。
マリナ > 「が……頑張ります!走って、銃の使い方をもっと上手になって、護身術も……。
 それと……ヴィクトール様のお怪我を治療する力もつけたいなと……」

まだ至らないところが多いので口を大にしては言えないけれど、治癒についても興味がある。
ぽつと呟く様に加えて、密やかに目標を定めたのだった。
とはいえ自他共に認める運動音痴なので、どれだけ時間がかかるやら、ではあるのだけれど。
きちんと自立している彼とは違い、なにもかもが相手に依存しているし、生きる糧すらもというのはまだ未熟な少女らしく。

――――重なるくちびるに、色欲とは違う部分が充足されていく。
背伸びして、瞼を閉じて。想いに応えてくれたことが心を温める。
唇が離れた時、幸福感と照れくささを交えた笑みをこぼす少女は、そのまま恋する乙女だっただろう。
その一方で、下腹部ではうずうずと夢想を現実として受け止めたい乾きの様なものがあるのだから、忙しい。

まだ感触の残る唇を気にしながら、手を引かれて足を踏み入れる宿は異国情緒に溢れていた。
思わず、わあ、と感嘆の息をこぼし、目を輝かせる。
九頭龍温泉には従兄に連れられたことがあるけれど、それに似ている。
あのころは温泉を楽しむ余裕などなく、設備を観察する気さえ起きなかった。
けれど今は違う。隣にいるのは大好きな人で、まるでお忍びのデートのよう。
ちなみにきょろきょろしすぎていて、手を繋いでいなければ
柱にでも何度かぶつかっただろうし、ちっとも進まないだろうことは予想できる反応。
途中すれ違った利用客と見られる人も異国めいた布を纏っており、あれが着られるのだろうかと憧れの眼差しを送ったりも。
そんな感じで注意散漫だったため、突然先ほどのそらごとに突っ込まれた様な言葉に素っ頓狂な声を出し。

「ふぇっ!? まっ、マリナ、そんなこと言いました!? ……あっ、考えたから……。
 あれはっ、あれは……その、だって、……ヴィクトール様とずっと一緒にいたい、のでぇ……」

かあぁっと顔が真っ赤になっていくけれど、嘘はつけない。
体力はもたないくせに、きっと少し肌を重ねて終わり、なんて扱いを受けたら寂しくて涙ぐんでしまうに違いない。
彼と一緒にいるのなら意識が曖昧になるまで、なにがなんだかわからなくなって
身体が溶け合い混じり合う錯覚を覚えるまで――と望んでしまうくらいには、いろいろと溺れているらしい。
魔力で繋がっていなくともそんな思考が透けて見える反応を覗かせつつ、目の前に広がる露天風呂に思わず駆け寄った。
子供が親にそうする様に、彼の手を引っ張ろうとしながら。

「わ……! 初めて本物見ました、こういうお風呂!素敵、気持ち良さそう!」

最初ははしゃいでいたけれど、はたと思い出す―――さっきの光景。
お風呂だけでなく、客室だって脳裏に注がれた光景と似ている。
さまざまな体位で交わり、蕩け、下腹部が苦しくなるほどに彼を受け入れる幸福な時間。
無意識に繋いだ手に力を込めて、数秒押し黙り。

「…………、ヴィクトール様……入りたい、です……お風呂……」

それがなにを意味するのか。
裸となり、肌を触れ合わせることを知っていて、したい、と呟く。
顔を金糸で隠す様に俯くけれど、髪の間から覗いた耳の先が赤く染まっていた。
恋するときめきだけで満足できると思っているのに、やっぱり欲しくなってしまう身体の正直さは、きっと彼に調教された結果。

ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からマリナさんが去りました。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からヴィクトールさんが去りました。
ご案内:「トゥルネソル商会 王都・マグメール店」にリスさんが現れました。
リス > トゥルネソル商会、マグメール店の事務室で少女は一人作業を行っていた。
 書類の仕事は多岐にわたり、そして、最近は色々と状況が目まぐるしくも変わっていく。
 特に、タナール砦方面からの状況は、連日のように戦勝の報告が張り出されている模様。
 魔族の軍と戦っているとかそんな話も見て取れるのだ。
 それに、こちらで始めたドラゴン急便、その利用者も徐々に増えている模様。
 もらった地図では、嫁や娘、更には急便をしているドラゴンのコマがちまちま行ったり来たりしているのが見える。
 便利ねーなんて思いながら、早く連絡方法を確立しないとなぁ、とか思ってみる。
 どうしたらいいのかしら、と首をかしげてしまう少女。
 他にも、本来の商店での売上なども手際よく計算したり。

 こういう時が、楽しいのよね、なんて思うのは根っからの商人だから、だろうか。

ご案内:「トゥルネソル商会 王都・マグメール店」にネコさんが現れました。
ネコ > 王都でも有名な店、トゥルネソル商会。
とにかく多種多様な品揃えに加え、宣伝にも力を入れ。
必要とあらば、新事業にも乗り出す。
今正に、王都で一番急成長をしている商会といってもいいかもしれない。

「失礼いたします」

そんなお店の事務室の戸がノックされ、従業員の女性が入ってくる。
中で事務仕事をしている相手に、
「お客様です」と告げれば。その後ろから一人のメイドが姿を現し。

『ども、店長。お久しぶりですにゃ』

ぺこり、とお辞儀するメイド少女。じつはこのお店の元商品、である。
とある冒険者が、この店から買った二人の奴隷の片割れ。
その冒険者は買出しはこのお店をわざわざ選ぶほどの常連なのだが。
さてさて。果たして、店長たる相手は自分のことなど覚えているかなぁ? と。
少女は、疑問に思いつつもゆっくり相手に近づく。
なにせ、このお店の従業員は多い。自分のことなんて忘れてても不思議じゃないよね、と思っているが。

リス > こんこん、とノックの音、失礼します、と入って来たのは、うちの従業員と、元従業員。
 それは過去に、この店に来た客のうち一人が気に入って買っていった奴隷の店員であり、その顔には覚えがあった。

「あら、お久しぶりね。 えーと。」

 お辞儀をするメイドの少女に、しかして首を傾ぐ。
 彼女のことをなんと呼べばいいのだか、名前に関しては奴隷契約の際に主人が与えるものになるので、過去の名前は覚えていても、それは過去。
 今は、『彼』のものなので、正しく呼んであげないといけないだろう。
 が、しかし。
 少女は彼女の新たな名前を知らなかった。
 手元を離れた奴隷はもう、売りものではないし、わざわざ調べる必要もない。
 なので、顔は知っていても名前を言えない、という奇妙な状態になるのだ。

「ごめんなさいね、新しい名前は知らないの、とりあえず、お客様、としてきたのなら座って?
 ご要件を伺うわ。」

 ニッコリと笑いかけながら、立ち上がり、応接用のソファに座るように、指し示して見せて。
 店員の方に、お茶を入れてあげてね、と彼女の好みの茶葉を用意するように言って見せた。

ネコ > 相手の言葉に、おっと、と驚いた顔になる少女。
確かに、奴隷として買われた時に名前は新しく貰ったのだった。
なので、少女は相手が促すに従い、ソファへと座り。

『そうでしたにゃ。申し訳ありません。
 アタシ、セイン様に、「ネコ」という名前を貰いましたにゃ。
 改めまして、よろしくお願いいたしますにゃ』

名乗りながら、ぺこり、と頭を下げる少女。
そのまま、両手に持っていた紙の袋を相手に差し出す。

『いや、なんかご主人様が、店長に贈り物をしろ、とかで。
 あの人が取ってきた、財宝とか、マジックアイテムとかを持たされたんですニャ。
 ……なんでも、「娘さんによろしくお伝えください」とか……』

相手に渡した袋の中身は、ピカピカに磨き上げられた指輪やネックレス。
それに、スクロールや、武器、防具などが入っていた。
少女の主人がどういうつもりで贈り物をしたのかは、少女は分からないが。
その表情が、困ったような、引きつったものだったのだけは覚えているが。

(……ま、おおよそあの人のすることだから。
 ロクでもねぇことしたんだろうけどさ)

内心そう考えつつも、少女は表情を変えずに、相手を見る。
……気のせいだろうか。雰囲気が、以前とは違う気がした。

リス >  相手が座ったのを確認してから、少女も腰を掛けることにする。
 小さく笑いながら、地図をそっと仕舞って、テーブルを開けた。
 これから、紅茶とか、お菓子とかが出てくるので、正直汚したくないし邪魔だから。

「ネコ、ね。覚えたわ。こちらこそ、よろしくね。」

 そう言いながら、彼女の所作を見るが、この仕事場で働いていた時よりも洗練されているのが分かる。
 それと同時に、主に大切にされていることも分かり、少し安堵。
 買われた後はこちらは手を出すことができないのだったし。

 意識が、彼女に向きすぎていたところ、声に反応して意識を戻した。
 彼女の要件を聞かなければならない、と。

「えーと、贈り、もの?」

 紙袋から見えるのは、どれもこれも、一級品と言って良いだろうものばかりだ。
 物理的な資格だけではなく、竜に変化した少女の目は、それが魔法のかかったものだということが分かるようになっていた。
 視線を上げれば、贈り物を持ってきたというネコ自身信じられない、という様子なのもわかる。

「セイン様に贈り物をされるゆえが、よくわかりませんわ。
 娘といっても、どの娘なのだか、も判りませんし。

 おいそれとお受け取りはできません、わ。
 娘への贈り物でしたら、直接お願いします、とお答えいただきたく。」

 物を送られる理由が良く判らない。
 だから少女は、受け取らないことを選択した。

ネコ > よくよく考えれば、少女にしてみれば。
こうして、店長たる相手とゆっくりと話すのは初めてかもしれなかった。
ここで働いていた時は、やはり上司部下の関係だったし。

『あい。よろしくお願いしますニャ』

ぺこぺこ、と頭を下げる少女。
まだここの従業員だったころは、どこか仕事をサボったり、そういうのが目立っていた時期だが。
その頃に比べれば、今の少女はある程度、しっかりとしたメイドに見えるだろう。

『あい。なんでも、ラファル様に……。
 大層、お世話になったから、とか』

相手の言葉に、数度頷き。主人からの命令について補足する少女。
実際、この少女は相手の家族構成について詳しく知らなかったりする。
娘さんがいる、くらいは知ってるけれども。会ったことは無い。
遠目に見たことはあるかもしれないが、それも数度あったかどうか、くらいなのだ。

『……にゃははははっ。店長、相変わらずですねぇ。
 そういう所、真面目っていうかなんていうか』

適当に受け取っちゃって、店で売り飛ばしちゃえばいいのに。
そんな事を思いつつ。じゃあどうしようかなぁ、と考える。

『ま、だったらその内、ご主人に店に来る様に言っておきますかニャ。
 ……ところで店長。最近お疲れだったりしませんかにゃ?』

うんうん、と頷きつつ。相手の姿を観察する少女。
なんというべきか。以前より、生命力が溢れている、というか。
ちょっとしたオーラのようなものまで感じ取れるくらいだ。

リス > 「ラファルに?むしろあの子が何かやらかしてないか不安になるわね。」

 一番自由奔放な娘の名前が出てくれば、苦い笑みがこぼれてしまう少女。
 せわになった、というのは何をやらかしたのだろう、とも。
 ちなみに、彼女らがセインに買われた後に少女は結婚し、子供を産んでいるので、知っているとすれば、たまたま店に来た時に、というくらいであろう。

「商人と言うのはお金を扱うからこそ。
 義理などはしっかり持たないといけないものよ。
 確かに、安く仕入れて高く売るが基本だとしても。
 そこにだって言っての規則はあるわ、後、良心もね。」

 これは商売の基本である。
 どんなにお金に貪欲になろうとも、やってはいけないこと、よしとしてはいけないことがある。
 その線引きはちゃんとしなさい、と彼女に教えたこともあったはずだ。
 彼女は知らん顔してたけれど。

「ええ、そうね、それならまだ。
 ちゃんと贈り物するなら、本人同士でお願いするわ。

 ……?疲れ?最近疲れた記憶はないわね。」

 彼女の質問の方向性の変化に疑問を思いながら答えた

ネコ > 『いや~……どっちかって言うとウチのご主人でしょ。やらかすのは』

あの人、考え無し実力無し運無しだからなぁ、と笑う少女。
相手の子供、ということを考えれば。イメージ的には、真面目なイメージ。
対して、中年にもなっているのに冒険者稼業一本で食ってく不良中年。
どっちが悪さをするタイプか、なんて考えるまでもなかったり。

『にゃはぁ。そうでしたっけねぇ。でも意外っていうか……。
 店長、割とそういう所はクールでドライなイメージがあったから』

ほ~、なんて感心したようにしながら、苦笑する少女。
少女にしてみれば、雇われていたときは店長という相手はわりと遠い存在。
従業員、かつ商品だった少女には、そういうイメージがあったのだが。
こうしてしっかりと話してみれば、それが勘違いであった、ということに気付く。

『あい。伝えておきますニャ。
 ……ありゃ、そうなんですか? それは残念。
 せっかく久々にお会いしたし……店長の疲れを、取ろうかと思っていたんですけどニャ』

くすくす、と笑いつつ、ちら、とメイド服の胸元を引っ張り、微かに胸を見せる少女。
……残念ながら、そこに谷間などというものは無いが。
角度によっては、淡い桃色の先端が見える、かもしれない。

リス > 「そうなのかしら?セイン様は、紳士にも思えましたけれど。」

 近くで見たことはなく、直に会話したのも数回程度、彼女の言うようなイメージが連想できない。
 むしろ、自分の娘の方が、自由奔放食欲魔人性欲爆発脊椎反射でやらかすイメージが浮かび上がる。
 真面目、とはかけ離れた存在だ、とも。

「クールでもドライでもないわ、ただ、締めるべき時は締めるだけ。
 そもそも、サボリ魔に良い顔はするはずないでしょう?」

 にっこり、と笑う娘。
 多分、クールでドライに見えたのは、サボってるところをシメてばかりいたからではないだろうか。
 仕事する人には甘くてもサボる人には相応の態度をするのが少女だ。
 今は?部下ではないので。

「ふふ、貴方はセイン様の奴隷なのだから。
 そういうのは彼の夜伽で発散させなさいな。
 もしくは許可証でも持ってきなさい。」

 誘惑には軽く笑ってみせる。
 いくら少女が浮気性でも、人の奴隷に手を出すほど飢えているわけではないのだ。

ネコ > 『え? ……あー。そっかぁ。
 店長はここに買い物に来てる時のご主人しか見てないもんにゃあ』

突然の相手の言葉に固まる少女。
主人が。紳士。それどんな冗談? と思っていたのだが。
本性を知らなければ、なるほど。見た目だけは紳士っぽくもあるかも……。
いや、どうだろうか? 少女は、むむむ? と考え込むそぶり。

『あう、余分なこと言ったにゃあ。
 ……でもまぁ、ここでお世話になってたからご主人に出会えたわけなので。
 そういう意味じゃ、ホント。店長には感謝してもし足りないにゃ』

おぉっと、と。少女は視線を逸らすのだが。
元ストリートチルドレンの自分が、今こうして生きているのもこの相手がいたからこそ。
改めて頭を下げ、お礼をする。
そもそも、サボってばかりいたが、この店での仕事は、楽しかったのは間違いないのだ。

『いやぁ、最近アタシ、あの人にお呼ばれしなくなっちゃって。
 まぁ、そっちの方が気楽っちゃあ気楽なんですけどね……。
 にゃはは。許可証あれば、アタシと寝てくれます?』

どこまでも真面目な相手の言葉に、少女はそう尋ね返す。
少女は、相手の体のことを当然知っている。
だからこそ、相手の疲れを癒してあげたい、と。
そう本気で思っているのだ。

リス > 「……とりあえず、自分の主人をそう思っていなくとも悪く言うのはやめておきなさい?
 そう言う噂は、聞いたほうが感じた事が真実となるのだから。」

 彼女の言葉が真実なのかもしれない。
 客としての彼しか知らないのだから、何とも言えないが、彼女の言動は間違いなく主人を貶める。
 言ってはいけないことだと、窘めておく。
 元上司としてのささやかなおせっかい。

「所作が良くなろうとも、そういうところは変わらないわね。
 ふふ、お世辞は上手になったのね、ええ、ありがとう。」

 視線を逸らす彼女。
 自分というよりも店の方針の方にと笑ってみせる。
 少なくとも、いまもむかしも売り物は大事にする店だから。
 お礼を言われる謂れもない、彼女は自分の実力で売れたといってもいいのだし。

「そうね、許可証があるなら、抱いてあげる。」

 彼女の問いかけには、それならいいんじゃないの、と。
 そもそも、エッチなこと自体は、大好きな娘でもあるのだし。

ネコ > 『……肝に銘じておきますにゃ。つっても……。
 ……あぁいや。やめときますニャ』

相手の忠告に、かすかに真剣な表情になる少女。
なるほど、確かに、と。
主人たる男が、素晴らしい聖人という訳ではないのは間違いない。
だが、かの男は、悪党でありながら、人を助けている。
助けられた者には、彼への好意や敬意を持っている者もいるのだから。

『そりゃあ、中身はそうそう変わらないですにゃ。
 世辞は言わない主義ですにゃ。……主人に似たんで』

くすり、と笑う少女。その笑みは、主人のそれに似ているかもしれない。
思い返せば、この店での思い出は、キラキラと輝いていた。
少女の中に、数少なく残っている思い出という物体。
それは、今思えば、とても大切な物で。

『にゃふっ。承りましたニャ』

相手の言葉に、笑顔になる少女。
ならば、許可を取ってこよう、と決意する。
この女性と触れ合う為に、と。

リス > 「そうそう。
 主人をもり立てるのは、部下の役割、よ。」

 彼の人間性はどうかはわからないが、彼が苦しくなった時に苦しくなるのは自分なのである。
 雇用主と被雇用者は一蓮托生なのだ、と、そういう意味では、昔と彼女は変わっていないのだ。
 これで雇用主に何かあれば道連れになる可能性だってあるのだから、と。
 それに、悪党は自分の不利益になることはしない、自分の不利益を無視して何かを行うのは害悪と人は言うものだ。

「あらまあ?ふふふ」

 中身はそう変わらないと言いつつ、主人に似るという、そんな矛盾が楽しくて、少女はクスクス笑ってみせる。
 だが敢えて指摘しないのは、気分を悪くさせないために。

「はい、その時はお待ちしておりますわ。
 ああ、そうそう。
 するとなったら避妊なんて優しいことはしないから、ね?」

 子供の二三人孕むくらいは、覚悟してから来てね、と、にこやかにいう畜生。

ネコ > 『あ~、そう言われると尚更弱りますにゃあ。
 いやいや、本当に。店長からは学ぶことが多いですニャ』

ふむぅ~、と。腕を組みながら考える少女。
少女としては、今の主人は仕えていて楽しいのだが。
将来的には、身分を買い戻すことも考えなくもない。
どこまで仕え、どこから独り立ちすべきなのか。
難しいなぁ、とも思う。

『ん? なんか面白いことありましたかにゃ』

相手の笑う姿に、首を傾げる少女。
少女自身、矛盾に気付いていない。
要するに、自分は変わらないものだ、と信じているのだ。

『にゃは。それは楽しみですニャ。
 たまには、そういう激しい方としないと……』

淡々とするだけのエッチなんて、面白くない。
そう言うかのように笑いつつ、この人なら本当にそれくらいはしてきそうだなぁ、と思う。
まぁ、それはそれで面白そうだな、とも。

リス > 「そうでもない、と思うのだけれどね?」

 というか、この辺は未だ常識でしょうに、と少女は苦い笑いを浮かべる。
 彼との契約がどのようなものかはわからないので、其の辺はまあ、彼女次第ということで考えておくことにした。

「ええ、ええ、とても面白いことが、ね?
 ふふ、懐かしさもあわせて思い出しちゃって。」

 お店の中での時の彼女、そして、今の彼女。
 その違いと、変わらぬところ、それぞれを思い出しながら笑ってみせる。
 悪いことではないのだ、変わらないということも。
 いいことばかりではないのだ、変わるということは。
 それを思い出しながら、少女は彼女を見やる。

「たまにはって。
 この街なら、性豪とか、たくさんいそうだけど。」

 彼女の言葉に、うーん?と首を傾ぐ。
 彼女なら入れ食いな気もしなくもないし。
 まあ、いいか、と思うことに。

ネコ > 『にゃふ。そうですかにゃぁ』

う~ん? と首を傾げる少女。
そもそも、貧民地区の路地裏の出身。
ある程度学んだことはあれど、まだまだ知識も不足しているのは間違いない。

『にゃぅ? よく分かりませんにゃ』

何が面白かったんだろう、と。少女は首を傾げ続けるが。
目の前で笑っている相手は、キレイだけど、どこかいつもより若々しく見えて。
あぁ、この人もこんな風に笑うんだな、なんて再確認。

『そうなんですけどね。
 まぁ、ただエッチが上手いとか、体力あるとかってだけじゃなくて……。
 にゃんていいますか。気持ちが大事、ってわけでもないですけど』

どう説明したらいいかわからないが、なんとか説明をしようと頑張ってみる少女。

『……最近、私と一緒にご主人に買われたイヌちゃんが、恋人ができまして。
 で~。私としても、やっぱりちょっと、仲のいい人が欲しいな、みたいな?』

赤面しつつ、そう呟く少女。元来、恋人なんて要らない。セックスだけしてればいいでしょ。
なんてことを公言していただけに、この告白は結構恥ずかしいようだ。

リス > 「ええ。そうよ?座学でも教えていたはずだけれど?」

 少女の職場は職業訓練も兼ねているのだ。
 奴隷の娘たちは皆同じ寮に止まり、寮の中で勉強も教えている。
 知らないのは勉強不足じゃないのかしら、と。

「別に、いいのよ、わからなくて、も。」

 忘れてほしくはないが、リスはまだ、16歳。
 若々しいという表現は、ちょっとばかり早いのではないだろうか。
 ええ。

「ふふふ、そういうのは判るけれど。
 人妻に求めるものなのかしら、ね?
 そういう恋人とかそういったものはね。

 仲がいいというぐらいなら、歓迎するわ。」

 恋人とかは無理でも、セフレとかならなってあげるから。
 さみしい時はいつでも来なさい、と。

ネコ > 『……はて?』

相手の指摘に、バツ悪そうに首を傾げる少女。
当然、その勉強の時に見事寝ていた覚えがある。
なんというか、勉強をするのは好きなのだが。
勉強している雰囲気を味わうと、眠くなってしまうのだ。

『ん~。なんだか一人だけ楽しそうですにゃあ』

少女は、ちょっと不機嫌そうに。
相手が楽しそうに笑っているのは、少女を見てのことなので。
少女が相手が笑う理由に気づけないのは、ある意味当然のことである。

『うっ、それは……。
 その、なんというか……。
 うぅぅ……。
 は、はい。分かりましたにゃ』

鋭い相手の指摘に、言葉を失う少女。
確かに、人妻を恋人にしよう、というのはどうかと思う。
しかし、相手がセフレとかになら、と言えば。
少しだけ、安堵したような表情になる少女。
どうやら、素直に嬉しいらしく。

リス > 「………。」

 首をかしげる少女、にこにこと、笑みを浮かべている少女。
 ええ、笑ってますけれど、目は笑っていないかも。
 こう、ちゃんと勉強してなかったのね、と言わんばかりのオーラ。

「そうね、でも、こればかりは共有できないと思うのよ。
 ネコがちゃんと理解できていないから、ね。」

 自分のことを理解できず、それで不機嫌になられても少女はなんともできないのだ。
 理解できたなら、共有できるのにな、と。

「大丈夫よ、ネコだって、ちゃんと探せばそういう相手は見つかるわ。
 だから、別に焦らなくてもいいの。」

 安堵している彼女の頭に手を伸ばし、優しく撫でて見せながら言おうか。

ネコ > 『うぅっ……いや、その。
 ……あ、アタシ、実戦派、にゃし?』

相手からの凄まじい圧に、視線といわず、顔ごと逸らす少女。
なんというか、年齢だけなら少女の方が年上ではあるのだが。
明らかに、世の中に慣れているのは相手のほうなので。
どっちが年上だか、みたいな状況になることが多い。

『にゃ~。ワケわからんっすにゃぁ。
 まぁでも、店長が楽しそうならいいですけどにゃ』

む~? と、不機嫌なまま首を傾げる少女。
ただ、目の前の知り合いが楽しそうなのは、そう悪い気分でもないので。
少女は、大人しくそういう納得の仕方をすることにした。

『……そうですかにゃぁ。
 この間知り合った人には、肉便器にはしてもらいましたけど……』

焦るな、と言われても。同僚が恋人を作って幸せ全開なのを見ると。
やっぱり焦ってしまう。それに、少女にしてみれば。
恋人、なんて存在。どうやって作るべきなのかもわからないのだ。
頭を撫でられながら。ちょっと甘えるように視線を相手に向ける少女。
そこには、信頼があり。相手への好ましい感情があった。

リス > 「ええ、実践は大事よね?
 その実践を助けるのは知識よね?知らないことをするのは失敗が多くなるわ。
 その失敗を減らす方法、教えていたけれどちゃんと学んでいたのかしら?」

 大事なのは、生きている年数ではなく、どう生きているか、である。
 ちゃんと学び、生きていくすべを覚えるのは年齢は関係がない。
 というか、少女だって今だに学んでいる最中なのである。
 ちなみに、圧は無意識に竜のそれが漏れているかも。

「ん、ひとり楽しませてもらっちゃって、悪いわね。」

 こればかりは、自分で気がついてもらわないとダメであろう。
 とはいえ、あれだけさんざん言っていたのに影響されているのだ。
 やはり、それなりの人物ではあるのだろう、と思った。

「幸せのカタチは人それぞれだと思うけれど……。
 流石に、肉便器は恋人とか、そういうものじゃないと思うわ?」

 少なくとも、自分は肉便器が幸せだとは思わない。思えない。
 性癖とか性質とかいろいろあるから、一概に言うつもりはないけれども。
 流石にそれは、違うのではないか、と。
 自分の元部下だ、できれば幸せになって欲しいと思うから、少女は、その信頼に応えることにしている。

ネコ > 『……ぁぃ……』

凄まじく反論を許さぬ正論の雨に、少女が、一気にしょんぼりしてしまう。
こうして、真っ向から説教をされては、少女としても誤魔化せないし。
なにより、相手の言ってることが正しいと分かるから、反論もできず、だ。

『……にゃう。いいですにゃ。
 店長だから』

これがほかの人物だったのなら、怒ったりするのかもしれないけど。
少女が信頼している、数少ない人物の一人なのだ。
一人だけ楽しそうにしていても、まぁ。怒らない。
というか、ちょっと嬉しかったりもする。

『……んなこたぁ、わかってますけどにゃ。
 でも……。その。
 ……す、好きな人ができて、告白とか。恥ずかしいじゃん……』

相手の指摘に、口ごもり。赤面を強くする少女。
あまりの恥ずかしさに、メイドとしての口調も消し飛んだか。
まるで友人に話しかけるかのような口調でいい。
さらには、ぶつぶつと。『アタシには、そういうの向いてないと思うし……』だの。
『だいたい、どうやって告白すればいいかわからないし……』だのと呟いている。