2023/03/12 のログ
ご案内:「富裕地区・商業エリア」に影時さんが現れました。
ご案内:「富裕地区・商業エリア」にジギィさんが現れました。
ジギィ > 銀髪の彼女、ディアーヌは職人気質のようだ。それも、多分武骨な方の。
特異な依頼も特異な依頼主も先ずは己の眼で見て、己の定規で受けるかどうかを決めているような節が感じられる。
そうと解れば、もう『おじさまとそれにくっついてきたお嬢様ごっこ』を続ける必要性はあまり感じられないが、乗りかけた船なのでもう少し続けることにしたらしい、エルフは再度表情だけで彼に語り掛ける。

――――えちがうの学校の先生とかってというかこの国のひとって男女かまわずだいだいそういうひとがふつうなくらいじゃんほらほらほらがまんしなくていいのよ彼女こなれてるから戦場でそーいう男の眼に晒されたことだってあるだろうしカゲトキさんも『その①』にくわわるだけだって――

『そーいう』関係からコイバナのネタになりそうな関係構築については自分がなんとかするとして、などなど脳裏で忙しく考えつつ
つやつや毛並みの毛玉コンビを彼女の元へ遣わしたあと、エルフは『おじさま』の後ろに周って彼を一歩、彼女の前の方に押し出すように背中を押した。

「あ、ディアーヌさんもそう思います?やっぱり地味ですよね、オジサマのコレ。 さっきなんて煉瓦の柄にしようかなんて言ってたんだから地味の極みすぎ。
 お邪魔じゃなかったら、オジサマも何かアドバイスもらうとか、見繕ってもらったら?」

彼女の独り言のような語り掛けのような言葉に返事を返して、エルフは彼の背後から顔を出すようにスケッチに勤しむ彼女を見る。
彼女の体格からすると並みの剣は彼女の動きを邪魔することになろうから、細剣か何かを獲物としているのかもしれない。おまけに魔法が得意と言うなら、その獲物に魔力を纏わせて見た目以上の威力を発揮するというのも特異だろう。

机の上のモモンガと栗鼠は、最初の内は彼女の視線と視線を合わせるように正面を向けていたりしたものの
スケッチされているのを認識したのか、そのあとはバンザイと前脚あげたり、『尻尾もお忘れなく』というようにふりふり振ってみせたり。
彼女がデザインの構想に入った様子を見せると、すかさずそのスケッチを覗き込む様に駆けつけるだろう。

影時 > 少なくとも、腕が立つ方の職人には違いない。自身の覇気もある方となれば、尚のことだろう。
だが、気を付けないといけないのは職人にもいろいろある。
例えば、稼ぐために仕事を選ばないやり方。また或いは、稼ぐ稼げないは度外視して、自分が好きなやり方を貫くやり方。
この場合は後者であろう、と見立てよう。兎に角稼ぎたいという思考であれば、方法論はまた変わってくる。
他所で仕入れたと思しい服がちらほら見えるのは、最低の生計を立てる意味合いもあるのだろう。

いわばカムフラージュの建前があるが、職能の類は己も持っている。
知己の鍛冶師には劣るが鍬や鎌含め、自分が使う武器を鍛造できる鍛冶技能、彫金、裁縫に皮革――色々齧ったが、向こうは違う。
職人であることを売りにして食っていける、表でやっていけるだけのものがある。
自前で縫えるにしても、それ以上にやれるものはやはり凄いものだ、と。今更ながらに思う中で――、

――――ヤってる奴はヤってンだろうが仕事位は真面目にやらねェと契約を果たしてるコトになんねぇだろうそれに手ぇつけてあれこれ面倒となるような話になってみろ後腐れするような類は御免だぞ――

……と。目くばせと唇の動きだけである種濃密な言外のトークを送りやれば、背を押す力がある。
一歩、二歩と押しやられるように前に進めば、背を押す力の主を肩越しに見やろう。
毛玉たちと店主の女性と、そして纏う羽織の裾を摘まんで視線を交互にやりつつ、思うことは一つ。

「……そんなに地味かねェ。
 大名やら傾奇者やら派手過ぎる奴を散々見てきたからかもしれないが、奇を衒い過ぎンのはどうにも苦手でね。」
 
とはいえ、他所の土地でこの手の格好をしている時点で奇矯の類かもしれない。刀を差すのに具合がいいから、という利便性もある。
だが、何よりは人目を引きすぎるどぎつい色合いであったり、趣味に張りすぎたコーディネートに苦手であるというのが正直なところだろう。
人切りを遣るような輩が、ハデすぎるのはどうか、というのが本当なところかもしれないが。
そこまでは口に出さない。胸の前で腕を組みつつ、うんうんと考え込むように唸る相手の方を見てみようか。

NPC > さて、戦い方の見立ては間違いない。魔力や紡ぎあげた術を刃に乗せて振るったり、放ったりするスタイルである。
そのために重すぎる剣や重量のある鎧は邪魔でしかない。
蝶のように舞い、蜂のように――という譬えがあるが、それを地でいく。
勝負服であろう決闘服で装飾めいた布地が多いのも、そのためだ。翻る布地のシルエットは対敵の幻惑につなげる意味だってあるのだ。

「アレね。人目をあんまし引きたくないコロシ屋?みたいな?
 ……んー、何かなかったかな。柄を引いた反物だったり、裾に模様を入れたようなのがあった気がしたけど……」

一瞬手を止め、エルフが紡ぐ言葉に頷いて虚空を振り仰ぐ仕草を店主の女は見せる。
視線を横にやれば、見えてくるのは背表紙がずらりと並んだ本、またはバインダーの類を詰め込んだ棚である。
何かをつぶやき、指をくるりと回してゆけば、本やバインダーの幾つかに光がともり、一人でに棚から出てきて、カウンターの上に積みあがる。
どこそこの産の布地のサンプル、であるらしい。一つが開けば、端切れめいた布地と産地、特徴が開かれているのが見える。
こういう出し方は、顧客が品定めをしてみても良い、とするためのものだ。見てもいいよ、と声をかけて。

「尻尾かわいーわねー……、あとでもふもふさせてね。リボン付けると邪魔になっちゃわないかな、と。ンー……」

さて、もちろん尻尾も忘れてない。とは言え、飾り立てて邪魔にならないかどうかがとても悩むところである。
ひとまず、素案めいたところが浮かんだのだろうか。覗き込む毛玉たちにも見えるように、スケッチブックを置こう。

木炭の黒とはいえ、よく描き込まれている。
リスの方は袖口が膨らんだパフスリーブのシャツに縦縞のズボンを履き、短いケープを羽織ったようなちっさな王子様めいたイメージが浮かんだらしい。
ショートハットめいた王冠の細工に、尻尾にはゆるくリボンを巻いている。
そして、モモンガの方はだいぶ苦心したのだろう。
人間のように服を着せるにしても、どうしても身体の被膜の部分の扱いが悩ましかったらしい。跳ぶ動物であるからだ。
だから、こちらは黒い帽子と襟のある黒いマントをリボンで留めた、一見紳士、あるいは怪盗めいたシルエットを描き出している。
片目にちゃんと、小さいとはいえモノクルめいた小物まで構想しているのは、少しでも飾ってやりたい心だろう。

ジギィ > ―――せんせーヤっているほうが多数だと思いますぅていうか何でここで真面目だすのよあとぐされなんてどんな女の子だってなる可能性あるわよ私が聞いたのは助け出されたお嬢さんが据え膳になったのに食べられなかったことで恨みをかったっていう―――

…というこのやりとり、たまに彼女の注意がこちらにむけられると中段されているので、何回か小刻みに行われた。
地味、の程度と意味合いがちょっと異なる様子の彼の背後から、その羽織の内側を覗き込む様にエルフは顔を覗かせる。

「オジサマに奇抜にしてほしいと言っているわけではないんです。もー少々『遊び心』というのを取り入れてもよろしいのではと申し上げているんですー」

ちょっと気が緩んだらしい。エルフの言葉遣いが怪しくなってきている。
このエルフに彼の内心は知る由も無いが、ひたすらに一目を引かないように徹する態度に多少心当たりはある。なのでこうして絡むのもほとんど趣味。本当に『どうにかなってくれる』とは期待していない、がしつこく絡む、という趣味。

「ぶっ
 … こほん
 ―――あ、よろしいんですの?」

そんなやりとりの目の前で、あっさり彼女に彼の『正体』(?)を看破されて、彼の背後から顔を覗かせていたエルフは思わずあらぬ方を見て吹き出す。
誤魔化しの咳払いは効果はあったかなかったか、とりあえず次の話題に移ろう、とばかり、カウンターの上に積み上がったファイルの山にスキップでもするように飛びついた。

「わーこれ綺麗。 オジサマ、パーティー用のスカーフにどう?」

エルフは幾何学模様の布地を『オジサマ』に示す。緑と黄色と赤と青と紫と、それが刺繍ではなく『織り』で出来上がっている様子からすると、大した手間の布地に違いない。値段まで書き込んであるならば、30cm四方ほどで高級ホテルの一泊と同じくらいの値段だと解るだろう。
その織り方が、彼の故郷で見覚えのあるモノかどうかは、さておき

「―――あ、 終わったんですの?
 …わぁ
 
 かーわいいー…」

エルフも毛玉たちに続くようにスケッチブックを覗き込む。その翠の瞳は、好奇心に真ん丸に開かれることになった。
そこには正に『おめかし』した2匹の画。
『すーちゃん』はどこぞにオヒメサマを助けに行きそうな出で立ちだし
『ひーちゃん』は月夜にさっそうと現れそうな装いになっている。

さて、当の2匹は気に入ったのか。
スケッチブックをじいと覗き込む毛玉たちの、その表情は読み取れはしなかったが
尻尾は正直なもので、そろってうきうきふりふりと振られている。
お互いちょいちょい肘で突き合っているのは

『ちょっとさ、交換して着てみたりしない?』
『ええーおれあの袖はいらないよう。でも尻尾のリボンイイなぁ』

…とか言っているのかもしれない。

影時 > ――そうか?本当にそうかァ?もともとは真面目で正式な依頼に則って仕事やってンだテケトーな物の教え方して死なれてみろ溜まったもんじゃねェだろて、なんだそりゃ初耳だぞてかどういう趣味だねおい――、と。

この高速言語めいた応酬と対話は、店主の女性の視線を縫うように幾度もなく交わされる。
好きものと云うには、贅沢なのかそれとも品定めしているのか。ともあれ、どういうシチュエーションであったのかどうか。
想像するだに、奇っ怪なと言わんばかりに眉間に皴を刻み、思案する。
羽織の内側の色は一応裏地である筈の黒だが、表地側と負けず劣らずに地味である。

「洒落っ気と同じで意味で捉えてイイのかねぇ、そりゃ。
 うっかり見切りを間違えて切ったりした時とかの始末を考えると、悩むんだよなぁ」
 
なお、学院の講義もだいたいこの姿でやっている。
殻が取れないひよっ子にそうそう遅れは取らないが、だが、世の中広いものだ。
最低限礼を失しない程度で着慣れた、という要件を満たしつつさらに――という贅沢をかなえるには、どうするか。
次第にメッキが剥がれてきた、というよりは元通りのノリの気配に、細かく云いはするまい。問題は……。

「……こら。あー、ン。どれどれ……?――高ぇなこりゃ」

類は友を呼ぶ、ではなく、蛇の道は蛇――とでも言うのか。
正体とは言わずとも、中らずと雖も遠からずめいた当て方に大袈裟に肩を竦めよう。吹き出す連れのエルフの反応が有り難い。
気を取り直すように、示されるサンプルの山の方に進み、のっそりとエルフの頭の上から見やってみよう。
色とりどりのものがある。この国の何処かで織られたものから、シェンヤン由来、はたまた土地名も聴かぬ異邦等々。
さて、そのうちの一つ。色とりどりの幾何学模様の布地のサンプルをじぃ、と見やれば、ぼそりと零す。
買えなくはない癖に、高い。羽織の表地を仕立て直すと仮定して、他に何もないかと思いつつ、構想が出来上がったらしい。

「ははァ、こうなる……か。この小物は、どうなっているのか聞いて良いかね?
 飛んだり跳ねたりしても落ちないかという心配なンだが」
 
見やれば目に映るのは彩色されていなくとも、如何にもおめかしした二匹の図。
どういう風に着込んで、また脱げるのか。まさか、二匹がえっさほっさと着替えたりはできはすまい。
着せる側、管理する側である立場として、口を出してみようか。
件の二匹がうきうきしているように見えるのは、眺めていて微笑ましい。
どうしても身体のつくりで着れない箇所、パーツがあっても、一部の取り換えなどできるのかどうか、など気になる。

NPC > 「もっちろん。手触りとか気にするヒトって多いのよ。
 例えばどんなに奇麗でもデリケートな布がどんなのかって、事前に見せておかないとね。……洗ったらダメとかもね。
 
 そっかー、コロシ屋さんかー。ま、聞かなかったことにしておいたげる。
 それお高いやつ……雰囲気は良いんだけど、刺繍が入った布地なんてどうかしら? お月様に流水模様とか、好きなお国柄みたいだけど」
 
注文が多い、事細かいクライアントは居る。
兎に角かわいく飾りたい、飾り立てたいという欲求があれば、子供が口に入れても大丈夫なように、という親心等々。
手洗いするにしても難しくて繊細、いっそ魔法で洗う方が望ましいレベルの生地を要求する客もある。
だから、事前のサンプルはないよりも、ある、充実させることを選んだ背景がある。

さて、エルフが目をつけた布地のサンプルは店主も使うかどうか悩ましいレベルのもの、らしい。
いわゆる和物にカテゴライズされる別のバインダーを手に取れば、刺繍の例を端切れと描き込んだイラストで示したページを出しておこう。

「ええ、こんな感じが浮かんだけど、いかがかしら?
 無理に着せて苦しいって好きじゃないから……――こっちの子が考えるのにちょっとかかったけど。
 
 小物は、魔法をちょっと仕込むの。身体に食い込まないように張り付く力が程よくかかるようにね。
 オーダーメードになるから、ちょっとお高くなるわ。それでも良いなら、一緒に仕立てて上げる」
 
構想はこうで、遣う布地は、これである、と。
いわば色サンプル的に幾つかのバインダーと本を開く。リスの方は白いトップに青と白のストライプのズボンを使うイメージらしい。
モモンガの怪盗めいたルックは、艶めいた黒い布地のサンプルを示す。
もしかしなくとも、お高くなるのは――書かれた布の値段を見れば、うすうすと察しが付くかもしれない。
小物も装着のための魔法と、ちょっとしたおまじないの魔法をかけるとなれば、これもまたお高い。

おしゃれは総じて、お高くなるものである。