2018/07/21 のログ
ご案内:「ディアンサス孤児院」にルシアンさんが現れました。
ルシアン > (待機中)
ご案内:「ディアンサス孤児院」にツァナさんが現れました。
ルシアン > 王都の中心部から貧民街を抜け、メグ・メールにも程近い町はずれ。
其処に古びてはいるががっしりと建つレンガ造りの建物が一つ。
周りを囲った塀の切れ間である入り口には「Dianthus」の名が刻まれている。

少し立て付けの悪くなった入口の柵をキィときしませ、敷地の中に入っていくのは青年ともう一人。
大きな鍋なんかを抱えた青年が、建物の入り口までやってくれば。

「ちょっと待ってて、ツァナ。今、鍵を開けるから」

一緒に来ているであろう少女へ振りむき、服のポケットを探って鍵を取り出す。
もうすっかり暗くなり、月明りに照らされる影でも建物は相応の大きさだと分かるはず。
今でいう所の、ちょっとした体育館程度の大きさだろうか。どうやら離れもあるようだ。

やがて、ガチャリという音とともに、大きな木の扉が開いて。
中はランプの明かり。エントランスらしい、広めの空間がある。

「さ、入って。……ただいまー。誰か起きてるー…?」

少女が入ることを促しつつ、奥へと声を投げる。
やや控えめなのは、この時間だともう床についているいる者もいるかもしれないからであり。

ツァナ > 片付けを終えた段階で、とうに日は暮れつつあった。
その上あれやこれやと話しながら歩いていた為、目当ての孤児院へと辿り着く頃には、すっかり日も落ちている。

「暗い、けど、大丈夫?」

畑の合間を歩きながら、そんな事を問い掛けるのは。
男の事を、れっきとした純粋な人間だ、そう思っている為。
とはいえ、街を外れた郊外だが、月明かりが立派に、辺りを照らしてくれているらしい。
お陰で互い危なげなく、目当ての孤児院へと、到着する事が出来たようで。

「………よいこは、お休みの時間、だし…」

鍵の開けられた屋内へ、招かれて足を踏み入れつつ。
唇の前で、人差し指を立てながら、小さな声を男の方へ。
客が来たとか、そういう理由が有ったとしても。
わざわざ寝た子を起こす事までは、して欲しくないし、する必要もない。
足音を殺して、男の後に付いていく。

ルシアン > 少女を招き入れた先は石畳の床と木の壁の、落ち着いた雰囲気のエントランス。
十人程度が走り回れるくらいの広さのそこの奥の通路から、青年の声に反応したのか、小さな足音がパタパタと近づいてくる。

『ルシ兄ちゃん、お帰りー!』『…おかえり、なさい…』
「うわっ!?ん…何だ。マルコ、レビ、まだ起きてたの?もう寝る時間じゃないのかい?」

パタパタパタ…と、勢いよく駆け寄り青年に体当たりの如く抱き着いてきたのは、短い栗色の髪の男の子。
もう一人、後からゆっくりやってきて少し遠慮がちな声をかける、長い金髪と褐色の肌の女の子が一人。
どちらもまだ10歳にもなっていない程度だろうか。
男の子を一度ぎゅっと抱き寄せてやりながら、女の子の方にも手を振って。

「ほら、お客様だぞ。前にも会った事はあるけど、ちゃんとご挨拶しな?」

背負ってきた鍋などの道具をエントランスの脇へ置き、ちらりと少女へ目線を向ける。
すると一緒にいる少女へも気づいたのか、男の子と女の子が揃って少女の元へ。
2人そろって、ぺこん、とお辞儀を一つ。

『こんばんは、ディアンサス孤児院へようこそ!お姉ちゃん久しぶり!』『え、と…こんばんは。えへへ…おねえさん、だぁ…』

2人とは少女も面識があるはず。ここの子供たちの中でもリーダー役な子供たちだ。
無邪気そうに懐いて手を振ったりして見る子供たちの様子を、青年ものんびりと見て見たりして。

ツァナ > 程無く。被ったフードが微かに揺れた。
頭が揺れた…のではない。正確には、頭の上に生えた物が、近付く物音を拾って揺れた為。
そんな音の発生源は。直ぐに、通路の奥から姿を現した。

「む、む。……おぉ…」

さぁどうしよう。みんな寝てると思っていたのに。最低二人は、起きて、出迎えてくれたらしい。
おまけに、以前来た時にも出会ったから、ばっちり、此方の事を覚えているようで。
…それに関しては。そもそも、身寄りのない子供達を、その住む家を訪ねてくる客などというのが。
稀で、珍しいからかもしれないが。
目の前で頭を下げる二人に。さぁどう対応しよう、と。考え込んでしまうせいで、生返事。
いや、これは良くない、と。小さく頭を振ってから。

「う、ん。こんばん、は。…寝てたら、邪魔する、気、なかったんだけど…」

こちとら割と小柄だけど。年齢一桁の子供達は、もっと小さく、頭も低く。
だから、手を差し出せば、容易に頭を撫でる事が出来る。
栗色の髪、金色の髪、くしゃくしゃと撫でてから。その手を二人の子供達と繋ぎ。
左右に子供を引き連れて…というより。左右の子供に、挟み込まれ、連行されている感じで。
二人がやってきた、奥の方へと引っ張られていく。
エントランスを抜ける辺りで。……どうしよう、と。そう言いたげな瞳が、彼の方へと向けられたハズ。

ルシアン > 奥の方へと引きずられていく少女に、青年もなんだかとても生暖かい目で見守りつつ、首を横に振る。
このくらいの年頃の子供の勢いを止めるなんてことは中々できるものでもない訳で。
そのまま2人に拉致?されていく少女の後を、自分ものんびりついていく。

送られてきた先は客間であるのか、床のカーペットや据えられた家具の造りが少しだけ他の部屋より立派な物。
学校の教室位の広さに、数人がかけられる大きいテーブルと椅子が数個。別の端には事務用なのか、丈夫そうな机と椅子。
周りの壁には、拙いタッチの絵が何枚も飾られている。ここの子供たちが描いたのだろう。辺りの景色や動物、遊んでいる子供たちの姿も。

子供たちは少女を椅子へと連れて行き、男の子が椅子を引いて座ってくれるよう促して。
女の子は、隣の台所から冷たい水をカップに入れ、少女へと手渡した。

『へへー、お姉ちゃん、この前一緒に植えた苗、もうこーんなでっかくなったんだよー?』
『…はい、おねえさん…おそと、あつかったよね…?ルシ兄様といっしょに、おてつだいしてたの…?』

興味も好奇心も止まらない暴走機関車状態な2人に、流石に少女も困ってるだろうと困ったように笑ってみて。
ぽん、ぽん、と二人の背後から軽く頭を撫でてあげつつ。

「ほら、お姉ちゃん困ってるだろ?あんまりはしゃがないの。
 …ツァナ、ごめん。毎度のことだけど…この子らはいっつもこうだからさ」

自分も水を持ってきて椅子に腰かけながら。冷たい感覚にほっと一息ついて。

『ねーねー、お姉ちゃん。お部屋の中でもそれ、被ってるのー?』
そんな事まで言い出す始末。
青年も、いったんカップをテーブルにおいて。

ツァナ > 程無く、客間に到着。
椅子に座らされた、と思いきや。其処からは再び矢継ぎ早。
渡されたコップの中身に、口を着ける間もなく。次々質問が飛んでくる。

「えぇと、ね。手伝った、ッ、ていうか、ちょっと其処で、会った、みたいな。
…苗?あ、ぁ、この前の。もうちょっと、したら、実が付いて、食べられそ…う。
そいえば。一緒に、植えるの、手伝ってくれた……園長?院長?
腰、痛めたとかって。だいじょぶ……?」

息を吐く間もないが。かといって、答えないのは、悪い気がする。
忌むべき相手だとか、憎むべき敵だとか、ではない。
彼等はただただ、純粋な、子供でしかないのだから。…子が宝なのは。種族を問わない、真理のハズ。
その侭、更に話が続きそうだったものの。彼が合いの手を入れた為、一旦中断。
二人でコップに口を着けて、一息。

「ま、子供は、元気が一番、だし。生きてる、だけで、めっけモンだし。」

なので気にしない、と首を振る。とはいえ、低い所から、貌を覗き込まれそうになるのは。
流石に困ると言いたげに。椅子に座った侭、思いっきり身を逸らして、子供達の視線から逃れようと。

「……むむ。…目を見る、と、石になるとか。
…二目と見れない、怖いカオしてる、とか、だったら。どうする…?」

ちょっぴり、おどろおどろしい声音で。子供達を脅かしてみるのだが。
彼等の好奇心には、果たして勝てるのかどうか。

ルシアン > おー、ツァナも頑張るなぁ…なんてほのぼのモードに入りながら、少女と子供たちのお喋りを見守って。
底なしの好奇心にお客様への軽い興奮状態な子供の仕草。
げんきなだけでもめっけもん…まったく、少女の言うとおりである。

『えー?石になるのはやだー!でも見たいー!』『ぇ…おねえさん…みるの、だめ…?』

脅かしが聞いてるのかどうなのかよく分からないではしゃいでる男の子に、若干涙目な女の子。
やれやれ、と小さく息を一つつく青年。まあ、丁度良い頃合いだろう、なんて心を決めて。

「マルコ、レビ。…このお姉ちゃん…ツァナなら大丈夫だから、見せてあげな?」

―――途端に。ぴたり、と子供たちのはしゃぐ声が収まった。
2人とも僅かに緊張したような…同時に、不安そうな眼を青年に、そして少女へと向ける。
何か迷うような、戸惑うような…そんな仕草。

『…本当か?』『…だいじょうぶ、なの…?』
「ん…大丈夫。僕が保証する。だから…ね」

もう一度、そっと二人の髪を撫でて。あやすような、落ち着かせるような仕草。
それに促されたように…子供たちは顔を見合わせて、やがて小さくうなずき合って。
2人が腕に巻いていた、細い飾り紐のような装飾…それを外す。

…次の瞬間。男の子の頭からは、三角の真っ黒な獣の耳が。
女の子は瞳がうっすら金の色を宿し、耳が細く、長く伸びる。
どちらも、人とは異なる姿―――

「…ツァナ。改めて紹介するよ。こっちのマルコは、人とミレーのハーフ。で、こっちのレビは…魔族。
 どっちも、争いで親を亡くしたんだ。…此処の子たちは、みんなこういう子たちなんだよ」
静かな口調で、子供たちを軽く抱きしめながら。

ツァナ > 「ふ、ふ、ふ。…西の方の、遠い国、にはね。鏡越しにしか、見れない、目が合うと、石にされちゃう、蛇女がー…」

そんな、異国の昔話。…確か、この怪物は。鏡の盾と、空飛ぶ靴を与えられた勇士によって、きっちり退治されて終わるのだが。
その辺の下りはカット。
逆に極東のお国柄宜しく、胸の前で両手を垂れ下がらせ、舌を出し。
今にもうらめしやーとか言い出しそうなジェスチャー。
流石に色々混ざりすぎて、趣旨だか本題だか、分からなくなったせいか。
どうやら子供達…少なくとも、男の子の方に関しては、脅しの効果はなさそうだった。
女の子の方は、うっすら涙目だが、それも何時まで続くのやら。

「………?」

そうやってはしゃいでいた雰囲気が。ぴたりと止まった。
何事かと首を傾げる少女の前で。何やら彼と相談していた、かと思いきや。

「ぇ、え…ッ…!?うそ、なん…で……?ソレ、隠すの、どうやって…?」

何かを外した。それだけで。
今まで目の前にあった子供達の姿が、変わった。
そう、変わった、としか表現しようのない、急激な変化だった。
伸びる、生える、ヒトとは違う耳。話していた鏡のように光る瞳孔。
それ等は明らかに。ヒトと呼ばれる種族達とは、異なる存在の証だった。
…自分と。同じように。

「何か。何か、隠してるって、思ってた、ケド。
それって、こんな。…こういう、風な。事…?」

帰り際の、彼の言い淀んだ言葉を、思い出した。
確かにソレは、自分のような物には大事で、けれど、人目の有るあの場所では、口に出来ない事だ。
しかも彼はこう言った…みんな、と。
既に眠っている子等も同様なのだと。

「知らな、かった。そうか…そう、なんだ。
ビックリした。した、けど。けれど…そう、えっと、だいじょぶ。
大丈夫、だ…だって………」

証を見せた子供達は。互いに寄り添い、手を握り合い。
先程までの明るさは何処へやら、恐る恐るといった様子で、此方の事を見上げて来る。
そんな姿を見れば。子供達がどんな目に遭って、どんな思いで育って来て。
どんな決意で、此処での暮らしを護ろうとしているのか。
そういう全てが、言葉にされずとも、良く分かった。
それでも彼等は、答えを、秘密を、明かしてくれたから。

「だって、ね、その。……ウン、同じだ。
私も、その……同じで、だから、隠してるんだ…」

自分だけだんまりは。きっと、ズルだから。
椅子の上で背筋を伸ばして…此処に来るようになって、初めて。
彼と出遭ってから初めて。頭の後ろへ、フードを下ろした。
銀灰色をした、猫の耳。細い瞳孔。…ミレー族である証。
子供達の反応を窺いながら。彼の方にも目を向けた。
言いたい事は分かるだろう。「あなたも?」、と。問いたがっている。