2018/11/27 のログ
ご案内:「無名遺跡」にクロイツさんが現れました。
ご案内:「無名遺跡」にエシル・アルトワーズさんが現れました。
■クロイツ > 涼しくなり始め季節はすっかりと冬になりだしたこの頃。
本当ならば少女の身体を労わり遠出の仕事を受ける事はないのだが…。
今必要としているものと仕事が偶々に一致をし、少女を伴い遺跡へと足を運ぶことに。
前もって少女には貴重な薬草、それも遺跡などの奥にしか生えないものを採取と告げて。
「それで後は探すだけなんだけど…大丈夫?」
その薬草が生えているという遺跡の奥、ほぼ最深部と言って良い階層にまで進み。
思っていたよりもペースが速かったかもと気が付くのが遅く。
魔法の灯りを片手に持ち、少女へと心配そうに声をかける。
■エシル・アルトワーズ > 「ん、大丈夫だよ。だけど随分深いところまできたね」
振り返り気遣う声に笑顔で返す。
時間の流れはわたしの心も体もすっかりと変えてしまい前を歩く彼のためへと誂えられたように、わたしの仕草ももまた彼が望んだ――積み上げた仮面ではない、本来のわたしへと映り戻る。
冬に入り“そろそろ”という時期なのだけど、気分転換と実用とで持ちかけられた“仕事”に嬉々として付いてきたのだ。
袖を通したのはかつて勇者として纏っていたものではない、黒に染められた、今のわたしらしい装束。
そう危険はないといわれても久しぶりの探索に胸が躍るのも仕方ないと言えるだろう、きっと「浮かれているなぁ」と呆れ半分に微笑んでくれるはずだ。
魔法の光を携えて先導してくれる彼の後を周りを警戒しながら、時々背中に目を奪われながら着いていきついた突き当たり、探し者の名前は――
「それで、このフロアにあるのだったっけ、えーと・・・なんて名前だっけ?」
■クロイツ > 「この遺跡の最深部付近だよ。普通の冒険者だと先ず来ない場所かな…」
少女の笑顔での言葉に無理はしていなさそうと笑みを返し、今はどの辺りかと簡潔に説明。
少女と出会い、今の関係になってからの時間。身体つきや仕草は出会った頃はすっかりと変わり。
最初のころの仕草や言動も好きであったが、今はそれ以上に好き、本当に離したくないとずっと思えるほどになって。
本当なら安静にすべき時期なのだが、メイドたちに程よい運動も必要と諭され。
ならばと自分たちでは危険もほぼない仕事を探して誘ったわけ。
少女の身に纏う装束は、出会った頃とは違う黒く染められたものでよく似合っている。
遺跡についてからの浮かれているように見える姿も仕方のない事とほほえましく見て。
念のためと先行にアンデットの小動物を走らせてはいるが、周辺の事は少女に任せきり。
時折に足を止めてはこっちかなと進む道を変え、背中に感じる視線に振り返り笑みを見せたりとしていれば着いたのは突き当りで。
「ずっと前に来た時にはこの辺りに生えてたんだけどね。名称は人間には発音できないんだよ。
見た目でヒトデ草って呼ばれてる薬草だよ」
少女の問いに人では発音できない事、人間の間の流通名を説明。
この辺りにあるはずと通路の隅っこや物陰に視線を向けていく。
■エシル・アルトワーズ > 「そうだったっけ?そういえばそう言われた気がする」
名前を教えられてそうだったと手を打つ。本当の名前は聞いたけど聞き取れなかった、というか人の声で発せられるものじゃあなかった。
彼の視線を頼りに聞いていた形の草を探して足を向ける。
かつん――かつん――、と踵を打つ音が洞窟に響くのが妙に懐かしい。
「珍しいだけあって、中々見つからないね――、とこれかな?」
草の間、石の裏――思いつく限りを探していると名前のような星型の草を見つけた。
煌々とオレンジ色を宿す草をグローブ越しに摘み引き抜き探し主に掲げて見せる。
「ねぇクロイツ、これで合ってる?」
■クロイツ > 「教えた時にさ。聞き取れないって言ってたよね。でもそれだけ人間で使う事が少ないんだよ」
逆に使うときはそれなりに重症や特殊な症状という事。
そんな薬草の発音を言葉にしようとしていたのを思い出して笑みを零し。
名前の通り、人手のような星の形をしているのは伝えているので後は探すだけ。
遺跡内を歩けば響く音、その音に振り返ると懐かしそうにしている姿に良いかなと注意もせず。
音で遺跡に住む魔物が寄ってくるかもしれないが、二人なら先ず問題にはならないだろうと。
「発育条件が面倒なんだ。暗くて湿っぽくて…が最低条件なんだよ。
あれ、あった?」
本当なら生き物の死骸があれば数もそろうのだがそれは口にせず。
前はあったのにと探すが見つける事は出来ず、その時に少女が見つけたようなので合流し。
「惜しい、かな。形がそれだけど色がね。探してるのは灰色なんだよ。……あ」
本当によく似ていて惜しい、と笑顔で答え。
そしてふと思い出す、そっくりな草が生える場所には確か…。
慌てて口にしようとするがその前に通路に煙のように胞子が広がり。
「これ吸い込むと大変になるから…!」
もくもくと通路を埋め尽くす胞子を吸い込まないように口元を押さえ。
これは何が起きたかと…古い記憶を掘り返して。
■エシル・アルトワーズ > 「え?――きゃ・・・っ」
慌てた表情で口元を押させ手を差し出す彼。
何事かと驚くより先に指先――持った花から濛々と立ち上る奉仕が視界を塞ぐ。
慌てて口を塞ぐが遅く。
驚きに一瞬反応が遅れてしまい、モロに吸い込んでしまった。
「――けほっ、けほっ」
しばらくの後、やっと視界が開けたが―― [1d6→3=3]催淫、誘眠、妄想(敵対)、幼退、発育成長、熱毒
■エシル・アルトワーズ > 「クロイツ、大丈夫――っ!?」
胞子の霧が晴れた先。
わたしは悲鳴を出すことも出来ず凍りつく。
目の前にいたのは愛を誓い交わした君ではなく――わたしを汚した、あの男。
どうして今更という疑問と、また奪いに来たのかという絶望、そしてそれらがない混ぜになった怒りがわたしの身体を衝き動かす。
「魔王――貴様、何のつもりだ・・・、またわたしから奪うつもりか・・・!」
恐怖に折れないように、憎悪がわたしを支える。
腰裏に留めた曲剣を引き抜き構える。
――もうこれ以上、わたしから何も奪わせるわけには行かない。
■クロイツ > 「僕は大丈夫だけど、それよりエシルこそ大丈夫?」
通路を埋め尽くしていた胞子の霧が晴れればそこには何事もない少女の姿。
特におかしな様子もないと安堵の息を吐くが……そこで少女なら駆け寄ってくるはずと見つめ。
その表情を見ると何時も見せてくれる笑みや困った顔ではなく凍り付いた表情。
「魔王は魔王だけど…エシル?もしかして……」
はっきりと判る憎悪の感情、曲刀を抜き構える姿に冗談は一切なく。
そこで気が付く、少女が今幻覚を見て、自分ではなく…血筋の魔王が見えている。
あれは幻覚を引き起こすキノコの側に生えたと思い出すが後の祭り。
どちらかと言えば魔術よりな自分が、狭い場で本気の少女と戦えば不利、どうやって正気に戻そうかと…動向を見据えて思考を巡らせる。
■エシル・アルトワーズ > 「クロイツを・・・どこへ遣った・・・!」
わたしを見る目がわたしを射竦めようと刺す。
あの過去が、あの傷が恐怖となってわたしの心を苛む。
一瞬の内に姿を消した彼の行方が気がかりではあるけれど、彼ならばきっと大丈夫なはずだと不安を拭い奮い立たせる。
反射的に距離をとったとはいえ狭い遺跡の中。
油断なんて出来やしないし一瞬の遅れが命取りになる。
出方を待つのか、その場を動かない男へわたしは一直線に迫る。
高速の一閃、シンプルゆえに強力な一撃に雷を纏わせる。
「でぇやぁぁぁっ!」
■クロイツ > 「僕はここにいるんだけどな…うん、とりあえずあいつ…次に会ったら八つ裂きにしよ」
少女の様子によほどのことを、聞いた以上の事をされたのだと察し。
生きているのだから次に会ったら、この手でと…一瞬思考が逸れ冷たい冷気のように殺意が周囲に流れ。
しかしそれよりも、今は目の前の少女と心配そうな、おそらく少女には鋭い視線に見える、視線を向けて。
恐らくは反射的だろうが距離を取ってくれた事には助かり。
いくつでも少女を取り押さえる手段はあるが、近接戦だけは少女に分がある。
腕の一本ぐらいなら安いものであるが、それはそれで悲しませるので使えない手。
ならばと……一直線に迫る少女を待ち受け、雷を這わせた一撃が振るわれるタイミングを見計らい…。
「甘いよね…!」
大きな音を立て一歩踏み出し、その瞬間、遺跡の素材でできたゴーレムが盾となり一撃をその身に受け。
曲刀がゴーレムに食い込み、引き戻される前に抉れた箇所を修復し。
同時に地面や壁から突き出した石製の腕が少女の手足に伸びて拘束をしていこうとする。
■エシル・アルトワーズ > 肩口から両断するはずだった雷閃は突如として生え聳えた石の巨人に食い込むかたちで防がれた。
「ッ、ゴーレム・・・!」
以前とは違う、防御的な行動。
全力を載せた一撃は命のない巨像を斬り割るには届かず、急いで引き抜こうとするが――
「!? こ、こいつ・・・・・・しまった!?」
何度この手で斬り伏せてやろうと思ったことか。
その為にわたしは己を磨きここまでやってきたはずなのだ。
しかし、結果はどうだろうか。
恐怖と激情だけに衝き動かされて、至極単純な罠にすらかかる始末。
直前で傷をふさがれ半ば取り込まれるかたちの剣、そしてわたしは忘れていた。
このゴーレムの主成分は石、そしてここは――遺跡、原料などそこら中にあるのだ。
急いで飛び退こうとするが一歩遅く、あちこちから伸びる石腕がわたしを手足を捉え戒める。
「くっ、この・・・放せ・・・ぇ・・・!」
恐怖と、屈辱と。
無駄な抵抗とは知りながらも身を捩り何とか振り払おうともがく。
目とは名の先に仇がいる。後一歩が届かない。
これが木であったならば、鉄であったならば。わたしの雷撃が通るのだろうが石が相手であればそれも叶わない。
悔しさに視界が滲む。
「くっ、殺せ・・・!
あんたに汚されるくらいなら・・・!」
■クロイツ > ある意味場所が遺跡の中で助かった。
もしここが森の中などであれば、都合よく石の調達は出来なかった。
もし木や鉄、土では雷か斬撃でゴーレムも倒されていたのだから。
「んー…こういう所は最初の時みたいだね」
今の少女にならば絶対に通用しない手、同じことをしても対策を取られてしまう事。
それが通じるのは少女が自分を別人として見ているから。
ゴーレムで防いで武器を奪い、その隙にと石の手で少女を捉えてしまえば安堵の息。
怪我を負わせる事も、大事な子供にも何も起こさずに捕まえたのdから。
「放す訳ないよ、エシルはすばしっこいんだから」
恐怖と屈辱の顔で拘束から逃れようともがく少女に困った笑みを浮かべて歩み寄り。
幻覚のせいとは言え、ここまで態度が変わればショックも大きい。
だから早く元に戻したいという思いが強く。
「殺しはしないよ、ちょっと気持ちよくなって思い出す、幻覚が解けるだけだよ」
ごめんね、と囁けば片手で少女のお腹に触れて魔力を流し込み、同時にもう片手で顎に触れ治癒魔術は苦手なので接触でしか使えず、噛まれるのを覚悟の上で唇を重ね解毒魔法をかけていく。
■エシル・アルトワーズ > 「ひっ――や、やだ、来ないで!」
音を立てながら近付く姿に思わず声が引き攣る。
薄ら笑いがわたしの名前を呼ぶ。それだけで全身に鳥肌が立ちそうだ。
そして伸ばされる腕がわたしのお腹へと向かう。
わたしは半狂乱もかくやと叫び抵抗するが身動きの取れない体では逃げることなどできるわけもなく。
「やめて、そこは・・・そこだけは・・・・・・むぐっ・・・!?」
漸く実った命。奴からすればさぞ不愉快な結実。
奪われる、そう思ったときにはわたしは泣き叫ぶように喚く。
直後お腹へ投射される温かな熱。
同時に魔王の顔が急に近付き、わたしの唇を強引に奪う。
反射的に歯を立て咬み付くが、次第に“奴”の姿に“彼”の姿が重なり薄れてゆく。
「――!」
驚きに目を見開く。
目の前を埋めるのは見慣れた姿。
さっきまでいた筈のあの男ではない、一緒にいた筈の彼がいた。
顎を伝う熱と感触はわたしが立てた歯による物だろうか。
――わたしは一体、何と戦っていた?
今度はわたしがやったことが、言ったことが脳裏を走る。
幻覚に惑わされたとはいえ、わたしは最も愛する人へ剣を向けてしまったのだ。
一歩間違えれば手にかけていたのかもしれないという恐怖がわたしを震わす。
勝手なもので溢れ流れる涙も忘れて掠れた声でわたしは彼の名を呼ぶ。
「クロ・・・イツ・・・・・・」