2017/10/15 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区/路地裏」にカインさんが現れました。
カイン > 深夜近くで活気に満ち始めた貧民地区の一角。
娼館や露店の立ち並ぶ一角の路地裏の壁に寄りかかり娼館の前を行き交う人々と、
その人々への呼び込みを行う娼婦たちの様子を眺めている男の姿があった。

「盛況なのは良いが仕事が無いのも困りモンだ。
 喧嘩の一つか乱暴事でも起こすやつがいたっていいだろうに」

呆れたように漏らしてまた一人娼婦に連れられ娼館に入っていく人影を見て肩を竦める。
男の仕事はその路上に立つ娼婦たちの護衛、早い話が用心棒だった。
とはいえいかに深夜と言えど夜も更けすぎた頃合いに特に仲介に入る様な事態が起きるでもなく、
退屈な時間が過ぎるまま残った女性たちも最早片手で数えるほど。
はっきり言って手持無沙汰気味でぼんやり人波を眺めている。

カイン > 時間を置く事数刻。
結果として最後の娼婦が男を引っ掻けることに成功し、
己に向けて手を振る段になっていよいよ手持無沙汰が極まってしまう。

「……これで俺もお役御免、か。随分早かったな」

常日頃であるならもっと深夜まで客が捕まらなければ、
残った娼婦の愚痴でも聞きながら店までエスコートでもするのだが、
連れて行く対象がゼロになってしまえば後は店に帰った娼婦たちが
勝手に報告するのだから報告する必要も無い。
娼婦に手を振り返して見送ってから、困ったとばかりに腕を組み。

「俺も適当に…と言ってもいないんじゃ話にならんしな」

すっかりと娼婦も客も双方の気配の掃けてしまった通りから、最初から
人気のない路地裏の方に視線を向けて後ろ頭を引っ掻く。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区/路地裏」にフォンティーンさんが現れました。
フォンティーン > この路地に差し掛かるのは此れで数度目になる。
時刻柄幾分か人通りは減っては居るものの、貧しい地区特有の
雑多な賑わいと彼方此方に片付けられぬ物が点在する通りは、
慣れない者には迷路に等しい。

「――――あの看板、先程も見た気が。」

見覚えのある場所に立ち返り、無作為に歩いていた足を止める。
双眸を細めて辺りを見渡せば、其処彼処で男の手を引き
婀娜な艶を帯びた女達が宿に引き返す姿。

彼女達が目配せなり、何か徴を送って去って行く方角へと
自然と視線が流れて、見遣れば路地に立つ男が目に入った。
何処ぞ目的がある様にも見え無いその姿に、暫く不躾な視線を向け。

カイン > 「…ンあ?何か用かい、嬢ちゃん」

暫しの間この先の事を思案しているとふと気配を感じる。
視線を向けられている様子にどこか訝し気な様子を隠しもせず、
遠慮なく視線を向けてくる人影に声をかけて顎に手を当てる。
何かした覚えもされた覚えもない物の、この街のこの周辺であれば
絡まれることなどそう珍しい事でもない。応じる様子も慣れたもの、
むしろどこか楽しげにさえ見える様子を隠しもせずに問いかけ。

フォンティーン > 此方が視線を向けていれば、余程鈍感か危機感の無い者でない限り、気付かれて当然。
後者に属す様な人間はそもそも、この辺り一体には近付かないだろう、が。
此方は枠の外から絵を眺めていた様な感覚で居たから、小さく耳が跳ねた。

「用と云う訳では……」

片手を挙げ、否定の形に頚を振ろうとしたが途中で仕種が止まる。
彼とは違う形で思案する様に顎に軽く握る手を当てると、
双眸を伏せて考え込み、続けようとした言葉を変えた。

「…程好い宿をご存知ではないですか。
 然程高く無く、出来れば近くに美味しい料理を出す店があれば尚嬉しい。」

自身の不慣れさに漸く諦めを付け、頚を傾げて問い掛けた。
その間周囲を通りかかる人物も居ないのだから、
地区の中でも丁度吹き溜まりといった場所なのだろう。
問い掛ける事の出来る相手は手放せぬとばかりに視線を返し。

カイン > 「森人か。また、こんな所には似つかわしくないだろうに」

言葉を返しかけてはて、と気が付いた様子で声を上げる。
無論エルフの娼婦に知り合いが居ない訳ではないが多いとは決して言えぬ数。
その同輩と見える様な所作もないだけに不思議そうに漏らしながらも、
否定の後に聞こえた問いかけにふっと笑みを浮かべて喉を鳴らす。

「そいつはまた、贅沢な注文だな。女付きでよければ…なんてのは、
 幾らか思い当たるが興味がある風にも見えないしな。
 探してるのは定宿かい?それとも今日の寝床?」

興味を惹かれたのだろう、幾らか饒舌に問いかけながら頭の中で幾らかの宿を思案し。

フォンティーン > 怪訝さの伺える物言いに、微苦笑を浮かべる。
確かに故郷の仲間達にはこの現状、この場所は受け入れ難い事間違いが無い。
暴露た時の事を想像すれば頭痛がしそうで、敢えて思考に蓋をした。

「――――無い袖は振れぬというのは人間(あなたたち)の言葉では無かったでしょうか。」

人間という意味合いを籠めて呼ぶ際に、ふと違和感を覚えて音が一瞬止まる。
その呼び方に対する反応を待つ様視線を向けてから、続きの言葉を繋ぎ。
贅沢と言われた注文、引き止める為とはいえ一気に希望を言い連ね過ぎたと耳を下げ。

「出来れば……なので、最低限夜を明かして
 身体を休める事の出来る場所であれば勿論文句は言いません。」

この近辺に対する危険性はそれなりに理解していても、
女付きという言葉が意味する所は今一つ飲み込めず曖昧な表情。
心当たりを探してくれている風情に、余計な口出しで無に帰す訳にはいかぬと、
生じた疑問は一旦飲み込む事にして、問いかけには一先ずは後者と応じた。

カイン > 「さて、俺もこの街に本来いる様な種族じゃない以上それは解らんがね」

含みを持たせた様子を隠しもせずに言い放つ。
少女…エルフと知れた以上見た目の年齢など当てにはならないが…
が思案する様子と、どうにも落ち着かぬ様子を見せるのを見れば思い至るのは悪戯心と、
それなりに隠す気もあまりない下心である。
少女の容貌を聞けばなるほどと頷きを返して見せ。

「そうだな。この近所に俺の根城がある、
 飯もそれなりに不味くは無い者が出せるだろう。
 そうさな……一晩相手をしてくれるってんなら、タダで泊めるぜ?」

そう、意地の悪い笑顔で言い放った。相手の反応を
楽しもうという魂胆が透けて見えるが当人もそれを隠す気はあまりない。
無論、断られても宿の口利き位はする腹積もりではあるのだが。

フォンティーン > 感じた違和感を事も無げに認められ、ちらりと過ぎる警戒色。
多種の人種が交じり合う都市だと前情報は入れてあったが、
元が同種で固まって暮らす種族だけに、又、相手の気負いの無さに少しだけ緩みを消した。

「貴方の根城?……あの、この辺りでは其れ程に宿が取り辛い物なのでしょうか。」

願い出たのは自己の塒である筈なのだがと、正直に顔に浮かべると頚を傾げる。
食事の段迄至っても想像が其処に行き着かぬ時点で、
理解が悪いのは疲労が出て居る為とも言い切れ無い調子。
間借りの提示に目を瞬き、想定外の事態に不安に表情を曇らせる。

「一晩の相手、其れ位なら、出来無く、も、ない…?
 ………眠る時間の分置いて貰えるのなら。」

顎に手を当てた儘考え込み、固まる事少し。
相手の言葉の意味自体を履き違えた様な呟き。
宿の取れない可能性が疲れた脳を廻って、楽に流れたがり。

カイン > 「いいや、取りやすいとも。そして安い」

少女の返答に対して返された言葉は至極短く、明瞭だった。
少女の想像していた言葉とは真逆の言葉である。しかし、

「その代り代金として命か自分の所有物を巻き上げようとする店が多いがね」

続ける言葉もまた、その理由を如実に表していた。
詰まる所その手の危険のない店、となると中々に限られるのだ。
そしてそれがまかり通るというのがこの場所の治安の悪さをよく示しているのだ。
特に迷い込んだ新参者、あるいは不心得者に対しては容赦がない。
最も、故にこそ身内と呼べる相手かあるいはそれなり以上に付き合いのある相手には手を出してこないのも特徴ではあるが。

「では、交渉成立だなお嬢さん。俺の名はカインという。そちらは?」

存外にあっさりと引き受けた少女の言。
少々引っかかる場所はあったが敢えて考えないようにはして、
名乗りと共に右手を差し出す。

フォンティーン > それなら何故と開き掛けた口が続く言葉に黙り込み、眉を寄せる。
安い代わりに他の対価を要求される、とは――――。
この地域の特殊性と此処に頼らざるを得ない現状に吐息が毀れる。
この都市、或いは人間という物に小さい諦めが芽生えた表情で頷き。

「成る程。貴方の根城ならばそれは無いと約束されるという事ですね。」

危険の無い店であれば代わりに価格が上がるのだろう。
平民地区程では無くとも期待していた程に安くは無い。
そしてその差額は、直近の自分の生活にも如実に負担を与えてくるとなれば、
貴重な知識を与えてくれた相手に対し、強張りを幾等か緩める。

「己はフォンティーンと申します。一晩の宿を宜しく、カイン殿。」

此方の反応は、彼にとっても又想定外であったかもしれない。
腹芸の出来る性質ではなく、素で頷いた様子で
差し出された手を握り。

カイン > 「女性の一人歩きは感心しない部類の場所には違いないな。
 安くあげるならそれこそ平民地区の外れ辺り、
 宿主のいない部屋に間借りするというのも一つの手だがね」

存外この街にはその手の建物がそれなりに転がっているのだ。
部屋の管理と、何よりも何かに襲われた際の備えは己でやらねばならぬ分、
それを利用しようなどと思う人の方が稀ではある。
しかし逆に腕に覚えがあれば悪くはない選択ではあった。
……ただし、美味い飯やがそこらに有るかどうかは保証しかねるのだが。

「ああ、宜しく頼む。…とはいえこれはこれで…」

怒るか呆れるか、どちらにせよ半ば…いやさ8割は拒絶されると
思っていただけに少々落ち着かぬ風情である。しかし、
それならばと気を取り直し指を握り返して路地を通って歩き始めるのだった。

フォンティーン > 「宿主の居ない部屋?――――それは誰に断れば良いのでしょうか。
 …それにしても、一人で夜を過ごせないとは意外に寂しがりやなのですね。」

耳寄りな情報を聞き付け、道中食い付きながら、
追い駆けて漏らす言葉は耳に届くのか如何か。
それなりの年数を経てきた種族だけに、何処か目下に対する様な口振りで。
警戒心を引き出す筈の提案が、逆に可笑しな方向に和み度を上げていたと気付かせるのは
案内された根城についてからの事か。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区/路地裏」からカインさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区/路地裏」からフォンティーンさんが去りました。