2017/03/23 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス 入江の洞窟」にルキアさんが現れました。
ルキア > 大小様々な船が停泊するダイラスの船着場。
その近くに店を構える船乗りの憩い亭。
そこで住み込みで働くエルフの娘は、買い出しを済ませたあと人目を避けるかのように小走りで駆けていく。
行き着く先は、入り組んだ岩場の先にある洞窟。
ざざ…ざざ…と波が寄せては返す音が反響するそこには海水が満ちて、引き潮の時にだけ奥へと入ることができる足場ができる。
店の開店前、もしくは閉店後にうまく引き潮の時間が重なれば可能なら娘はそこへと足を運んでいた。
以前よりも頻繁に外出する娘に、店の親父も女将も何も言わない。
その理由が想像できるから、何も聞かない。
周りの認識では、娘は過日死産している。お腹にいる我が子を慈しむ姿は、店の者も店の客たちもよく見ていた。
愛した我が子を死産した悲しみを背負いながらも、店に出れば悲しみも見せずに懸命に働く娘。
恐らくは、死産した我が子の墓へといっているのだろうと皆が思っている。

「マレルト、マレルト…」

引き潮で顔を出した岩を足場に、洞窟の奥へと入ると海水の水面に向けて声をかける。
すると、波打つ海水の中に黒い影がちらりちらりとうつり、それはやがて水面へと近づいているのが分かる。
こぽこぽと小さな気泡があがり、そして――

ピギィィイイイイっ

聴く者の正気に鑢をかけるような声とともに姿を現したのは、黒い表皮をもつ触手のような生物。
海の魔物といっても過言ではない、その声と見た目の生物の出現に娘は怯えるどころか優しい表情をして見つめている。
死産した子供。
実際には、娘はちゃんと生きたモノを出産していた。
しかし、生まれたその子供は人の形をしていなかった。
それ故に、子供は死産した事にしてその生き物の存在を隠した。
生まれた我が子を守るために。
しかし、生まれた幼体の時は30cmほどの体長に娘の足首ほどの太さであったそれの成長は早く見る見る間に乳離れをして大きく育っていくのに、店の二階にある娘の部屋では隠しきることが不可能になっていた。
そこで、見つけたのが人のこないこの入江の洞窟。
今日も娘は、死産した赤子の墓参りではなく無事に生まれて成長していく我が子に会いに来たのだ。

ご案内:「港湾都市ダイラス 入江の洞窟」にアシュトンさんが現れました。
アシュトン > まったく、何でこんなところの調査を。
磯臭いったらありゃしないな。

(ぼやく声も程ほどに、男がここへとやってきたのは偶然と言ってもいいだろう。
何でも、港を拡張する場合における地質の調査とかなんとか。
正直、宝やら何やらは期待できる洞窟でもないし、調査費用が割と良くなければこんな仕事なんて受けなかったのだ)

さて、流石に人里も遠い訳ではなし、大したヤツが居るとは思えないが――

(瞼を軽く指で押して夜目を効かせ、洞窟の中へと入り始めた辺りだった。
実に強烈で、それでいてヒトではない何かと思える叫び声。
構造上、その叫びは入り口までもよくと響いていた)

……前言撤回、こりゃ絶対何かいる。

(ため息を微かに混ぜれば、何時でも武器が取り出せるように臨戦の構えで。
足音と気配を希薄化させながら、洞窟の闇を縫い、すり抜けるようにして奥へと進んでいく)

ルキア > 「今日も誰も人はこなかった?いい子にしてた?」

まるで幼子に話しかけるように問いかけると、ソレは
ピギッピギィィ
とまた聞く者を不快にさせるような声でまるで返事のように鳴き声をあげる。
それは、洞窟に反響して消えていく。
差し出された手に擦り寄るように触れてくる、頭部をおもわしき部分には、吸盤状の口とぞろりろ円状に生え揃った牙がある。
それは、人の肌を引き裂くには十分な鋭さを持ち、それは人の骨を噛み砕くには十分な顎の力があった。
体長はすでに娘の身長をゆうに超え、太さは胴回りを超えている。
海の中に沈む尻尾のほうには、無数の触手が別れ一際太く長い触腕をもつ。
その触手が娘のほうへと伸びると、甘えるようにその体へと絡みついていく。

「やだ、駄目だったら。濡れて帰ったらまだ寒いんだから」

するすると絡みつく触手を制すものの、甘える仕草とわかっているから強く拒絶もできずに触手は体へと絡んでいく。
外から入ってきた気配には、そういったものを感じ取ることのできない娘は気づかずに、親に甘える触手もまた娘しか見えていない。
奥へと進んでくれば、まるで娘が触手生物に襲われているかのようにも見えるかもしれず。

アシュトン > (恐らく奥に居る何かしらの化け物に気付かれない様に――コチラとていっぱしではある、余程感覚か、探知に優れる存在でない限りは、早々簡単には見つからないだろう。
進むほどに聞こえてくるのは、相変わらずと人外らしき存在が発する音と。加えて、女性の声だろうか。
反響で少々分かりにくくなっているモノの、音源は恐らく同一。
加えて襲われているような様子ではなく、もっと、こう、何かしらの親愛でも含めているような。
少なくとも、命に係わるような雰囲気には聞こえない)

…………ややっこしい事になって来たぞ、これは

(調査なんて吹っ飛ぶような、特大の厄介事がその先にあるのを、これまで生存してきた勘が告げる。
というか、女性の方の声に、どうも聞き覚えがあるような気がしてならない。
やがてと声がはっきりと届く辺りにまで近づけば、岩の影に背中を預け。視界が僅かに通るだけ覗き込んでみれば)

――大当たりか

(非常に残念ながら。
まず怪物と思わしき声は、謎の触手からだろう。
何だろう、タコとかそう言う系統だろうか。それなりに大きくとなっており、ヒトの身の丈程度はある。
まぁ、あれに一般人が襲われたら一たまりもないだろう。
そしてもう一つ、その触手に絡まれているらしき人物の姿に、見覚えがあった。
最後に会ったのは、割と前の事なのだが。
さて、一人と一匹のじゃれ合いを察するに、ある程度の予想は成り立つ。思いっきり面倒な方向に。
眉間に思いっきり皺を寄せて考えたあげく、このままではにっちもさっちもいかないとの結論に至る。
握りかけたいた剣の柄から手を離せば、大きくため息をついて)

随分と、久しぶりだな。
まさかこんな場所で、こんな状況で再開するとはな。考えてもいなかったよ。

(気配を隠すのをやめると、敢えてアチラが気付けるように声を出して。
触手の間合いより離れた、飛びかかって来ても数瞬程度は余裕のある距離まで。
刺激しないように口の端を僅かに上げた笑みと共に、ゆっくりとした足取りで、近づいてゆく。
勿論、何事が起こるか分からない、十分注意して、だが。
……我ながら最近、お人よし過ぎると思う)

ルキア > 「だめ、だめだったら、もう。」

ダメだといっても絡み付いてくる触手を、いっぽん引き剥がせば、新たな触手が絡み付いてくる。
濡れた触手に絡みつかれて、衣服はすでに水を吸って濡れてしまっている。
結局毎回こうなるのだ。
はぁ、と大きくため息をこぼすものの我が子が甘えてくるのが迷惑なはずもない。
少し寒いのは、仕方ないかと思って好きにさせようとしたところで

「―――っっ?!」

娘からすれば突然、近くから聞こえた声に弾かれたように触手生物に向けていた視線をあげて声の主を探すように少しだけ視線が彷徨う。
けれど、その視線は姿を現していた男性にとまり人の来ない洞窟に人が来た驚きと、異形である触手を絡みつけている子を見られた事に狼狽する。
咄嗟にソレを隠そうと動くが、隠しきれるものでもなく…。
光源がカンテラの明かりのみで薄暗い洞窟の中、そして光源の近くにいれば周りの暗闇はより濃く見えて人物の判別に遅れが生じる。

ギ…ギギギィィ

娘に触手を絡めていた生物は、威嚇の声をあげ緊迫した空気へと変わる。

ゆっくりとした足取りで、ある程度近づいてくればうっすらとカンテラの明かりに照らし出されて顔や体が見えてくる。
その人物に娘は見覚えがあった。
もう随分と前になるが、故郷の森から出てまもない頃にであった男性だ。
名前は確か――

「……アシュトンさん…?」

襲い掛かりそうな触手生物を制しながら、記憶を探り出てきた名前を問いかける。
どうしよう、見られた…どうすればいい…
再会したことよりも、この子を見られたことに意識は完全に向いており、頭のなかでぐるぐると必死に考えるが答えは見つからない。

アシュトン > 覚えていてくれたか、有り難いね。
もう随分と前になるからな……ま、そいつを見れば色々有ったんだろうってのは、察しもつくが。

(出ていく直前まで繰り広げられていたのは、触手と女性の濡れ場……まぁ、文字通りでの意味なのだけど。
彼女が驚く姿と、次いで、触手が此方に警戒を示すのは、十分と予想通りである。
コチラと言えば警戒は纏っているが、殺気を発するでもなく、武器を手にするでもなく。
もっとも、その両方ともに寸で切り替えは十分に可能性である。一人と一匹がソレを察するかは、別の話だけれども)

とりあえず、今すぐどうこうしようって訳じゃない。
他人に話すなってんなら、『問題』が起きるまで口を閉じよう。
だが万が一襲ってきた場合は保障出来ないんでな、なんとかなだめておいてくれ。俺は弱いんでね。

(くくっと、冗談めかしたような笑い声の後に。
微かに間を置けば、黒い瞳の奥で真剣みが増してゆく)

で、問題はそいつだ。
話しにくいだろうから、俺から大よその予想を先に告げておく。

(謎の触手、恐らくは魔族の血統だろう。示すように指を向ければ、片目を微かと細くして
距離を置いた状況で、脚を止めた
彼女のも現状に混乱しているだろうし、コチラからおおまかに筋を作った方が話も早いだろう)

状況は色々考えられるが、大きいのは二つだ。
一つはそいつに魅了か何かを食らってる可能性。

(別のナニカに見えているか、或いは精神に干渉されているか。
十分とあり得る事態と言ってもいい)

もう一つは…………そいつがルキアの子供だって可能性だ。

(若干言いにくいセリフの前に溜めを作ってから、告げる。
彼女と二度程行為に及んだ事はあるが、人間とエルフでああいうのが生まれるとは考えにくい。というかあり得ない。
なら、「ああいう姿」の魔物に種を仕込まれたと思うのが妥当だろう
もっとも、前者と後者の合わせ技、なんてのもあり得るのだけども。)

ルキア > そう、随分と前。
森から出てきて間もないころにであった、初めて肉体関係をもった相手でもある。
しかし、まだその頃は忘却の術が仕込まれておりそのことを娘は覚えていない。
ただ、なれぬ自分に親切にしてくれた男の人という認識しか今はない。
けれど、親切な男の人であってもこの状況を見られて自分から何もかも洗いざらい話す気にも到底なれるはずもなく。

「マレルト…大丈夫だから、ね?人を襲ったりしないって約束してるでしょ?」

彼が他人に言わないでくれるというのは、願ってもないことでもあるし、この子が彼を襲うことは避けたい。
もちろん、先に異形であるこの子が襲われた場合、応戦するのは仕方のないことだ。
けれど、叶うことなら、この子が他人を傷つけることも、他人に傷つけられることもあってほしくはない。
威嚇し、攻撃態勢になろうとするソレを娘は宥めるように撫でて何度も言い聞かせる。
娘の言葉には、従う様子を見せる触手生物は未だに威嚇の声を上げながらも、男性に襲いかかる様子はない。

「―――っ」

予想とはいえ、まさか自分の子供であることを言い当てられるとは思わなかった。
そのことに言葉を呑むが、それが彼にとっては答えとなるだろう。
そして、触手の方をみやると頭を軽く振って娘は口を開いた。

「魅了とか、そういうのは分かりませんけど、この子はわたしが産んだ子供です。私が生んで、この子が人に受け入れられない異形だとわかった上でこの子の母親になることを決めました。」

異形に寄生された宿主となるか、それとも母となるか選べとフードを被った人物に選択を投げかけられた。
その時に娘は選択したのだ。世界にどれだけこの異形が拒絶されようとも、ただひとり自分だけは味方になると、母親になると。
その決意を思い起こすと、男性へと視線を向けてそう告げる。
これは自分の使い魔だと、誰かに見つかった時にそう言うつもりであったが、予想とはいえ言い当てられている以上取り繕っても意味がない。
だから、素直に娘はそう事実を告げた。

アシュトン > …………

(触手にたいして言い聞かせて言える姿を、なんとも言えない瞳で見つめている。
ある種観察、のような雰囲気も漂わせて。
マレルト、と言うらしい。警戒の唸り声は相変わらずだが、襲い掛からないのを見る限り、言う事は聞いているようだ。
あるいは、彼女の雰囲気から察しているのか)

なるほど、おおよそ予想は当たりだったって事だな
魔族の血が濃い異形の子を産み、ヒトの街には連れていけないから、この洞窟でかくまっている。と。

(彼女の無言の肯定、そして次に告げた言葉から状況を理解する。
使い魔だと言うのであれば、こんな場所に匿っているのは不自然であるし。
彼女自身が知識としてあるかどうかは別だが、ああいう異形の魔族で、ヒトの女を母体にして産ませるヤツというのは、案外と居るものだ。
冒険者としての知識と経験も、その予想を引き出す一因だったと言える)

これは分かる、が、そのあと、これからどうする心算だ?
ルキアも分かってると思うから、か弱い人間の立場としてハッキリ言わせて貰う。
今の内に、殺せ。

(恐らくは彼女も十分に予想出来ていたであろう台詞を、冷酷に、そして冷静に告げる
視線に宿る光は、鋭利に研ぎ澄まされた刃に等しい。常人であれば、恐怖と生命の危機を感じる程の。普通の人間が出来る眼ではない。
ただの親切な人ではなかった、と理解するには十分だろう)

今の所はその程度のサイズで済んでいる、見たところルキアにも懐いている、だが一か月後は?二か月後は?一年後は?
やがてこの洞窟では匿いきれなくなる、ルキアの言う事を聞かなくなる可能性も十分にある。
そうすれば船を襲い、街を襲い、ヒトを襲い、そしてルキアと同じ被害者を生み出す。
そうなったらルキアはどうする心算だ?泣くのか?謝るのか?自殺するか?どれも何もかも、被害を受けた者達の安らぎには程遠い。
だから一番いいのは、今の内に、殺せ。
――……いや、ルキアが出来ないというのであれば、俺が殺してやる。俺の出来る最大限苦しまない安らかな方法でな。

(彼女も十分に予想出来ていたであろう台詞を再び、冷酷に、そして冷静に告げる。
いや、最後の方のセリフは、予想できなかったかも知れないが。
敢えて「マレルト」という彼女が付けた名前を使わずに、そう言う)