2016/07/17 のログ
ご案内:「街道沿いの魔法店」にイルミさんが現れました。
■イルミ > 「……ねえ?チビちゃん、ここに……」
目の前にエサを差し出すと、机の真ん中に陣取った黒猫はそれを当然のように口にする。今日も食欲十分。元気なのはいいこと……なのだが、
「はぁ……」
飼い主の方は、そのことをあまり喜ばしく思っていなかった。それもそのはず、自分が差し出したエサというのは不可視化の魔法をかけた「はず」のものだったのだ。何度試してみても、何にかけてみても透明にはならず、もしかしたら術者からは透明に見えないのかもしれないと思ってこの実験に踏み切ったのだった。結果はやはりというかなんというか、単に失敗しているだけだった。
■イルミ > 「おかしいなぁ……うーん」
というのも、自分が魔法に失敗すると何か予想もしてないような結果を引き起こすことが大半なのだ。物を空中に浮かべようとして地面に沈みこませたり、火の玉を出そうとして突風を巻き起こしたり、といった具合に。
「幻惑術はまだ得意だから、なのかなぁ……」
人間に対してちょっとした幻覚を見せたりするくらいのことは出来る。……とは言っても、見せられるのは子供の落書きのような姿のトカゲやカエルなど、「いかにも幻覚」なものばかりで一発でバレてしまうため、見世物のような使い方くらいしかできないのだけど。
■イルミ > 「透明になれたらいろいろと便利なのに……うーん」
透明になれば、男性の視線に怯えることもないし、一人で物騒なところへ行くときも怖がらなくて済む。森で薬草やキノコを探しているうちにすっかり暗くなってしまったりしても安心だ。……どこかへ盗みに入るだとか、男性の食事に精力剤を混ぜてから誘惑するだとか、そういった考えには全く至らない。
「やっぱり難しい魔法なのかなぁ、もっと初歩的な……あれ?」
ふと机の上を見ると、さっきまでそこで眠たそうにしていた黒猫がいなかった。辺りを見渡しても、ローブの裾を持ち上げても、やはりいない。はて?と首をかしげるが、猫がどこかにいくなんて珍しいことでもない。そのうちひょっこり出てくるだろうと思い、椅子に座って魔術の本を読み始めることにする
ご案内:「街道沿いの魔法店」にレモンさんが現れました。
■レモン > それはちょうどたまたまの偶然だった。
街道を歩いていたら突然に、自分の身体が消えてしまったのだ。
「…あれ?」
それは丁度、魔法店の前。
それは丁度、魔法店の店主が透明化の魔法を餌にかけようとした時。
それは丁度、どういうわけだか透明化の魔法が店の外まで影響を及ぼしてしまったから。
「お、おおおっ…?
おおおおおっ?」
両手が消えたのを皮切りに、両足も先端から消えていく。
もちろん手に持っていた杖も、ローブも、何もかも見えなくなっていく。
よほど強い魔法なのだろう、とうとう少年の身体は一切何も見えなくなってしまった。
自分の目にも、魔法をかけた当人の目にも。
透明だけれど感覚はある。目も見える。
おそらく原因はここだろうと魔法店を覗きこめば、そこには店主らしき女性の姿。
ならばこのラッキー、活かさない手はあるまい…と。
透明人間が静かに店の扉を開け、物音立てずに忍び込む…
気付かれるかな?と、内心の声。
けれど気付かれても逃げ出すのは簡単だろう。
そろりそろり、小柄な店主の背後に歩み寄ろうとして。
■イルミ > 「……あっ、いらっ……」
しゃいませ、と声を出そうとして、出なかった。本から顔を上げてみても、そこに客の姿はない。ドアが開いたような気がしたのだが、気のせいだったのかもしれない。はて?と再び首をかしげる。黒猫が外から帰ってきたのか?と思ったが、猫がドアを開けるとは思えないし、仮にそんなことができてもわざわざ閉めたりはしないだろう。
「……??」
しかしまぁ、誰も来ていないならしかたない。それ以上気にすることもなく、再び本を読み始める。どうやら透明化よりも先に覚えなければならないことは色々ありそうだ。
■レモン > (はいはいお邪魔しますよ。)
と、声を出したらさすがにバレそうなので口パクだけにしておく。
初対面でありながら有利な状況に遠慮はしない。
同じ魔術師(の卵)として魔法店の取り扱いに興味はあるが、それは次の機会にしておこう。
今はこの、巨乳店主へのイタズラの絶好的好機を楽しむべき。そうするべき。
(まずはこの邪魔なローブを脱いでもらおうかな。)
けれどどうすればいいかな。まさかハサミで切ってしまうわけにはいかない。
見渡せばそこには、テーブルの上を這いまわる蜘蛛が一匹。
ジタバタするそいつを摘み上げ、肩越しに手を伸ばす…そっと、ローブの襟元に。
――ぽとり。
小さな虫が八本の足で彼女の素肌を這いまわるだろう。
胸に、腹に、背中に…
(服を脱がずに取れるかな?)
■イルミ > 「……んっ?」
本に集中していたせいか、違和感を覚えるのには少し時間がかかった。最初はゴミか何かがローブの内側に入り込んだのかと思ったが、
「む……虫?」
それが動いていることに気づくまでさらに十秒弱かかった。が、気づいてからの動きは冷静で、するりとローブを脱いで椅子の背もたれにかけると、首筋の方に指を添えて、
「もう、こんなとこまで入ってきて……片付けしないとダメかなぁ」
指に乗り移った小さな蜘蛛を見て、誰にともなく呟いた。頻繁に森や草原で採集する魔女にとって、蜘蛛はそこまで忌避するものでもなかった。
■レモン > (作戦通り!)
蜘蛛が身体を這い回ればもう少し慌てそうなもの(というか自分がそう)だけれど、なんとも彼女は冷静だった。
けれど身体のラインを隠すようなローブを脱ぎ捨ててしまえば、少年の目の前には柔らかそうなライン。
作戦は成功だ。
今すぐ飛び込みたい。
けれど焦りは禁物。
見えない手をわきわきとさせて、少年は店主の背後すぐのところまで肉薄する。
抑えようとしても熱くなりそうな吐息。
姿が見えなくても発情の匂いは隠しきれず漂いだしてしまうものの。
あらわになった彼女のうなじを、人差し指でつつ――と一撫で。
まるでまだ虫がいるかのように。
うなじから肩、そして背中…腰…と、ワンピースの上から擽ったさが移動する。
■イルミ > 「さて……」
ローブは魔女の正装、やはりきちんと着ておいた方がいい……とは思ったけれど、どうせ客は来ないし、最近は蒸し暑くてかなわない。少しくらい下のワンピースドレスの姿でいてもバチは当たらないだろう、と思っていると、ふと「男性」の匂いが、かすかに鼻をかすめた気がした。しかし、
「ん……?」
それはうなじの辺りにきた違和感でかき消された。今日は虫によく付かれる日なのだろうか?いや、さっきの蜘蛛とは少し感じが違う。しかもそれは、虫としてはかなりのスピードで下に駆け下りていく。
「何……?」
得も言われぬ不安を感じて立ち上がり、後ろを見る……が、やはりそこには何もない。はぁ、と吐いた息が少し熱くなっていた。
■レモン > そろそろ違和感には気づき始めた頃だろう。
勘のいい者なら、その正体にさえ気づく頃かもしれないけれど。
幸い彼女はまだその段階に至っていない様子。
けれど少年は知らない、彼女の正体を。
視覚と聴覚には気を使えど、匂いに対しては無頓着。
獣の成分を含んだ雄の匂い、発情の匂い。
そんな匂いは彼女にどんな影響を与えるか、イタズラに熱中する少年には想像もできない。
(ふふ、そのおっきいおっぱい…そろそろ触らせてもらおうかなっ。)
立ち上がった女の背後にするりと回りこみ。
ぎゅむっ。
両手を回して抱きすくめるような姿勢。
薄い布越しから、小さな手のひらがこぼれんばかりの両の乳房を覆い、持ち上げるように。
その首筋には隠しようもなく熱い吐息が吐きかけられ。
発情の香りも彼女の鼻孔を満たすほどに強く芳しく。
「つぅかまえ、たっ…、」
耳元に囁く声は高く、声変わりしていない少年のものである。
■イルミ > 「何……?さっきからなんだか……うーん?」
何かいる、でも何もいない。まるで透明人間みたいだなぁ、と呑気に思っていると、ますます「匂い」は強まって、
「…………ひゃああぁっ!?」
いきなり、両胸を掴まれた。驚きと、恥ずかしさと、ほんの少しの快感が、知らず知らず嗅いでいた匂いで蓄積した興奮を一気に開放させる。悲鳴と共に溢れだしたピンク色のカタマリのような魔力が、「魅了」あるいは「欲情」の形で飛び出す。