2023/05/06 のログ
ご案内:「砦近くの森の中」にラディエルさんが現れました。
ラディエル > 切り立った崖の麓、折れた枝や朽ちかけた落ち葉の褥に両脚を投げ出し、
仰臥したままに暫し、ゆっくりと深呼吸を試みる。
彼方此方が軋んで痛みはするものの、何処かの骨が折れている気配は無く、
そろそろと浮かせてみた右腕も、袖がびりびりと裂けているけれど、
まあ、せいぜいが擦過傷程度の傷しか無いだろうと思われた。
土で汚れた手で額をひと撫でし、乱れかかる前髪を掻き上げた拍子、
ちりりと引き攣れたような痛みが走り、掌にうっすらと紅色がうつる。
ひとつ、瞬いてそれを眺めると、知らず、小さな溜息が零れた。

「………ま、無傷とはいかないわな。
 むしろ頭が南瓜みたいに割れたとか、手足がバキバキに折れたとか、
 そういうことが無かっただけで、めっけもんって奴だろう」

呟く声が常に無く掠れているのは、恐らく喉が渇いているからだ。
生憎、崖を踏み外す前に持っていた荷物は、手の届く範囲、目につく範囲に見当たらない。
見上げた枝間から覗く崖の先端は、人の身にとっては遥か彼方。
―――――となれば、結局は。

「……暫く、休んでるしかない、か……」

己が持つ自然治癒力に期待して、暫し、じっとしているより術は無い。
一応は請け負った仕事中の身ではあるけれど、フリーランスの、軍の構成員でもない、
ただの僧侶一人を助けるために、あるいはその屍体を回収するために、
崖を滑り降りて来てくれる誰かが、居るとは思えなかった。

ラディエル > 木々のざわめき、草花の香り、時折差し込む木漏れ日の眩さ。

そんなものに全身を浸しながら、暫し、半ば微睡むように。

いっそ眠りこけてしまうなら、それでも構わないのだろうと思う。
目覚める頃にはきっと、自力で立ち上がることも出来る筈だ、と―――――。

ご案内:「砦近くの森の中」からラディエルさんが去りました。
ご案内:「富裕地区・商業エリア屋」に影時さんが現れました。
ご案内:「富裕地区・商業エリア屋」から影時さんが去りました。
ご案内:「富裕地区・商業エリア」に影時さんが現れました。
ご案内:「富裕地区・商業エリア」にジギィさんが現れました。
ジギィ > 「そこそこいい暮らし…」という言葉をひとりごちると、尖った唇からううんと喉奥から唸るような声が漏れる。
常に金銭が必要な暮らしがいい暮らしというのが、あまりピンと来ていない。安定して収入を得る事に心を砕く暮らしというのは、いい暮らしなのだろうか?少なくとも楽しそうではないなというのがエルフの第一印象のようで、彼の肩に捕まるエルフを振り向くなら、理解にくるしむ苦悩が額に刻まれているのが解るかもしれない。

「『何かがある』だと足りないですわねー 必要なものとか、必要としている人が居るとか、もうか… こほん、もう一押しほしい所ですわ。
 ちなみにコイバナの種でも可ですわよ」

ぶつぶつと呟くような返答をしつつ、器用にぎゅうぎゅうと彼の肩を掴む手は止めない。背骨に沿って親指で押してみたり、中々堂にいっている。
その最中一瞬『つねってやりたいな』という気配を発するが、気配だけにとどめたようである。

「えー働かなくてよいならそれで良いのではありませんこと? 毎日みんなと歌って踊ってくらして行けるのなら、それ以上のことはないと思うのですけれど」

エルフはどう思います?とばかりに彼の背後からディアーヌ嬢のほうへひょいと顔を覗かせて、返答を待たずに視線をその体制のまま彼の顔の方向、斜め上に向ける。
視線がぶつかると、何度か瞬いて彼の瞳に焦点を合わせる。傍目には『みつめあうふたり』に見える、かもしれない。
ただそのあと、エルフは恥ずかしげに赤くなるでもなく、更に目を細めて視線を鋭くして、彼の眼光に対抗しようとしているようにも見えたかもしれない。

「ンーーーそんなところ、ですかしら。個人的には深緋がしっくりきますわね。
 あら!コイバナは生けとし生けるものの共通語ですわよ。痴話げんかなんて犬だって食べないって言うくらいですし。興味が無いひとなんていないと思いますわ?
 
 刺繍は賛成ですわ!ついでですしお守りの紋様を入れてもらって、まるちゃんたちと同じ印も入れてもらうというのはいかがです?」
 
彼の言葉の内『けったいな』が聞こえてきた時点でディアーヌから見えないところで彼のつま先をぎゅっと踏もうとする。依頼主とはいえ流石にデザイナーたる彼女に対して『けったいな』は何事かとばかり。もちろん顔は笑顔のままディアーヌのほうをみているまま。正確に彼の爪先の位置を把握しているのは付き合いが長いから
と言ってもいいのだろうか。

「ン? いえいえ筋骨隆々の殿方もたくさんいらっしゃいましたわよ?わたくしが普段いる場所がいる場所ですし、コイバナを一種の謎かけと勘違いされたこともありましたわねー
 確かに、そういった凝り方よりは刺繍とかで細工をしたほうが合いそうですわね…」

そこまで言ってから、エルフは肩もみはいったんおしまい、とばかりに彼の背中を叩いて
彼女の提示した金額を覗き見ようと、再び彼の腕の間から頭をのぞかせようとする。

影時 > 「なンかこう、いまいち想像がつかねえような顔してるなぁ――お嬢様?
 そうだな。お嬢様にとって金欠に四苦八苦するせずにすむ、好きに歌うだけで良い生活を想像してみろ。
 歌の出来や客足に煩わされるコトもなく、やわらかい寝床に入れて、程々に好きなものを買って食えるって感じか。
 
 金欠がピンと来ねえなら、アレか。木の実とか何やらが、腹一杯食える分だけ満たされているとか、か?」
 
ここらはおそらく――ニンゲンと交わる生活、経験の多寡によって左右されるのではないか。
解することに苦労する、考え込むような表情を肩に掴まる姿に認めて思う。
金銭、貨幣のありがたみが分かりづらいなら、採取や狩猟で糧を得る部族、民らしい言い方ができないか。
そう思いつつ言葉を選んでみよう。飽食するとは言わなくとも、食べたいものを腹一杯に食べられる。
“そこそこ良い暮らし”の定義は個々人次第だが、雨風を凌げ、空腹をごまかすよりさらに数歩進んだ先にある気がする。

「そうかァ?ンなもん行ってみねぇと分からねえし、見てみねえコトにはハッキリしねえだろうが。
 何たらを持ち帰れと言われる仕事じゃない限り、行き先に助けを待っている何者様なんぞ考えやせんぞ?俺。
 ああ、だが。この前の森ならもう一度確かめついでに行ってみても良い気がする。
 
 ……植えて育つ花の種があれば、持って帰ってきても良いんだがなぁ、と、ぉゥ……?」
 
慈しみ善をなすための旅ではない。行き先に待つものは、誰も居ない廃墟であった事例もいくつかある。
魔族の国に踏み入っての旅、冒険とはそういうものだ。
余所者の助けを必要としていた、などというような冒険譚みたいな事例は今のところ遭遇したことはない。
否、その意味で考えればいつぞやの森、毛玉たちとも逢ったあの森は、万全に心構えの上でもう一度行っておきたい。そんな気がする。
ああそこそのあたり、と。マッサージやら按摩よろしく、ツボを心得た手指の動きに息を吐きつつ、そう嘯こう。
聞こえる言葉はやはり、貨幣の有難み、必要性に諸々の煩いを受けているとは言い難い。
元の暮らしもそうだが、性分もか。そんな風に思っていれば、ひょいと覗く顔と間近に視線が重なる。ピントが合う。
恥ずかしがるでも赤面する風情でもなく、何か目力に張り合うような風情に少し考え、んべぇ、と変な顔をしてみようか。

「んじゃァ、深緋で。……この際だ、あいつらの分もお嬢様が云うようにして、痛て、こら、踏むな踏むな」

深くは考え過ぎない。仕事着――にある意味近くはあるけれども、紛れるための忍びの装いではない。
光が濃ければ闇もまた深くなる。今はその光を強くする機会と考えれば、腑に落ちる。
コイバナ推しに相変わらずだなァと嘯いていれば、己のコトバに何を思ったか。
ぐいっとつま先を踏まれ、眉を思いっきり上げつつ身を揺らす。こんにゃろ、心得ているなと眉を顰めよう。
気づかなくとも長い付き合いだ。背丈の差、体格の差も弁えているか。
肩もみはおしまいとばかりの感触と共に、腕の間からのぞき込む顔が丁度見えるところに来るだろう。
店主から書き示された金額。その額は、ぁー、と長い溜息を吐き出すのも、きっと止むを得ない。

NPC > 「行く先の分からない旅に親しんでるか、金を稼ぐための仕事に慣れてるか……の違いかな?今の話って。
 オジサマは多分、やろうと思えば……高めの仕事を独りで受けてこなして帰れる位じゃない?
 だから、目的ありきの移動は飽きてきた。そんな感じかしら。
 
 ……何もしない暮らしというのも理想、でもない、かな。
 色々したいし、色々しないと鈍っちゃうのは好きじゃないわ。
 
 可愛いものを編んだり、インスピレーションのための旅ばっかりで良いならそうしたいけど、そればかりも居られないのよね」
 
腕利きは熟練の気持ちが分かると言うわけではないけれども、旅のスタンスは何となくわからなくもない。
女店主もまた、見た目以上か相応の実力を持っていれば、冒険者ギルドで掲げられる依頼類の中で、よく稼げる方法も心得ている。
数人がかりが要求される中級、そこそこの難易度の仕事を単独でこなし、その報酬を総取りするやり方だ。
それができるクチであろうと、顧客の力量をそう見立てる。

「笑い話仕立てのコイバナだったら、長く聞いてられるわね。悲恋は重くてあんまり好きじゃないかも?
 刺繍に文様入り、と。……けど、そんなごっつい人たちが聞いてられるのって、凄い光景だわ。
 
 ん、よしと。このお値段になるけど、だいじょーぶ?」
 
劇場で仰々しく、音楽付きで語られる悲劇、悲恋の物語より、山あり谷ありの酒場で語られる位の歌がちょうどいい。
長く聞いていられる。そんな趣味、スタンスを示しつつ、見積もりが終われば取り出す紙に項目を書き出す。
布、加工費、作業費等々――締めて、書き出すゴルトの数は実に桁が多い。冒険者垂涎な、マジックアイテム並みの価格と同じか劣らぬくらいの額が。

ジギィ > 「ぅんー……」

エルフは口を噤んで更に考え込む。もともと金銭のやりとりなしの暮らしが、今まで生きた半分以上を締めている――――今はまだ。歌も踊りも金銭を得る為ではなく誰かを楽しませるためのもので、柔らかい寝床が好きな訳でも腹を満たすのが好きな訳でもない。
歌って踊って精霊たちと語らって偶にふざけあいっこして…飢餓に苦しまなかったのも与えられた祝福もそれもこれも、森の恵みがあったからこそで、お金のお陰ではない。
ごくたまに、ヒトから得なければならないとかヒトを追っ払うために必要だったことはあった気がするけれど――――

ぅんんん、としばらく渋い顔をしていたエルフは首を右に、左に一回ずつ傾げて

「――――うん」

ちょっと疲れたらしい、急に解った、とばかりに眉間をひらいて、したり顔に頷いて見せる。
そーいう世界もあるのだ、ということで割り切った様子で、まだその『世界』に自分が足を突っ込み始めていることはまだピンと来ない。
―――これも、未だ『兄弟』たちを探すことを諦めきれないことの顕れかもしれない。

「ぇ―――― あ――――そか。 風の精霊とか噂好きだから、たまーにおしゃべりすると色々聞かせてくれるんだ……んですのよ。
 見て見ないとはっきりしない、は解るけど、行ってみないとまるっきりわからない所、って、今までの所無いかもしれませんわ」

そのおしりには『たまにデマを掴まされる』という但し書きがつくが、そこはそれ、言わぬが花と言う時もある。
ほんの少しだけ、その認識の差に意識を巡らしてから
件の森にまた行きたい、と言う所には苦い笑みを浮かべて、言及はしない。
…あそこに再度踏み込むのは、自分一人でなくては。

エルフにとって狩猟のための放浪は生活であって冒険ではないから、そう言った所も認識の差があるかもしれない。
いろいろ戸惑うなーと脳裏で思いつつ、じっと見つめていた彼の表情が妙に歪むのなら

「―――――……」

エルフは妙な所で対抗意識を燃やし、唇を全力で噛んで耐え忍んで見せるだろう。
ただし、結果そのエルフの顔も変に歪むかもしれない。

「色々したいと言うのは賛成なんですけれど…
 ンンーーーー ちょっと、まだわたくしには勉強不足なところが多いみたいですわね」

エルフは彼女の言葉に返答すると、ごめんあそばせ、と語尾に付け足して申し訳なさそうに笑って見せる。
やっぱり街の暮らしは難しい。こういった意識が抜けていて今まで困ったことは無いけれど(たまに私有地に勝手に薬草を植えて騒ぎになったことはあったが)、長く経つと変わって来るのかもしれない。
その彼女の彼への評価はうんうんと頷いて同意をしめす。何ならその彼女の彼を見る視線に、憧れの光とか恋に繋がりそうなものがちらっと垣間見えないかなと、エルフの方は彼女の方を熱心に見る。傍から見たら、まるでお見合いに付き添いで来た親戚か何かとも思えるかもしれない。

「あら、笑い話仕立てのストックも多くありますわよ?私が集めている詩は元々楽しませるためのものが多いですから。 ただネタとして『年の差』が多いんですわよね……ディアーヌ様、年下と年上どちらがお好みかしら?」

値段を覗き込みつつエルフは彼女の好みを探る。
その彼女が示した数字を見ても顔色一つ変えないのは、やっぱり価値を分かっていないからだが、自分一人で集めるなら結構時間がかかりそうだなくらいは解る。
エルフは後頭部に彼の吐く息を感じると、大丈夫?とばかりに首をひねって彼を見上げるだろう。

―――ーそして当事者たちたる毛玉たちも揃って彼女の書いた数字を眺めるように集まって
真っ黒な瞳で『おやぶん』を見詰めるのである。