2023/04/02 のログ
ジギィ > 「えー、 仕事で遊んで、遊びを真面目にするべきじゃありませんこと?
 ……おじさま、筋肉で気づきづらいかも知れないけど、肩凝ってらっしゃらない?」

応答の最中に少し考える風情の彼に、エルフはおもむろにその肩を後ろからぎゅうと掴んでみる。
背丈の差があるのでややぶら下がろうとしている様に見えなくもないが、にぎにぎすれば肩もみくらいにはなるだろう。

けしかけてけしかけて見たら、漏れ聞こえてしまっていた彼女の方の、彼への反応もなんと悪くはないらしい。彼の彼女の方への印象は言わずもがなである。

(いいじゃないいいじゃない、意識し始めたんじゃない?
 あとはカゲトキさんをこの店にしょっちゅう顔出させるようにして…あ、何だったら良く来るっていう老紳士にも協力してもらって)

そうやってエルフが脳裏に計画を練り上げている様子を、多分当人たちは生暖かく見守ってくれるのだろう。
それがいつか本物の恋に…とエルフの妄想は止まらない。

「腑に落ちます? そう言って頂けるのは…光栄ですわ?
 もちろん褒めているんです!…じゃあ段階を踏めば大丈夫なんですわね。なるほどなるほど」

肩もみをしていたエルフは、彼の背中越しに彼女を見遣ると腕組みをしてふむふむと頷く。
多分脳内では、まだ会ったこともない常連だという家令の老紳士を巻き込んでの物語がにわかに進行中だ。
仕事に情熱を捧げる彼女を支えるおじさま。そのうち彼女の心も……

それはそれとして

本題の毛玉たちの衣装だ。エルフはふたたび彼女の机に身を乗り出すようにしてスケッチブックを覗き込んで、サンプルを見遣る彼女を見て、それからその彼女の肩の上にいる毛玉の片割れと、机の上で何やら自分も素材を探そうとでも言うのか、既に積み上げられた本を見ているもう片方の毛玉を見て
最後に彼らの『おやぶん』を振り返って。

「カゲト…おじさまとお揃いがあったら可愛いですわね。
 おじさまの羽織で、良さそうな色合いは思いつきませんこと?」

じっと見たあと、首を傾げて彼に問う。
流石に全部茶色とかないですわよねないならつくってもらってくださいまし
という眼力を込めて、首を傾げたままじっとみる。

影時 > 「フツー逆じゃねェかなァ。仕事は仕事、遊びは遊びとしとかねぇと、仕損じそうで困る。
 肩は凝ってるな……。俺も歳かねぇ」

仕事の密度、性質にもよるかもしれない。
手慰みとは言え慣れ親しんだ趣味を生業にし始めてしまうと、愉しめなくなる。
かといって、程度があるとはいえ、少なからずリスクファクターがある仕事で気を抜くというのは、事故の可能性が上がる。
難しいものである。仕事の失敗は天運が絡む要素があれば、ない、とは言えない。
だが、それでも努力で回避できるなら、そうすべきである。失敗は評定に響き、実績にも影響がある。
衣食住のうち、食と住の保証はあると云っても、収入を下げたくないのがネックである。冒険者の世知辛い処だ。

ぶら下がり気味に肩を握られれば、堅固な老木のような硬さがエルフの手に返ってくるだろう。
鍛えられた筋骨の硬さも確かにあるが、肩凝りも確かにある。
双肩にかかる重みをわずかに草履の足底を擦らせ、姿勢を整えて支えつつ、肩を軽く回す。それだけでばきばき音がするくらいに。

(……とは言え、だ)

しかし、コイバナ好きの悪い癖が出ているのではないか?
内心でエルフの妄想に苦笑交じりながら、過る危惧にそっと息を吐く。
カッコつけと言われてしまうとそれまでであるが、己にだって好悪云々やら何やらはある。木石の類ではない。
煩悩の一つや二つ位抱えているものである。そして、その煩悩は不意に動き出す。今はその時ではない、というだけなのだ。
出会いは縁。結びつきは縁。その縁がどのように絡まり繋がるかは、神仙ならぬヒトには分かりようもない。

「――へいへい。茶色はまず避けろってツラだな、お嬢様よぅ。思い切って白か。それか、なんか推しの強い赤か?」

毛玉のうち、片割れは器用に自分より大きい筈のサンプル帳を捲ってたり、店主の肩に乗ったのもう一匹がサンプルを検分する。
毛玉たちのかわす小さい鳴き声を聞きつつ、向けられるエルフの眼差しに両肩を竦めよう。
とりあえず、今の色は避けた方が良いというのは絶対条件とは認識していた。
それでは、新調する意味がない。今は着ていない着物の色とも被るが、何にも染まらぬ白――というのも、強者めいてアリではないだろうか。
或いは店主推しの赤か。だが、どぎつい赤はまずい。深紅か蘇芳色だろうか? 
カウンターに歩み寄り、手近なサンプル帳を捲る。毛玉たちが森の中で着てもまだ紛れそうな色、困らぬ色も考えたい。

NPC > 「……待って待って。ちょっと落ち着いて。
 そういう論法の詰め方はその手の本で見かけるけど、お客さん相手にさっすがにいきなしはどうかなーなんて」
 
詩人の趣味なのか、カップリング沙汰が好みなのだろうか?
え、私と、あの人と?改めて宣われると気づいたのか。来客の男とエルフを交互に見つつ、はたはたと手を横に振る。
仕事が恋人だなんて言うつもりはさらさらないとは言っても、そこまで考えだすには尚早過ぎる。性急過ぎる。
リピーターになるかどうかすら、今の時点で全く未知数である。

……どーにかならない?

とばかりに、男の方をちらと見やりつつ、コホン、と咳払いをして気を取り直そう。

「色が決まればもっちろんできるわね。同じか近い生地と使うだけだし。
 高くてイイ生地でいいんだったら、都合できるわ。
 派手好きなくせに汚れにくいの、とか、贅沢したがるヒトって多いのよ?冒険者って生きものは」
 
やっぱり赤がいいんじゃない?と。カウンターの横に置いたマネキンに着せた服を横目にしつつ、嘯いてみせる。
様式や格式ももちろんあるが、純粋に店主が好きな色であるらしい。
黒一色に固める冒険者は何人かいるけれども、べたべた過ぎて好みではない。伊達にキメるならもっと別の色が良い。
金銀の糸で刺繍をあしらった白い外套や赤い長衣がキマる剣士やら英傑は、それだけで絵になる。
自分からそういう服を作って贈るというのは、なかなか機会がないが、その手の物語や演劇で読み、見るのは楽しい。

ジギィ > 【次回継続】
ご案内:「富裕地区・商業エリア」からジギィさんが去りました。
ご案内:「富裕地区・商業エリア」から影時さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール―どこかの路地裏―」にエンプティさんが現れました。
エンプティ > 貧民地区、平民地区、富裕地区。
どこかの路地裏の角を曲がった時、唐突にそこへ迷い込むだろう。

空を見上げれば緑色。落書きのような嗤う太陽と月が舞う。

鋭角伴う歪んだ街並み。窓に映る影絵の乱交がそこかしこで見受けられ、
それ等を一瞥もせず路地裏を行き交う売れない絵本の登場人物。

平たいヘルムを何度もかぶり直すカニの兵隊。
燕尾服を着た河馬がせわしなく路地裏を往来する。
やけに銅の長い猫が道端に寝そべり酒瓶を煽る。

冗談のような光景の中、闇からそれは這い出して来る。

『あなたはみたしたいですか? みたされたいですか?』

祝詞の如く紡がれる言葉と共に、一歩足を踏みしめ、薄布のドレスに包まれた爆乳が弾む。
ゆるりとした足取りと共に巨尻が揺れ、それに引きずられるようにスカートがたなびく。

無謀の怪異は、相対する人がそこに”在る”まで路地裏を徘徊するだろう。

ご案内:「王都マグメール―どこかの路地裏―」からエンプティさんが去りました。