2019/01/02 のログ
ご案内:「王都マグメール/図書館」に幻鏡の迷宮さんが現れました。
幻鏡の迷宮 > 王都マグメールに点在する図書館の中で比較的大きいといわれている図書館がある。

其処には魔術、呪術、精霊術や古今東西の魔導書が収められていると言う噂だが、幾つかは事実で幾つかは誇張された嘘、実際には王都にある学園に通う者や冒険者が勉学に使ったり、魔法の復習を行ったりする魔導書に傾注しているが
何て事は無い極普通の図書館である。

その証拠にだが司書がサボり気味で、24時間扉が開かれていると言うのに警備の為にかけられている魔術を信じきっているのか、何かあれば遠見の魔法で確認すればいいやと思っているのか、はたまた自分の実力なら何とかなると慢心しているのか、今宵は何かの巡りあわせか偶然の歯車の悪戯か、司書になる者は居らず、結界一つを残して併設された休憩所で好きなことをやっている。

若しかしたらどこぞの貴族がそう仕組んだか誰かの企てか、人気の無い魔法の灯りだけが無数の書架を照らす図書館の中は無人であり、夜の図書館特有の不気味な静けさと薄闇に包まれているのだった。

――…物音一つ、誰かが動くたびに揺れる空気も静かに、その闇の中にほんのりと淡い紫色の光を放つ「呼鈴」が何も無い空間に浮かんでいる。

それが誰の手にも振れずにただ自らそうしたように左右に二度程揺れて静寂の世界に涼しくも怖気立つ音色を奏でた時、図書館と言う世界は一転闇の其処に堕ちるだろう、しかしそれは鈴の音を聞く者が居てこそ、誰も居ない今はただ静かにその時を待ち、おぼろげに輝き餌食となる人を待ち続けているのだった。

幻鏡の迷宮 > おぼろげな光を纏う「呼鈴」近寄り手に取ればその材質は冷たい金属とも水晶などの鉱石とも区別のつき難い不可思議な触り心地とひんやりと冷たい感触を得るだろう、より近づいてみればそれが鈍い銀色だと言うのも判別つくだろう、だがその距離は『彷徨いの呼鈴』が目覚める距離でもある。

触れても、触れなくても
手に取ろうとしても、それから距離を置こうとしても
其処に犠牲者が居て、呼鈴が存在するのであれば、犠牲者がそれを認識した刹那に『彷徨いの呼鈴』は涼しげな音を奏で、その周囲を今宵は図書館の内部を迷宮へと歪めるだろう。

だがその条件は今だ満たされず。
銀色の何処か鈍い輝きと紫色の陽炎に包まれた呼鈴は静かに浮かび続ける。

もし誰か迷い込めば書架は無限に分かれ、それが迷宮の壁となり、ある筈の無い本が混じり、ある筈の本が消滅し、創造された本の中には貴重な書が混じるか、もしかしたら犠牲者の末路が記された卑猥な本となるかもしれない。

図書館特有の張り詰めた空気、埃っぽく、かびた紙の香りが広がる世界、その中でゆらりと呼鈴が左右に揺れて、発動に至らずもかすかに鈴のなる音が響くと同時に今宵の司書が覗く為の遠見の水晶にノイズが走るのだが、サボリ気味の彼の人はそれに気がつかないようだ。