2017/05/01 のログ
ご案内:「設定自由部屋2」にレイカさんが現れました。
レイカ > 里から、もう少し奥へと入った森の奥。
すべてが終わったミレー族の里の跡地に、私はやってきた。

ここには、私の後悔や懺悔、すべてを置いてきた。

私がかつて、まだ何も知らなくて心を氷に閉ざしていなくて。
そして、まだ素直に笑えていた時…まだ、私の心が子供であった時。
ここにあったミレー族の里で、私は育った。

母様の顔も、父様の顔も覚えていない私のたった一つ。
家族と呼べる人たちが暮らしていた集落の跡地。
焼けただれて、今は墨や倒木しかない場所だけど、今でも私はしっかりと覚えている。
ここで、何も知らなくてただ幸せに暮らしていた日々のこと。

「……………。」

昔は、ここに来ることすらもためらわれていた。
この里のことを人間界に持ち込んでしまったと、毎日毎日後悔の念に晒されていた。
皆のお墓、其れすらも立てられずに。

だけど、今この場所には、いくつもの小さなお墓が立っている。
もちろん、私が建てたものだ。
不格好で、花も添えられていない医師のお墓だけど…それぞれ名前を掘っている。
私は、そのお墓の前で、静かに目を閉じていた。

ご案内:「設定自由部屋2」にカナムさんが現れました。
カナム > 「レーイカー。どーこー?」

今日も今日とて里に遊びに来たカナム
しかしまたもやレイカは里には居なかった
お土産はちょうど良いのが居なかったので持ってこなかったのだが
それがいけなかったのかな?なんて考えたり

「すんすん…やっぱ分かんないや」

狼みたく匂いを嗅いで、なんてやってみたけれどやっぱり無理
元々そんな特殊能力持っていないんだから当然の事

だから何も考えずに適当に歩く
勘だけを信じてテクテク進む
そんな調子で内辿り着いたのは少し開けた場所
山火事でもあったかの様な光景の中、見慣れた赤の色を見つけた

レイカ > 皆に、毎日毎日謝罪をしていた日々。
だけど…ようやく私は、私自身を許せた気がした。
皆の反対を押し切って、騎士団に入って、心を壊しかけて。
そして裏切りにあって、心を氷に閉ざし…ここまでしてやっと。

なぜだろう、どこか自嘲気味に笑みがこぼれる。
こんなにボロボロになった私を、皆は嘲笑っているだろうか。
それとも…以前のように頭をなでながら、”よく頑張ったね”と褒めてくれるだろうか。
精霊に聞いても、だれに聞いてもその答えは還ってこない。
私を許せるのは、私しかいないというのは…誰に言われた言葉だっただろうか。

「…………?」

遠くから、私を呼ぶ声が聞こえる。
この声の主は…もうわかっている。
苦笑しながら、私は今のところ唯一と言える友達のところへと歩き始めた。

「カナム君、こっちですよ。」

最近、カナム君はよく里へと遊びに来る。
お土産を持ってくるときもあるけれど、それがない時だってもちろんある。
里の皆、人間に対してはひどい警戒心と猜疑心を抱いている。
けれど、カナム君に対しては優しく、笑顔で接していた。
イノシシを捕らえ、皆で宴を開いたのが功を奏したのだろう。

カナム > 「…うん」

何となく、今レイカに近付くのを躊躇ってしまった
レイカの前に並ぶ石でできた何か
ただ並べただけには思えないそれは決して安易に触れていいとは思えない

「えっと…さぁ?ここって何なの?
後その石の……」

質問が多いとは自分でも思う
けど、ここの事についてはちゃんと聞いておいた方がいい気がする

レイカ > 「………どうしましたか?」

なんだろう、いつもなら少し近寄ってきていたのに。
訓練をしていた時、この子は私のそばで声を掛けなくても待っていた。
なのに、今はなぜか近寄ってこない。

理由は、振り返ればすぐに察することができた。
この子はこの子なりに、気を使っているのだろう。
苦笑しながら、私は彼に近寄り頭をなでてあげた。

「…ここは、私の故郷です。」

私は、この子に自分の過去を打ち明けた。
私はどこで生まれたのかは知らない、親顔すらも覚えていない。
ただ、私は耳飾りと一緒にここのミレー族の里の前に捨てられていた。

そんな私を、ここの里の皆は優しく、そして家族のように育ててくれた。
エルフとミレー族、種族は違えどそこに境界線など存在しなかった。

そんなミレー族の里を、私は大好きだった…。
自慢げに、昔いた場所でここのことを打ち明け…そして。

この里は、奴隷商人と傭兵部隊によって滅ぼされた。
ここにいたミレー族、そして抵抗したミレー族は皆捕らえられ、村は焼き払われた。
ここは…その焼き払われたミレー族の後。

「…不格好でしょう、さすがに私でも石を加工するなんてできませんから。」

お墓…私はそのことを包み隠さず話した。
奴隷商人に規則なんてものを説いたって意味はない。
ほしいものは力づく、逆らうものに容赦なんてしない。
そんなやつらに見つかって、この里が無事でいられるはずがなかった…。

カナム > 「故郷?」

頭を撫でられながら改めて周囲を見回す
何もない…並んだ石と焼け残った残骸以外は本当に何もない
生まれ育った場所が元からこんな状態だった訳ではないと言うのはカナムにだって分かった

「傭兵に奴隷…」

彼女の幸せだった過去とそれを壊された話
奴隷商人と奴隷に襲われ、奪われ、焼き払われた
彼女が悲しそうに語る姿は見ていられない
過去は悔やんだって変えられない
だから元気を出して…そう口にしようとした

「あっ…あぁっ、がぁあっ!!」

激しい頭痛に頭を抱え蹲る
森で魔物や人間と戦った時の傷では感じなかった激しい痛み
頭の中をかき混ぜられる様な痛みは痛いと泣き叫ぶカナムに容赦なく襲い掛かる

レイカ > 私の故郷、それはすでにないと言われればそれまでだ。
ここのことを口にして、皆を殺してしまったのは私だ。
そう、自責の念を抱きながらずっと生きてきた。

だけど、ようやく自分を許せるようになった。
体を壊してまで守ってきたミレー族、偽善だと言われてもかまわない。
それでも私は守りたいと思った、だからもう一度戦うようになった。
そのことを想いながら、私は一度目を伏せ……そして。

「……カナム君……っ!?」

話を終えた時、カナム君の様子が豹変した。
まるで、何か頭の中で暴れているような、そんな痛みのある方向だった。
彼が戦っている様子を、再開してから見たことはない。
だけど、この今が利用は尋常じゃなかった。

「カナム君、大丈夫ですか!?
落ち着いて、大丈夫です、大丈夫ですよ!」

激しい頭痛によってか、蹲って泣き叫ぶカナム君。
私は、その体を抱きしめるように腕を回し、暴れまわる彼を慰めた。
こんな尋常じゃない痛がり方、いったい彼の何がそうさせているのか、皆目見当がつかない…。

カナム > 「いだいっ…いだいいたいいたいいだいいだいあぁぁああっっ!!」

頭が割れているのかと思えるほどの痛み
彼女の腕の中で暴れていたのは一分ほど
永遠に感じられた痛みが治まったカナムは目を見開いた

「……思い出した」

頬を伝う涙の感触
思い出したくもない
思い出せなかった記憶
その一部が忘れていた感情と共に蘇った

「はは…くははっ」

押し殺しても漏れだす笑い声
涙を流しながら満面の笑みで笑うカナムは見上げる

「ありがとうレイカお姉ちゃん、僕ちょっとだけ思い出せたみたい」

顔に張り付いたような笑みを浮かべ感謝を述べる
瞳の奥にはギラギラとしていて湧き上がる激情が宿っている

レイカ > こんなところに、頭痛に効く薬なんてあるはずがない。
だけど、こんなに痛がっているのに何もできないというのだろうか。
また、私は無力感にさいなまれる……?

それだけは嫌だと、私は必死になっていた。
痛がっている時間はそれほど長くはなかっただろう、けれども。
暴れまわっていたカナム君が、突如おとなしくなり…私は息を荒らげながら落ち着いたカナム君を話した。

「………え?」

思い出した、何をだろうか。
…何を、そんなものを私はなぜ思ったのだろうか。
やっぱり、彼は何かしらの出来事から、記憶を封印していた。
そのことを確信していたはずなのに、私は疑問符を頭に浮かべていた。
その時間も、たいして長くはなかったけれども。

「思い出した…って、少し記憶が戻ったんですか!?」

喜ばしいこと…のはずが。
彼の目にある激情の色に、私は強い恐れを抱いていた。
張り付いたような笑み、まるで…そう。
何か、強烈な憎悪のようなものを彼は感じているようで…。

「……あ、あの…カナム…君?」

カナム > 「うわ、可哀想に…ちゃんと手入れしてないから拗ねちゃってるよ」

腰元の鉈が鈍くくすんでいるのを見れば不満そうな顔で体を起こす
こう見えて繊細だという事も忘れていた大事な相棒
謝罪の意味も込めて自分の腕を縦に鉈で切り裂いた

「ごめんね。もう忘れたりしないからさ…今はこれで機嫌なおして?」

お願い。と流れる血を鉈に垂らしていく
刃物にそんな事をするなんて気が触れていると言われるような光景
けれど鈍く汚れていた鉈は息を吹き返したかの様に鮮やかな黒と美しい白い刃が現れる
とても今さっきまで鈍器としてしか使えそうになかった鉈と同じ物には見えない
腕の傷は気を流して治癒力を高めればすぐに塞がる
魔族の身体のありがたさを改めて感じる

「よし…まずは王都を燃やそう」

これからする事を考え始める
まずは王都に火を放ちあいつの全てを奪う
と、考えすぎる前に気が付く大事な事を忘れていた

「うん、思い出したんだレイカお姉ちゃん
全部じゃないけど…とっても大事な事だけはちゃんと思い出したんだよ!」

笑顔で頷き彼女の方へ向き直る
自分の相棒の事
自分が何をして今ここに居るのか
そして必ず殺すと決めた奴の事を

レイカ > なにがなんだか、私にはわからなかった。
ただ、わかるのはさっきまでのカナム君じゃない…どっちかというと。
以前、施設で出会ったあのカナム君によく似ていた。

だが、その行動は常軌を逸していた。
自分の相棒と呼んでいる鉈、それを愛用しているのはよく知っていた。
だけど、それで自分の腕を切り裂くなんて…。

「ちょっ……!な、何をしてるんですか!?」

止める間もなかった。
彼の常軌を逸した行動とともに、その鉈は光を取り戻していた。
血を吸ってよみがえるなんて…まるで魔剣のようだった。

だが、私はその次に聞いた言葉に、耳を疑った。

「お、王都を燃やすって……カナム君、いったい何を考えているんですか!?」

だめだ、いったい彼に何が起きて、何が彼をそうさせているのか。
さっぱりわからない、だけどわかることは一つある。
今、ここで彼を止めないと大変なことになってしまう。

私も、もちろん人間は嫌いだった。
すぐに裏切るし、自分勝手だし、なによりとても悪知恵が働く。
だけど、だからと言ってこの子を王都で犯罪者にさせるわけには…。

だけど、その考えが至極まっとうな事だと……私は思ってしまった。

「………そ、そんな…。」

そんなことがあったなんて…。
彼がミレー族の里を滅ぼしてしまったこと、しかしそれは彼の考えもあってのこと。
そして…そんな彼をあざ笑った…フェルザ家。
私にだって…怒りという感情が芽生えるのに、そう時間はかからなかった。

カナム > 「この子はね、元は普通の鉈だったんだよ
でも血を吸い過ぎて味をおぼえちゃったんだよね」

師匠から貰った唯一の物
物であり今となってはこの世でただ一つの家族の雄姿を見て満足げに頷く

「何って…何も考えてないかなぁ
あいつが苦しめば苦しんだだけ僕は嬉しいんだ。」

どうせ周りの事を考えたって最後は全部壊れてしまう
助けようとしたミレー族を全員自分で焼き殺した時に嫌というほど理解した
自分の事すらちゃんと見えていないのにその周りの事も考えるなんておこがましいんだと

「と、まぁそんな訳で僕は物凄く勝手な理由で王都を燃やすんだ
今ならあいつに絶望を刻めるかもしれないからね」

楽しみだと笑う
自分の中に居る彼…彼女?まぁこの際どっちでもいい
朱雀と呼ばれる化け物が守っていた魔剣の力
人間としても魔族としても中途半端な自分では無理でもこの力が有れば…
そう考えるだけで笑いが声が抑えられない

復讐なんて言えない
全て自分の行動が招いた自業自得
逆恨み上等、気に食わないから駄々をこねるのは子供の特権だ

レイカ > 「…………。」

昔の私ならば、止めただろう。
なにがなんでも止めて、そんな自分勝手な虐殺なんてさせなかっただろう。
この子をけり倒してでも、止めただろう。

だけど……不思議と私の心は、そのことを後押ししたいと考えていた。
そう、彼がしようとしていることは復讐でも何でもない、ただの八つ当たりだ。
自分自身が焼いてしまったミレー族の里、そしてその里の人たち。
その人たちの怒りは、彼に向けられてしかるべきだろう。
だが…そのきっかけを作ったのは、フェルザ家の女だ。

だから……私は止めなかった。

「……分かったよ、カナム君。」

私の口調は、その時のものになっていた。
ゆっくりと立ち上がり、そして彼の頭に手を置いて…なでていた。
私はもう、以前のような甘い女じゃない…。
絶望には絶望を、虐殺には虐殺を。

もう、わたしは、みれーぞくにはんするものを、ゆるさない。

「その女は…殺さずに里へと連れてきてくれるか?
絶望を与えたいなら、私も協力させてほしいんだ。」

力を持て余しているような、彼の表情。
だけど、私もその表情はいつもの優しいレイカお姉ちゃんじゃない。
その瞳には、冷たい殺意がありありと浮かんでいるだろう。

カナム > 「………」

きょとんとした顔で彼女を見つめるカナム
自分の知らない表情を浮かべる彼女の事を見つめ…笑顔で頷いた
少しだけ変わったのは今すぐにでも王都へ向かおうとしていた考えだ

「お姉ちゃんと一緒に色々考えてから動く事にするよ
ただの火事で終わり、なんて事になったら嫌だしね?」

記憶が戻り目的と殺意を思い出して高揚していた自分
けど目の前には自分と同じ…もしくはそれ以上の怒りをあらわにしている大好きなお姉ちゃんが居る
誰かが自分の代わりに怒ってくれて冷静になるようにカナムの興奮状態は少しだけなりを潜めた

「まずはミレー族の事だね。奴隷狩り…狩り、なんて面白いかも!」

ただ獣の様に真っ直ぐ突っ込むだけではダメ
かつての自分と同じ行動をとる所だったのを反省する
じわじわと首を絞める様に行動を起こせばいい
自分はもう獣じゃない。考えて動ける頭があるのだから

レイカ > 「なるほど……カナム君も案外考えているんだな…。」

驚いた、絶対にこの子はすぐにでも王都に向かうものだと思っていた。
記憶のなかったカナム君ならば、きっとそうしただろう。
怒りのまま、暴れまわりただ何事もなく大火事を起こしていただろう。
だが、記憶を取り戻したせいなのか、一度そのことを取りやめた。

私は、怒りを殺意に変えるようになっていた。
絶望を味わい、裏切りを味わった私の心は氷のように冷たく。
ミレー族に仇名す物共を、容赦なく消す…。

「面白いけれども、今はまだ行動を起こすべきじゃないよ、カナム君。
どうだろう、私の…私達の里に来ませんか?」

彼一人では、すぐにでも行動を起こしてしまうだろう。
一緒に、じっくりと考える時間がほしいならば、彼を里に迎え入れてもいい。
ミレー族を狩る物を逆に狩る、私がいつもしていることだ。
だけど、その依頼の先を調べられるようになれば…彼の手助けにもなるだろう。
そんなことをして何になる?…答えなんて簡単だ。

絶望には絶望を、虐殺には虐殺を。
嘲笑には嘲笑を、傲慢には―――体罰を。

カナム > 「そうそう……ん?今案外って言った?」

もしかして普段は馬鹿だと思われているのかと彼女を睨む
頬を膨らましてとても不満そう
それはもう大きく膨らんでいる

「ミレー族の村……うん、レイカお姉ちゃんが居るなら大丈夫だと思う」

ミレー族の村人を全員焼き殺した時の事を思い出す
出来れば思い出したくもない記憶
でも彼女の近くなら多分大丈夫だろう
心が揺らいだ時に心を許せる相手が近くに居るかいないかはカナムにとってはかなり重要な事

「でもこのまま戻ったら皆怖がっちゃうからね
ほら、お姉ちゃんも笑ってー。」

カナムが浮かべるのは張り付いた笑みではなく自然な笑顔
心が落ち着いて余裕ができればこうして普通に笑うことができる

まるで氷の様に固まってしまった表情の彼女
その頬に触れてぐにぐにと動かす
自分も彼女も演技の笑顔なんてしていれば彼等を不安にさせてしまう
だから日常は楽しく笑顔で過ごさないといけない