2022/10/16 のログ
ご案内:「港湾都市 ダイラス 港倉庫街 居酒屋」に燈篭さんが現れました。
燈篭 > 夜の倉庫街 月夜の番
無人 整頓された建築の列
一種の静寂の中には、隅で取引や逢引
港の傍ではいけないことをした者が、海の底で置物にされちまう。

倉庫街ってのは、こんな想像が主だ。

しかし変わり者は居る者で、その一つを店にしちまったっていう奴がいる。
守り代もきっちりと払い、船で運ばれた旨い酒や漁師の肴
少し割高だが野菜や穀物だって取り扱ってある。

良い酒 都に出回るとすぐに消えてしまう酒
こいつらを求めるってなると、この隠れた居酒屋が一番だと 誰かが言った。
無論、明け透けに広める奴なんていねぇ。 自分の酒が無くなっちまうからだ。


「よ~ 久しいなぁ大将。」


ひぃっく

そんな酔いどれしゃっくりと共に小鬼は夜の倉庫酒屋に訪れる。
手には愛用の酒が握られているものの、此処に来たっていうことは
偶には人間の作った酒をたしなみたいっていうことだと、店の主はわかってる。

小鬼は、この隠れた居酒屋でカウンターに少し勢いをつけて尻を乗せれば
小柄さも相まってか、胡坐を掻くようにして収まってみせる。

さて、酒だ。
小鬼の頬が少し染まった笑みで、酒のボトルを眺める。
瓶から樽まで、様々だ 葡萄 濁り 穀物 蒸留 といった分け方ではなく
向き不向きを分けてしまうように、いろんな酒が名前付きで転がっているものだから
少し目移りしてしまいそうだ、と小鬼は迷い気味。
酒好きにゃ、よくある光景 主も、その悩む時間を急かしたりしないってところが、その証拠。

燈篭 > 店の主は、別に進めたりしない。
喰いたいものがありゃ、割と誘える。
しかしこの小鬼、飯を食わない 肴を食わないって飲み方で有名だ。

なにせ酒好きな鬼 どこの酒場に現れたって不思議じゃない。
そしてその角、飾りじゃない。
見た目で追い返す馬鹿なんていた日には、きっと夕暮れにはいなくなる。

だから勧められない。
鬼の気分に、任せるのが一番って考えるのが、主だ。


「んぁー…、…北扇(ほくせん)まだあるよね?」


鼻をクンクンさせる
甘い甘い 辛い辛い 酒の匂いを小鬼はかぎ分け店主に呟く。
鬼が酔う酒ってやつじゃない 辛口かといわれりゃ違う。
野菜 芋煮や漬物 そんな肴と合うのがこの “北扇”
深緑色のボトルに移されている酒を一本丸ごと、鬼は強請った。

店主も隠す気もしない
こいつは海じゃ少し割高な、新鮮な旨い野菜飯に勧められる肴といっても
鬼に嘘を付いたら 次が怖い 鬼が泣くのは、童に追われた時だと決まってる。


「升。」


瓶ごと口づけたって小鬼はいいものの
せっかくの店 升に注いで飲み込みたいと、木で組まれた測りにも使えるその升
一升を楽に掴んで注ぐ音


「―――とっ。」


零すなんざもったいない
酒の音と時間でわかるとでもいうのか、瓶口はぴたりと止んだ。
酒が、ふるふるっと震えてる。 ああ、もう少しで零れてしまいそうだってくらいに、ギリギリだ。

ご案内:「港湾都市 ダイラス 港倉庫街 居酒屋」から燈篭さんが去りました。
ご案内:「路地裏迷路」にタン・フィールさんが現れました。
タン・フィール > 王都の一角……商店街や住宅街などが連なる表通りたる、広い道から裏路地へと通ると、
一部の住民からは「迷路通り」と呼ばれる、複雑に入り組んだ区画へと繋がる。

王都で薬草や薬の素材となる様々なものを買い終えた、小さな薬師の幼子は、
このあたりにも穴場となる店や素材屋などはないものかと好奇心にかられ、自ら足を踏み入れる。

しかし、高い壁、似通った屋根…迷路通りの名前に負けぬ入り組み方の路地は、
瞬く間に小さな子を巻き込み、もう戻ろうとしても簡単には元の路地には出られない。

「ぉ、おおーーーっ…これが、うわさの迷路通り……っ…
…ええと、こっちから来たから……あ、あれ…?あれ…?」

いよいよ迷子になりきる前に、来た道を戻れば良いとタカをくくっていた幼子は、
迷いの森や、迷わしの妖精の術に化かされているかのように、面白いように戻るべき道の選択を誤り続け、
どんどんと奥深くの迷路…否、迷宮じみた、暗く狭い路地へ進んでいってしまう。

ご案内:「路地裏迷路」からタン・フィールさんが去りました。