2023/06/19 のログ
メイラ・ダンタリオ >
 アスピダでの戦場は相変わらず続いている。
 蒸し暑い日中
 怨霊が歩いていそうな涼やかさの夜
 土熱が籠る森

 王都での話で地揺れが発生してからしばらく経過した
 道筋が一つ一つ増えたより 洞穴途中が陥没して穴が一つ増えたことで
 入口傍よりも中にいた連中が顔を出し始めたことよりも
 目の前で “かつての同輩” の胴を真っ二つにし続けることがなによりも頭にキている。
 メイラは久しぶりに―――ブチ切れていた。


   「■■■■■ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァァァァアアア!!!」


 ギザ歯を剥き出しに、赤い瞳に浮かぶ理性が塗り潰れて全てが赤くなる。
 腐れた足元を離れて、見本の一つの様だったクシフォス・ガウルス側に付いた老若の騎士達がまた増えた。
 生きているか死んでいるかもわからない相手を成仏させるよりも
 未だ綺麗か汚れたかわからない且つての憧れの元へ身を寄せた理由は明白で
 地元で従っている騎士の元よりも、夢も希望も憧れも消せなかったらしい。

 盗賊の垢塗れの肌よりも綺麗な其処へ
 油塗れのワックスみたいに固まっている不衛生な髪より、サラリと流れている茶髪へ
 右手に握る黒鉄大鉈が叩き割ると、目の前に桃色の雲丹染みたものがぶちまけられる。
 両手で握る締める黒鉄の大鉈一つで、手に持つ剣身事叩き割り、肩から胴体の三分の一が落ちる光景。
 叩きつけるように振って数人がピン倒れになったところを、仕留めていく同輩の槍と剣。

 裏切りがあったといえど 味方殺し染みた同じ釜の飯を食べたかもしれない連中を殺すこと
 傭兵のように割り切れない者らもいる中で、それでも動いていられるのは
 目の前で怒り狂って仕留める、狂狷呼ばわりの王の犬っころ含める者らの、現実染みた行動のせいか。


   「クシフォスゥゥ―――!!
    クシフォス・ガウルスァァアアア!!!」


 目の前の裏切りの騎士の一人の首が、またザクリと中を舞う
 覚悟も決めきれず怯えと後悔をべったりと張り付けたまま
 穏やかな表情で死に切れているのは年を重ねた者くらいだ。
 悪鬼のような表情のメイラを受け止め切れているのは。

ご案内:「城塞都市アスピダ 周辺」からメイラ・ダンタリオさんが去りました。