2017/11/04 のログ
ご案内:「街道の旅籠屋」にクトゥワールさんが現れました。
■クトゥワール > 「クソったれめ、どんだけ寒ぃんだよ。」
吹き付ける夜風は冷たい。悪態を吐きながら遠目に見えた灯りへと足早に近寄って行けば、やがて見えてくる旅籠屋。
扉を開けずとも中の賑わいが漏れ出てくる。
独り言と共に扉を開けると、強い光と店員の声に迎えられた。
「ああ、助かったぜ。この間みたいに妙な場所じゃ……ねえな。」
「なんか食えるモンはねぇか。この店の名物は……ブレッドポット料理? 旨そうだな。」
席につき、店のお勧めと合う酒を頼んで息を吐く。外の寒さはとはまるで無縁の空間。時間潰しに観察する。
「このご時世にこんな所で店一件ってのも、珍しいモンだけどな。」
■クトゥワール > 店内は広い。広い分だけの客入りで、盛況だ。小さいながらも踊り場さえあり、踊りを披露している者も見える。
ただし客だけではなく、屈強な男がある者はテーブルにつき、ある者は目立たない場所に立って目を光らせているのも判った。
「それなりに警備はしてるってワケか。」
店の繁盛している結果だろう。だが、その程度ではどうもまだ弱いような――思考は運ばれてきた料理に遮られた。
縁を滑らかに象られた木の盆にはくり抜かれた丸パン。その中には熱々に溶かしたチーズが注ぎ込まれて湯気を立てている。
あわせて赤ワインも一瓶。
思わず溜め息が出た。
「こりゃいい。最高だ。」
「ああ嬢ちゃん、部屋はあるよな。一つ空けといてくれよ、今日は此処に泊まる。」
店員へ伝え、改めて料理へ向き直る。
スプーンを手に取り、チーズを掬い口へ――。
店が賑わうわけだ。風に吹かれて冷えた分だけ、尚の事旨い。
濃厚さを極めたようなチーズの味わいを舌から全身に広げながら、暫しの間意識は料理に集中していた。
■クトゥワール > 「はー……。」
「ああ……良かった。」
やがて顔を上げた時、男の顔は実に満ち足りていた。
人ならずとも身も心も緩み切る瞬間というのはある。それが今だ。
食べる事に集中して暫く意識がなかった気がするが、いつの間にかボトルも半分空いていた。
「で、ナンだったか……あぁそうそう。」
直前の考え事に意識を引き戻す。世の乱れている中こんなところに店があって無事な理由。
改めて考え始めて薄っすらとわかったが、建物自体も普通の作りではないよう。魔術的な補強が施されているのを感じる。
勿論、それなりの相手からすれば気休めに過ぎない。だがそれなり以下なら効き目はあるだろう。
胃の中に物が落ちて、意識がぼんやりする。
思考もあまり纏まらない中、右に左にと視線を動かしていた。