2023/05/29 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区 “橋”」にメイラ・ダンタリオさんが現れました。
メイラ・ダンタリオ >
 王都マグメール 平民地区 橋
 半月よりもやや身を膨らませた月が掛かる夜。
 赤く塗られた石を端から端へ 上を広く 下を狭くすることで半円を描いて石の強さに身を任せる。
 石は落ちず 石は揺れず の赤い石橋。
 両側には同じく石の縁が設けられた場所 下は今は枯れた土と草が短く茂るもので
 大雨の時にはこの場所を流れて海へと消えていく処置が施されるだろうか。

 その橋の上 聞こえるのは鉄の悲鳴 見えるのは焔咲く剣の華
 特別な明りも無しに、赤い瞳と白い歯が、月の薄ら明りでよく映える。
 メイラの瞳は、明暗区別なく、魔性を示すようなそれは夜族のように目の前の対象らを
 たなびく布の端までくっきりと映し取る。

 反りのキツイ、身幅やや太い銀鉄が月の光になぞられている。 
 全貌が見えればそれは刀 メイラの黒鉄で覆われた両手指に握られた柄の先を伸びる刃は
 真っ直ぐに伸びた剣と何合か打ち合わせるものの、次第に欠けるのは剣のほう。
 片方の刃に絞ったそれに対し、両刃で仕上げたそれでは斬るという意識がやや足りないのか
 互いの肌と肌が剣撃が奔るたびにその破片 肌にめり込んでいく。

 メイラの周囲、片腹が裂けて伏す者 両手首を落とされて喘ぐもの
 顔を縦にではなく、側で落とされたことで顔を“埴輪”に変えた者など
 幾つもが赤いこの橋の上 赤を赤で重ねていく。


   「本当、お前は良く斬れますわね。」


 既に向かう対象にではなく、愛刀に囁きかけるメイラ。
 相手を、相手の剣を観ず友人に語るように話すメイラの表情は戦人のそれではない。
 戦いとすら思われていないのかと、口を咬む者と、再び撃ち合うこと3度。
 メイラの怪力に付き合わなくても、メイラと付き合う気のない刀が今一度剣と食い込むと同時
 ピシリと食い込む白い爪先ほどの深み 罅と共に、爪が裂けるかのように刃を上段から力を掛けて押し込む姿
 防ぐそれも流せない。 食い込む力と共に、ヒッと聞こえた鳴きと共に サリッと響いたなぞる音。
 落ちた素首 振い掃う刃 鞘へと納める傍らで、メイラは吐息を吐くと


   ―――“チィ      ン”―――


 と、やや間延びした鍔の音。


   「あら、随分と嬉し気に 鍔を鳴らすのね。」


 柄をなぞり、ポンポンとあやすようにする。
 メイラの笑みは、自身に向かう下手人を また一つ綺麗にしたという喜びよりも
 刀の表すかのような感情に、微笑むのだった。

ご案内:「王都マグメール 平民地区 “橋”」からメイラ・ダンタリオさんが去りました。