2022/12/12 のログ
ご案内:「王都平民地区/魔道具屋『透明な薔薇』」にエネリさんが現れました。
エネリ > 平民地区の一画、ひっそりと営業中の魔道具屋の中。
商品整理中なのか、床の一部にまで幾つか物が積み上がっていたりするその奥で。
何やらそれらも魔法の品なのか綺麗な人形が数体飾られている間、木製の年代物に見えるカウンターテーブルで一生懸命何かを書き留めている様子の人形――ではなく、それは女の子であった。

「うゆゆ、ちゃんと一覧になっていなかったからこれは大変ですよぅ……」

椅子に座った上体をふわふわと左右に揺らしながらペンを走らせる、それに合わせて長い髪もふわふわと左右に揺れながら。
きゅっきゅっきゅっ、とリズミカルに取り扱い商品の品名や効果を帳面に書き出している。
まだ少しごちゃっとした店内の品々に、値札が付いていたり付いていなかったり、どうもそれらを一端整理してみたくなったようで。
きゅっきゅっきゅっ。

「に゛ゃー! ……書き間違えたです……。けしけし」

ご案内:「王都平民地区/魔道具屋『透明な薔薇』」にヴァンさんが現れました。
ヴァン > 壮年の男が一人、道をぶらぶらと歩いている。

「ポーションは処分できたが、こっちが残ってしまったな。そもそも何に使うんだ、これ……」

肩掛け鞄を軽く手でぽん、と叩くと、カフェのような店に気付く。
ショーケースにある品物を見て、扉の看板を読む。買取をしているかはわからないが、魔道具の用途くらいはわかるかもしれない。
扉を開けると、ドアベルの音が鳴るだろうか。
棚卸中なのか、床の一部に商品が置かれているのをみると、足元に注意しながらカウンターへと向かう。

「すみません、このお店では買取はしていますか?」

どう見ても年端もいかぬ少女だが、店番を任されるぐらいには商品に詳しいのだろうと想像する。
少女の目に男はどう映るだろう。首からさげた聖印から、主教の関係者とわかる程度だろうか。

エネリ > 置き場所が定まっていない商品とかも、置き場所から整理しなければいけないのでは!
……そんなことに気がついて、ちょっぴり呆然となりかけていた所で。からんからんと、意外と落ち着いた綺麗な音のするドアベルの音。

「あっ、お客さんですよぅ。――はあい、あんまり難しいものじゃなかったら平気ですっ」

帳簿に落としていた視線を上げると、歩み寄る男の人の姿。
ちょっと歩きにくそうなのを、ごめんなさい整理してましたぁ、とちっちゃい身体に大きい身振りでぺこりと一礼。
その後ちょこっとどんな人だろう、と見てみれば、聖印らしきものも目に留まり。

「お兄さんは騎士さまなのですねぇ。いらっしゃいませですよぅ……あ、どんなものなのか、出してもらったらお調べするです」

怪しい人ではなさそう、と思ったようで、にこにこしながらカウンターテーブルの上をちょっと広く開けて。

ヴァン > 「あー……難しいものかどうかすらもわからないんだ」

申し訳なさそうに鞄からがさごそと取り出し、カウンターテーブルへと置いた。
一つは30cmほどの棒状の物体で、魔力を通すと先端の球体が震える、ただそれだけの品物。
周囲の魔力に影響を及ぼすなど、目に見えない効果があるのかもしれないが男にはそこまでのことはわからない。
もう一つは手で持てる程度の直方体。革製のベルトがついており、片手で使うようだ。
二か所に眼鏡のようなレンズがついているが、こちらは魔力を通そうと試しても動かなかった。

「……!? よくわかるね。お兄さん、という歳ではないが……ヤルダバオートにいたことが?」

少女が聖印だけで気付いたこと、それ以上に所属を知った上で警戒しないことに少々驚く。
神聖都市では神殿騎士団は悪名高く、あまり歓迎されない――正直に言えば、忌み嫌われる存在だ。特に年頃の女性には。
とはいえ、男にとっては今の程度の反応の方が助かるといえる。より詳しい人物なら、敵対的な反応すら見せかねないのだから。

床に積まれた人形に目を向ける。他人を信用しない魔術師が人形に命を吹き込みゴーレムとして使役するという。似たようなものだろうか。

エネリ > 「ふむふむ……ひとまず見てみるですよ。かばん……じゃなくて中身の方ですねぇ」

魔法の鞄か何かかな、と思ってみていたら、どうやらそこではなくて中に仕舞われている物の方だったらしく、取り出そうとがさごそしている手付きをきょろきょろと目で追っている。
ふと、ちょっと驚いたような相手の様子に暫し考えてから、ああ、と一緒に驚いたような声を上げ。

「あっ。そう言えばお姉ちゃんにあんまり言わない方がいいって注意されてたのです!……でもエネリはひとまず気にしてないですよぅ。エネリも、もっとちっちゃい時はその辺に居たのですけども」

あんまり神聖都市の事は言わない方がいいのよ、と姉に言われていた気がして、いけないいけない、と頭をくしくしと掻いて。
それよりも、ひとまず出されたものを見るのです、と置かれたそれをまじまじと。
棒状の方をまず手に取ると、それだけでは何もないが……カウンター横の箱から取り出した手袋を嵌めて、それから持つと、球体部分がぷるぷると震える。およよよよ、と一緒にぷるぷると震えて、テーブルにことんと置くと、それは止まる。
再び持つとぷるぷる震えて、また一緒にぷるぷると震えている、ちょっと楽しんでいるようにも見えるが――

「これは……なんだかえっちなもののような気もするですよ。ちょっとした魔力を加えるとぷるぷるするみたいですが……ぷるぷるするだけみたいですね!」

もうひとつはなんだろう、と四角い方に興味が映りつつ、そんな風に説明し。

ヴァン > 「ま……昔はともかく、今の神殿騎士団はな。お姉さんとこのお店を?」

口調から察するに、外見通りの年齢のようだ。
過去にいたことがある、あまり恐れない、ということは本人というより、姉がそれなりの実力者なのだろう。
鑑定の様子を眺める。魔力を通して、使い道を確認しているようだ。どこか楽しんでいるようにも見えるが――。

「えっち……そうなのか?震えるだけ……うぅむ。
先日、魔物退治をしてきてね。魔物の巣にあったものなんだ。だから状態は良くないだろうし、値付けは任せるよ。
もう片方は……レンズが二つついている以外はわからないな」

珍しい品物だとしても、オークの巣にある程度のものだ。そこまで値段はつかないだろう。
場合によっては廃品扱いとして鑑定料も含めてこちらが払うことになるかもしれないな、と自嘲気味に笑う。

もう片方の黒い直方体は、どうやら何かを記録する品物のようだ。
大きいレンズで正面のものを記録し、小さいレンズを人が見ることで記録が正確にされているか確認するようだ。
とはいえ、単に魔力を通せばよいものではないらしい。今は動力源となるものが入っていないようだ。

「この店には今日初めてくるが……棚卸しかな? 一人なのにすごいな」

この後床に下ろした物を整頓し、棚に見栄えよく飾り付ける作業があるのだろう。
その大変さをこの背丈で担うと想像すると、思わず少女を労うような言葉がこぼれた。

エネリ > 「はいです、お姉ちゃんとエネリが二人でお店番なのです。エネリがお店にいることの方が多いですねっ」

姉の方は戦ったりもできるぶん、外担当。この小さな方は、全然戦ったりとか出来ないようで、お店に居る方がかえって安全だから、上手く役割分担しているようなのだ。
受け答えの合間に、箱から眼鏡をひとつ取り出して。ミトラの眼鏡ぇ!って意味があるのか不明な謎のアイテム名主張と共に高らかにそれを掲げると、すちゃ、とそれを身に着けて。
金色で真四角に象られた眼鏡を通して、箱状のアイテムをじっと見つめ、時には手を取ってくるくると向きを変えてみたりしながら。

「ぷるぷるさんの方は……たぶん押し付けて振動させて使うだけのような気がするですよ。似たような道具が売り物にもありますからぁ、それと同じような感じなのではと思うです。
 こっちの箱は……うにゅ、物はすごいもののようですがっ、これたぶん、何か中身が足りてないみたいですね!――きろくそうち、って言うものの一つらしいですよぅ。でも動かす……うんと、例えばランタンで言えばオイルが入ってない、みたいな感じだそうですっ」

この小さな子自体に鑑定能力があるわけではなく。どうやら掛けている眼鏡に秘密があるらしく……実は眼鏡を通して別の誰かが鑑定してくれている、ようなものなのだが。

「あ、お店は今ちょっとごちゃごちゃで恥ずかしいですよぅ。お姉ちゃんは忙しいですし、おーなーさんはエネリよりもっとお片付けが大変なので。お店の中はエネリががんばるです」

ヴァン > お店番、という言葉に頷いた。
二人とも店員ということは雇用主がいるのだろう。
姉は己にどう反応するだろう。神殿騎士団という所属だけか、ヴァンという個人までこの名札代わりの聖印で認識できるか。
後者の場合、このお店には行きづらくなるな、と取り留めもなく考える。

眼鏡をかけて箱を眺める姿を見守る。あの眼鏡も魔道具の一種なのだろう、ぐらいの想像はついた。
まさか通信機能があって別人が鑑定しているとまでは思わない。伝文系の語尾を聞き咎めることはせず、流してしまう。

「振動、使う。あー……あぁ。わかった。箱は……そうか。
ありがとう。それで……値段はつくかな?」

普段男はそういった道具を使わないため、単に疎かったようだ。用途がようやく思い至ったか、気まずそうな顔をする。
直方体の方は興味を惹かれるが、オイルに相当する物を探すのも面倒だ。鑑定料が高くつくことも考え、財布を取り出した。
少女の言葉は思った通りだった。店内を見渡して、何か興味を惹かれるものがないかを確認する。

「となると、悪いタイミングできてしまったかな? すまないね」

エネリ > 頑張って道具の事を考えているから、相手が何か胸の内で何か悩んでいるか考えているかしている様子には気づかずに。
姉は姉の方で割り切って気にしなさそうな問題ではあるのだが、それはそれ。

「えっと、どっちもちゃんとした魔法の道具ですからっ、ぷるぷるさんの方だけでも数日ぶんの宿代と食費ぐらいは出るですよ。あんまり贅沢なとこに泊まったりしなければですがっ。
 箱の方はもっとするですけど……ちょっともったいないですから、使えるようにお直ししてお返しする方がいいかもです?そうしたら、お直し代と新しい……燃料代、と言うとちょっと違うですけど、使えるようにするお代だけ後でもらうようにするのでも良いですしっ」

震える棒の用途に気まずそうな顔をしているのに気づくけれど、意外としれっと普通の応対をしている。
似たような商品が置いてある、と言っていたぐらいなので、そういう道具はそういう道具としてありのままにしか考えていなかったりすのかもしれず。

「あ、鑑定料はいらないのですよぅ。お店の売り物が増えたらそのぶんぐらいは後で戻ってくるものですからっ。引き取りでなければそれはそれでそのままお返しするのです」

何せ、どんな物なのかを見ただけ、であるのだから。そのぐらいで代金は取らないらしいのだ。
あくまで、何か手を加えたり、作ったり……もしくは既にある物を買ってもらう時。そんな場合だけしか貰わない主義、の様子。

「いいえ、見づらくてごめんなさいなぐらいですよぅ。お客さんはいつでも歓迎なのです……あ、もし気になるようなものがあったら、箱ちゃんと交換でもいいかもですねっ」

雑多な店内の中には、魔導書のようなものから、薬品……果ては武具類、色んなものが置いてある。強力なものから、どう使っても一切錆びないだけ、と言うシンプルな効果の短剣であったりとか、色々だ。

ヴァン > 少女からの言葉を聴くと、顎に手をあてて考える。

「では……その、棒の方は売却で。箱の方は……いくらぐらいかかるかによるかな。見積りはできるかい?」

それなりに値打ちもののようだが、使い方や維持費がわからないことには決められない。
魔道具のランタンは通常のものに比べ高価だが便利だし、維持費がそれほどでもないから使いやすく、持つ者も増えてきている。
この記録媒体がどんなものかがわからないが――コスト次第か。

「それは助かる。場所によっては鑑定料と売値が等しい地域もあるからね……
そうだな、本の類は興味がある。一冊くらい買っていくか」

行ったことはないが、遠い国ではぼったくりの激しい商店があるらしい。
その国で産出されるアイテムには鑑定しただけで呪われたりするアイテムもあるので、必要経費ともいえる。

武器、薬品、全て魔法に関連していると考えると、商品の総額はすごいことになりそうだ。
それをこの年齢の少女に任せていると考えると、少し不用心な気もするが、防犯設備がしっかりしているのだろう。
足元に注意しながら店内を巡り、魔導書のコーナーで立ち止まる。何冊か手に取って、題名と序文にさらっと目を通した。
読みやすそうな物を一冊選ぶとカウンターに戻ると、買い求める旨伝えた。