2023/06/13 のログ
ご案内:「城塞都市アスピダ 霧深い山脈」にメイラ・ダンタリオさんが現れました。
メイラ・ダンタリオ >
 生暖かい霧 冷たい斑雨
 夜のアスピダ 城塞都市周辺
 王都マグメール勢 天幕周辺

 霧は見ていて気味が悪いものだろう
 朝焼けの青みがかるような、見とれるようなそれではない
 暗ければ何も見えないのに 下手に明りがあっても靄が掛かるような場を現す。
 獣の匂いも人の匂いも全て消え 小雨の葉にチリチリと当たる音
 泥濘を踏んだかもしれない足音 目に見える視界 喉を鳴らした人ではない何かの声に
 見張る者 休む者は耳がピンと張ってしまう。

 メイラは、そんな雨の夜 城壁側が捨てたのか
 こちら側の遺体をくすねたのか
 なるべくなら持ち帰り、埋葬し 病も獣もいきがることがないようにするものの
 やはり獣は人の味を覚えると、大黒鉈と肉厚な斧を携えて、白い息を吐き出した。
 況してや人型がこうも出張れば ”肝”や“綿”ばかり選り好みできない
 肉も髄も啜るだろう勢いで栄養を得ようとする。
 だから寝静まる番を狙って または厠に立つ者を率先して狙うようにしていた


   「―――っ!!」


 振り下ろす鉄塊が、首を叩き折るようにして赤黒い熊の一頭を屠る。
 再度振り上げ、断ち切った後も、心臓にめがけて破るように振う度
 獣臭と赤黒い血が、雨に流れていく。


   「こうも霧が深いと 獣の夜だと本当に認識できますわ。」


 互いに何もしない夜は、獣が動くのだ。
 どんな味か知っている肉が動いてそこらに居る。
 狙うだろう 喰うだろう 空かすだろう と。
 
 


 

ご案内:「城塞都市アスピダ 霧深い山脈」からメイラ・ダンタリオさんが去りました。