2016/06/19 のログ
ご案内:「夜営地」にレイカさんが現れました。
■レイカ > 「ふう………。」
ここまでは順調だった。
さしたる妨害もなく、無事に彼らをここまで送り届けることが出来た。
マグメールの廃墟地区から離れておよそ1日足らず…。
ゾス村を越えて、無名遺跡よりもずっと手前。
山賊街道に刺しかかろうかというところで、私は野営を勧めた。
ミレー族30名を乗せた馬車は、それぞれが薪を起こし準備を進めている。
皆、どこか希望に満ち溢れているような表情をしている。
無理もない、マグメールの廃墟地区から向かっている場所は、彼らにとって楽園なのだから。
■レイカ > しかし、この位置からとなると、明日の夕方ぐらいまで…何かしらの襲撃があると、確実に夜までかかってしまいそうだ。
この当たりはあまり治安もよくないので、護衛として組織の人たちも着てくれている。
逸れに、今は姿は見えないけど、後方で傭兵も雇っている。
お金は…マスターが立て替えてくれたので助かった。
私は、今は一人で薪を見ながら、地図を眺めていた。
集落までの距離と、その道中の危険を考えながら。
「…………。」
最近は落ち着いている山賊騒ぎ。
しかし、だからといって彼らが襲ってこない理由は考えられない。
何しろ……。
私は、目に見える範囲で野営をしている集団を注意深く見ていた。
ご案内:「夜営地」にセイン=ディバンさんが現れました。
■セイン=ディバン > 静けさの中に、野営準備の声が響く中、一人の男が突如何もない空間から姿を現す。
音も無く着地した男にミレー族の視線がいっせいに突き刺さるが、男はそれを無視して声を上げる。
「すまない、この一団を護衛する者の責任者はいるか?
冒険者ギルド『エデン』の使いの者だ。仕事で来た」
両手を挙げ、無害であることをアピールしながら集団の中へ進む男。
武装こそしっかりとしているものの、敵意・害意の類は無いようである。
「この一団への食料、および衣類・寝袋などの運搬で来た。
荷物の受領確認をお願いしたい。責任者は何処か?」
宵闇に無駄に響くことの無いように、声の大きさは最小限。
しかし、男の声はよく通るものであった。
が、ミレー族の視線以外に、何か視線を感じる。
しかも、あまり歓迎されていないような雰囲気だ。
■レイカ > 「……………っ!!」
やっぱり来た。むしろこないほうがおかしかった。
先日、慈善団体を装って支援物資を廃墟地区へと送り届けてきたときも、冒険者ギルドだった。
だが、その裏は奴隷ギルドがミレー族の数を把握し、そして捕らえるための下準備をするためのもの。
あの時は、とある傭兵に口止め料を払うことで何とかやり過ごせた―――。
「…………っ!」
私は、その声の主に走った。
こんなところで邪魔をされてたまるかと。
ようやく、ようやく彼らにも安息の地が与えられるかもしれないというのに。
こんなところで、彼らを元の地獄に戻すことなどさせはしない。
「みなさん、近寄らないで!
護衛隊の皆さんはすぐに護衛について、周囲の警戒をお願いします!」
傭兵の人も動いているはず…。
■セイン=ディバン > 「……お~い。責任者よ~い……」
一向に現れないその目的の人物を求め、心細さ全開の声を上げる。
周りからの視線は敵意が膨れ始め、居心地の悪さは最大限だ。
「……お?」
と、そこで何者かが闇を切り裂き男に向かってくるのが見えた。
あぁ、責任者が現れたのかと胸をなでおろせば。
その目の前の人物の声は、男の期待した物とは正反対の物で。
「お、おいおい!! なんだよいきなり!!
俺ぁ正規の依頼を受けた冒険者だぞ!?
ギルド『エデン』。登録番号150433!!
セイン=ディバンだ!! ……って、あれ?」
不満の声を洩らすが、叫び声は極力絞る。この周辺の治安の悪さを考慮しての物だったが、一団にもしっかりと声は聞こえたはずだ。
そんな中、男が目にしたのは女性の姿。しかも、以前出合った事があり……。その際、かなりの問題になった人物でもあり。
■レイカ > 信頼が出来ないから仕方がない。
冒険者ギルドは、その依頼主の事情をまったく把握せずに仕事を請け負うことがある。
たとえ名うての冒険者ギルドでも、今は信用することが出来ないのだ。
そもそも、ミレー族を運んでいる大型馬車の情報をどこから仕入れた?
私はもとより、彼らも―――。
そして、今一緒に行動しているマスターも、そんな情報は流していないはずだ。
「………っ!?」
そして、その顔を見たとたんに、私の表情は一気に凍りついた。
確かに、彼は間違いなく―――。
「………キミでしたか…。」
セインという名前は知らなかった。
だけど、彼は間違いなく先日ドラゴンフィート殻逃げ出した、魔王軍所属者。
―――最悪中の最悪だ。むしろ最悪すぎて笑いすらこみ上げる。
「………支援物資は必要ありません。今すぐ、何も言わず何も聞かずに去りなさい。
そして、この場で見たことは他言するな…。したら…殺す。」
私は氷のように冷たく、そして鋭く殺気を放ち、彼を威嚇した。
■セイン=ディバン > ピリピリと、どころかビリビリと緊張走る空気。
なぜ真っ当に依頼を受けた自分がこんなアウェー感を受けなくちゃいけないんだ、と男は苛立ちと不満の混じったため息をつく。
そうして相手の姿と声に、確かに記憶がよみがえれば。
男自身、「あ、マズいなこれは」という表情にもなるが。
それでも男は仕事を遂行しようとする。
「……お久しぶり。お嬢さん。
えっと、アンタが責任者でいいのかな? じゃあ、この書類に荷物の受領のサインを……」
懐から書類を取り出そうとするが、次の瞬間、明確な拒絶の声。
その表情、そして声色は以前出会ったとき以上に冷たく、殺意すらあった。
だが、男はそれでも自身の仕事を完遂しようと、背負っていた荷物を下ろした。
魔術により圧縮された食料、衣類などを袋から取り出そうと、ゆっくりと動きながら。敵意は無い、と行動で示すも。
「……ッ……」
不意に。何処からか投げられた石が男の額に当たった。
誰かが投げた物なのか、あるいは、偶然飛んできた物なのかは判らないが、男の額からは一筋の血が流れる。
それでも、男は無言のまま荷物を広げ、女性へと向き直った。
「30人分、プラス傭兵の分の食料等だ。
確認をしてもらいたい」
■レイカ > 彼の苛立ちは、己の立場を考えてからにしてもらいたかった…。
確かに彼はただ以来をしてきただけだろう、しかし魔王軍に所属しているという事実を、私を含め護衛に来てくれているものほとんどが知っている。
近寄るその男から少しだけ距離をとる。―――警戒だけはしておかないといけない。
「……………。」
久しぶり、といわれても私は口一つ動かなかった。
以前やってきた傭兵も信用ならないけど、この男に比べたらずっとマシかもしれない。
拒絶の意を示すも、彼は荷物を置きサインを求める―――。
「……必要ないといったはずです…。そもそも、その依頼主は誰ですか?
以前、同じように廃墟地区に支援物資を送ってきた慈善団体を名乗るものがいました。
しかし、その裏は奴隷ギルドがミレー族の数の把握を目論見、そして襲撃の準備をするためのものでした。
ゆえに尋ねます…………キミの依頼は、誰からのものだ?」
冒険者ギルドは、傭兵ギルドよりもある意味質が悪い。
彼らは金さえ積めば何でもするけども、依頼主の把握は確実に行う。
だけど、冒険者ギルドにはそれがない。ただ、依頼を受けてそれを遂行するだけだ…。
石を投げたのは―――ミレー族の子供だった。
彼には以前…私が、彼らを護るために酷く犯された事実を知っている。
それだけに、私よりも冒険者を信用していないのだろう…。
■セイン=ディバン > この時、目の前の女性にあったことにより初めて気づいたことだが。
男に敵意を向けていたのは当然、女性の仲間たるチェーンブレイカーの人間が主。そして、ミレー族の視線もまた、敵意。そして怯え。
「無視、ね。いやまぁいいんだけどさ。
一応こっちは前回名乗り忘れた名前を名乗ったんだし、名前くらい教えくれてもいいんじゃあないかな」
無論、色よい返事など期待すらしていない。これは男なりの冗談のような物。
緊張感に支配された状態では、男自身また前回の様に軽率な行動を取りかねないからの軽口であった。
「必要ない、ってもね。これ結構重いから持ち帰りたくないし、日持ちも微妙にしかしないから食べちゃって欲しいんだけど。
……ふむ、なるほど。そういうことでこの警戒と敵意・殺意か。納得。
依頼主は、いないよ。より正確な物言いをするなら、依頼主は俺自身。キミたちの逃避行をエデンの情報担当が掴んでね。
ミレー族には助けてもらったことや、助けたこともあるし。まぁ懐も潤ってたから単純に善意で支援しようと思って」
無論それだけではなく、ギルドの対外的好感度アップや、広報活動としての側面もあったのだが。
少なくとも、そのギルドの要請に対して男は自主的に、本当に善意だけで立候補したのであった。
そうして。男は血をぬぐうこともしないまま、立ち尽くしていた。
表情には怒りも、悲しみすらも無く。しばしの間そうしていたかと思うと、石を投げた子供の方へとゆっくりと歩み寄る。
当然、護衛の人間やミレー族が男の前に立ちはだかることになり、男はため息をつきながら懐から何かを取り出した。
それは、都で男が買ったチョコレートであった。
緊急時の糖分補給用なのだろう。それを男はしゃがみ込みながら子供に差し出す。
「ほら。甘いチョコだぞ。ガキンチョどもで分けな。
仲良く食えよ? ……そんな睨まなくても、あのお姉ちゃんに荷物の確認してもらったら、オッサンはとっとといなくなるよ。安心しろ」
そう言って、未だ血をぬぐわぬまま男は子供に向かって笑う。
■レイカ > チェーンブレイカーの敵意、それは当然わかっているだろう。
だが、ミレー族の皆は…人間にたいして恐怖心を抱いている。
唯一、マスターだけが近寄れる人間だろう。…彼に石を投げた子供を下がらせ、私は少し構えを取った。
「……ご免蒙ります。そもそも、キミに名乗る名前はありません。」
彼の冗談のいうような軽口に、私は鋭い言葉として返した。
あいにく、今の私はかなり虫の居所が悪い。…何か行動を起こしたら、すぐにでも戦闘できるように。
「……な、なんですって!?」
どういうことだ?彼の所属している冒険者ギルドに私たちの行動がばれていた?
知っているのは一部の傭兵と、そしてチェーンブレイカーのメンバーだけのはず。
そこから漏れ出したという事は…明らかに状況は最悪だ。
「……じ、慈善活動…ですか。しかし、ミレー族が人間を…?
そ、逸れに、貴方が……?」
……訳がわからない。
彼は人間で、しかも魔王軍のはず。その彼が何故、ミレー族を…?
…いけない、頭が混乱してきた。いったい彼は何を考えているんだろうか…。
そして……彼は子供に向かって、チョコレートを差し出す…。
その行動に、私は余計に混乱してきた。本当に、ただの善意で…?
「……………。
みなさん、少しだけ…彼と話をさせてください。ただし周囲の警戒だけは怠らず。
後ろの傭兵のにも、そう伝えてください…。」
彼の腹のうちが知りたい。一体何を考えているのか…。
こういうときに一番必要なのは……一つしかない。
■セイン=ディバン > たとえその種族の一部の者を助けたとて。その評価は種族全体には伝播しない。
人の評価などは、人から人へと伝わるからこそ広まるのだ。
そういう意味では、以前ミレーの隠れ里を助けた男の行為は当然この一団のミレー族には伝わっていないのであろう。
「取り付く島無し、か。別にいいけどな。
……あぁ、そうだ。以前はすまなかった。あの時は強くなろうと気が急いていて……」
相手の反応に、男は気にした風もなく。むしろ、以前の非礼を詫びるように深々と頭を下げた。
前回の出会いでは、先に暴力行為に及んだのは男であり。この謝罪は当然のことだ。
「いや、落ち着きなって。エデンは最大大手のギルドだ。出入りする人間の数も多い。噂話から秘匿された機密まで。それこそ真実も嘘も入ってくる。
今回のこの荷物輸送も、もしも嘘だったら俺が荷物持って待ちぼうけ食らうだけのマヌケなジョークになってた、ってこと」
当然、情報に明るい黒い組織ならこの一団の逃避行の情報を掴んでいてもおかしくはないだろうが。
男はその護衛の手助けもかねての武装状態でここに来ていた。
結果は、噂は真実だったという形になるのだが。
「……いや、いいんだけど。その反応も慣れたし。
もう面倒くさいから、『フハハ、いずれは魔王様が人間もミレー族も支配するのだ。ケッケッケッ』とでも言おうか?」
その方が悪役っぽくていいなら、憎まれ役も構わないけどね。
そう言いながら、男は懐から脱脂綿を取り出し、額の血を止血しようとした。
チョコレートは、女性に向かって話しかけている間に子供がパッ、と取っていった。振り向けば怯えたような、怒りのような瞳の色。
しかし男はニヤリ、と笑いながら手を振り。
「ちゃんと分け合えよ。独り占めすんな? あ、あと食ったら歯は磨けよー」
などと優しく声をかける。子供はそのままタタタッ、と走り去ってしまい。
男がよいしょ、と立ち上がれば、女性の声に護衛の人間は警戒強めたまま散っていく。
何人かは遠巻きにこちらを見ているが、だいぶ風通しはよくなった。
さて、早く荷物を確認してくれないかな、と思いながら男は再度女性へと向き直り。
「……チョコレート。キミも食べるかい?」
手の中に一つ残っていたチョコを差し出す。
■レイカ > 『風の精霊……聞こえていますか。…取り急ぎ確かめて欲しいことが。
私の目の前の男、セインというのですが…彼がミレー族を助けたという事実を確認したいんです。
今から何日前か、どこの里だったのかを出来るだけ正確に…。お願いします。』
私は、耳に手を当てて呟いた。
勿論その声は彼にも聞こえるけれども、彼にはきっと意味不明の文字系列にしか聞こえないだろう。
その瞬間、ふわりと風が舞い上がり―――。
彼に向き直ると、突然彼が謝罪し深々と頭を下げてきた。
どうやら前回、拠点にての問題のことをいっているようだが―――。
…何から何まで、本当に訳のわからない男だ…。
まあ、だからといって彼が魔王軍に所属している事実が消えるわけではない。信用は…出来ないと見ておこう。
「問題はそこじゃないんです…。今回、この馬車を手配をしたのは私ですが、この馬車はチェーンブレイカーのものです。
その情報が漏れているという事自体が大問題なんですよ…。」
噂だろうがなんだろうが、それを確かめるために誰かがどこかで見張っている可能性もある。
それがもし、奴隷ギルドの手のものだったら、力尽くで襲い掛かってくるだろう。
特に最近、貴族の中でチェーンブレイカーをよく思わないものがいるという情報もある。
もしも、その噂を奴隷ギルドが聞きつけたら―――確実に明日、襲い掛かってくる。
私は、心のどこかで焦りを感じ始めていた。
「…………その方が簡単でいいんですけどね…。ともかく、貴方の事情はわかりました。
荷物を確認しますので、しばしお待ちください…。」
とりあえず、彼が何を考えているのかはわからないけれど、荷物だけは確認しておこう。
確か、ミレー族30人と傭兵さんの食料と寝袋だったか…。
荷物を確認しながら、チョコレートを差し出すそのテに、私は見向きもしなかった。
「結構です、カロリーが気になるので。」
やんわりと断りを入れながら、荷物の確認を終えた。
…間違いはなさそうだ、毒入りでもなければ…。
■セイン=ディバン > 目の前の女性の声に耳を傾けるも、男にはどうにも意味までは判らなかった。
男の判る言葉は古代語、エルフ語、魔界言語が少々。精霊への命令など、当然理解の外であり。
そのまま、精霊は女性に伝えるであろう。
男がおおよそ10日ほど前、確かにミレー族の隠し里でミレー族を助けたということを。
「あぁ、なるほどね。まぁそれに関しても。
荷物の運搬後、キミたちが了承してくれれば護衛に付くようにもギルドには言われてるんだけど」
ミレー族を襲い。攫い、商品にする。別に目新しい話でもないといえばない。
冒険者ギルドとしてもそれらを一々全部助ける義理などないが。
男としては目の前での無為な略奪を見逃すつもりなどなく。
「はいはい。一応目録としては、食料は栄養バランスよく肉・野菜メインで30人の二食分。衣類はとりあえずで一人一枚。寝袋は緊急用って事で10セット、だったかな」
目録を開かず、暗記したまま荷物の内容を告げる。額の血は止まり、男は回復魔法を唱えて傷跡を癒す。
荷物を確認している女性を見ながら、断られたチョコは自分で食べ。
「キミ痩せてるやん。カロリー、ねぇ?
俺ぁ学がねぇから知らないけど。そのカロリーってのが肥満の原因なんだっけ?」
気安く離しかけながら女性を見る。未だ警戒はされている様子だが、この際だ。
誤解やすれ違いは解消しておこう、と男は相手の質問に答える腹積もりである。
まぁ、この場で荷物を確認した後、とっとと失せろと言われれば長居をするつもりもないが。
■レイカ > 『………。解りました、ご苦労様です。』
…事実だった。確かに10日前、ここからそこまで近くないミレー族の拠点が襲われた。
その際に、この男がミレー族を護り、たった一人で大立ち回りをしていた。
……本当に訳のわからない男だ。
「逸れにつきましては結構です。…この馬車の行き先はご存知でしょう。
貴方が近づけば、またいらぬ悶着を引き起こしかねないので…。それに。」
今、チェーンブレイカーはいろいろと騒がしくなっている。
それらを踏まえると、彼が拠点に近づくのは拙かろう。
ゆえに、私は彼を同行させるつもりはなかった。
彼が暗記している荷物を、私は一つ一つ確認していった。
懐から銀製のナイフを取り出し、軽く切れ込みを入れながら、毒がないか確かめていく。
幸い、そのような毒はなかったようで…。ひとまず、信用はしてもいいだろう。
「……消費すれば肥満にはなりませんけどね…。最近は少しデスクワークが多いので。
……………。」
私は、少し押し黙った。
以前、彼が力をほしがった理由。それは誰かを護りたいから、といっていた。
精霊たちに聞いたけど、彼は今新しい武器―――銃を持っているらしい。
「…一つ尋ねたいのですが。なぜ、貴女は魔王軍に……?」
彼は間違いなく人間だ。なのに何故魔族に加担するのか…。
人間の冒険者ギルドに籍を置き、魔王軍に所属している…。
それが、どうしても理解できなかった。
■セイン=ディバン > またなにやら女性が言葉を発しているのを、男は不思議そうに見つめる。
やはり意味はわからないが、目の前の女性が何か必要なことを、意味があって行っているのだろうな、と思うだけに留めておいた。
「ん、そっか。まぁそりゃそうだ。
そういえばチェーンブレイカーの人を探してくれ、って言われてたっけ」
ギルドとは違う、個人的に依頼されたことを思い出し、そう呟く。
この依頼の後、それに関わる情報収集をしてもいいかもしれない。
そう考えていれば、女性が目の前で食料を確認しているのが見えた。
一応、普通に市場で買ったものだが、とことんまで警戒しているんだな、と逆に感心したように呟き。
「はぁ~。大変なんだね、チェーンブレイカーの仕事ってのも。
俺は現場でドンパチの方が気楽で良いや。で? その買った食糧とかは安全だったかな?」
もしも毒、あるいは購入者に害をなすものが混じっていれば、市場で買い物をした店の主人を問い詰めるつもりでそう確認しておく。
「……前も軽く説明した、というか、叫んだと思ったけどね。逃げながら。
いいよ。一から説明するさ」
ある意味当然の質問。そして、今までは深く人に説明したことなどなかったな、と思い。男は主人たる魔王との出会いについて話し始める。
ダンジョンのトラップでタナール砦に飛ばされたこと。そこで魔王に出会い、戦うか、お茶会にするかという提案をされたこと。
お茶会をすることを選び、告白したらオッケーをもらえたということ。
そして、その時に思ったこと。
「もしかしてなんだけどさ。魔王とか、上位魔族とか。話の通じるやつもいるんじゃないか、って。
もしも分かり合えたなら、争いは最小限ですむだろ? でも……。
難しいとも思うんだ。だから、俺は人間やミレー族は襲わないけど。主人たる魔王様は、戦火からは守ってあげたいんだよ」
ま、魔王様のほうが普通に強いんだけどね。
そう苦笑いしながら。男は今の経歴に至る全てを話し、他に質問は? と聞き返した。
■レイカ > 「チェーンブレイカーの?…チェーンブレイカーの誰を探しているんですか?」
誰から頼まれたかは知らないけれど、今組織の人間を探している人間、となるとあまりいい感情はない。
先日聞いた情報、貴族が組織の穴を探しているという事を知っているためだ。
彼もその依頼を受けている人物の一人なのか、とまた少し警戒する。
銀製のナイフは、毒の反応を示さなかった。
刃についた水気や油を拭い取り、私は鞘に納める。
「………ええ。どうやら安全のようですね…。」
とことん警戒しないといけないのだ。何しろミレー族は高く売れる。
それを狙っているものは多い。勿論お金のために、だ。
彼が魔王軍に入った理由、それを聞きながら私はその場に座った。
軽く目を閉じ、その説明を聞き終えた後…私は盛大なため息をついた。
「貴方……とことん馬鹿なんですね…。
おまけに甘い、チョコレートよりもずっとずっと甘すぎて、笑えてさえしますよ…。」
彼は知らないのか、毎回のようにタナール砦で起きている惨劇を。
アレを指揮しているのも、上位魔族だという話がある。…それでもなお、話し合いが通じると思うのか。
「人々の中には、少なからず魔族に恨みをもつものもいます。
其れで、話し合いで解決できるなどと……本気で思っているんですか?」
少なくとも、私はそうは考えていなかった。
魔族と話し合いの場を持つことなど―――愚の骨頂でしかないと、吐き棄てた。
■セイン=ディバン > 「えっとね、ちょい待って思い出す……。
そうだ、リーゼロッテちゃんだ。リーゼちゃん」
その捜索している人の友人で同僚から頼まれたんだよ、と相手に告げる。
未だ情報はつかめていない現状ではあるが、個人的とはいえ依頼は依頼。仕事としてしっかり完遂するつもりらしい。
「そっか。そりゃよかった。まぁ、王都の市場で買ったやつだから安心はしてたけどさ」
それでも、どこから厄介な横槍が入るかは判らない。
目の前の女性のプロとしての姿勢に、男は敬意を表するように表情を引き締めた。
「ば……バカたぁなんだ言うに事欠いて!!
たしかに俺は学は無いが、バカだの甘いだの言われる筋合いはないぞ!?」
相手の的確な指摘に、僅かにだが声を荒げる。だが、内心では本気で怒っていたりなどしない。
男だって自覚はしているのだ。自分の発言が絵空事に近いということは。
「判ってるさ。でも、俺の愛する魔王様は俺を容赦なく殺しはしなかった。少なくとも、戦うorお茶会、って選択肢を提示してくれたし。
それに、今のところ人間を襲えとかも命令はされてないんだ。
……全部が全部、話し合いで解決するなんて思ってないさ。
でも、その可能性を全て捨てちゃったら。争うことしか考えなかったら。それこそ、人を襲う魔族と同程度に成り下がっちまうじゃねぇか」
男の言葉、後半は、何か縋るような。願いのような声色であった。
男がどれだけそう信じていても。恐らく、遠からず魔族と人間は大きな衝突をして。多くの命は失われる。
それでも。ほんの少しでも可能性があるなら。
男はそう信じている。いや、信じたいと思っている。そうでなければ、恋人たる魔王を守るため、人間を大量に殺めることになってしまうから、と。
■レイカ > 「……ああ、リーゼロッテさんですか。
彼女なら、先日見つかったと報告がありましたよ。」
事情があり、まだ拠点に戻すことは出来ないそうだが、とりあえず無事だという話だ。
何が起こったのかは把握できていないものの、生きているという事実がある以上、帰ってくるのを待つだけだ。
「なんですか、馬鹿を馬鹿といって何が悪いんですか?
ついでにいえば、理想で物事を語るお子ちゃま、ともいいましょうか?」
痛烈かもしれないけど、私はそういう風に言って見せた。
現実を語れば、魔族との和解なんか絵空事でしかないし、不可能だ。
私は、昔魔族と戦っていたこともある。…その際に、痛感した。
魔族は、人間とは絶対に相容れないと。
「………本当に甘ちゃんですね…。魔族が人間を殺すだけだと思ってるんですか?
魔族は、人間をおもちゃのように扱い、心を弄び、壊し!
最後の最後で…棄てるだけ。殺すよりも残酷な運命を強制するんですよ。」
彼らは人間をむやみに殺しはしない。
だが、その体を弄びながら……心を壊していく。
可能性など、まったくないのだから……。
「…理想を抱くのは好きにして下さって構いませんし、魔族だからというつもりはありません。
ですが…もしも魔王軍との戦争になったとき、私は容赦しませんからね…?」
ほかのなんでもない。私には今、護らなければならないものがある。
そのために、私はもう一度力を手に取ったのだから…。
■セイン=ディバン > 「あら、そうなんだ。そりゃ良かった。そのお友達のリーユエちゃん?
凄く心配してたみたいだったからさ」
相手からの言葉を聞き、嘘一つ無く、表情に出るほどの様子で喜ぶ。
少なくとも自分は何の役にも立ててはいなかったが、見つかったということなら喜ばしいことで。
「ぐ、ぐぬぬぅ……。
さ、さっきから聞いてりゃなんだ!! そういうキミだってミレー族をこうして助けてるお人よしじゃないか!!
わざわざ自分で馬車まで手配する、なんて甘ちゃんはそっちだろ!!」
コレまでの会話から、恐らく目の前の女性は自発的にミレー族を助けているのだろうと予測し、言い返す。
実際、自身が馬鹿でガキであることはエルフである女性から見れば事実でもあるのだが。なにかそれを認めるのは癪な気がしたせいで。
「……それを言えば、人間だって同じだろ? 人間同士で土地を奪い合い。
侵略した土地の人は慰み者にして踏みにじる
……それにだ」
相手の言葉はまったくもって正しい。異論を挟む余地すらない。
魔族との戦闘経験は男にもある、だが、それでも感情は相手の意見を飲み込ませない。
「ミレー族を襲う人間と、人間を襲う魔族。違いなんてあるのかね?
……いや、すまない。流石に言葉が過ぎた。でも、人間全てがそうじゃないように、魔族にだってきっと、いるはずなんだよ。イイヤツ、ってのが」
感情的になりすぎた言葉について謝罪し。頭を下げる。
恐らく、いや、確実に男の意見は間違っており、女性の言葉の方が正しい。
相手からの容赦はしない、という言葉に対しては、困ったように苦笑し。
「……あぁ、構わないよ。でも、俺はできればキミとは戦いたくないなぁ。
キミが強いのは知ってるし、キミみたいな美人さんは怪我させたくないから」
■レイカ > ただ、戻ってこれないほどの事情というのが少し気になる。
彼女から何の連絡もないし、ただ見つかったという事しかわからない。
…まあ、もし何かあれば精霊に頼んで、また情報を分けてもらうことにしておいた。
「ええ、そうですよ。私はお人よしで偽善者です。…だから今まで、誰の手も借りずに、私一人でやってきました。」
だから、その厳しさもよく知っているし、理想だけで物事を語れないのも知っている。
「…セイン、私派あなたが思っている以上に過酷な道を歩んでいるつもりですよ。
体すら差し出し、子供を作れない体になってでも…私派ミレー族を助けたい。だから行動するんです。
貴方のように、信じたい体とか、そんな不確定な理由で彼らを助けたいわけじゃないんですよ。」
だけど、彼のいう事ももっともだ。
ミレーを狩る人間も、きっと魔族のような顔をしているのだろう…。
あの時、ミレーを虐待していた貴族たちのような、あんな恐ろしい顔を…。
「……………。そう思うのなら…貴方も行動を起こしてみてはどうですか?
少なくとも、この国にいる魔族は確実に…貴方の主人以外は悪ですよ。」
魔族の国―――そこに行けば答えが出るだろう。
タナール砦も、先日また魔族に選挙されたという話もある―――。
確かめたいというならbな、私は彼を止めるつもりはなかった。
その場から立ち上がり―――ついてこいというように視線を促す。
「貴方は信用できませんから…私の傍にいてもらいます。
もう夜も遅い、今から都に戻るのは無理があるでしょう……。」
ただし、妙な真似をしたらその首の骨を折ります。
静かに、私は殺気を込めて言い放ち、自分のテントへと、彼を迎え入れることにした…。
■セイン=ディバン > 相手の内心の思慮には気づかないまま、いやぁ良かった良かったと楽天的な様子。
結局、根の部分でお人よしなのはこの男も同じのようで。
「はぁ。自分で言い切るか。……強いね、キミは」
視線を逸らすことせず。ハッキリと告げる女性。
その精神的強さに、愛しの魔王様に惹かれ、恋焦がれたときのことを思い出す。
即ち、魂の美しさ。孤高の強さ。
「そりゃそうなんだろうけどさ。……って、え、ちょい待ち」
相手がどれだけの苦難を乗り越えてきたのか。それに耳を傾ければ、すぐさま言葉を遮り。
「身体を差し出して子供が生めない、って。キミはバカか!?
いやバカだ大馬鹿だ!! そんなのお人よしでも偽善でもない!!
それはただの自己犠牲の自己満足だ!! 人間ってのは、生物ってのは!!
自分が幸せだから、他人を幸せに出来るんだよ!!」
その言葉は、理論も理屈もない感情の本流であった。
目の前の女性の行いを否定するかもしれない。しかし男は言葉を止められず。
なんでキミは、そんな茨の道をわざわざ行くんだ。そう言ってしまったのであった。
「……。あぁ。あぁそうだな。幸い前よりは強くなったんだ。
今度は直接俺の魔王様に話を聞いて、平和の道がないかどうか。
自分で道を切り開くさ」
未だ出会わぬ魔族の派閥。もしもその魔王や上位魔族が話を聞いてくれるなら。
あるいは、この夢物語も現実に変えられるかもしれない。
男は魔族の国への探検を心に誓い……。そして、促されるままに女性についていく。
「ヒュゥ、おっかねぇ。首の骨は勘弁だねぇ。
……でも、一応宿は提供してくれるのな。優しいよね、キミは。結局……」
殺気こそあれど、自分に帰れと言わなかった女性に、小声で礼を言いながら後についていく。
結局、この女性との会話は平行線だったのかもしれない。
だが、少しだけでも話が出来て、互いの立ち居地を理解できただけでも良かったな。
男はそう思い、そして決意を新たにしたのであった。
ご案内:「夜営地」からレイカさんが去りました。
ご案内:「夜営地」からセイン=ディバンさんが去りました。
ご案内:「野営地」にレイカさんが現れました。
■レイカ > 「………はぁ。」
いまだ止まない、降りしきる雨。
こんな天気では出発することはできず、私達は足止めを余儀なくされていた。
本当ならば、今頃はドラゴンフィートで手続きを済ませ、彼らは仮の住居で寛げていたはずなのに。
まあ、此ればかりは仕方がないだろう。
どれだけわがままを言ってもさすがに自然には勝てない。
私は、薄くため息をつきながら雨よけのテントの中にいた。
ご案内:「野営地」にフォークさんが現れました。
■フォーク > 「どーうどうどう」
久しぶりの早駆けは腰に来る。
しかも降りしきる雨の中だ。すっかりと身体も冷えてしまった。
男は騎馬に跨ったまま、テントの前までやってくる。
「いよっ!」
テントの中を覗き込み、少女の姿を見つければ、笑顔で手を挙げる。
どこか物見遊山でもしにきたかのような呑気な顔だった。
「参ったぜ、急に降ってくるんだもんな……元気してたか?」
と、テント内へと入り込もうして。
■レイカ > とりあえず、座って弓の手入れをしていた。
この湿気をどうにかしないと、弓が傷んでまともに撃てなくなってしまう
出来るだけ乾いた状態にするために、私派風通しのいい場所を作り、飴にあたらないようにしていた。
そんな最中、馬の奔る音がする…。
襲撃か、と私派一瞬身構えたものの、それは私のテントの前で止まった。
「………ああ、貴方でしたか。」
顔を出したのは、もはや見慣れたその顔だった。
ドラゴンフィートの拠点で、勝手に仕事を請けると自分を押し売りして、
そしてそのままどこかへといってしまった男である。
なにをしていたのか時にはなっていたが、心配はしていなかった。
この男は殺しても死ぬような男じゃない。
どこか皮肉めいた想いを、私は抱いていた。
ただし、あの人のような安心感ではなく、どこかどす黒い…。
信頼とはとてもよべないような感情だけれども。
「…入るのは構いませんけど、狭いですよ……?」
私が使うテントだ、大柄の彼には、些か狭いだろう。
■フォーク > 「いいよ。その方が密着できるだろ」
テントに入ると腰を下ろし、少女と向き合う。
少しだけ、真面目な顔だ。
「轍を消してきた」
男はそれだけ口にした。
もし男が少女たちの居場所を突き止めろと『誰か』に依頼されたら、まず轍を確認するだろう。
四台とはいえ、三十人ものミレー族を乗せて馬車を動かせば、道に深い轍ができる。
なので男は騎馬の尻尾に木の枝を結びつけ、ここまでの道中すべての轍を消してきたのだ。
「そしたら雨だぜ。風邪引いちまうっつうの」
やれやれ、と太い首を左右に振る男。
鎧と上着を脱げば、傷だらけの頑丈な上半身が露になった。
少女に手を差し出す。
「拭くものあるか? タオルとか手ぬぐいとか」
■レイカ > 「……何かしたら追い出しますからね。」
私と彼は、少なくとも信頼関係ではない。
例えて言うなら、そう。ビジネスパートナーだ。
ゆえに私も、彼の仕事には信頼はしているけれども、彼自身はいまだ信頼してはいなかった。
彼の呟き、それを聞けば一言、ご苦労様とだけ告げた。
確かにそこは、私も懸案事項だった。
いくら4台に振り分けたからといって、そこに轍の後が残らないはずがない。
ゆえに、その男の仕事には、少なからず労う必要があった。
とはいえ、拠点にまで帰ってしまえば、あとは組織で引き取った奴隷たちだと言い訳が出来る。
私が今、気を張り詰めているのはそれが原因だった。
もう少し、もう少しで…。
「……今日は朝から雨だったはずですが………。」
まあ、ぬかるみの中走らされた馬もそうだけど、この男も律儀なものだ。
彼には少し小さいけれど、バスタオルを一つ荷物の中から取り出し、彼に投げ渡す。
それにしても、この男が入ったとたんに圧迫感が…。
私とこの男の背丈、まるで子供と大人のように違う…。
■フォーク > 「最後は出て行くから、何かしてもいいだろ?」
受け取ったバスタオルで濡れた身体を拭う。身体を拭いた後は、肩に引っ掛けた。
それにしても嫌な雨だ。雨のせいで、きっと轍は、ほとんどぐちゃぐちゃになっていることだろう。
おそらく自分がやらなくても、道はぬかるみで自然と轍は消えていたかもしれないが、それは口にしない。
だって切なくなるから。そして多少なりとも少女に恩も売れる。
「さすがに今日は移動は無理ですなあ?」
懐から小さなバーボン瓶を取り出し、一口。
強い酒だ、身体が温まる。
「こんな日は酒飲んで寝ちまうに限るって、ほれお前さんもどうだい?」
と、少女に酒を勧めた。
■レイカ > 「………首が180度曲がってもいいならどうぞ。
私はそんなに簡単に、堅田を開くような女ではないんですよ…。」
したいならば娼婦かなにかにでも頼んで欲しいものだ…。
私は、どうしてもことを成すときの代償として体を開くことはある。
だけど、毎回のように…ウサギのように万年発情しているわけじゃない。
気づいていないわけじゃない…けど。
彼がどうしたいと思ってしてきたことだから、私は咎めることはしなかった。
恩?……馬鹿を言ってはいけない。
「……今日だけじゃなく、明日も無理かもしれませんね…。」
精霊たちの声を聴いている。
拠点までもう少しだというのに、随分と精霊たちが楽しそうだ…。
此れは明日も一振り来るかもしれない。出来れは早く拠点に行きたいのに…。
「…結構です。下戸なので……。」
進められるお酒の匂いは少しきつかった…。
私は飲めないので、お酒を断り弓の弦を張り替えた。
…痛んではいないけど、雨にあたってしまったからしばらくは乾かさないと…。
■フォーク > 「この首を、曲げられるかね?」
男が自分の首を叩く。鉞でも使わなければ、断つのは難しそうな太い首だ。
娼婦に頼むのは、男にとっては最終手段である。
どちらかというと身持ちが硬そうだったり、生意気な女に手を出すのが好きなのだ。
そして男はウサギのように万年発情している。
人間の欲求全てをとびきりで持っている男なのだ。
「明日もか。じゃ、世話になる」
少女が酒を飲まないというのなら、男は軽く首を回し、ゴロリと横になる。
ちょうど頭の落ちる位置が、少女の膝の上ならば幸い。
「……そうだ、この前のことなんだが。あの後、お前さんと別れて例の場所に向かったんだよ」
前回のことを言っているらしい。