2022/10/08 のログ
ご案内:「腐海沿いの翳りの森」に影時さんが現れました。
ご案内:「腐海沿いの翳りの森」にジギィさんが現れました。
影時 > 「ンな時にわざわざ邪険にする理由がない――って、だけだ。
 それに寄ってくる理由は俺の人徳とかではなく、例の種だろうに。
 
 教訓が身に染み付いて良かった、と言うべきオチか。
 まあ、実際正しいだろうと俺も思う。大きく派手に使うと、何かと面倒いンだよなあ。
 ……粘膜に入ると痒みを起こすキノコの胞子を攪乱のために試したことがあるが、遣り過ぎて難儀したぞ。」
 
よもやよもや、この草原地が一角獣が立ち寄る地であるとは、エルフならぬ忍者たる己には思いもよらない。
しかもそのうちの一体かどうかはわからぬしても、ゲイのユニコーンが居たとはさらに、思うまい。
ともあれ、だ。薬の運用に似た教訓として、手ひどい目を見た記憶を思い返して毛玉の群れの主めいた男は一息つく。

すっかり獣臭くなった気がしなくもないのは、まったくしょうがない。
己が徳、見えない仁性の現れではなく、件の種子を残したドライアドの行いやら何やらによるものである、と。

「木の実の類でも拾っておきゃ良かったか。
 ジギィ、帰りで良いからよさげな場所があれば教えてくれ。少しでも集めて置いておきゃ、こいつらの蓄えにもなろうよ」

きぃきいきゅうきゅう鳴くのは、お腹が好いたからかそれとも単なる好奇故なのだろうか。
巨木とはいえ、先ほど伐り倒した樹には高さが劣る枝葉を伝い上る姿に、毛玉入りの籠から目をやって声をかける。
背負子と籠は帰りの道中に良さげな薬草などでも探して、刈って帰るための備えであったが、集める作業にも勿論適する。
どうかね?と。先ほどまで腹にへばりついていたモモンガ、そして頭上のもう一匹とリスに尋ねてみながら、スモモの木の下まで歩んでゆこう。
甘酸っぱい香りが強くなれば、たちまち揺れだす籠を下そう。

「おぉ、悪いな。手間をかけさせちまった。こら、急くな暴れンな。果実は逃げんってのに」

何だか小動物の世話人めいた有様に対する視線を受けてる気がしながら、集められた果実の匂いに己も目を細める。
鼻までを隠す覆面を下せば、その匂いは一層濃くなる。きっと美味いに違いない。そう確信できるくらいだ。

ジギィ > 己に懐いたわけではなかろう、という彼にエルフは目を細める。
確かに寄って来た最初はそうだろうが、こうして未だに離れずにいるのは『それ』だけではない証だ。

「うっわ。ひさーん
 痒いのってどうしようもないからね。抑える薬草類にしても代わりに痛みを与えるとか、さもないと内臓に副作用があるやつが多いんだ。
 あーん、カゲトキさんやっぱりやさしいじゃない」

木の実のある場所を尋ねられると、両手を合わせて黄色い声をあげてから肩に留まらせていた栗鼠を見遣って、ねえ?とその喉を擽ってやる。
元々その樹上の住人だったかのように、枝を広く伸ばした樹のあちこちを巡ってからエルフは降りて来る。
戦利品をお披露目すると、揺れる籠にあはは、と笑って
樹の元、腰掛けるのに良さそうな叢がある場所を眼で示して歩いて行く。

「まーまー、折角来たんだしすこしおもてなしもしないとね?
 …さーどーぞー」

ひと足先に腰を降ろすと、傍らに袋状にして持っていた布を広げる。
ころころと転がり出すスモモを、気の早い毛玉が数匹、彼の籠から飛び出してきて追いかけていく。
スモモは大きさこそ大差はないが、色は全体朱くなっているもの、すこし黄色いような物、紫がかっているものと様々で、齧れば果実の色も濃黄色から白っぽいものまである。一見、一つ樹から採れたものとは思えないかもしれない。

「結構種大きくて硬いから、齧る時気を付けてね。
 種はその辺に投げて大丈夫」

騒ぐ毛玉たちと、肩から滑り降りた栗鼠が次の獲物を物色するさまにエルフは目を細めながら
自分も黄色っぽいものを一つ手に取って、皮ごとかぶりついた。どうやら、このエルフは皮までイケる口らしい。
たちまち仄かに香るだけだった甘酸っぱい香りが樹の下いっぱいに広がって行って、それをさらうかのように柔らかな風が広場を渡って行く。

影時 > 「思いついたのは良いが、って奴だ。
 遣らかした後、急いで目を洗いに水場を探しに駆けずり回ったなぁ……。
 
 優しいか? ――邪険にしなきゃならん所以がないだけ、さ。」
 
キノコの胞子が目に入ったときは――本当に困った。
危なかった。眼球を抉り出して水で洗いたくなった、といえば想像してもらえるだろうか。
だが、そうやって教訓を得たことにより、注意深く扱うための感覚をようやく覚えることができた。
もっとも問題のキノコ自体はあまりに見つからない。おそらく魔物の類ではないだろうか。その可能性を覚える代物である。
優しい、と言われれば両肩を竦め、微かに困ったように口の端を釣り上げて見せる。
森の外までついてくるかどうかは彼ら次第か。ついてくる気があるなら、寝床と餌の心配はないだろうとは思うが、さて。

「んじゃぁ、ご馳走に預かるとする――か」

示された場所へと歩めば其処に腰を下ろし、刀の柄に手を載せて鐺が地面に触れないように位置を変える。
もっとも、もともとの長さがあるだけに擦れたり、突っかかったりするのは仕方がない。それでも胡坐をかいて座すには十分だ。
転がった果実の一つを吟味し、熟れてそうに見える色合いの赤色がかったものを取り上げ、取り出す奇麗な布で果皮を拭う。
エルフがやる所作を見れば、剥かずに食べても大丈夫のようだ。続く語句に頷き、口を寄せて。

「……――お」

思っていた以上に、甘い。当たりだったらしい。次に口を運んで深めに齧れば、芯めいた硬さに突き当たってゆく。
それを避けるように僅かに位置を変え、もう一口いこう。
種はそのまま吐き出しても大丈夫そうなのは、いかにもこの森らしい所作かなと思いながら。

ジギィ > 「ひゃー目だったんだぁ さいあく。
 邪険にしない理由がないなら、やさしい
 ってことは、基本的にやさしいってことじゃない? やーん、『女殺しならぬ、毛玉ごろしめー』」
 
 エルフの言葉の後半は、一心不乱に果実にかぶりついていたモモンガを拾い上げての口真似(?)だったが
当のモモンガが果汁で口元をべたべたにしながら頬一杯に詰め込んでいたため、なんとなく口の中にものを詰め込んだままで喋っている様子まで再現した。
エルフはまたけらっと笑うとそのモモンガを元の場所へ降ろして、齧りかけのスモモ片手に彼らを眺める。

「キノコはねぇ、扱いが厄介なのよ。
 樹たち以上に地下で勢力争いが重要で栽培は容易じゃなものが多いし、進化も早いからいいもの見付けても定着するかとかも微妙だし、見た目がそっくりなのも多いし、胞子なんて色つけないと見分けつかないもんね」

キノコについてひとくさりぶちながら、彼の所作を横目で見る。
考えるのは
――――あの刀に茸生やしたりしたら、怒るかなぁ
とかろくでもない事だったりする。

しばらくしゃくしゃくもそもそと音を立ててスモモを食べていた栗鼠にシマリスにモモンガたちは、ひとごごちついたようで布に残った果実をてんでにその辺へ埋め始める。気の早すぎる冬支度だが、その中にはもしかしたら根付いて、またこのスモモの樹の跡継ぎか、支えかになるのかもしれない。
それがすめば、多くが何故か彼の籠に戻って行くだろう。覗き込めば、何とも無防備に腹を見せて寝ているのが見えるだろう。

「――――一休みしたら、行かないとね。
 ここは安全だけど、一晩過ごしたいわけでもないでしょ?
 ―――あ、ちなみに彼女とデートで来たいっていうなら、事と次第によっては相談に乗ります」

食べ終わった果実の種を、振りかぶって遠くへ投げる。てん、てんと転がって草叢に隠れたそれは、きっとまた別の生き物の糧になるだろう。
それから彼を振り返って、にんまり笑ったエルフは人差し指と親指でマルを作って見せながらウインクをする。もらえるものさえもらえるのならば、ユニコーンさえ立寄る広場をそんなことに貸し出すつもりらしい。

影時 > 「そうとも、目だぞ目。
 ……そーゆー論法も確かに成り立たン訳ではないが、おいおい。照れるじゃねえかよう」
 
頭に乗っかってたままのリスとモモンガのコンビも、採れたてのスモモがあれば、やっぱり居てもたってもいられなかったらしい。
キュっと鳴き声を上げて飛び降り、近くにあった果実の一つに寄ってゆく。
それを眺めやりつつ、別のモモンガを拾い上げては声真似、口真似を当ててゆく姿に、半ば呆れめいた顔で肩を竦めてみせよう。
流石に頭の上で糞を出すなどがなければ、叩くなど手荒く追い払わないのは、優しい部類に入るのだろうか?
ふと、ある意味どうしようもなく、とりとめもない思考を脳裏に過らせよう。食いかけのスモモから口を放し、一息して。

「ああ、分かる分かる。そのあたりのキノコ事情は土地が違っても、どこもかしこも同じらしいなァ。
 栽培できそうに見えて、やたらと繊細だったり、素人が森で見つけた派手なキノコを取ると、途端にかぶれたも……、ジギィ?」
 
したり顔を飛び越えて、重々しいくらいに実感を込めて頷けるのは、キノコに纏わる悲喜交々を理解ってしまえるからだろう。
食用に適したキノコをよさげな殖木を揃えて栽培してみたはいいものの、当てが外れた事例は数知れず。
駆け出しの冒険者たちが、目的外のはずのキノコを迂闊に採取してみたら、その実、触れるだけでも厄介な毒性を帯びてというのもまた一つ。
この森に至っては、そういった無毒有毒問わず、進化や派生の方向も著しい可能性がある。
そんな思考に至りつつ、エルフの向けやる目線に何か胡乱なものを覚えたか。むむ、と首をかしげてみれば、視界の端に見えた光景に、顎がかくんと動く。

(……――何故また籠に入るンだか、お前ら)

腹が満たされたのか、毛玉たちがまた背負子の籠に入っていく。戻ってゆく。
寝床のつもりなのだろうか。スモモをシェアするように食べていたモモンガとリスのコンビもまた然り。

「ン、だな。安全圏だろうとはいえ、道中に見かけた変なのを考えると、正直長居はできねぇだろう。
 ……流石にいねぇのに、金を出しようもなかろうよ。案内人もかねてお前さんを誘う方がよっぽど目があるくらいだ。
 
 で、だ。この種は何処にどうすればいい?」
 
遅れて口の中に残った種を吐き出し、片手拝みにご馳走様を告げて、後ろに放り投げる。
見せられるジェスチャーに真顔で立てた手を横に振り、毛玉たちの寝床になってしまった籠に括りつけられた種の包みを見る。
ここでないなら、この先の場所が安住の地、新たな成育の地となるのだろうか?

ジギィ > 「まーしょうがないよねー
 植物の一種のようなふりして、カビとかと一緒だって言うんだから―――…
 ―――ん ぅふ…」

腹を満たした毛玉たちは、スモモの樹に登るか散るかするかと思いきや、またも彼の籠に戻って行く。
スモモの木陰を透かして指す陽光のなか、きもちよさそうにすうすうと、めいめいのやわらかそうーなお腹を上下させているだろう。
エルフが籠を覗くことまでしなかったのは、彼の一種唖然としたような表情をよく観察するためである。
案の定、滅多と見られなさそうな表情に、エルフが口を抑えれば鼻息が漏れる。

(―――籠の中に小さなお姫様とかいても、あんな顔するのかしらん)
など、詩のネタを考え始めたりして

「やあん、カゲトキさん、色気ない」

など、彼に不条理なクレームも入れる。

(変なの、ってわけじゃないけど―――)
唇に乗りかけた言葉を、咳払いで誤魔化すとエルフはまたスカーフを口元まで引っ張り上げる。

「えーっ、つまんない。いろけなぁい。
 ――――ン?
 大丈夫、『お迎え』来たみたい」

種の行方を尋ねられれば首を傾げて耳を澄ませるふう
地面に腰を降ろしているなら、微かな地響きのような振動を感じるかもしれない。
言ったエルフが視線を投げた先を見るなら
草原をこちらのほうへ、土を盛り上げながら進んでくるものがある。
速さはごくゆっくり、多分彼なら見覚えがある、所謂『もぐら』のつくるものそっくりの、大きさと速さ。
見守っていると、それは間違いなく彼の籠の、その包みの傍へと進んでいく。

ばさ、と比較的控えめな音と共に土を振り捨てるようにして地面から伸びあがったのは
――――― モグラ程の大きさもある、ミミズ
――――― に一瞬見える、正に土龍といったような姿だった。

蛇にも似ているがそこと思しきところに瞳は無く、代わりとでも言うのか、頭には短く二本、後ろへ伸びた角がある。

見守っている内にそれは体躯に見合わぬほど大きく口を開けて

ばくり

種を包んでいた布袋ごと、その口へ―――身体の中へ