2022/10/09 のログ
■影時 > 「あー。どれもこれも種じゃなくて、胞子――だからなァ。
環境が悪い、まだ整えきれてないとか言われたら、とはいえ、草花のようにとも為しがたいか。
……別段置いていっても惜しくはないと云えばそうなんだが、籠が気に入ったとか云うんじゃねえだろうなぁ、お前らよう」
確かに。キノコもカビも、もとはと云えば胞子から発芽して成長するものである。
植木鉢などのごとく、好む環境を安定して構築し、維持できていないことが栽培が失敗する要因であろうか?
だとすると、王国の貴族がたまにやるような硝子張りの温室とやらの逆となるような、暗室をより厳密に作るべきということになるのか?
考えるだに難しい所業である。為せる――と仮定する場合、何が足りないのか。
財力というのはもちろん真っ先に出るのは疑いないが、それも金銭で購えなければ如何ともしがたい。
そんなずれがちな思考を引き戻してくれるのが、近くの木やら何やらに戻ってゆくかに思えた、小動物たちである。
籠の中に上って戻り、ぽてん、ころりと転がっては丸くなったり、仰向けにごろ寝してやーらかそうなお腹をもちもちと上下させるのである。
……どうしたものであろうか。最悪、中身も含め放棄する羽目になっても困らない、といえば困らない。
人に化けたりする個体などがもし入っていても、きっと、似たような顔つきでひどく困ったことであろう。
「そういう連れ添いでも居たら、まだ良かったんだがね」
居ないものは――仕方がないともいうか。そして知らずとも、というのも如何ともしがたいか。
知れている事柄というのは、結果的にエルフの反応を通じて垣間見える、予測できる要素位だ。
「無茶云うない。それともお前さん、俺の連れ添いにでもなってくれるンのかね?
って、…………なん、だ?」
さながら、ぶーたれるような顔つきをしてそうな想像ができる言の葉のあと、微かに。尻の裏から微振動を覚える。
あの変なのが来たのか? 否、真逆。そうであれば、もっと違う地響きや枝葉が戦慄く音も響いてこよう。
反射的にその場を飛び退き、片膝立ちの姿勢で腰の鞘に左手を絡める。
鯉口を切りかける刹那と土が盛り上がり、伸びあがってきたのはほぼ同時であった。
――蚯蚓? それとも、龍。竜の眷属、なのか?
たちまち、刀が震える。ありありと音を鳴らすような勢いで刀が震える。
抜き放たなければ、生じる圧は刀の鞘に巻いている提げ緒に擬した呪索のおかげで漏れはしない。
正体を定めかねたのか、刀がやがて振動を止める中、現れたものは種を包んだ布袋をぱくりと口に咥え、収めてゆく
「お迎え、でいいのかどうか……派手だなぁ」
――守り神のようなもの、なのか? 知らなければ異様と言い難きものを見詰めながら、ぽつりと言葉を零す。
■ジギィ > エルフは冷たくする理由がないとかなんだかんだ理由をつけながら、毛玉たちに声を掛けてやる彼をにまにま眺めやる。
多分、世話焼きな性分なのだろうなあと、色々話をしてきた中でも思ったことを改めて思いながら、揶揄う様な軽い口調はエルフの唇を滑り出る。
「やーだ、造らなかっただけでしょ。
あ、でも娼館のお姉ちゃん口説きたいからって理由はなしね!いちおう連れて来るのは本命だけね!」
最後に付け足したのは、ここへ立ち寄るユニコーンを慮ってのことである。ついでに自分の野次馬趣味が少々。
そうこうやり取りしている内に、くるかなあ、と思っていたものが来た。
それの気配はエルフには肌に当たる暖かい空気のように感じられる。ゆっくりと土を盛り上げて来る様を見るのはいつぶりだろうか。
目を細めるエルフとは対照的といって良い、彼が思わず身構えたのも仕方のないことだったが、それでもエルフは一瞬驚いて彼を見てしまう。
それから土から姿を現したものをあらためて見て、そういえば外で見たことはなかったなあ、などとのんびり思いやり
「派手かなあ?
彼としてはたぶん、只の食事なんだよねー
…あ、大丈夫。種は消化できないでどこかに残るから」
包みを飲み下し、腹を膨らませたそれ―――里のエルフの間ではずばり土龍と言っていたけれど―――は、満足げに舌なめずりすると、大きな口を今度は笑うようにゆがめて
それからまた土へと頭から沈み込んで行く。
要するに、こうして『種』の行方を誰にも、当の土龍でさえもどへ行ったのか(というかどこで粗相として落としたか)、果たして根付くのかさえも解らぬようにしてしまうのが
それがこの森のある種の『均衡』だった。
―――そして、それは今も機能しているらしい。
エルフは土龍の跡を眺めながら、懐かしげに目を細めている。
しかしその視線がスモモの樹が落とす影に気付くと瞬きをして、慌ててスモモを包んでいた布を畳みつつ立ち上がる。
「いっけない。
―――さ、 いこっか?」
■影時 > 世話好き――と言われて、思われて否定する理由が見当たらないのは、笑いどころかもしれないか。
そうでなければ弟子をとったり、ギルドからの依頼を受けて学院に特別講師に行ったりはしないだろう。きっと、おそらく。
「連れ添いとかナンだとかは、作ろうとして作るもんじゃあるまい?
……どうしても血筋を残さなきゃなならねぇとかなら兎も角、作るなら気が合うやら、入れ込めるでなけりゃ遣らねぇよ。
そーゆーので遣らねえし、連れてこねえよ流石にな」
一角獣様の趣味に添えるかどうかがもそうだが、野次馬趣味に添えるかどうかが、流石に怪しいことこの上ない。
其方が言うような理由ではやらんやらん、と。拝むように構えた片手を振って答え、溜めた息を吐き出す。
動く森などと綽名される何かもドライアドもそうだが、今出てきた何かというのは、知らぬものであれば、否応にも目が向く。
種、類としては龍なのだろうか?
彼と呼ばれる土龍は種を包みごと飲み干し、満ち足りたというような顔と風情をもって、土に潜り、戻ってゆく。
こういう仕組み、ロジックでこの森は動いているのか。
今見えたものは邪悪、歪んだような風情や気配は見えない、感じなかった。
もう少し深く尋ねてみたくもあり、知りえてみたくもある。こういう仕組みというのは、知るのはまた冒険の一環でもある。
構えを解き、膝を伸ばして立ち上がる。装束の尻に微かについた土を払い、背負子を見下ろす。
「……そうだな。一つだけ、大荷物を下ろせたような心地だが、お前らもどうする? 森の境界線までついてくるか?」
籠の中身に声をかけつつ、背負子を担ぎ上げる。降りるならばもちろん、追わないし咎めない。
付いてくるつもりならば最低限とはいえ、責任と面倒は見よう。
■ジギィ > (次回継続)
ご案内:「腐海沿いの翳りの森」からジギィさんが去りました。
■影時 > 【次回継続にて。】
ご案内:「腐海沿いの翳りの森」から影時さんが去りました。
ご案内:「看板の無い店」にヨリさんが現れました。
ご案内:「看板の無い店」からヨリさんが去りました。
ご案内:「看板の無い店」にヨリさんが現れました。
■ヨリ > そのおっとりとした面差しの魔女は、店の奥の広々とした来客スペースに独り、居た。
毛足の長い絨毯が敷かれ、中央には足の低い厚ガラスのテーブルが置かれている。
テーブルを挟んで、クッションが柔らかい上等の横長ソファーが一つずつ。
魔女が座すのはその内の一つ。適度な弾力の背凭れに体重を預け、ゆったりと足を組み。
店の出入り口には魔術が施されており、無意識の内に波長が合ってしまった者は、
ふらふらと入口を潜り、商品陳列エリアを通り抜け、奥の来客スペースへと入室するだろう。
一種の洗脳の効果が店自体にかけられているのだ。そして、魔女の餌食となる。
魔術の抑制が効かない危険な者が入って来る事も有るが、滅多に有る事象ではないし、
とタカを括っている。永い時を生きた人ではない種族特有の増長と言えるだろうか。
店の洗脳効果を察知し、洗脳されずに踏み込んで来る輩も、稀に居るのだから──
ご案内:「看板の無い店」にラスクさんが現れました。
■ラスク > あの店には美しい女店主が、などという噂話はよくあるもの。
その中がどうなっているかさえいくらでも飯の種にできるという自負の元、
少年は看板もない店に踏み込もうとする。
当然ながら強い魔力も洗脳を回避する術も持ってはいない。
「痛っ、…なんだよ?」
その時ばかりは別だった。
ポケットに押し込んでおいたペンダント、身なりの良さそうな魔術師からちょろまかした物品が
音を立てて壊れたのである。尖った破片が脚にちくりとした痛みを残して不機嫌そうに。
そして、知らずに魔術を回避した少年は自然と店舗を歩いて、
店主も受付も不在なら、自然と奥のほうへと脚を踏み入れていく。
どうせ使い方もわからず、手が出るかも疑わしい品の数々だ、情報こそ求めていた。
■ヨリ > 「──ん~?」
定期的に行っている魔力集め……だったが。
その日、魔女の視界に飛び込んできたのは、明らかに自分の魔法にかかっているとは思えない少年。
片目だけ開いて、ほんのわずかな時間だがアメジストめいた瞳を覗かせる。
すぐにいつもの表情に戻ると、
「まあ、いっかあ」
という呟きは、少年には意味不明だったろう。
なんだ魔法にかかっていない相手が自分の前にいるのか、ということだったのだが。
魔女は欠伸をひとつ、脚を組み替え、特に何か言うでもなく、手をひらひらと振って見せる。
話すことはない、というすげない態度である。
実際のところ、魔力を吸い取る対象を呼び寄せ集めていた、などと真相を明かせるはずもないので、
何も言わないのが一番今後に支障がない、というのが実情なのだが……
相手にどう思われるか、という配慮を欠く、いかにも浮世離れした魔女らしい態度である。
勿論、いい意味でではなく──
■ラスク > 噂は真実だったらしい。
あとはこれを持ち帰ればいい、もっと考えると、この店主からも金を巻き上げられないか。
見るからに煽情的な様子、ひらひらと人払いの所作を取られても、
少年は物怖じせずに近づいていった。
「お客様にその態度はないんじゃない?
それとも僕みたいなのはお呼びじゃないかな、お姉さん?」
すたすたと近づいた。いよいよ危ないと判ったら逃げればいい。
無礼なのはこちらも同じで、パーソナルスペースもへったくれもなく、
互いの距離を無遠慮に詰めていく……
ご案内:「看板の無い店」からヨリさんが去りました。
ご案内:「看板の無い店」からラスクさんが去りました。
ご案内:「設定自由部屋」にラスクさんが現れました。