2023/01/09 のログ
■ルキア > どうやら路地はここで行き止まりのようだった。
行き止まりかぁと来た道を帰らねばと、少女は踵を返そうとしたところで暗がりに動く何かを認める。
暗がりに何かいる…と、びくっと肩を震わせればそこから出てきたのは大型の犬。
まさかこんな街の中に、野生のモンスターが潜んでいるはずはないだろうと、犬であることを疑わなかったが、野犬に襲われて死ぬ事もある。
数歩、犬を刺激しないようにとゆっくりと後ろに下がっている間に、犬との距離は一気に縮まっていく。
しかし、犬は唸りも吠えもせずに少女に近寄るとじゃれつくように脚から腰にかけて頭をこすりつけてきた。
「なつっこい子なのかな?……??なんだか、匂いが強くなってるような……」
鋭い獣の目をしているが、襲い掛かってくる様子はなくそっと頭を撫でてみたりなんかしていたが、先ほどよりも不可思議な香りは強くなっていく一方だった。
それもそのはず、その発生源が脚から腰に頭をこすりつけているのだから当然だった。
酩酊感のような感覚と、体の熱は一気に上昇していくことだろう。
そんな感覚に、戸惑う声をあげていれば…
「ひっ…な、…ななっ…そんなとこ、舐めちゃ、だめぇ…っ」
ぬるりと犬よりもずっと長い舌が、足へと巻き付くように絡みついていくのに、ぞわぞわぞわっと肌が粟立つ感触が広がって、びくびくっと少女は腰を震わせて言った。
その感覚だけで、催淫の香に熱のあがった体は、じゅわりと下着の中に濡れた感触を染み出させていく。
そして、だめだという言葉も甘さを含んでしまうだろう。
かくんと、膝から力がぬけると紙袋の中身を散乱させながら、少女は地面に尻もちをつくように座り込んでしまう。
「は……はぁ…はぁ…何、これ…体が、熱い…」
呼吸が乱れる…体が熱い…内側から焼き焦がすような催淫の熱が少女の体を蝕んでいく。
熱にうるんだ蒼銀の瞳は、今や視線の高さが逆転した大型の犬を見上げていることだろう。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」から種喰らいの獣さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からルキアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 鍛冶場工房地帯」にスピサさんが現れました。
■スピサ > 寒い冬 雪が降っている場所も最近は増えてきている。
外に出れば白い吐息 室内では火が焚かれ、酒や温もりを求める日常。
その中でも、四季にかかわらず汗を滲ませ、槌を振るうのが鍜治場の工房だ。
炉の熱を鞴を操作することで、風力が生まれる
轟 轟 と燃える火熱 炉に埋まる炭と火
その傍で、ヤットコに摘ままれた鉄棒ではなく鉄塊
一つの板型に叩いたブロック状のそれを鍛えているのは、薄青い肌と一つ目の単眼が際立つサイクロプス
スピサという名前の、この国では珍しい種族であり、人外。
スピサは工房で使われる耐火性のバンダナと革のオーバーオール姿
片手には耐火グローブを身に着け、片手には素のままで槌を握っている。
腰のベルトには、形状を整える為の鍛冶師の七つ道具がジャラリとぶら下がっている。
バンダナに染みる汗 素肌のまま身に着けているせいか、胸元の薄青い谷間には汗が溜まっている。
火を見つめる夕焼け色の瞳は、まるで乾き知らず 焼かれ知らず
時折瞬きをするものの、苦を感じさせないものを炭火に埋める鉄塊へ注いでいる。
「―――んっ。」
ずるりと引き出した塊 それを、大型の金床の台に乗せ、槌を振り下ろし始める。
最初は練り上げて折り畳み 中に芯を包みこませる形にまで仕上げていた。
今は、その包み込んだこの火の塊を形成し初めに掛かっている。
コォ オンッ
ゴッ ンッ
―――――オンッ
槌の衝撃を吸い込み、形を少しずつ変えていく塊
サイクロプスの腕力と槌を以っても、その厚みを変えていく作業は手ずからは掛かる。
他の工房にいるような、弟子の相槌や特殊なからくりで振り下ろす無人槌とは違う。
突き詰めた古式そのもので打たれるそれは、本当に少しずつ少しずつである。
■スピサ > スピサが今形を変えていこうとしているのは、言ってみれば斧だった。
酒場で顔馴染みな者が一人、斧が好きだという言葉に耳を傾けていたところ
火酒を飲む喉にくる熱 それが、胃袋を超えて丹田にまでスッと入り込んでいく感触。
性的な興奮とは違う アドレナリンが沸くような やってやるという挑戦精神か。
その友人が呟いたとある一言で、打ってみたくなった斧を造っているだけのこと。
これを市場に出すつもりもないし、工房の中で欲しければ買えばいい程度に油紙に包んで置いておくだろう。
そこまでわかっていても、造りたくなってしまえば両腕は止まらない。
カァンッ カァンッ コォンッ コォンッ
分厚い板が、芯を包んだまま、皮を引き延ばされていく。
均一に、薄まる部分がないように、時折いろんな角度で作りかけの形を眺め
そしてまた金床の上で仕上げていくのだ。
斧の形を持つ、曲線の扇形
刃先を打ち続け、曲線を描く背中は先に金床の丸みに打ち付ける形で仕上げて置き
それから刃を伸ばしていくという順序 そこまでは、通常の戦斧と変わらない。
問題は、この斧の背にある。
完璧に仕上げる前に、形は仕上げていかなければいけない。
まだ赤赤と燃え、冷めれば黒々としていく鉄塊に対し
斧の背 ブロック状の塊を持つ部分を、何度も火で色づかせながら槌を打ち込む。
引き延ばして、引き延ばして、出来上がるのは太ましい杭
ウォー・ピックと違い太く、薄い曲線を描くそれは後々に六角に絞られていくだろう。
斧とツルハシを合わせたような見た目は、振う際斧に多少の気遣いが必要。
しかし、元からツルハシのように振えば解消される上に
鎧を断てそうな斧の刃 鎧を貫きそうな斧の杭。
それは一種の鎧砕きといえる武具である。
スピサはこの長さに妥協はしたくなかった。
ツルハシ程度までいければ、オークのでっぶりとした脂肪の詰まった腹とて
貫き、内臓を砕けるだろうと思っている。
腹を裂いただけでは駄目だと、絶命を狙う一撃を
苦悶を浮かばせる一撃を 描いて作る斧は、その背に逞しい角を持つのだ。
夢中 無心 分厚いそれを、サイクロプスの腕力で練るせいか。
硬さも強さも人よりも上と知るならば、槌が先に限界を迎えて一度槌の柄
それがバキッと折れる事態があった。
顔にびっしりと汗を浮かばせて、ハッと気付いた様子
しかし槌ですら作るのが鍛冶師なら、槌を隅に置き直し
腰に下げた別の槌を用いて、再び叩き始める。
「―――っ! ―――っ!」
造り手というものは 絵描きも 物書きも 鍛冶師も
終わるまで止まらないものだ。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 鍛冶場工房地帯」からスピサさんが去りました。