2018/10/03 のログ
ご案内:「錬金術師の工房」にアルクロゥさんが現れました。
アルクロゥ > 街の中にある大きな建物の扉はほとんど一日中閉じたままだが、目立たずにある看板を見れば錬金術の工房とわかる。
その奥の研究室では両脇にうず高く積まれた書物の間で机の前に座り、ここの主人である男が腕組みをして難しい顔をしていた。

「あの薬は結局失敗だったな。調合に間違いはなかったはずだが一体どこで何を誤ったのか」

そう言って羽ペンを手に取り、ノートに調合に使った各種の薬品をもう一度リストアップし、その分量を細かく計算し直し始める。
薬を作成した時の温度や反応時間までを加味して綿密な検算を行うのだが、それを何度繰り返してもやはり調合に間違いはなく完璧なはずであった。

「……やはり合わんな」

しばらくして行き詰まった男は納得いかない顔で頭を掻きながら立ち上がり、部屋の中をウロウロと歩き回ってさらに悩みこんでしまう。

アルクロゥ >  
「……待てよ。どう考えても間違いはないし、そもそもこの私が間違いをするわけがない」

バターでも作るのかというほど同じ場所を延々と歩き回り続けていた足を急に止めると、傲慢さを取り戻したように呟いて思考の順序を切り替えてみることを思いつく。
暗がりの中で燭台の炎が揺れて勢いづき、部屋の中が少し明るくなった気がした。
薬の作成段階で間違いがなかったとすれば、他に関わる要素などさして多くはない。
それなら問題となるのは薬が完成した後、使い方だろうか?
単なる飲み薬だからそれも無いだろう。
だとすれば後は、それを誰に使ったか、だ。

「そうだったか、しまった。あの女……いやもう今さら戻っても遅いか。あんな所で置き去りにして、とっくに目を覚まして逃げ出したか、そうでなければ他の誰かに持ち去られたに決まっている」

答えに辿り着いて喉のつかえが取れた気分とともに、苦々しい気分で片足を踏み鳴らして悔しがった。
実験台に使った女が何か特別だったのだ。
何かの特殊体質なのか別の要因かを確かめたかったが、その相手をみすみす手放してしまった事になる。

アルクロゥ > 望みは薄いが、元から街の住人だったなら多少の可能性はあるかもしれない。
壁際にかけてあったフード付きの上着を取ると、顔もうろ覚えの女を探すために夜の街へと出かけていった。

ご案内:「錬金術師の工房」からアルクロゥさんが去りました。