2018/05/06 のログ
ジード > 「よし、そろそろ切り上げ時だな。
 薬も切れたし…次に考えにいこうかね」

さて、次はどこに店を出そうか。
そう考えながら立ち上がると、そのまま軽く荷物を整えてから、
路地の裏へと消えていくのだった。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区 路地裏」からジードさんが去りました。
ご案内:「王都南部 平原地帯」にバルベリトさんが現れました。
バルベリト > 王都南部に広がっている平原地帯の一角。
そこは作物を育成する為には最適とは言いがたいが、雑草ならば良く育成している。
土は痩せてこそ居るが雑草の根によりしっかりと土壌が締められ、馬――魔法の使えない騎士や魔法が使えない場合の優秀な手段となる彼らの馴致と、数人の新人騎士に自由に馬を乗らせる為にここに足を運んでいた。

『見本を見せてやるからな』

そういったのは何分前か。一番気性が粗い馬を選んだ運の悪さもあって、自分一人だけ悪戦苦闘。
馬装は付けられているが、自分が飛び乗ろうとするとタイミングを計ったように首を振り上げる馬。
無理矢理手綱を掴み続けていれば馬にも怪我を負わせてしまうのだから、手を離さざるを得ない。

その結果、空をかるーく舞い。地面に転がる男の姿があった。

バルベリト > 此処につれてくるまでは大人しいものだったのだ。手綱に引かれるが侭に、素直に此処にたどり着いていた。
その後で暴れ馬というよりは――若駒故の遊び心か。それとも性格が悪いのか――自分を軽く放り出すくせに、自分からはそれほど離れず草を食む。のんきなものだと油断して近寄った2度目、今度は飛び乗った直後にロデオのように下肢を高々と掲げ、騎乗している自分のバランスを崩し――そして最後に首を激しく上下させることで、あっけなく落馬した。

「――――あぁ、俺はコイツ馴致しとくから、思うままに馬に跨って良いぞ――」

服は土塗れ、草塗れ。髪の毛は短く刈り上げていたから被害は少ないが、パン、と平手で軽装を叩くとパラパラと小石や草が落ちてくる有様だった。
数人の若手、新人と言っていい騎士達は飲み込みもよく、馬とも相性がいいのか。

すぐ、勢いをつけて小走りにさせるところまでなれている様だった。
何分の1かのハズレをひいたのか、それとも若手騎士にこの馬が回らなかったことを幸運とすべきかは悩ましい。
もう一度、試しに馬に近寄っていく。足音はザクザクと、若草を踏みしめるにしてはやや枯れた乾いた音。
その音に反応するように、馬はピンと耳をたててこちらに向き直る。
つぶらな瞳だ。――警戒している素振りはまるでない。
ない、はずだ。経験上。

バルベリト > 馬の鬣を撫でる。先ずはスキンシップだ。若い馬だけにまだ毛並みは揃っているとは言いがたいが、それでも丁寧に手入れされた若駒。
鬣もさらさらとして、掌で撫でてやれば馬は慣れているかのように目を細めている。ゆっくり、ゆっくりだ。焦らずに――自分の体躯に見合った幅広さを持つ掌が馬の首筋を撫でている。

「よーしよしよし……」

そうして十分、慣れただろうと言うところで本日4度目の騎乗チャレンジが始まる。
撫でていた掌は動きを止め、馬の背、鞍が設けられた筋肉の盛り上がる部分においた掌はぐっと力を入れ――体重をかける。
自分の脚が地面をけり――飛び乗ろうと脚がついに馬の背中を跨いだ。これで後は自分が尻を鞍に乗せれば騎乗できる――!

バルベリト > ストンという軽い音。その後に響く重い物が地面に転がる音。
前者の音は、馬が地面の上に四肢を崩して座り込んだ音だ。その状態で草を食みながら――悪意が無いのは判る。
動物特有の、つぶらな丸く可愛い瞳。
それが、跨る対象が消失した結果地面に飛び込んだような形になっているこちらに向けられている。

おちょくるとかではなく、純粋に興味深そうな瞳で見ているのだ。気性が粗いとか、そういう理由なら近付いた時点で暴れ出しそうな物なのに。

「お前、ひょっとして遊んでる?」

言葉が通じるとも思えないが、地面に横たわったまま。大の字になるように、ごろんと体制を直し――自分の首だけを馬の方に向けてたずねていた。
何というか、悪意を感じる動きではなく、子供が面白い遊びを思いついた動きのように直感的に感じ取っているのだ。

「まぁ、今日はあいつらが馬に慣れる為の練習みたいなものだからいいけどよ……。」

格好もつかなければ示しもつかない姿を曝け出しているが、気分は悪いものではない。
――というより。先日解決した事態があるからこそ、大の字に寝そべるようにして空を見上げることも出来るのだ。
―――まぁ、既に満天の星空なのだが。

一人の騎士に一人の馬と言う訳には行かない。何故なら馬もまた貴重な資源であり、砦に向う人間に馬を貸与させた後は一定数を残して馬を王都、もしくは直轄領にもどす事が多い。
騎士団でも有力な立場や有能な人物であれば決められた馬が宛がわれるが――彼らのように、なり立ての騎士には特定の馬が与えられることは殆ど無い。
だから馴致を兼ねる名目で、ここに連れ出していたのだった。

バルベリト > 「あー………いいもんだ。あぁ、良いもんだ。」

書類がなく、馬が土を蹴ると泥が、雑草が跳ね上がり。若草の香りと土の香りが両方漂ってくる。
人が馬に慣れるのと共に、馬も人に慣れる為の師団の活動の一環。
そんな小難しい事よりも何よりも、だ。腐った繋がり一つが消えたと言うだけでこうも気の持ちようは変わる物だ。
任務と仕事だけにしか目が向かなかった頃に比べれば雲泥の差。
星の名前など知らない。輝く月の形状も知らない。自分は知識が圧倒的に少ない方だろう。――それを恥じれるだけの心の余裕が持てるようになったのが何より有り難い事だった。

「ほーらこいつでも食うか?」

近くで自分を弄んだ馬に、腰の皮袋から取り出したのは野菜をダイスカットさせた馬用の携行食であり、おやつでもある。
それを見ると食い気を見せて叢から立ち上がり、此方に近寄る馬。
首を伸ばして、寝そべったまま伸ばしている掌の上にある野菜を食みはじめる。
――自分の手は噛まないようにしているあたりは、矢張り本来気性はそう荒くないのだろう。何故自分で遊んでいたかはそもそも謎だが。

バルベリト > 自分の所領については、重要な決定以外は全部任せてある。
――所領の3割を返納する際に数人選抜し、自分の名代として屋敷には置いてある。あの辺りは魔族や魔獣、魔物との戦闘も比較的起こりにくい平穏な土地であり、こっそりとだが自分の師団から数人巡回警備の網に引っ掛かるように王族の領地と王都を繋ぐ街道を巡回させている。
特に戦闘の報告も無ければ、妙な噂話も無い。

――本当に、『完全に』終わらせてくれたのだろう。――正直報復は覚悟していたがその気配すらない。警戒態勢は引き続き取らせているし、自分と縁のある傭兵を数人雇い入れて警戒しているが――杞憂に終わりそうだった。

「うーむ……感謝祭の一つでもひらかねーとなぁ。」

のんびりと。そんな考えを浮かばせてから、何時の間にか自分の隣で座り込んでいる馬に追加の野菜を与え――ふと。気がついた。
恩人の姿を思い浮かべたのもそうだが、今回のこんな状況になっている原因だ。

バルベリト > 「……。」

馬に立つ様に促す。手綱を少しだけ引っ張るとすぐに起き上がる。
一度集合の為の笛を鳴らし――そして新人と言っていい騎士達と、若駒を集めた上で、一人の騎士に頼みごとをした。

「悪い、ちょっと俺に重量軽減の魔法掛けられるか?もしくは馬の筋力強化魔法でもいいんだが」

幸い、若手騎士の一人――魔法を良く学ぶ利発そうな騎士が重量軽減魔法を知っており、自分に掛ける――。
装備品を抜いても100kg超えの自分でも、この魔法のおかげで半分程度まで重量の負荷は軽減される筈だった。
その状態で、もう一度。もう一度だ。馬の背中に手を置いて飛び乗れば――今度は馬も逃げない。遊ばない。しっかりと自分が鞍に腰を落ち着けるのを待ってゆっくりと歩みを進めだす。まるで帰ろうとでも言うように王都に向けて。

「おま……俺が重くて面倒臭いから振り落とそうとしてたとかそういう……?」

馬でさえ自分の認める負担以上の負担は嫌うのだ。脚に負担が掛かるし、堪えるようにはまだ訓練もされてないだろう。
考えてみれば何の事は無い。自分の体重が馬の我慢の限界を超えていただけの簡単な理由だった。

バルベリト > ――考えてみれば単純な理由だった。
理由も単純な上にもっと早く人の助けや手を借りていればもっと楽に理由も解明出来ただろう。
人間でさえ、身の丈以上の負担を嫌うのに馬が受け入れると何故考えていたのか。訓練されていて当然だからという硬い考え方と、これまでの経験則に安易に頼った結果ともいえる。

安易な考えと、自分だけで動くというのはやはりろくでもない結果しか導かない。それを再認識させられる一日だった。

ちなみに、若手騎士には口止め料の代わりという事で夕食は少し良いものを奢ったとかなんとか。
そんなこんなで第八騎士団は今日はまだ、平穏無事な部類の一日だった――

ご案内:「王都南部 平原地帯」からバルベリトさんが去りました。