2018/04/11 のログ
■オフェリア > 伏せられた目許はともすれば眠たげな様にも見えようか。本より下降気味に柔い曲線を描く眸。
瞼が下がれば、屋根の下で腰掛けた侭巨岩の如く動かない露天商からは、虚ろな貌をした女だと、そんな印象を与える事だろう。
しかし女は其の傾げた小首が表す通り、悩んでいた。
軒下から下がる灯の火が揺らぐ度、粗悪な獣油が焼ける厭な匂いが漂ってくる。
長居をすれば恐らく髪に、服に移る。独特の、韜晦なる路の匂いが。
ご案内:「貧民地区 闇市場」にザールさんが現れました。
■ザール > 平民地区から流れてきた男。
ぶらぶらと歩きながら、気づけば貧民地区の闇市場。
休外套に照らされた露店が並ぶ通りに差し掛かり、
男は興味のままぶらりとその中へと足を踏み込んでいく。
視界の中に、以前会話した女の姿を捕らえればゆっくりと男は近づき始める。
■オフェリア > 如何するか、嗄れた露天商の声が立ち竦む女へと購入意思を問うた。
喧騒の中では酷く聞き取り辛く、其の声音には鋭利な威圧感が孕んでいる。
「―――…ええ、何時までも眺めているだけでは、お邪魔ね。
けれど、 そう、ね。良い品だと言うのは分かるわ」
舗装も施されていない土の地面へと直置きされた籠から、漸く眸は露天商へと向けられる。
穏やかな調子で急かす露天商に答えるが、視線はすぐに毒草へ。
冷やかしと疎ましがられているが、女に其れを言葉通り気に病む様子は、ない。
■ザール > 見れば、薬草屋の前で露天商の威圧を柳の様に受け流す女。
「いい品があったのか? オフェリア」
男は女の背後から声をかける。
相手の視線が向けられるのは毒草。
何に使うのかと興味も湧くが…。
クスリも過ぎれば独隣毒も適量であれば薬となる。
■オフェリア > 急かされても尚、女の惑いは晴れない。何時晴れるのかも知れない。
如何、するか。そも、然して困っても居ないような様相で、頬に手を当て考えていると、
「………あら、 まあ、御機嫌よう。ザール様」
不意に背後から掛かる別の声。振り返れば、其処には見知った顔があった。
ちらつく外灯の火の下、女の貌が微笑に華やぐ。
後方に居る大きな姿は、過ぎ行く買物客の頭一つ分以上高い位置に目が在る為、身体ごと其方へ反転させ向き合えば見上げる形に。
開いた胸元の前で両手の指先を緩く合わせて、再会を喜ぶ穏やかな声音が続く。
「ええ、とても。 …フフ、こんな所でお逢いするだなんて思いもしませんでしたわ。
ザール様も、お買物に?」
■ザール > 買うか買わないか、それを楽しみにしているのではないかというような女を相手に、店主はある意味で諦めたか。
「うむ。 元気にしていたか?」
刀の柄に手を乗せたまま。男は頷く。
「いや。 暇が余っていてな。
暇を売れないかとぶらついていたところだ。
俺の暇を買ってくれるモノに心当たりはないか?」
どこか楽し気にそんな事を呟きながら男はゆるりと前へと進み相手との距離を詰める。
■オフェリア > 「ええ、変わり無く。
――…暇、 を? …あら、それでしたら 」
歩が前へ。互いの距離は詰まり、見上げる先は更に幾らか高度を増す。
女の靴はヒールが高い故、身長差は其の分僅かばかり縮まるが、それでも首の傾度は大きくなった。
冗談交じりの相手の言葉を短く反芻し、女の口唇が弧を描く。
合わせた手を解くと、其の両手を男の腕へ。掴むと言うには弱い、ただ添えるように指先を男の手首付近へ重ね、其の侭緩慢に一歩、二歩。詰められたばかりの立ち位置を自らのみ横へとずらした。
女が身を寄せたのは薬草売りの露天、横。漸く店の前を退く気になったようで、人混みを避け、引っ張る事はしないが、相手にも其方へ移るよう誘導しようと。
同時に、導く其の折で、
「ザール様、こちらで。
冷やかしがまた増えたと商人の方が気を揉んでしまいますわ」
■ザール > 「何より。
そう。暇をだ。」
顔をこちらに向ければ自然と首の角度は大きくなりこちらを見やる。
互いに笑みを浮かべると、女は男の隣に立ち、手を腕に重ねてくる。
男はゆったりとした動きのまま導かれるように店を離れていく。
「会の店から何も買わなくてよかったのか?」
等と問いかけながら人ごみを避ける様に誘導されるままに相手の横を導かれていく。
そして、自身の腕に軽く重ねられた手に自身の手を重ねていく。
■オフェリア > 「あら、女の買物はそう簡単に終わらぬものですよ?
けれど 、ザール様なら、私の惑いを終わらせて下さるやも」
露天の真横。幾つも並ぶ店の間に出来た場へ男を誘導すると、重なる手を解く事もなく、女の方から静かに巨躯へ身を寄せた。
屈強な筋肉に包まれた男の片腕に身体を寄り添える。女の胸先だけが幾らか触れて、形を変える。そんな距離となれば、上を向かねば顔を見合すことは出来ない。
冗談めかして男の問いに答えた後で、首を擡げた女は緩やかに眉を下げ、何処か困ったように笑いかけた。
「――…薬草。いくらか購入したいのですが、持ち運ぶのに手立てが無いのです。
女の非力な腕では聊か重いので、自宅まで持ち運べるか…、と」
■ザール > 「はは。 それに付き合うのも甲斐性のうちだな。」
続く言葉に小さく笑みを浮かべながら満足そうに頷き。
腕に触れる柔らかい胸。腕にそれとなく当たる胸の感触を楽しみながら隣の女を見つめ。
「なるほど。 であれば好きなだけ買うといい。
暇を売るついでに、荷物であればいくらでも持とう。俺であれば、荷物ごとオフェリアを持つことも、帰り道守ることも出来るからな。」
困ったように笑う女に男は愉しそうに笑みを向ける。
それは相手が男を体よく誘う口実か、男が相手の家に上がる口実か─。
そうして男は聊かの荷物と女を自宅へと送っていく事であろう。
その後の二人を知るのはまだ寒い夜風のみ─。
ご案内:「貧民地区 闇市場」からザールさんが去りました。
■オフェリア > 「まあ、宜しいのですか?嬉しい…、 頼もしい方ですね」
女の貌が華やぐ。申し出に眸を細め頬を緩めると、重なる手へ一度指を絡めて、それからゆっくりと解いていった。
踵を返し、向かう先は隣の露天。訝しげに視線だけをくれる露天商に微笑み掛けて、女の紅い指先が動く。
―――先まで見据えていた籠から、一つ、二つ…三つほど、その横に並んだ品を、スゥ、と指差し、宙へ起動を描かせて、
「…此処、から…―此処まで。
――…いいえ、籠ごと売って下さいな」
計、四つ。女手に一抱え出来る程度の大きさの籠に入った薬草を、陳列されている其の侭の状態で購入すると、柔く笑んだ女は露天商へそう告げた。
――女は迷っていた。…そう。欲した品と共に帰路へ着ける、今では最早、其れは過去の事である。
ご案内:「貧民地区 闇市場」からオフェリアさんが去りました。