2016/06/22 のログ
■フォーク > 「許せよ、ビッグマネー号」
男は膝を折り、崩れる馬から飛び降りた。
飛び降りた……と表現するのは、少し語弊があった。
湖から羽ばたく水鳥の如く、華麗に宙で態勢を変え、馬車の『進行方向』に仁王立ちとなる。
街道のど真ん中で仁王立ちになる巨漢。もう、男を倒すしか馬車が通る術はないだろう。
「おやおやおや、『喧嘩』で勝負……ってことでいいのかい?』
手首を折り曲げる男。ぺきり、と乾いた音がした。
先に仕掛けたのは少女の方だ。
「俺の提案を受け入れてくれて、ありがとう」
護衛をけしかけても構わない。しかし、無駄な怪我人を増やすだけにしかならないだろう。
なぜなら男は、そういう人間なのだから。
「ありがとう」
もう一度、言った。
■レイカ > 「……………。」
なるほど、あの男はあくまで私と勝負して…体を味わいたいと、そういうことか。
馬の足を蹴り、悲鳴を上げながら倒れる馬から飛び降りるその姿を見やりながら、私は目を細くした。
どこまでも―――どこまでも――――!
「どこまでも……私の邪魔をするつもりか………貴様は…!!!」
私は、怒りをあらわにしていた。
この男の下種なやり方も、そしてようやく見つけた、彼らの楽園を…!
どこまでも邪魔をするこの男を、もう許すことは出来ない。
体も渡さない、彼らの邪魔もさせない…!
「……皆さんは引き続き受け入れのほうをお願いします。傭兵さんはみなさんの護衛を。
…フォーク、ついてこい。…目当ては私だろう?…だったら彼らは関係ないはずだ。」
私は、後ろを振り返り少し広いところまで足を進めた。
目的が私なら逆にいい。彼らの邪魔をすることがないなら…私は合えて勝負を受けよう。
■フォーク > 「そうこなくっちゃ!」
心の底から楽しそうに両手を打ち鳴らす。
少女から放たれる殺気が恐ろしく心地よい。
少女の後に着いていこうとしたが、「ちょっとまってくれ」と少女に言い、くるっと反転をしてミレー族の乗る馬車の方へ。
「いいか、兄ちゃんのいうことはしっかりと聞くんだぞ。兄妹ってのは助け合うもんだ」
「貧しいからってよ、心まで貧しくしちゃあいけねえぜ。男は常に空を眺めて歩くもんだ」
と、全てのミレー族に一言ずつ声をかけていくのである。ちゃんと全員の名前や状況を、いつの間にか把握していたらしい。
「おまたせ、おまたせ」
まるでデートにでも遅れたかのような口調と呑気な顔で少女を追う。
街道の外れにある草原あたりで足が止まるか。ここなら邪魔が入らない。
「なんか、逢引でもしているみたいだな」
嬉しそうな顔だった。
別に少女を舐めているわけではない。どんな状況でも戦場にいる心構え。
それが傭兵という生き物だ。
■レイカ > 「…………。」
そう仕向けておいてよく言う……。
私は彼と勝負するつもりなんかさらさらなかった。
しかし、彼の誘いに乗ってしまったのは確かに事実…。
彼の考えを読めなかった私の落ち度だが……過ぎたことは仕方がない。
しかし…高ぶる気持ちを抑えきれない。
彼らが一人ひとりに声をかけていく、その言葉すらも気に食わない…。
元気付けているのは頭では理科強いている。しかし―――。
彼は起こしてしまったのだ。『もう一人の私』を。
「………逢引か。」
私は――――ふっと笑った。
だけど、その笑みは今まで見せたどれよりも冷たく、恐ろしいかもしれない。
「そうだな、逢引だな……。何しろ今から命のやり取りをするんだ…。」
私は、今心底願っている。
この男を殺したい―――と、私の頭の中の静止画意味を成さない。
「……先に聞きたい。貴様は何故…彼らについてきた?
私の体が目当てならば、さっさと襲い掛かればよかったのに…何故こんな回りくどいことをした?」
■フォーク > そう仕向けたのだ。
フォーク・ルースは傭兵でもあるが、戦術家としての一面も持っている。
戦術とは、自分に有利な状況を作り出す術だ。そのためには卑怯と呼ばれるような手段も遣う。
正々堂々と戦って死ぬのは、阿呆のすることだ、と男は考えているからだ。
どうせいつかは野垂れ死ぬ運命。その運命を延ばすために、武を磨き、策を尊ぶ生き方をしてきた。
「いやあ……怖いね。怖くてチビりそうだ」
少女の佇まい、声音、表情。全ての質が変わった。
恐ろしい、とは思う。しかし、恐怖を飲み込むほどの高揚感があった。
「あのね、俺はただ女の肉穴に突っ込みたいだけじゃないんだぜ。
そこに至るまでの過程を愉しみたいのさ。ただ精を出したいだけなら、マスでもかいていた方がましだろ。
……ねえ、俺も一つだけ訊いていいかい?」
男が構えた。
上下左右どちらにも瞬時に動けるように、自然と猫足立ちの構えとなる。
「その顔、今まで何人に魅せてきたんだい?」
■レイカ > 私は元々鎧を着る戦闘スタイルではない。
ブレスとプレートをおもむろに外し、その場に落とす。
がシャン、と音を立てて地面に落ちるそれを、私は投げ捨てた。
………しばらくの間は、拾いに行くことはない。
「…ふっ、何を冗談を……。貴様がこのていどで怯えるなら、さっさと逃げているだろう?」
…きっと、彼は愉しんでいる。
この場の空気も、そしてこの場の殺気そのものも。
だけど、もう後には引かない。私は覚悟を決めた。
障害は―――全部排除する。
「…じゃあ、かいてろ。…私は常に言ったはずだ、貴様に体を渡すつもりはないと。
性欲と欲望にかまけて女と喧嘩をしたいなど、貴様は本当に男か?…その無駄にでかいマラで勝手に遊んでろ。」
私は―――背中の弓をゆっくりと構えた。
腰に下げてある矢筒から、一本矢を抜き―――弓に番える。
「……………。」
私はその問いに最初は答えなかった。
ただ、うっすらと笑みを浮かべて―――。
「………忘れた。」
矢を発射した。男の首もとめがけて。
■フォーク > いい空気だ。少女の殺気がこの一面を戦場に変えた。
そして戦場こそ、自分の故郷だ。
「戦場な女の兵士も珍しくないんでな。いちいち女だからって見逃していたんじゃ、こっちの命がいくつあっても足りんよ」
戦場で、男女の区別をしたことはない。噛み付いてくるならば、それは全て敵なのだ。
少女が鎧を外した。あれが自分を律するための枷だったのだろうか。その推測はすぐに是非がわかるだろうが。
「エルフらしいな、その構え、素敵だぜ」
矢が、放たれた。
男は、矢に向かって全力で駆ける。
大きく口を開き、飛来してきた矢をがっしりとした歯で噛み抑えた。
勿論、簡単な技ではない。
しかし相手の意表を付き、疾走したままなので勢いが付き、両手が空いているので攻撃もできる。
一石三鳥の手段だった。
「ぬううぅぅぅぅぅん!」
太い腕を振り上げる。
腹部を狙う、アッパーカットだ。
おもいっきり、天まで高く打ち上げてやる!!
■レイカ > ―――今、ようやくわかった。
どう足掻いても彼に信頼感を持てなかった理由。
彼は、どうしようもなく”戦士”なんだ、と。
しかも狂という字がよく似合うほどの―――戦闘狂なんだと。
あいにく、私は本当は闘いは好きじゃなかった。
誰かを傷つけることも出来るならばしたくはないし、誰かを殺すなんて―――本当はしたくない。
だけど、”牙をむく優しさ”もある…。
それが、今の私が奥底に眠らせたもう一人の私だった。
「……………はっ、猛獣だな…。」
私の放った矢を口で受け止め、そしてそのまま突っ込んでくるその姿は、正しく巨牛だった。
振り上げられるその拳に―――私は天高く打ち上げられた。
ふわりと、私の小柄な体が宙に舞う―――。
ただし―――彼の感触は腹を殴ったものというよりも、何かを押し上げた感触だろう。
「なるほど…………見かけどおりのものすごい力だ…。
その力で、私のような女一体何人壊してきたんだ?」
私は、口元の笑みを崩してはいなかった。
宙返りをしながら、彼の脳天に向けて矢を放つ。
■フォーク > 「ほう」
優れた美術品を観た時に漏れるような声が出た。
殴り飛ばした、と思った。しかし少女の肉体は木の葉のように舞い上がる。
体術か、はたまた精霊を介した術か。どちらにせよ、心を奪われそうなまでに華麗な技だ。
「壊れる、かどうかは結果だろう?」
俺は精一杯やるだけさ、と笑う。
天から矢が降ってきた。
男が飛ぶ。飛来する矢を足場にして、さらに上空へと飛び上がる。
自分が生まれ育った傭兵団に、東洋から来た男が在籍していた。
その男は、母国では工作や暗殺を得意とする特殊部隊に在籍したと言っていた。
彼からならったのが、この技だった。巨体なので彼ほど上手にはできないが、
飛来する矢を足場にするくらいなら、男にだってなんとかできる。
「天空、頂き!」
少女は殴っても奇妙な体術で剛力をいなすだろう。
ならば、空中で捕まえ、地面に叩きつける。これなら逃げる場所はあるまい。
空中の少女に向かって、落ちていく。
捕まえて、叩きつけてやる!!
果たして、この結果は?
■レイカ > 正解は体術のほうだ。
私が小柄で非力だが、ミレー族直伝の体術がある。
彼が突き上げた拳に乗って、私は天高く放り投げられたのだ。
そして、空中戦は私のテリトリー。
矢を足場にして更に飛び上がってくる彼が、更に私の上を取る。
「………阿呆が。」
捕まえて、私を叩きつけるつもりらしい。
ならばその伸びた手に、私は足を絡めて―――彼の腕にしがみ付く。
そのまま、叩き落される前に彼の体を飛び移って、距離を離す。
猫のような動きをする、と人に言われたことがある。
巨体に似合わないその動き―――なるほど、彼も只者ではないらしい。
「……結果が見えているのにやることはむしろ、確信犯だ。
…私にそうしたように、誰かを壊して悦ぶのだろう、貴様は。」
それが―――なお一層許せなかった。
彼が自分を優しいとのたまったことも、今となっては絵空事にしか聞こえない。
「次は私から行く。…せいぜいしっかり防御するんだな。」
『精霊、聞こえているか…?……ああ、解っている。怒りを静めろというんだろう?
……ふふっ、しかし…どうにもこの目の前の外道が許せなくてな、悪いけど力を貸して欲しい…。』
私は、土の精霊に話しかけた。
この男を倒せるほどの、大地の力を私に貸してほしい…と。
■フォーク > 「むっ!」
空中で、少女が腕に絡みついてくる。
同時に温もりも伝わってきた。命の証だ。
余韻を楽しむ間もなく、少女は跳ねて距離を取った。
「そんなつもりはないんだが……お前さんがそういうなら、そうかもしれねえ」
自分にサディスティックな一面があるのは薄々気づいている。
それが睦言ではさらに過激になっていくこともわかっていた。
だからといって、それを止めることはできない。人間、生まれ持った性質は隠すことができないのだ。
「これが一番、厄介なんだよな」
小さく呟いた。
少女が何か語りかけている。おそらくは精霊という存在にだろう。
男にとってはファンタジーでしかないのだが、少女はそれを操ることができる。
なので対処は非常に難しいことになるだろう。
「阿……吽!」
男はへその下……丹田と呼ばれる部分に力を入れる。呼吸を整えた。
エルフに精霊の力があるならば、人間には生命の力がある。
『気功』と呼ばれる技術だ。精錬された気功は、身体能力や回復能力の向上、果ては武器にも鎧にもなる。
男の身体に、何やら白く薄いモヤのようなものが覆われていく。
■レイカ > 本当はあの腕をへし折って、早々に勝負を付けたかった。
けど、おそらくそれをしようとしたら、私は彼に叩き潰されていた。
あの腕を折るには、生半可な力ではダメだ。、もっともっと力が要る。
「……否定はしないんだな…。あの日、私の体を壊して悪びれた様子もなく…貴様は私の前に現れた。
…貴様にはわからないだろうな…。女を殺された…私の気持ちなんか……!」
私は、自然と涙を流していた。
彼は、私の一番大事な機能を奪い去ったのだ。
女として、好きな人の子供を孕み、産み、育てる事を奪った。
それがまた、許せない―――許さない―――!
「その上、ミレー族の邪魔までした……!」
大地の精霊が、私の怒りに呼応するように話しかけてくれる。
私の怒りが、全て力となって―――周囲の地面を震わせる。
「………許さない、貴様だけは絶対に許さない!!」
どん、という音が響く。
私の足は今、大地をも穿つ強力を持つ。
そのまま、私は彼へと疾走した―――。
■フォーク > 腕一本おられた所で、止まる男ではない。
首だけになっても喰らいつく。
覚悟無しで倒せる相手ではない。
「…………」
少女の叫びを聞いていた。どんな表情をしているだろう。
もしかしたら、男は神像のように優しい表情をしていたかもしれない。
ただ、少女に向かって駆けていた。
(怒りに飲まれるな)
親父がよく口にしていた言葉を思い出す。
怒りに飲まれると、恐るべき力を出すことができる。
しかし、それは蝋燭の火が消える寸前に激しく燃え盛るようなもの。
故に、怒る時は静かに怒れ、と。
なるほど、少女からは先程のような怖さはなくなった。
おそらく静かな怒りではなくなったからだろう。
それにしても、ここまで一人の女から激情をぶつけられるとは……
「まったく、男冥利に尽きるぜ」
思わず、照れ笑いが出ていた。
(うまく行くかはわからねえが)
右手を天、左手を地に構える。
少女を助けたい。男はそう願った。
激突の一瞬か……?
■レイカ > 許さない、こいつだけは絶対に―――!
普段は感情を表に出すことはない私だけれど、今は違う。
この男が私をここまでしたのだ。
私の体に大地の感覚が宿る。
だけど、以前のような静かなものではない。まるで、そう―――マグマのような熱い感情だった。
かけてくるその巨体を、私は真っ直ぐに見据えていた。
『わかってる、怒りに身を任せるな…。怒りを感情に出すのは最初だけ―――!』
彼は判っていないことがひとつある。それは――――。
私が常に、一人で戦っていると思っている節がある、という事。
私の味方は一人だ。だけど―――今は違う。
耳飾をつけている今―――精霊が、私を導いてくれる。
激突の一瞬、私は彼を―――通り過ぎた。
体と体でぶつかっても私に勝ち目は絶対にない。
だから、通り過ぎて―――背中を蹴る!
「――――インパクトシュート!」
その衝撃、回転と大地の力両方を合わせて懇親の一撃を放つ。
怒りに我を忘れる?―――馬鹿を言ってはいけない。
「貴様とは…年季が違うんだよ!」
■フォーク > 消えた。
感じた。背後だ。背だ。
『気功』を全身にまとわせるのは、ただ単に身体能力や攻撃力・防御力のアップを狙ったものではない。
感覚を研ぎ澄ませ、白いもやに触れたものを瞬時に感知する役割も兼ねているのだ。
振り向く暇はない。
腰を落とし、鍛え上げた背筋で、降ってきた一撃を受け止める。
その衝撃に、大地がくぼんだ。砂場にボールでも押し当てたら、こんな跡ができるだろう。
痛くねえ……っ。
「ものすげぇ、痛くねえ!!!!」
男の鎧と、衣服が弾け飛んだ。
気功術を使っていなければ、背骨が小枝のようにへし折れていたかもしれない。
「年季?」
精霊はどれくらい昔から存在しているのだろう。
人類は男が数えるのも面倒くさくなるような昔から存在しており、
その頃から素手で敵を倒す術を磨いてきた。
何万、何十万、何百万、何千万。それ以上の武術の達人が、積み上げてきた格闘技の技術。
その薄紙を貼り合わせるかのようにして積み上げられた、大山よりも高くそびえ立つ武の重みを、
俺は背負っているんだ。
「精霊ごときが、なんぼのもんじゃあああああああ!!!」
たった一体の精霊の力に、綺羅星の如き達人の技が敗けてなるものか。
男の全身を覆うモヤが消える。いや、右拳に集約されたのだ。
拳から、貫手、さらに指一本。
体中の穴から血を噴きながら、少女に向き直る。
その指を、少女の下っ腹めがけて、打ち込もうとした。
■レイカ > 打ち込んだ。懇親のバックキック。
久しぶりに使った業だけど、違和感をあまり感じなかった。
そうか、聞こえていなかったけど、精霊は常に私と共にいた。
母さんの最後の言葉が、うっすらと思い起こされる。
幼いころになくなった母さんの言葉―――。
「一人と思ったとき、立ち止まって周りを見よう」
そういうことだったんだ、と私は確信した。
男を蹴ったその衝撃の反動、それは私を押し返すには十分な威力だった。
足が少し痺れる、なるほど―――これが気孔というものか。
体を鋼のように変えて、そして攻撃にも転じることが出来る。
私はバック転で距離を離すと、その巨体が迫ってきた。
彼が叫ぶ、精霊の力がどうとか。
彼にも譲れないものがあるのかもしれない、だけど―――。
だから、どうした!
「…………。」
突き出されるその指を、私は体を少しずらして―――避けた。
その目に冷たい光を宿し―――好きだらけの顎を、思い切り蹴り上げる。
■フォーク > (まずいな)
血が出ている。『気功』を整えたいが、今は右人差し指に全て集めていた。
意識はまだ保っていられるが、あまり時間をかけられると終わりだ。
「相変わらず……いい顔してやがんぜ」
ん、俺ちゃんと言えていたか。口の中、血まみれで……。
蹴りが、せり上がってくる。
喰らおう。
喰らってやろう。
でも顎じゃないぜ。喰らわせてやるのは。
額。
その蹴りを、おもいっきりのヘッドバッドで迎え撃ってやる!
人体で尤も固い部位が、頭蓋骨だ。
逆に足の爪先や足の甲は骨の中では脆い部位にあたる。
俺と、大地の精霊の力に挟まれるあんたの足は、
どうなっちまうんだい?
■レイカ > 「………っ!」
動きが、一瞬硬くなった。
このまま動かずにいてくれるかと予想したけれども、その頭が私の足に競り落としてくる。
だけど、もういまさら止められない―――!
「うっ………!」
大地の力を乗せたけりだ、挟まれる訳じゃない。
だけど、体に無理を強いているのは確かだ。
おまけに、交霊術をしたのは久しぶり、体に無理が来るのは当然のこと。
私は、躊躇なく彼の額を蹴り上げた。
尾尻、といういやな音と激痛が、私の足から聞こえてくる―――けど、そのまま私は構わず振り上げた。
■フォーク > 「ふひ」
いかん。あの笑い声が出ていた。
戦場で何度も聞いた、人が死ぬ前に出すアレだ。
やはり頭での攻撃は、諸刃の剣だ。たとえ固くたって、衝撃は来るわけで。
(もうだめかな……)
あ、そうか。
なぜ、これに気が付かなかったのか。
俺にはまだ「これ」があったじゃないか。
「倒れるぜ、レイカ」
少女に蹴り上げられ、巨体がゆっくりと倒れていく。
が、同時に、
丸太のように太い脚が跳ね上がった!!
どこにでもいい、あたってくる。
少女の蹴りの威力で仰け反り、そこに己の最後の力を振り絞る猛馬の一撃。
名づけて、ビッグマネー号キックだ!!!!!
■レイカ > 「くっ………!」
痛みでわかる、確実に足の骨が折れている。
殺気の音は、その感触があった。さすがに、防御の力を働かせられるものでもなかっただけに。
その痛みに片膝をつく、その一瞬だった―――。
「………っ………!!!」
跳ね上がった丸太のような足―――。
逸れに気づくのは―――いや、気づけたとしても。
機動力を奪われた私では、避けるのは不可能だった。
そのまま、腹部にその巨大な足を受け、私は後ろに吹き飛ばされる。
息をつくことも許されず、私は大地に転がり―――意識を飛ばされることとなった。
だが、彼にも相当はダメージがあったのは―――手ごたえでわかる。
私は、その衝撃に意識を手放し―――朝まで、冷たい大地に転がることとなった。
ご案内:「街道」からレイカさんが去りました。
■フォーク > 明け方。
「なあ、ビッグマネー号。九龍の温泉ってこっちでいいのか?」
愛馬ビッグマネー号は軽快に街道を歩いている。
男はボロ雑巾のようになった姿で、愛馬にまたがっていた。
少女は馬の足を折ってはいなかった。
「感謝しろよ、ビッグマネー号。下手したら馬肉にされちまうところだったんだからな……ところで俺、ちゃんと喋れてるか?」
とりあえず、温泉に行こう。
勝ち負けではない。いい喧嘩をした。その健闘をたたえてだ。
激闘を繰り広げた少女を、同じ馬の背に乗せている。まだ気絶から覚醒めてはいない。
「勝手に連れていったって目が覚めたら、怒るかな……そんときゃごめんなさいでいいか」
朝日が、登った。
ビッグマネー号の足が、速まった。
ご案内:「街道」からフォークさんが去りました。
ご案内:「ドラゴンフィート/商業地区」にクライブさんが現れました。
■クライブ > 雨のせいで若干予定は遅れはしたが無事に終了した護衛の仕事を終え商業地区を眺めて歩く。
最初こそ違和感はあったが今ではすっかりと慣れた人間、ミレー族の差別なく生活をする集落を一目眺めれば適当な適当な店、武具を扱う店を眺める。
「そういやそろそろ買い替え時になるか」
それなりに長く愛用にしている剣はそろそろ寿命と以前に手入れに出した折にそう言われた事を思い出し。
どうせなら手入れのついでに新しい獲物も見ておこうと店に足を踏み入れれば飾られる剣を眺める。
■クライブ > 「…そういやあいつはちゃんと休んでるんだろうな」
剣を一つ手に取り重心を確かめていれば場違いに頭に浮かんだのはある娘の事。
護衛の仕事の途中からテントを何度かともに、戻ってからは休むことを進める心算ではあったが出会えずだったと。
いる場所の検討は付きはするが流石に深部への立ち入りが出来ない身分なだけに居るか確かめる事も出来ず。
「最悪は誰かに伝言を頼むしかねぇか…」
あの仕事で顔見知りもそれなりに増え、伝言ぐらいなら届けてもらえると考え買い物が終われば警備門辺りにまで行ってみるかと考える。
そして手に持った剣を戻し、店主にバランスが悪いと苦情を伝え、次の少し大きめの剣を手に取って。
■クライブ > 「どうにもしっくりとな…」
素振りが出来る訳でもなく手に持ち軽く重心を確かめるしかできない現状ではこれが合うと言い切れる剣を見つける事が出来ずに何本目かの剣を戻し。
少し気分変えと別の武器を眺めてみる。
どういうのがよさそうかと決まらないまま槍や斧と眺め…鈍器に目を止めてじっくりと眺める。
■クライブ > 「やっぱ馴染むのがねぇか」
剣に限らずに色々と試しては見たがやはりしっくりとは来ない。
だが新しい物も必要と割り切り何本かの剣を買う。
そして愛用の剣を手入れに出すと店を後にする。
ご案内:「ドラゴンフィート/商業地区」からクライブさんが去りました。