2022/08/04 のログ
ご案内:「港湾都市 ハイブラゼール 港~船着き場」にイスルスさんが現れました。
イスルス > 夜の海 月と星 灯台が全てを示す場所
其処に、一つの船が船着き場へと戻る。
数人が乗れる程度の小型のもの。 帆も一人で操れる程度だろう。

降りてくるのは、まるでそれ以外に衣を纏うことがないかのような一張羅。
夏も冬も変わらない、長袖とロングスカートのクラシックメイドスタイル。
革靴の踵がコツリと、木の板で打たれた列の道につくと、船が勝手に波で攫われないようにロープと鉤を施した。


「…、…。」


数日前は新月のように月が見えなかった空は、今は満天の星と半分より少し欠けた月が見える。
イスルスの、光のない黒い黒い瞳に映るそれ
肌に染み込む月光は、どこまでも無音で心地よい。
思わず見上げ、ほんの数秒 満月には程遠くとも、その青白い明り。
月のある夜は、狼を落ち着かせる。


―――いい夜だと、自分は思った
―――波の音以外なにもない
―――足場の端には、思い悩んだ男の顔も 全てを諦めた女の顔もない
―――草原の風の音に紛れて忍び寄り、肉を食らう狩りの時間のように、心地よい。


イスルスは、無口 無表情なれど、月を嫌いになれるほど狼を捨てていない。
耳を立てれば、同胞の声が聞こえてきやしないだろうか
そんな波風が髪を撫でる月明りの夜だったのだ。

もっとも、それはない。
ミレーは数多くいようとも ドラキュリーナは見かけようとも
イスルスは自身のような同胞に会えることはほぼない。
だから昔の遠吠えを思い出しながら、身に汚れ一つない体でゆっくりと船着き場の道を歩く。

先ほどまで死体処理で魚の餌を撒いていた姿とは思えないほどの、白と黒で彩られる基本的なメイドスタイル。

ご案内:「港湾都市 ハイブラゼール 港~船着き場」からイスルスさんが去りました。
ご案内:「山中の別荘地」に影時さんが現れました。
ご案内:「山中の別荘地」にフィリさんが現れました。
フィリ > 「こ、こんな物で――宜しぃのでしょぅか、笠木様――っ」

夏真っ盛り。じーわじーわと蝉時雨もけたたましい山の一画には、何とも似つかわしくない…暑さ故ではない、冷や汗を浮かばせて。
少女は目の前の人物に向け、敬礼…っぽいポーズをしてみせた。

此処は王都から比較的距離の有る、商業都市寄りの小さな島。
程々に身分の有る者達が別荘等を構える事で知られており、普段は無人島にも近しいのだが、シーズンになると賑わう場所だ。
…とはいえ避暑地と呼べる程に涼しくはなく。寧ろ夏ならでは、海辺で愉しむ者達がメイン。
結果として今の時期山は寧ろ空いている。秋が近付くまでは、剰り人もやって来ないと見て良いだろう。

と、いう立地条件を準備した事で。昨日辺りから少女と――今回の保護者という事になるのだろう、親族の師匠とが別荘に入った。
昨日は、別荘からえっちらおっちら、裏手へ登った山が、修行の場に相応しいかどうか。その下見と準備だけ済ませ。
一夜明けて気温の上がりきらない内に、こうして、再度足を踏み入れた――というのが。現状である。

ちなみに。少女の格好は冒険初心者向けの防具に、その下には学校の制服である。
何故なら相手は先生で、今回は校外学習だ。学生として然るべき格好で居るべきだと、それが少女の認識である。
…まぁ、別荘地だ。冬にでもなれば、熊の一頭や二頭出るかもしれないが。
本物の冒険者やら何やらからすれば、庭のような物だろう。

影時 > 嗚呼。夏だ。まっことに夏である。
国が変われども。土地が変われども。どうやらお前たちは変わり映えはしないらしい。
じーわじーわ、とセミの鳴き声が恨めしくも合間鳴く間断なく響き続ける山の中とは、石で舗装された街とは違い、確かな生命の気配がある。
ここは時期が合わなければ、ほぼ無人島同然にもなるらしいという小さい島だ。
人の手が余分に入る機会がなければないほど、自然は自由に、放埓なまでに在る。

この時期であれば、海辺ではなく川遊びも存外悪くないかもしれないが――、

「――悪くない、と、あぁいや、悪くないんだがな。制服は別に着なくても良かったんだぞ?」

受け答えする男、引率者とも云うべき男は首裏で束ねた髪を揺らしつつ、頬を掻いて頷く。
最低限の要求は動きやすい恰好、服装である。成程、その要件だけを言えば己の前で敬礼めいた仕草を見せる姿の装いは間違いではない。
学院の生徒がフィールドワーク、課外授業めいた校外学習の際、制服の上に軽い防具をつけることも無いわけではない。

ただ、己の装束が逆に独特過ぎたか。
街中の普段着とは真逆に、纏う装束の色は黒色に近い――玄色の上下の忍び装束である。
足元は草や虫が入らないように脚絆で固め、両腕には鈍色の金属の手甲をつけたいでたちは、違うことなく所謂忍者そのものだ。
腰に刀を帯び、今回の教材として用意した木の棒を片手にしながら、周囲を見回す。

動くには十分すぎるほど、開けた場所だ。
ちょうどテーブル代わりになりそうな切り株の上には、抱えてきた荷物類も置いている。
いよいよ暑くなるとなれば、飲み物の類なども持ち込んでおかねば洒落にならない。

フィリ > 「ぅ゛。そ、そぅでした――でしょぅ、か。
矢張りその――引率、ぃただぃてぉります…し。教ぇを請ぅには。最も相応しぃのかと、思われ――ました、のです。はぃ」

むむむ。呻いた。学生という身分である以上。何よりのフォーマルな装いであり、勝負服であり、日常の装い。それが制服である、と思っていたので。
寧ろ少女も。校外学習での格好を意識したからこそ、とも言える筈。
…まぁ、中には例外も居るというか。例えば両者を繋いだ間柄である、少女の叔母、彼の弟子、も居るのだが。それは文字通り例外中の例外という訳で。

ともあれ。防具さえ無ければ遠足めいていたし、防具が有っても――ちょっとしたフィールドワークといった風情。
切り株の上にはピクニック宜しく。別荘を預かる管理人さんの用意してくれた、サンドイッチ等の軽食や菓子の類。
ほんのりと塩を隠し味にした果実水の類等も用意されており、実に穏やかな光景にも見えるのだが。

ピクニックらしからぬ物が有るとすれば、二つ――先ずは。暗色も濃い異国の装い、忍らしい忍装束に身を包む、彼の格好と。
そして少女が…ずるぅり。そんな効果音を思わせて、肩掛けの鞄から引っ張り出した得物――件の魔鎚、だろう。
魔術仕掛けで、果たして何処にどう繋がっているのやら、見た目よりも容積の広い鞄だが。
矢張り知らない者が端から見れば。なかなか異様な光景ではあるのではないか。

影時 > 「まァ、制服は学徒にとっての礼装、礼服の類とものたまう奴らも多い。
 その意味じゃぁ、敢えてその姿に袖を通すのは覚悟の表れ――と受け取っておこう。やる気十分、の意味でな」

学徒、学生としての課外授業ではなく、どちらかと言えば家庭教師としての仕事の延長線で考えていた。
服装に迷うなら、確かにあの学院の制服が一番無難という説も実に間違いではない。
実地訓練や冒険者として依頼を請ける場合も想定し、動きやすくするための工夫が各所に凝らされているともいう。
互いの共通項として、例外ばかりに心当たりがあるのは全く以て是非もない。

道中の装いとして、着流しの類ももちろん持ってきているが、今からやることを考えると、より一層戦闘を意識する必要がある。
この格好で山中の探索も勤しめるが、それは諸々終わった後の点検や確認のために取っておこう。
血生臭いコトでもなんでもない。日程こそ限られてはいるが、気楽にできるよう軽食などの類も用意してもらっている
汗だくになれば、コテージに戻って水を浴びる――ことだって、楽しみと云えるだろう。

「……改めて見ると、やっぱり異様な得物だよなぁ其れ。
 まずは一端、その大物は置いていい。その代わり、軽く練習がてらこいつを持ってくれ」

さて、ずるぅりといった風情で鞄から引きずり出される件の得物は――離れてみても、一層異様に見えたのは気のせいか。
記憶している限りのものは何か違うのか、それとも己が管理下にないうちに変化を遂げていたのか。
底なしの魔術仕掛けの鞄から引き出されたものは、今からの少しの間は出番はない。

そのかわりに、と。手にした木の棒を差し出そう。
樫などの頑丈な木材を丁寧に断面が丸い棒として仕上げたそれは、俗に杖と呼ぶ。長さ120センチほどのものだ。
出立前、予め商会で一本いくらのお値段で買っておいたものである。

フィリ > 「はっ。ぃ。…はぃ、そぅぃった――認識です。私も。矢張りその――冠婚葬祭、とぃぅのも。制服となりますし――」

それはあまり荒事と関係無い気がするが。日常以外の、何らかの特殊な事例…という意味で。挙げた事柄なのかもしれない。
もっとも少女の身の回りで。葬については、人様よりも少ないだろう。人に紛れこそすれ竜達は。得てして長命寄りなのである。
反して婚については、一夫多妻…一妻多妻?のせいで、人より多そうではあるのだが――閑話休題。
身内の話を想定してしまうと。どうにも話題に事欠かないというべきか。自然、話が逸れそうになってしまうのだ。
流石に今は。目の前に…まかり間違えば危険な事態を引き起こしかねない事柄に。集中せねばならないだろう。

と、覚悟だか意気込みだかを併せながら引っ張り出した鎚。
空間を弄って云々という収納方法も、危険をしっかりと意識している故である――他の者が、触れる事の無いように。
何せ叔母曰く、持ち主となった少女以外が下手に触れると。例えそれが攻撃ではなく、単純な接触だとしても…色々吸い上げられるらしい。
念には念を入れて、例え厳重だとしても、何処かに置いておくような事はせず。触れ様の無い仕舞い込み方が一番なのだ。
…多分、持ち主が決まってから、という事なので。この危険性についても、入手時以降に生じた変化、という事になるのだろうか。

意匠として彫られた竜の頭が一旦。鞄からこんにちはしたものの――どうやら。直ぐに出番が来る訳ではないらしい。
むむむ、と再び呻く少女の手で。半分辺りまで引っ張り出された鎚はもう一度。何処ぞの次元に仕舞い込まれた。
物騒な鞄に掛け金をすれば、お昼ご飯の隣に置いて。代わりに差し出される棒、もとい杖、それを。猟手を伸ばし受け取ってみる。

「と――、っと、ゎ。……っ…」

決してふらつく程に重たい筈もないのだが。何とも危なっかしい手付きに、頼りない声。
中程辺りを両手で握り。一先ず、前へと向け構えてみせる。
――矢張り。先程、あの鎚を片手でひょいひょい出し入れし掛けていた光景と。軽めの杖をへっぴり腰で構える現状とは。
本来なら明らかに、逆である筈のそれだろう…先日語った違和感が其処には在った。

「こ…れで。その。…矢張り、ぇぇと、何か……撲つと良ぃの……でしょぅか、笠木様――っ?」

影時 > 「その時分と身分だと、そうなるか。
 ……十把一絡げに其れで片づけるのもどうか、という気もないが、大体に通じるのは気楽じゃあるな」

かの家柄、家系で冠婚葬祭の三番目の事項はそうそうあるコトではないが、余所行きにも通じるのは驚嘆に値する。
生まれ故郷では存在しなかった、考えもしなかった概念である。
やれ貴人に遇うは、やれ鷹狩りに行くためにはだの、一時期仕えていた大名やら武将やらが四苦八苦していた印象が強い。

しかし、件の槌の保管、持ち運びの手段は結局のところそうなったか。
内心でそう思う。鞄ごとうっかり奪われる心配こそあっても、下手に鞄を開いて持てば、素質のないものは魔力を呵責なく奪われる。
使い手になれるかどうか、という素質の有無というのは、安全装置として適切かどうかは危ういが、運搬手段としてはきっとそれが正しい。
問題はそのような特殊な道具と、何の変哲もない道具との差異、落差である。

「……――うーむ。目方の点だけで言えば、あの槌よりもその杖の方が軽いはずなんだが、な。」

差し出した木杖に両手を伸ばし、受け取る筈の姿が先ほどのあり様とは対照的に妙に危なっかしくなる。
見立てた質量の面だけで言えば全金属製とも見えそうな槌よりも、杖の方がずっと軽いはず。
にもかかわらず、杖を腰が入っていない有様で構える姿に顎を摩りつつ、考え込む。

「まぁ、まずはそうだ。前に槌の振り方にナンタラ流などのような流派はないと言ったよな?
 そのかわり、他の流派の動きなどを弁えていれば、その動きをなぞって応用することは決して難しいことじゃあない。

 どんな型でも打ち方でもいい。――俺目掛けて打ってこい」

先ずは何の魔術的な支援や補助などなく、実際に打ち込んだ、叩き込んだ際の感覚を覚え込ませたい。
故に手甲を付けた片手を挙げ、手招きするように促そう。
手甲が陽の光を浴びて、微かに光る。その光の照り、鋭さは、一旦しまわれた槌のそれとよく似て。

フィリ > 「在る意味最も、身分を証明して下さる――と、思われるの…です。はぃ。
それに、何と言ぃますか。ぁる程度、こぅぃった事も。考慮されてぉりますし――」

その筈、だと思う。決して形式面だけで選んでいる訳ではない。機能面での意味合いも含まれるのだ。
…実際に学生達がこの格好で、フィールドワークに赴くという事は。それを見越された設計でもある、筈。
彼の国で言えば、例え一見華美な装いであろうとも。或いは弓を引くのに合わせ、或いは乗馬に合わせ、といった機能面も有していた…筈だと、思う。
この国の、あの学院の生徒達にとっては。制服こそが、そういう代物となるのだろう。

――さて。触れると危ない、それが解っている以上。触れないようにするのは、当然と言うべきか。
例え少女自身は生命力や魔力的に、涸らされてしまう事が無いのだとしても――余人が触れれば大惨事だ。
…例えば。お掃除途中のハウスメイドが、うっかり触れてしまったら。だとか。
同じ学内、教室内ではしゃぐクラスメートが、これまたうっかりぶつかってしまいなどしたら、だとか。
貴重故に盗まれる可能性が有るかもしれない…等という、危険性や。人の悪性を想定出来ていないのは。
少女の性格故の、危なっかしさ、と。言えるのかもしれず。

「本来、そ、のっ…その筈なのですが…ぁ……ぅぐ、ぐ。
ぃぇ、大丈夫で、すっ。この程度でしたら――私でも、ちゃんと、持てて…っ……!」

まぁ、持ててはいる。箸より重いが、持ち上げる事、構える事くらいは出来ている。
問題はそれが危なっかしいというか、素人丸出しという事なのだろう。…あの時読んでいた本の知識はどうなったのか。
と、ツッコまれる前に。彼の言葉で型やら流派やらの話を思い出したのだろう。
すぅ、はぁ。深い呼吸を幾度か重ね。少しでも良いので、強張る肩やら背中やらから、余計な力を抜くようにして。

「で、は、確かこぅ――ぇぇと。ぇっと、は――ぃ! ぉ、ぉ願ぃ…ぃたし、ます…!」

ととん。彼に向かい踏み出しつつ――半ばを握っていた杖を、斜めに振り上げたかと思えば。
その侭距離の詰まると共に、刀で言えば袈裟懸けのような軌道で振り下ろす。
先ずはリーチを活かす等は考えない、普通の打撃だった。
…そう。最初は本当に。振り下ろす、当てる、それだけしか考えていない。
当てる先、彼の装備について…意識するのも。先ずはぶっつけた、その後になるのではないか。