2021/12/28 のログ
ご案内:「なにかの巣穴」にエリザベートさんが現れました。
エリザベート > 其の洞穴の周囲は初め、完全に草叢で覆われていた。
ふらふらと彷徨い歩く女が、不用意に足を踏み出した途端、其の身は深く、深く吸い込まれて、
底に叩きつけられ、意識を手放した。

近くに地底湖でも存在するのか、地面がやや泥濘んでいたことと、
何か、柔らかいものが疎らに敷かれた場所であったために、女は未だ生きている。
けれど、疲れ切った肢体に追い打ちをかけられた形のダメージは、
其れから数時間、女の意識を刈り取っていたらしい。
気が付けば、女がまんまと嵌り込んだ穴から差し込む日差しは暮れ落ちて、
暗く、恐ろしい夜が訪れていた。

俯せた女はほぼ素っ裸に等しく、白磁の肌は擦り傷だらけで、
ぼんやりと浮上しかけた意識、緩慢に瞬いて目を開くも、
――――――未だ、動けない。
なにか、悍ましい気配がすぐ傍に蠢いているように感じるのは、
心細さゆえの錯覚だろうか、其れとも―――――

ご案内:「なにかの巣穴」にテイファーさんが現れました。
テイファー > ある隠れた国への侵略を終え、その身を休めていた巣穴に侵入者有り。
その報が届けられたのは彼女が意識を取り戻す数刻前の事。
見目麗しい雌である。健康な母胎である。姿形を子細に眺め伝達していたのは彼女が感じ取っていた周囲の蠢く物。

人間の頭部程もある目玉に触手が生えた怪物や、スライム等が彼女を取り囲み観察していたのだ。
スライムは僅かながら発光し、目玉の怪物はその瞳からランタンの様に視線の先を照らし出している。
それらの光は彼女の身体に向けられており、暗闇の中、さながら舞台照明が集中する様に彼女へと収束されていた。

遠くから響いてくるのは足音だ。
天井からパラパラと土埃が落ちてきては彼女の黒髪に汚らわしい埃の装飾を与え。
周囲を取り囲む怪物からは、今ならまだ逃げ出せる。俊敏に彼女が動けるならば。
響いている足音。重厚なそれは少しずつ近づいてきているのだけは倒れている彼女の身体を地面が揺さぶり伝えるだろう。

エリザベート > 其の洞穴が、紛れも無く、なにものかの巣穴であることを示すものは、
もし、女が疲労困憊していなければ、もっと早く見つけられた筈だった。

ざわざわと蠢く気配、そして、女自身が下敷きにしている、
誰かの着衣であったと思しき襤褸切れの類も。
其処が非力な人間にとって、特に、女である身にとって、
決して長く留まるべき場所ではないと―――――気付いたときには、もう。

「―――――… ひ、っ………」

なにものかが重く、不吉な地響きを奏で、確実に近づいてきている。
びくりと身を震わせ、跳ね起きようとしたけれど、腕も脚も萎えたように言うことをきかず、
再び、無様に其の場へ倒れ伏しながら、女は迫りくる「音」の方へ視線を巡らせた。

なにかが、居る。
なにかが、近づいてきている。
仄かに揺らめく薄明かりさえ、頭上から差す月明かりではなく、
自身を取り囲むなにものか「たち」の放つものだと、気付いて。
零れ落ちんばかりに目を見開き、蒼褪めた顔を強張らせ、

「―――――――― ッ、ッ ………!」

悲鳴を上げたつもりだったが、声が出てこなかった。
女の身に迫る危険はもはや、回避不能な「未来」「運命」と名を変えて、
深い洞穴の其の奥で、女を呑み込もうとしていた―――――。

テイファー > 「侵入者と聞いて緊張してみれば、孕み袋か。
歓迎するぞ、ようこそ人外の穴蔵へ。我々がたっぷりと歓迎しよう。
その身に穢れの刻印と闇の祝福を。」

奥から現れたのは人間ではない。そして呼吸をすれば肺腑の奥底に何かが渦巻く不穏の象徴。
人ではなく、エルフでもミレーでもない――明白な人間の敵が姿を現していた。
逃げる事が叶わなかった女の四肢に、ぬるりとした表面の触手が眼玉の怪物から伸びていく。
宙づりにされるような形で捕らえられた女は洞穴の奥へと連れ込まれていく。この後の悪夢や惨事は当事者のみが知る話だった。

ご案内:「なにかの巣穴」からエリザベートさんが去りました。
ご案内:「なにかの巣穴」からテイファーさんが去りました。