2016/10/26 のログ
ご案内:「ドラゴンズネスト近辺の森」にキルド・ニッヒドさんが現れました。
■キルド・ニッヒド > ドラゴンズネスト。
龍の巣――財宝を好む龍が住むとされるいくつもの階層で作られたダンジョン。
そこの近くにある森に、少年はいた。
ここに来たのは、とある”龍”に殺し方を相談するためでもあり。
また、龍について詳しく知るためでもあった。
龍のことを説明するよりも――場所を教えればより、状況が理解できるという。
そういった意味合いもある。
とはいえ、彼女は忙しい身だ。
こんな少年の言葉、誘いに乗ってくれるのかというちょっとした不安もあったが――
さて、彼女は乗ってくれただろうか
ご案内:「ドラゴンズネスト近辺の森」にイルゥさんが現れました。
■イルゥ > 時間通りに、待ち人はやって来た。
紅の髪の幼い竜の少女は、静かに歩いてやって来れば。
キルドを認めて、軽く会釈した。歩き方、会釈、表情の作り方。
どれをとっても熟達した優雅な仕草であり、やはり幼い少女の外見とは
少しばかりギャップのあるものであった。
つまる話が、いつも通りの彼女である。
「お久しぶり、と言ったらいいかしら?」
少女が声をかける。
幼く可愛らしい声であるが、何とも深みのある話し方だ。
まるで、艶めかしい熟女のそれである。
ただ声を発するだけで、男を誘い込むような。
未熟で幼い声と裏腹に、その声の色はある種危険な香りすら漂わせている。
■キルド・ニッヒド >
「――はい、そうですねっ。おひさしぶり? です!」
久しぶり。そう告げた、少女を確認すると少年は”元気”にそうかえした。
そのそぶりは、少女にとってはおそらく”初めて”みるもの。
最初会ったときは、もっと感情がなく。感覚も乏しく――
淡々としていたのに、今は……
「きてくれてうれしいです。いそがしいっと、おもっておりましたからに」
話し方も、少しの違和感。
あまり今のしゃべり方に慣れていない。そんな印象を感じるような
■イルゥ > 「何だか少し、雰囲気が変わったわねぇ、貴方?」
ふふ、と小さく微笑めば、イルゥは自分の顎に小さな手をやる。
そのままに数歩、キルドの方へと歩み寄り、目と鼻の先まで近づいていき、
彼の目の前で小首を傾げた。
「まぁ、お店の方は忙しいけれど……うちにはそれなりに沢山、店員が
居るから。空けようと思えば結構空けられるのよねぇ」
イルゥは冒険者の為の宿を経営している。
宿には多くの女店員達がおり、大半がしっかり教育の行き届いている彼女達は、
女主人が居なくとも店を回すことが出来るのだ。
もっとも、彼女が居ない間は、主人手製の料理が食べられない、と嘆く客も
多くはあるのだが。
「それに、可愛い貴方のお願いだし? 無視する、って訳にはいかない
わよね」
少し困ったように笑いながら、イルゥはそう付け足した。
イルゥは人間の男を、とてもよく好む。若い男なら、尚更だ。
場合にもよるが、何事かを頼まれれば、なかなか断れない性質なのだ。
■キルド・ニッヒド > 「そうですか? あ、もしかしたらけーご、はなすようにいわれてるからかもしれないですねっ」
元気な少年、どこか頭が弱そうな印象を受ける。
無邪気、無垢。純粋――
それに近いものを表現しているようにも見えた。
「かわいい、ですか? あはは、ころしもんくがじょうずですねっ」
ころころと笑いながら、寄ってきた少女を見下ろして――
近くにある、地面から出ている木の根っこ――
腰を下ろすのにちょうどいい高さの、そこにゆっくり座り。
隣を目線で促す。
「ちょっと、そうだんごと、したいなーとおもって。このまえとおなじ、ないようなんですけどねっ」
■イルゥ > 「ふぅん……? 結構良いんじゃないかしら、その話し方」
肯定的な言葉と共に笑顔を浮かべて、返す。
どういう理由があれ、こういう無邪気であったり、無垢であったり、
そんな色を見せる者は愛でたくなってしまうのが彼女の悪い癖である。
「構わないわ。悩める若者の相談を聞いてあげるのは、年長者のすべき
ことだから……ね?」
小さな口で、そんなことを言う竜の少女。
目線で促されれば、小さな尻をちょこん、と木の根っこに乗せて座る。
竜の尻尾が、ゆらりゆらりと揺れる。
■キルド・ニッヒド >
「ほんとうですか? うまくはなせてるなら、よかったですっ」
からからと、笑い声を出しながら。
あたる日光に目を細める。少し高い身長とはギャップのある話し方。
それが功を奏したのかもしれない。
「まだ、けっきょく。わからなくて――ころしかた……」
――ざぁっと、森が泣いた。
そのあどけなさが、つぶやいた瞬間。
別の意味を持った
■イルゥ >
「違和感が全く無い、という訳じゃあないけど……そこは、きっと慣れよ、慣れ。
心配しなくても大丈夫よ」
穏やかな笑みを浮かべるイルゥ。
笑う際には、必ず口元に手をやる。
彼女の癖であるようだ。
「殺し方、ね……」
ざぁ、と森が泣けば。
竜の少女は目を閉じて、自らの長い髪を風が撫でていくのを感じながら、
一度頷いた。
「本当に、殺したいのね。どうしても、殺したいのね……?
竜を……」
確認するように、イルゥは少年にそう問いかける。
笑みは、消えていた。
■キルド・ニッヒド >
「ころしたいです。ころすのが、ぞんざいのいみだと。もうまちがわないように――」
だれ一人殺せなかった。殺すために生まれたのに、殺せなかった。
なぜ? それは否定したからだ。
なにを――?
「ころすことは、できますか? りゅうを――このさきにいる、それを……」
ならば――
「そのほうほうを、おしえてほしいです」
死とは、殺とは――
なんなのか、理解するために
■イルゥ > 「そう。どう在っても、殺す存在で在りたいのね、貴方は。
殺すことが、貴方の存在理由、そう信じているのね」
ふぅん、と再び微笑むイルゥ。
その笑いには、少しばかり憐憫の色も含まれているようであった。
嘲りや上からの目線、という訳ではなく。
隣に居て同情をするような、そんな憐憫の色。
続けて何かを口にしようとしたが、その言葉は押し込めたようであった。
一人納得したように小さく頷けば、語を継いでいく。
「……そうね。殺せるかどうかは、きっと貴方次第じゃないかしら。
剣の腕や魔法の素質の話をしているのじゃないわ。
貴方の殺したい、という気持ちが本物であれば。
本当に望むものであれば。きっとその心が力になる筈よ。
強い意志の力は、竜殺しの英雄《ドラゴンスレイヤー》になりたいので
あれば、きっと必要なものじゃないかしら。
……ところで貴方、その殺したい竜とはもう一戦交えたんだったかしら?」
腕組みをして、語る少年を見守りながら、そんな問いかけをするイルゥ。
少々悪戯っぽく。
■キルド・ニッヒド >
「――……」
言葉には答えなかった。
龍が何を思うのか、それは少年にはわからないものだ。
それは逆もしかり。だから優しく笑うだけ――
その笑みは、作られたものか、それとも?
「こんしんろん? みたいなはなし、ですか? ――まだ、です」
根性論と精神論が混ざった模様。
交えたと言われれば……目を背けて、首を横に振った
■イルゥ > 「こんしんろん……あぁ、根性論、精神論。まぁ、そんな所ね。
意味がないと思うかしら? そんなこと、と思うかしら?
でも、結構大事なことよ。
いくら素晴らしい武器を持っても、優れた魔法があっても、技術を駆使しても。
そこに意志がなければ竜は殺せないでしょうからね。」
真剣な表情でキルドを見上げるイルゥ。
「竜はそれ程までに強大な存在なの。まず、目の前に立つことが第一歩。
これは竜を殺す為のレッスンその1、といったところかしら。
ちなみにキルド、もうひとつだけ質問。
貴方。竜を実際に目にしたことは、あるんだったかしら?」
重ねて、問いかけるイルゥ。
責めるような問いかけではなく、柔らかい口調であったが、
真剣そのものの表情は変わらなかった。
■キルド・ニッヒド >
「――ころすという、いし」
あるかと言われれば、首をかしげる。
なぜなら自分はただすがっているからだ。
宿っているのではない、しがみついているだけだ――
だが、それでも必要だというのなら。
「――あります。じったいは、みたこと、ないですけど」
答える。そこに活路があるのだと、信じているように
■イルゥ > 「ええ、殺すという意志。確かな意志。
ちょっとやそっとじゃ揺るがない、意志よ。
超常の存在を狩るというのであれば、相応の心構えが必要ということね」
こくり、と小さく頷くイルゥ。
「竜を殺すと意気込んだ人間は沢山見てきたけれど。
実際に竜の実体を……『竜』そのものを見てしまうと、
生半可な意志は吹き飛んでしまうものなのよ。そして、刃を取り落とすの。
そうなれば待っているのは、『死』ね。『生半可な意志』は『死』を招く。
……別に、貴方を見くびっている訳じゃないのよ。
でも、そういう人間を実際に目の前で多く見てきたものだから……ね?」
そう言って、木の根っこから尻を離して、立ち上がるイルゥ。
スカートをぽんぽん、と二、三度軽く払って、彼女はキルドの方へと振り向いた。
「お望みなら……一度、実体の『竜』を見せてあげようかしら?」
■キルド・ニッヒド >
言っている意味は理解できる。
そう、理解できる、だが実際はどうなのか
想像はできても、それに対処できなければ意味がない。
だから――
「はずかしくないなら……おねがいします!」
■イルゥ > 「恥ずかしがる竜は結構居るわね。でも私は別に、恥ずかしさなんてこれっぽ
っちも持ち合わせてないわ。もう、あんなことされた後だし……ねぇ?」
悪戯っぽく笑いながらそう言って、彼女は両手を広げながら、
キルドから距離を取る。
森の気が。世界の力が。渦となって、彼女を取り巻いた。
力の渦はやがて光の柱となり、彼女を中心に展開されるそれは、
ごうごうと音を立てて荒れ狂う。
まるで、局所的な嵐である。
巨大な嵐は光の柱となり、その輝きを増して――
そうして。
光が収束すれば。
キルドの眼前に、巨大な紅の鱗の竜が佇んでいた。
とてつもなく大きい。思い切り首を上に向けて見上げたところで、
とてもその全貌を掴むことはかなわないであろう。
竜というものは、あまりにも巨大であった。
佇むだけのそれは本当に、ただただ巨大。
本当にただそれだけで、発する威圧感と言えば常軌を逸している。
もしこの紅竜が一歩でも動き出したとすれば、森全体が震えることだろう。
否。震える、で済めば随分とマシな方かもしれない。
紅竜は、金色の瞳でキルドを見下ろす。
竜が発するのは、唸り声にも聞こえる呼吸音だけだ――。
■キルド・ニッヒド >
確かに、すごいことはした。
けれど、それとこれとは違うみたいな所感をもつのはずれていたりするのだろうか。
そして行われる――その儀式のような行いは
まさに降臨といっても過言ではないものだった。
こんな森で、こんな巨象が出てくれば討伐隊に見つかれば即座に編成されて
王国の敵として排除され可能性がある――……
というのに二つ返事でその姿をあらわにした龍。
そこにはどれほどの自信と……
「――……」
見上げる。少年はただただ見上げて――……
立ちすくみもせず何もせず。
ただただ目を細めて――……”感情なく”見つめていた
■イルゥ > キルドが見上げていたそれは、一度の瞬きの間に、ふっと消える。
まるで、幻であったかのように。
「……よく『見えた』かしら。ま、こんなところかしらねぇ」
イルゥは、手を広げたままの状態で、そこに居た。
先程と同じ位置で、同じポーズのまま、そこに居た。
寸分違わず。
撒き散らされていた筈の木の葉や草は元の位置にあり、
森を包む空気もまた、先程と全く変わらない色を帯びていた。
何も変わらないその森の中では――
――何も起きていなかったのだ。
竜など、森の中には顕れていなかったのだ。
森とはいえこのような場で姿を晒せば大事になるのは間違いない。
イルゥとて、百も承知。一度人間に敗れた彼女が、大勢の人間前に竜の姿を再び晒すことは無い。
故に、イルゥが選択したのは、実際に竜になる時と全く同じエネルギー量を用いて、
キルドに自らの姿を『影』として、見せることであった。
それが、彼女が彼に提示出来る、最大限のものだった。
それは『実体』と何ら変わらぬ存在感を備えていたことであろう。
何せ、竜に变化するのと同じだけのエネルギーを消費したのだから。
広げていた両手を下ろしたイルゥは、小首を傾げて見せた。
その顔には疲労からか、少しばかり汗が滲んでいるように見える。
しかし表情は崩れておらず。
「……どう、こんなのと戦えそうかしら?」