2022/10/23 のログ
ご案内:「王都の路地裏」にエンプティさんが現れました。
エンプティ > 貧民地区、平民地区、富裕地区。
王都のいずこかの路地裏。

人気のない時にふとそこは、異界に変わる。

『あなたは満たしたいですか? みたされたいですか?』

 声がする。

闇の中より這い出る人の影。

 否、目も鼻もないそれは人ではない。

 ただ、同じ質問を繰り返し、迷い込んだ者を探して徘徊する。

エンプティ >  異界と化した路地裏は、もはや埒外の領域となり。

 空を見上げれば緑色、落書きのような太陽や月が同居する。
 建物はことごとくがいびつに歪み、窓には影絵の乱交パーティ。

 落書きに申し訳程度の写実性を与えたような、住人が路地裏を時折行き来する。

 大きな芋虫が蝶ネクタイをつけて懐中時計を一瞥して足早に立ち去って。
 妙に胴の長い猫がのたのた歩くうちに風に飛ばされ転がって。

 冗談のような、風刺にまみれたおとぎ話のような光景の中、

 怪異は歩む度に爆乳を上下に弾ませ、スカートが揺れる度に巨尻が肉感を帯びて揺れる。

 彷徨って、路地裏に迷い込んだ何者かを探して。一定の歩調が決して止まることも乱れることもなく。

ご案内:「王都の路地裏」にソルトさんが現れました。
ソルト > 「なんだこれ……」

少年は、呆然とした面持ちで突っ立っていた。
そこは異界──少年の記憶では偶然通りかかった路地裏だった場所である。
単に目的地へ向かう途次、何の気なしに行ったショートカット、何がいけなかったというのか。
まるで対象年齢不定の絵本の中にでも紛れ込んでしまったかのような気分だ。

しかし……と、少年は動揺を押さえ込もうと努力はしつつ、考え込む。
自分に対する何か魔法的な攻撃かとも思ったが、それならこうして考え込む時間を与えるとは思いにくい。
何かがいけなかった、というのではなく、もしかしたらそれは単なる偶然なのかもしれない。
盲亀の浮木、とでも言おうか。
この世の不思議なことにすべて理由がつくと考えるのは傲慢だ、と造物主も言っていた。

そこまで考えたところで……声が聞こえてくる。
どこから? ──闇の奥から。
耳がまず先に動いて、次に視線がそちらに向く。
現れたのは、奇妙な存在だった。──どこが奇妙か、という点を語るのに短くない時を要する程度には。

「そ、そんな満たされたいに決まってるじゃん。当たり前だろ」

びくっと全身を震わせてしまったことに対する照れ隠し気味に、あるいは自分を鼓舞するために、そう言った。
日頃誰かの願望を満たすためにこき使われる少年としては、造物主の前では言えない本音だ。

エンプティ > 奇怪な異界と化した路地裏で一際奇怪な異形。

目も鼻もない、朱を塗ったような赤い唇。
鈴の鳴るような声色で囁くように語り掛ける。

圧力。貴方の体格からすれば圧倒されるであろう爆乳が頭上で弾む。

「……あなたはみたされたいのですね」

 怪異は、嗤う。大きく唇を、人の域を越えて頬が裂けるほどに吊り上げて。
 感覚が鋭ければ、敵意も害意も感じられないことは理解できるだろうか。
 その代わり、気配を帯びている。好色。肉欲。
 そう言った気配を向けていて。

「あなたも おとこのこですものね」

 ゆっくりと、怪異は目の前に、瞳はないが目線を合わせるようにしゃがみ込む。
 目の前で大きな爆乳が揺れて、豊かな谷間が視界を占める。

「いらっしゃい たくさん たくさん みたしてあげましょう」

 脳に染み込むような、優しい声で囁いて、貴方の両手を伸ばして、闇の中に連れて行こうと―

ソルト > 少年は、自分のした発言の意味をよく理解していなかった。
だが、それも致し方あるまい──
この王都の闇に蠢く闇は少年の理解を遥かに超越しており……

そして、闇の中に消えた。

ご案内:「王都の路地裏」からソルトさんが去りました。
ご案内:「王都の路地裏」からエンプティさんが去りました。