2018/07/24 のログ
ご案内:「ディアンサス孤児院」にルシアンさんが現れました。
ルシアン > (お約束待機中…)
ご案内:「ディアンサス孤児院」にツァナさんが現れました。
ツァナ > 取り敢えず。驚かせるつもりが、寧ろ此方の方が、ビックリした。
正直を言って。この街では…この国では。正体を隠さなければならない者や。素性故に虐げられる者。
そういう同族ばかりが目立っていたから。以前も、先日も、その他幾度も。同じ派閥の者達の、末路を知らされてきたから。
だから、一応正体を隠しているとはいえ、最低限この院内では、仲間達に受け容れられているのだろう…
同族の。魔族の。子供達を見て。
本当に驚いたし…少しだけ、安心した。
少年少女二人は、本当に仲が良さそうに見えたし。此処を紹介してくれた彼も、全て理解した上で…
寧ろ、恐らくは彼自身が、子供達の正体隠匿に、一役買っているのだろうから。

「わわ。うわ、わ、引っ張っちゃ、ッ、駄目って、ば…」

そして。此方も素顔を見せたなら。思い知るのは、例え如何なる種族であろうと、子供達は、何処までも子供達なのだ、という事。
喜色満面で、両手を引っ張られ振り回されて。髪に触れられて、その上で揺れる耳にも、手を伸ばされて。
男の子に引っ張られて、前につんのめるように、姿勢が低くなり。
その分、頭の天辺まで、女の子側の手が届けば。触れてくる指先に、少し心地良さ気に、耳を伏せるようにする。
興味津々、といった様子の子供達に。どうしたものか、と表情はげんなりした風になるものの。
此方も隠す事を諦めた、猫の尾が。ゆらゆら、興味深げに揺れているから。貌と心は裏腹で。

「それは、そう、だね。うん。…私も、その辺、気持ちは分かる、し。
でも、友達?仲間?居るんだったら、ちょっとだけ、安心。…だったり。」

少なくとも。この子達は、孤独じゃない。
同じ境遇の者達が寄り集まって、仲睦まじく、過ごせている。
……そういえば。此処に通いだしてから、子供達がケンカをしている、というのを。見た事がない。
勿論、子供なりのはしゃぎすぎ、じゃれすぎ、等は有るものの。本気で嫌い合って、憎み合って、というのは無かった。
家族を奪われ、独りになって。世間を憎み、他人を羨み妬み…曲がってしまう事も多い孤児達という存在が。
此処では真っ直ぐに、穏やかに、日々を過ごしているのも。そういう事なのかと、納得。
後は、どうやら彼自身も。

「居るね。うん、居る。色んな、種族。
余所の国は。まぁ、あんまり、知らないケド。妖とか、鬼とか、それから……うわ。…わァ…」

(次の瞬間彼の姿が変わっていた。
名前は違う、との事だが、少なくとも見た目だけなら、名前以外は同じなのではないかと。
そう思えてしまう程、立派な獣の耳。
唯、自分と違うと感じる所が有るとすれば。猫や犬といった、一般的なミレー族に見受けられる物と違って。
狐という、あまり見掛けない種である事ぐらい。
…後は、思い浮かぶとすると。

「…そんな、余所の国、だと。狐。人を、化かすっていう、ケド。」

そういう力が。彼の、子供達の。姿を変えて見せていたのかな、と。
何となく、そう考えた。子供達の頭を撫でつつ、首を傾げて。

ルシアン > 「ほら、二人とも。お姉ちゃん困ってるだろ?ほどほどにね?」

普段、隠している自分たちの素性。それは無邪気な子供たちに見えて、その実は途方もない重圧のはずで。
それだけに、それを解放した時に…しかも自分たちと同じである相手が居る、となればそれはもう全力で喜ぶはず。
ブンブンと少女の手を取って振ってみたり、あるいはそうっと少女の毛並みの良い耳に触れてご満悦だったり。
とは言え、少女の内心はともあれ少々困っている様子を青年に指摘されれば、多少は大人しくもなるはず。

「そうだね。少なくとも、此処に来られた子はみんな仲良くなってる。
 …種族とか、そういう面倒な事は抜きでさ。一人一人なら、誰だってうまくやっていけるんだ」

そういう点では…少しだけでも大人である、自分たちの方が面倒だ。そんな事も呟いて。
人とミレーと魔族の三者が顔を合わせれば、それだけで穏やかな話では済まなくなる。そんな土地。
それも理由がないわけでなく、それが悪しき事だと決めつけてしまうのも難しい。そんな事も分かるのだけど。
それでも、そういう小難しい事は、この子たちには関係ないのは見ての通り、で。

「ふふん、すごいでしょう?『化け狐』とか言われるんだってさ。
 って言っても、こっちが本当の姿とか、人の方が…って訳じゃない。僕には、どっちも僕自身だから。
 この子たちの格好についても、ご明察。人の目を『騙す』なんて、狐ならできて当たり前…って、僕だけの力じゃないんだけどさ」

銀の髪と狐の耳。普段より少し鋭く、大人びて見えるであろう青年。
それでも笑みはいつもと変わらずのんびりと。
子供たちの姿を変える力も、彼も係わるがそれだけでは無い…まだいろいろ、不思議な事がこの院にはあるらしい。

ツァナ > 「珍しい、からって。それは、解る、ケドー……」

困り顔は続行中。とはいえ、口にした通り。恐らく院外ではこういう機会など皆無なのだろうし…
院内でも、普段は隠している、という事実から考えてみれば。
余所から来た同族という物を、どれだけ珍しがっているのかは、痛い程解る。
…というより、きっと。院外における、例えばミレー族がどのように扱われているか。
売られ、飼われ、虐げられ、という有様を。此処の子供達には、あまり見せたくないと。
大人達が考えているのではないか。そんな風にも思うから。
男の指摘で、多少は落ち着いてくれた子供達を、右に、左に。
二人の間に挟まれるような形で、改めて、座り直しつつ。

「まぁ、そりゃ。ニンゲン、自分と、他人と、が居て。…そうしないと、比べられない。
自分で、自分を、判断出来ない。…他人が居ないと、境界線が、判らない、から。仕方ないし。
…仲良くで。いっしょ、で。纏められたら、苦労しないケド、ね。」

問題なのは。自他を比較するという行為は、必ずしも単純ではなくて。
どうしても…其処に。他者との差を、優劣で判断したがってしまう者が。
物理的でしかない、自他二人の違いを、感情で判別してしまう者が。出て来てしまう事なのだと思う。
その結果、違うという事実を、それだけで終わりに出来ず。違うからこそ…という、理由にしてしまう事が。
そんな、違うからどうだ、という理屈が。出来れば、この子達を傷付ける事が。無いように、とは願う。

「あぁ、そう、それそれ。聞いた事、有る。…昔話で。本当に、居るとは、思ってなかった、ケド。
うー……ん。…んー……便利そう。色々。そ、やって、隠したり、隠せたり、って。
私は……その……」

少しだけ。言い淀んだ。…実の所、考えない訳ではなかった。
もし、彼のように。子供達のように。正体を化かしてしまえたらと。
…それでも。考えて、やはり、首を振った。隠さねばならない時、隠すのは、仕方ないとしても。
見た目からして、自分の姿を変えてしまう事は、躊躇われたから。
……それが出来なくて。隠せず、隠さず、戦い抜いて。結果、命を落とした同胞の手前。

ルシアン > 「さて、それじゃそろそろ二人とも、お休みの時間だ。
 大丈夫。ツァナお姉ちゃんまた来てくれるってさ。お話したいならその時にいっぱいすればいい。ね?」

本来ならもう寝ている遅い時間。このままでは明日は寝坊助になってしまうと子供たちを少女から引きはがす。
何だか少女の意見とかそういうのは聞かないけど、そんな安請け合いまでしてみたりして。
『えー?やだお姉ちゃんともっとお話ししたいー!』だの『おねえさん、かえるまで…おみおくり、しないと…』だのぶー垂れる子供たちを諭しつつ。

それでもしぶしぶしたがって、少女の前で二人並んで『おやすみなさい。また来てねお姉ちゃん!』『おやすみ、なさい…おはなし、たのしかった…です』なんてぺこりと頭を下げる。
おやすみの挨拶なのか、男の子は青年に抱き着いて頭を撫でて貰ったり。
少女の方へは女の子が背伸びして、頬にキスなんかをしてみたり。
そのまま、パタパタと部屋を出て足音も消えていく。…興奮冷めやらぬと言った様子、このまま眠れるのかは微妙かも。

「ふぅ…全くもう。
 ……あの子たちも、そういう事は薄々わかってるのさ。それにいずれ子の院を出る時が来る。
 そのためには、これから現実を教えて行かなきゃならない。…辛い所だよね」

教えずに済むなら、どれだけ幸せだろうか。比べなくていい、誰もが違い、それで良い…そうだったら、どれほど素晴らしいか。
しかし現実はそうではない。それは痛いほど知っている。…目の前の少女、彼女自身が、その体現みたいなものだ。
目を伏せ、淡々と。感情を込める事も無く。押し殺す、というべきか。

「僕自身も本物に会った事はないんだ。ずーっと昔、ご先祖の中に縁を結んだ人がいたらしいとか何とか。どこで出会ったんだかも分からないけどね。
 …申し訳ないけど、ツァナにあの子たちみたいな力を貸すことは難しいかな。
 あの子たちがああいう事が出来るのは、この院の中に居る時だけなんだ。
 それに…姿っていうのは、その人たちの心そのものだしね。そう簡単に変えてしまっていいものじゃ、ない」

化け狐…見た目を変え、相手を騙す事に特化した種の力と心を受け継ぐ身。
それだけに、相手の姿や在り方は、強く印象に残る。
・・・実のところ、此処で少女の姿を誤魔化してしまう事も出来なくはないのだ。
だけど、それはきっと望まない。それが、この少女である。そのくらいの事は、理解できる。

ツァナ > 「えぇと。……えぇと、ね。また来る。約束。
何だか、この前の、畑も有るし。手伝い、約束したし、ご飯食べたいし、それから、後はー…」

何が有るだろう。ともかく、思い付く限り、此処にまた来る理由という物を、挙げた。
それが有るから、ちゃんと来ると。また会って、次も話をするから、と。
お陰でなのか、取り敢えず、子供達は納得してくれたらしい。もう少し、後少し、とぐずる事もない辺り。
何だかんだで年頃なりには、しっかりしているのかもしれない。…女の子のキスには、思わず耳を逆立てたが。
ませた少女に頬を掻きつつ、二人の子供を見送って。

「え…と。そか。孤児院って。児、じゃないと、駄目…なのか。
大人になったら。大変だケド、生きてかなきゃ。
…これから。何年、くらい?まだ暫く、だいじょぶ?……また来たら、また会える?」

勿論、これから社会勉強で、その先生きる術を身に着けて、やっと…なのだろうから。
まだまだ時間が有ると、本当の所は、分かっている。
その癖彼に問い掛けてしまう、何となく不安げな声。…理由という物が必要なのは。少女自身の方かもしれず。
彼のように、押し殺すべき時には、そう出来たら良いのに。というより、出来ていた筈なのに。
どうにも此処と。彼と。子供達と。関わると、無感情ではいられない、らしい。

「やっぱり、余所の国、なのかな。…それとも、大昔だから、平気だった…のかな。
少なくとも。今の、この国じゃ、有り得ない……不思議な事。だと、思うから。
……うん、良い、分かってる。さっき、僕だけのじゃ、ないって。言ってたし。
それに。…そう、それだ。………外側というより。私の、中身は。忘れちゃいけない、事。…いっぱい、だから。」

最初に出会った時、色々な事を話した。だから彼は、理解してくれているのだろう。
…納得はしていないのだろうが。それも、分かりきっている事。
寧ろ、そんな相容れない違いが、自分と彼との間には、色々存在し続けているのに。
その上で、この場所に受け容れてくれている。…だから。

「――だから、何ていうか、その。……ありがと、う…」

途中の思考をすっ飛ばして、結論だけ口にしたから。正直、うまくは伝わりそうにない。
それでも、言いたかったし、言うべきだと思った。そんな言葉。

ルシアン > 部屋を出ていくときにも、少女の言葉はちゃんと聞こえたらしい。
ブンブン手を振り、控えめにお辞儀もして、嬉しそうに戻っていく子供たちを見送って。
すっかり温くなってしまった水を飲み干し、水差しから冷たいのをもう一杯。

「ここを出るのは大体15くらいかな?外に仕事や住むところの伝手もあるし、この町を離れていく子なんかも居る。
 しばらく前に一番大きい子たちが出て行って、あの子たちはまだ当分は此処に居るかな。
 ん、勿論。また会えるよ。それに此処を出たって、二度と戻ってこない訳じゃないしさ」

先の子たちはまだ10の手前程。まだまだ、此処から出るには幼すぎる。
少女の声音から何となく察したか、そんな事も教えてみて。
…ちょっとだけ、少女の中にもあの子たちが何か響かせたものがあるのかもしれない。そんな事を思いつつ。
最初の出会いの時の少女とは、ほんのわずかだけど…何か、違うような。

「……自慢じゃないけど、僕もいくつも国を見てきた。此処に来る前にもね。
 沢山の種族も教えもあって、それぞれで反発して争う所も、お互いに仲良く手を取る所も…国によって、色々だ。
 どちらが良いとか悪いとかでもなくて、それぞれに理由もある事も分かる…もちろん、それはこの国だって、例外じゃない。
 ……だけどね。僕はそれでも、一人一人の世界でだったら…やっぱり、みんなで手をとりあえるって。その方が良いなって、思うよ」

甘い、と言われるだろうか。言われても然るべきだろうという自覚もある。
この少女の前であればなおの事。だけども、自分自身が、その手を取り合った結果である。それも又誇るべき事実。
静かな目で、少女を見つめて。諭すでもなく、ただそれは自分の思いを言葉にするだけ。

「……ツァナ。本当に…君は多分、僕が想像もできない位の事を見てきたんだと思う。
 それは大事にすればいい。その上で…ああいう子たちが居る事も、心の中に置いておいてくれれば、嬉しい」

…少女の成す行動。それを止めさせるような言葉を、余所者である自身は持っていない。
同郷の、同胞でもある子供たち。それを知った上で…何かを変える事が出来たなら。
此処へ連れてきて、あの子たちと引き合わせた理由の一つ。果たしてどうなるか、それは青年にも分からないのだけど…

「…どういたしまして。僕だけじゃなく、今度はあの子たちにもその言葉、言ってあげて?」

少女の元へ歩み寄って、そっと少女の頭や銀色の耳を軽く撫でてあげる。
改めて見る少女の姿は…思っていた以上に可愛らしくて、素直な言葉に少しどきりとしてしまったり。